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瑞貴とチェリー、歩みだした物語
鳥頭の不器用な優しさと、瑞貴の苛立ち
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「彼女に重い物持たせたくない彼氏の気持ちも考えて欲しいな。
……って、ここで言い合ってもしょうがないか。帰りも一緒だといいな」
「……か、かのっ……ぶっ」
カップを傾けながら甘い言葉と視線を絡めてくる瑞貴に耐えられず、サンドウィッチを噴き出してしまったちえり。
瑞貴の甘さに眩暈さえ覚えながらも、笑いながら口を拭ってくれる瑞貴とのひとときが夢にまでみた光景を遥かに上回っている。
(み、瑞貴センパイが、甘すぎるっっ!!)
楽しい時間は生き物のようにあっという間に駆け抜けてしまう。
早朝デートから始まった素敵な一日が、今後の展開を好転させるであろうと光明をもたらすかと思えたが――
「…………」
(どうしたんだろう……。三浦さんと長谷川さん、今日見てない……)
相手に嫌な思いをさせてしまったのだからとにかく謝るしかない。
だけど、誤解はしてほしくない。ちえりは決して嫌味を言ったわけではなく、憧れや尊敬の念を抱いていたことを正直に伝えたかった。
(もっと相手のこと考えてからしゃべらないと……私の悪い癖だ)
あれほど完璧な才色兼備な女性でも、言われて嫌なことがあったに違いない。
言葉を選ばずに発してしまった自分の幼さにつくづく申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
(……もしかして……私に会いたくないから休んでるのかな)
着席して仕事を始めようと手元の資料へ視線を落とすが、ハの字に下がった眉は自然と心と顔を俯かせてしまい、ため息まで零れたちえりの背中にさらにテンションの低い声が重なる。
「どーも」
「……? あ……鳥頭おはよう。あんなに早い時間からお散歩偉いね」
瑞貴に並ぶほど端正な顔立ちの鳥居。どことなく日本人離れした髪や瞳の色が、彼の美しさを一層鮮やかに彩っている。
そして隣にいる野次馬の視線が気になったが、ただの世間話くらい突っ込まれる部分などないだろうと気にせず話始める。
「あいつの朝は早くてな。お陰で規則正しい生活が身について助かってる」
いつも憎まれ口ばかり叩いている鳥居だが、ちゃんと内容のある話も多くなってきた。それもわんこチェリーのお陰かもしれない。やっと同僚らしく接することが出来たちえりは少し嬉しくもあったが、落ち着いて話せる場所は意外と少ない。
「ほら、お前たち。仕事は始まってるぞ」
「……じゃあな。空っぽな頭でろくなこと考えてんじゃねぇぞ」
横目で瑞貴の姿を捉えた鳥居は、最後にちえりへと視線を移すとほんの少しだけ優しい笑みを浮かべて席へと戻っていった。
「……うん、またね。って、あ……」
(……考えごとしてるの気づかれちゃったかな……。鳥頭、今日残業じゃないよね? できるなら今日中に"お礼"渡したいな……)
鳥居の容赦のない言葉の裏には優しさがほんの少しだけ隠れていることも今ならわかる。そして、心配してくれていることも――。
しかし、要領の悪いちえりは一度のやりとりで話を済ませることができず相手の後を再び追うことが多い。
(鳥頭のところに行って聞きたいけど、お仕事始まっちゃってるし……うーん……)
ポケットからスマホを取り出して睨めっこしていると、難しい顔をしているちえりのことが気になった瑞貴が声を掛けてきた。
「チェリー大丈夫か? どうした?」
「い、いいえっ……大丈夫です! すみません、仕事に集中します」
「…………」
慌ててスマホをしまったちえりの挙動を瑞貴が気にならないわけがない。
立ち去った鳥居の後ろ姿とちえりを見比べながら気が気じゃない瑞貴は自分自身に問う。
(なにを苛立っているんだ俺は……)
呼吸を整えるよう深く呼吸を繰り返した瑞貴がようやくちえりと言葉を交わしたのは昼休憩の時だった――。
……って、ここで言い合ってもしょうがないか。帰りも一緒だといいな」
「……か、かのっ……ぶっ」
カップを傾けながら甘い言葉と視線を絡めてくる瑞貴に耐えられず、サンドウィッチを噴き出してしまったちえり。
瑞貴の甘さに眩暈さえ覚えながらも、笑いながら口を拭ってくれる瑞貴とのひとときが夢にまでみた光景を遥かに上回っている。
(み、瑞貴センパイが、甘すぎるっっ!!)
