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屋敷7日目②
しおりを挟む……案の定ですね、ハイ。
迷いました。
廊下の最後まで行けば反対方向に帰るだけになるから迷わないだろう楽勝とか考えてた数分前が恨めしい。
屋敷は廊下自体があちらこちらに枝分かれしており、一度進むともう無理だった。どこから来たかもうわからない十字路や三叉路が脳内を流れる。
もしかしたらあそこで左だったのかなぁ。
なんて考えても遅いわけで。
仕方なく、窓に持たれながら、胸元から迷子石を取り出す。
目をつぶり、僕は祈った。
ぎゅっと握りしめたそれが赤い輝きを放ち、眩い光が僕の全身を包む。
僕は祈った。ただ、フィーの側へ帰ることを。
*:†:*:†::†:*:†:*
キプリスは、保護当時、ひどい有様だった。ろくな衣服は与えられず、調査の結果食も少なかったらしい。
この20年間、どのようにして奴隷商人がキプリスを隠し続けたのかは不明である。降ってきたらしいが、実際はわからない。雲の上に存在すると言われる彼の地から落ちたならば赤子が軽傷のはずがない。だがまあ、魔石なら考えられなくもない……。
いやしかし、だとしたら魔石の発言がないのはなぜだ?あいつら、まだ隠していることが……。
「フィール様」
「んっ、あ、ああ、なんだい?」
「お手元止まっていますよ。それに、この書類の領印逆さです」
「ええっ!?」
フィールはガサガサと書類をかき分け確認する。そして引っ張り出したそれは綺麗に逆さであった。
「……テリハのとこだし、また再発行してもらおう……」
「キプリス様のことをお考えでしたか?」
「ん、まあね……」
すると、レティカルは紙の山の中から一枚、拾い上げて読む。
「……キプリス様を学院には通わせられないので?」
「うん。そこに書いてるとおりだよ」
キプリスは、本人が言ったとおり確かに二十歳なのだろう。だが、精神年齢も二十歳という訳では無い。自身をそう思っている節があるが、違うとフィールは思っている。
そもそも、限られた経験しか積めない奴隷商館で二十年間過ごしても上等な教育を受けられない。同じ歳の平民よりもコミュニケーション力が著しく劣っている奴隷だって存在する。
「……『精神的に未発達段階にあるため』ですか……間違いではありませんね」
レティカルも今朝の様子を思い出していた。
必死に言葉を紡ごうとする様子は、見た目的には13歳かそこらに見えたが行動は初等部低学年に近い。
「生きた年月は20年、成長が止まったのは16歳、見た目は12歳、中身は10歳。こんな感じ、かな」
人生の時間と中身の時間、その10年の空白はたかが数日で埋められやしない。
書斎の椅子に深く沈み込んで、フィールは思考を巡らす。
「テリハあたりとなら、まだ触れ合えるのかな。僕の信頼のおける友人達から接していこう」
「ええ、それがいいでしょう」
二人だけの会話は、誰も聞かない。
「あ、そういえばキプリスはまだ寝てるの?」
「ああ、彼は今散歩と称して屋敷内を探検しております」
「……へ?」
「そろそろギブアップの頃でしょうか?」
「へっ!?」
二度目に間抜けな返事を返したところ、赤い閃光が目を指した。
「な、何っ!?」
ドスンと音を立てて降ってきたのは、話題の中心人物、キプリスであった。
今日も綺麗な羽根だ。
一瞬目を奪われてから、キプリスを見た時、フィールは先よりももっと大きな声で絶叫した。
「あああああああっ!!書類っ!!!!」
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