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一日目の二人。
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あれから怜音が試合に戻るまで俺達は話をした。
短い間とはいえ一緒に住むにあたっての簡単なルール決めだ。
「好きなだけ幸也を見てられる」
「……勝手にどうぞ」
なんで怜音は自分の願望を口に出せるんだろう。羨ましい。
喉で何かが通り道を塞いでしまって、「俺もだ」という言葉が出ない。微笑んで待ってくれている怜音になにか伝えないと、と思っても舌が震える。結局、無愛想になる。
「それで、幸也が料理担当、俺が他のをやる。幸也も手が空いたらそれを手伝う。これでいい?」
「ああ」
幸也の手料理~なんて喜んでいるところ申し訳ないが俺も特別上手というわけではなく、当たり障りのない食事が並ぶだろう。
それでも多分、怜音は褒めちぎる。
頬を緩ませ、目を少し細め、眉根を下げて、「おいしい」と。
その一言が欲しい。
幸也は帰りに書店でレシピ本を覗こうかと検討していた。
*:†:*:†::†:*:†:*
「惜しかったな」
「幸也が見てたから勝ちたかった……」
しょんぼりと肩を落とす怜音と、三叉路で別れる。
不意に、怜音が背中を曲げた。
「すぐに行く」
駆け足で去って行った背中に自分が痕をつけている、と思ってしまった。
耳元で囁くなんてことするからだ。事を致す間にも耳元を触ったり食んだりしてくるのでどうもそのイメージが抜けない。
「……晩ご飯、何にしよう」
そうだ、赤い頬は、熱い頬は、きっと彼のせいだから。
ああ、幸せだ。
短い間とはいえ一緒に住むにあたっての簡単なルール決めだ。
「好きなだけ幸也を見てられる」
「……勝手にどうぞ」
なんで怜音は自分の願望を口に出せるんだろう。羨ましい。
喉で何かが通り道を塞いでしまって、「俺もだ」という言葉が出ない。微笑んで待ってくれている怜音になにか伝えないと、と思っても舌が震える。結局、無愛想になる。
「それで、幸也が料理担当、俺が他のをやる。幸也も手が空いたらそれを手伝う。これでいい?」
「ああ」
幸也の手料理~なんて喜んでいるところ申し訳ないが俺も特別上手というわけではなく、当たり障りのない食事が並ぶだろう。
それでも多分、怜音は褒めちぎる。
頬を緩ませ、目を少し細め、眉根を下げて、「おいしい」と。
その一言が欲しい。
幸也は帰りに書店でレシピ本を覗こうかと検討していた。
*:†:*:†::†:*:†:*
「惜しかったな」
「幸也が見てたから勝ちたかった……」
しょんぼりと肩を落とす怜音と、三叉路で別れる。
不意に、怜音が背中を曲げた。
「すぐに行く」
駆け足で去って行った背中に自分が痕をつけている、と思ってしまった。
耳元で囁くなんてことするからだ。事を致す間にも耳元を触ったり食んだりしてくるのでどうもそのイメージが抜けない。
「……晩ご飯、何にしよう」
そうだ、赤い頬は、熱い頬は、きっと彼のせいだから。
ああ、幸せだ。
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二人の心情が良く描かれてるなあ。上手いです。
クライマックスへ向けて、ジレジレです。
……泣きたくなるほどに嬉しいです……!ありがとうございます!
ふ、二人はこの後どうなるんでしょうか?
続きを待ってます!
ふおおおおっ!めっちゃ嬉しいです!ありがとうございます!ひとまず怜音が幸也を……ゲフンゲフン、あれですね、お楽しみってやつですね(笑)ハッピーエンドかバッドエンドかは作者さえ決まっておりません……。