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第3章 危機
第17話 試乗 その1
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◆Side アイリス◆
「あ、遅くまでごめんね。そろそろ、帰るね。」
暫く話しをした後、シメイが急に思い出したようにそう言った。
「大丈夫よ。そもそも、私はそんなに寝ないし。」
「そうだったね。ん?」
シメイが何かに気付いた様子を見せたが、私も誰かが厩舎に入って来るのを感じた。
ちょっと警戒したが、入って来たのはリンさんの様で、少し安心した。
でも、こんな時間にどうしたんだろう。
「シメイ、アイリス、お疲れ様。お邪魔してごめんね。」
「お疲れ様です。大丈夫ですよ。僕もそろそろ帰ろうとしてましたし……。」
「帰ろうとしているところ申し訳ないんどけど、ちょっと話しがあるの。」
リンさんの苦し気な表情からすると、決して良い話しではないだろう。
しかも、わざわざ私にも聞かせるということは、明らかに私にも関係することだ。
◆Side 紫明◆
アイリスと今日の競技について話していたら、ついつい長くなってしまった。
アイリスと話しをするのは楽しくて、時間が経つのを忘れてしまう。
「あ、遅くまでごめんね。そろそろ、帰るね。」
「大丈夫よ。そもそも、私はそんなに寝ないし。」
「そうだったね。ん?」
僕は人の気配を感じ、反射的に厩舎の入り口の方を見た。
警戒して見ていると、入って来たのは林藤先輩だった。
「紫明、アイリス、お疲れ様。お邪魔してごめんね。」
「お疲れ様です。大丈夫ですよ。僕もそろそろ帰ろうとしてましたし……。」
「帰ろうとしているところ申し訳ないんどけど、ちょっと話しがあるの。」
「……。」
先輩の様子から、決して良い話しではないことがわかった僕は、黙って先輩の言葉を待った。
「実はさっき社長に呼ばれてね……。」
社長と先輩の会話は、次のような感じだったらしい。
~~~~~~~~~~
「今日紫明が乗った馬……アイリスだったか?あの馬のことなんだが……。」
「……はい。」
「今日の演技は素晴らしかったな。君のトレーニングの賜物だろう。」
「ありがとうございます。でも、私は何もしていません。頑張ったのは紫明です。」
「もちろん、彼は頑張ったが、君がトレーニングしていたのも確かだろう。」
「……それで、私に何かお話しがあるのでしょうか?」
「うむ。実はあの馬を買いたいという人がいてな。今度試しに乗りに来るらしい。」
「えっ!?あ……失礼しました。しかし、あの馬は紫明に懐いています。それに、あの馬は今後も良くなっていくでしょうし、もう少ししたら会員も乗せることができると思います。」
「あの馬の商品価値は今後上がっていくことはわかっている。だが、今回の相手は破格の価格を提示してきた。金額は伏せるが、売っても後悔しないと思う。」
「向こうから、高額を提示してきたんですか?」
「そうだ。それ程欲しいということだろうな。兎に角、乗りに来るのはもう決まったことだ。日程が決まったら伝えるが、そう先にはならないだろうから、しっかり調整してくれ。」
「は、はい。」
~~~~~~~~~~
「そんな……。」
「まだ乗りに来るというだけで、買うと決まった訳ではないわ。」
「でも、アイリスに乗ったら買うに決まってます。彼女の乗り心地は最高ですから。」
「そうね。でも、人と馬には相性があるから、いわゆる『馬が合わない』っていう可能性もあるわ。」
先輩はそう言うと、ちらっとアイリスを見た。
「それって、もしかして……。」
「そう。アイリスにそれを演じてもらうのよ。」
「あ、遅くまでごめんね。そろそろ、帰るね。」
暫く話しをした後、シメイが急に思い出したようにそう言った。
「大丈夫よ。そもそも、私はそんなに寝ないし。」
「そうだったね。ん?」
シメイが何かに気付いた様子を見せたが、私も誰かが厩舎に入って来るのを感じた。
ちょっと警戒したが、入って来たのはリンさんの様で、少し安心した。
でも、こんな時間にどうしたんだろう。
「シメイ、アイリス、お疲れ様。お邪魔してごめんね。」
「お疲れ様です。大丈夫ですよ。僕もそろそろ帰ろうとしてましたし……。」
「帰ろうとしているところ申し訳ないんどけど、ちょっと話しがあるの。」
リンさんの苦し気な表情からすると、決して良い話しではないだろう。
しかも、わざわざ私にも聞かせるということは、明らかに私にも関係することだ。
◆Side 紫明◆
アイリスと今日の競技について話していたら、ついつい長くなってしまった。
アイリスと話しをするのは楽しくて、時間が経つのを忘れてしまう。
「あ、遅くまでごめんね。そろそろ、帰るね。」
「大丈夫よ。そもそも、私はそんなに寝ないし。」
「そうだったね。ん?」
僕は人の気配を感じ、反射的に厩舎の入り口の方を見た。
警戒して見ていると、入って来たのは林藤先輩だった。
「紫明、アイリス、お疲れ様。お邪魔してごめんね。」
「お疲れ様です。大丈夫ですよ。僕もそろそろ帰ろうとしてましたし……。」
「帰ろうとしているところ申し訳ないんどけど、ちょっと話しがあるの。」
「……。」
先輩の様子から、決して良い話しではないことがわかった僕は、黙って先輩の言葉を待った。
「実はさっき社長に呼ばれてね……。」
社長と先輩の会話は、次のような感じだったらしい。
~~~~~~~~~~
「今日紫明が乗った馬……アイリスだったか?あの馬のことなんだが……。」
「……はい。」
「今日の演技は素晴らしかったな。君のトレーニングの賜物だろう。」
「ありがとうございます。でも、私は何もしていません。頑張ったのは紫明です。」
「もちろん、彼は頑張ったが、君がトレーニングしていたのも確かだろう。」
「……それで、私に何かお話しがあるのでしょうか?」
「うむ。実はあの馬を買いたいという人がいてな。今度試しに乗りに来るらしい。」
「えっ!?あ……失礼しました。しかし、あの馬は紫明に懐いています。それに、あの馬は今後も良くなっていくでしょうし、もう少ししたら会員も乗せることができると思います。」
「あの馬の商品価値は今後上がっていくことはわかっている。だが、今回の相手は破格の価格を提示してきた。金額は伏せるが、売っても後悔しないと思う。」
「向こうから、高額を提示してきたんですか?」
「そうだ。それ程欲しいということだろうな。兎に角、乗りに来るのはもう決まったことだ。日程が決まったら伝えるが、そう先にはならないだろうから、しっかり調整してくれ。」
「は、はい。」
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「そんな……。」
「まだ乗りに来るというだけで、買うと決まった訳ではないわ。」
「でも、アイリスに乗ったら買うに決まってます。彼女の乗り心地は最高ですから。」
「そうね。でも、人と馬には相性があるから、いわゆる『馬が合わない』っていう可能性もあるわ。」
先輩はそう言うと、ちらっとアイリスを見た。
「それって、もしかして……。」
「そう。アイリスにそれを演じてもらうのよ。」
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