楽しい時間は生き物のようにあっという間に駆け抜けてしまう。
早朝デートから始まった素敵な一日が、今後の展開を好転させるであろうと光明をもたらすかと思えたが――
「…………」
(どうしたんだろう……。三浦さんと長谷川さん、今日見てない……)
相手に嫌な思いをさせてしまったのだからとにかく謝るしかない。
だけど、誤解はしてほしくない。ちえりは決して嫌味を言ったわけではなく、憧れや尊敬の念を抱いていたことを正直に伝えたかった。
(もっと相手のこと考えてからしゃべらないと……私の悪い癖だ)
あれほど完璧な才色兼備な女性でも、言われて嫌なことがあったに違いない。
言葉を選ばずに発してしまった自分の幼さにつくづく申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
(……もしかして……私に会いたくないから休んでるのかな)
着席して仕事を始めようと手元の資料へ視線を落とすが、ハの字に下がった眉は自然と心と顔を俯かせてしまい、ため息まで零れたちえりの背中にさらにテンションの低い声が重なる。
「どーも」
「……? あ……鳥頭おはよう。あんなに早い時間からお散歩偉いね」
瑞貴に並ぶほど端正な顔立ちの鳥居。どことなく日本人離れした髪や瞳の色が、彼の美しさを一層鮮やかに彩っている。
そして隣にいる野次馬の視線が気になったが、ただの世間話くらい突っ込まれる部分などないだろうと気にせず話始める。
「あいつの朝は早くてな。お陰で規則正しい生活が身について助かってる」
いつも憎まれ口ばかり叩いている鳥居だが、ちゃんと内容のある話も多くなってきた。それもわんこチェリーのお陰かもしれない。やっと同僚らしく接することが出来たちえりは少し嬉しくもあったが、落ち着いて話せる場所は意外と少ない。
「ほら、お前たち。仕事は始まってるぞ」
「……じゃあな。空っぽな頭でろくなこと考えてんじゃねぇぞ」
横目で瑞貴の姿を捉えた鳥居は、最後にちえりへと視線を移すとほんの少しだけ優しい笑みを浮かべて席へと戻っていった。
「……うん、またね。って、あ……」
(……考えごとしてるの気づかれちゃったかな……。鳥頭、今日残業じゃないよね? できるなら今日中に"お礼"渡したいな……)
鳥居の容赦のない言葉の裏には優しさがほんの少しだけ隠れていることも今ならわかる。そして、心配してくれていることも――。
しかし、要領の悪いちえりは一度のやりとりで話を済ませることができず相手の後を再び追うことが多い。
(鳥頭のところに行って聞きたいけど、お仕事始まっちゃってるし……うーん……)
ポケットからスマホを取り出して睨めっこしていると、難しい顔をしているちえりのことが気になった瑞貴が声を掛けてきた。
「チェリー大丈夫か? どうした?」
「い、いいえっ……大丈夫です! すみません、仕事に集中します」
「…………」
慌ててスマホをしまったちえりの挙動を瑞貴が気にならないわけがない。
立ち去った鳥居の後ろ姿とちえりを見比べながら気が気じゃない瑞貴は自分自身に問う。
(なにを苛立っているんだ俺は……)
呼吸を整えるよう深く呼吸を繰り返した瑞貴がようやくちえりと言葉を交わしたのは昼休憩の時だった――。
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