魔法少女、魔法が強すぎて無敵すぎた件

月沙師

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これじゃあまるで…

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「さてと…それじゃあ、お前ら、二人の削除を任されたわけか…」

まるで特撮に出てくるヒーローのような格好のそいつは、首に巻き付けられたマフラーのような物を風に靡かせると、拳を、ぶらりとぶら下げた。

「お、俺もかよ…!!!」

「グアアアア………」

ベリアルは暴れるし…ユミーはどっか行っちゃうし…
ど、どうすれば良いんだよ!!!!

「グアアアア!!!!!」

ベリアルは獣のように変な軌道を描きながら、ビルの壁などを使って、マグプルに向かって己の爪をぶつける。

「ふん」
その猛攻をマグプルはちょっとしたステップを踏みながら、スマートに避けて見せる。

まるで、ダンスを踊るようにして綺麗なステップで、一歳無駄のない動きで避けると、マグプルはベリアルに拳を叩きつける。

そして、その拳は思ったよりも弱々しいらしく、石柱に小石を投げたように、全く動じない。
しかし、マグプルの腕からは、「HIT!5ポイント!」とゲームのような声が響いた。

「グアァァァ……」

だが、そんな音が鳴ったところで、ベリアルには何もなかった。

何も起きない。それでもマグプルは殴り続ける。
何回も、「HIT!5ポイント!」という声がだけが流れる。

「グアアアアアア………!!!」

そして、ベリアルも鬱陶しいそうに、マグプルに向かって拳を叩きつける。
こっちの方は力を行使し、マグプルを10mほど引き剥がした。

「さてと。フィナーレと行こうじゃないか。」

マグプルがそういうと、腰につけたボタンのようなものを取り出し、3回親指でプッシュする。

すると、マグプルの拳に宿っていた炎が、全て、右足に移った。
その右足は、いかにも、強力なパワーが宿っているように見えるが、あんな小石のような攻撃しかできない奴が、ベリアルなど倒せる物なのだろうか…

普通は、そういう思考になると思う。
でも、こいつがフランスのトップヒーローと言われているのに、あんな弱い攻撃でトップヒーローと言われている所以が分からない。

それに、さっきのマグプルの言ったフィナーレという言葉。

もうこれで決着を付けるという合図。

つまりこれが、今までで一番危険な可能性が高い。

「べ、ベリアル!!!まともに食らうな!!!逃げろ!!!!!!!」

俺は、何か嫌な予感がして、必死に訴えかけるが、ベリアルは、止まらない。
獣のように姿を変えてしまった俺には、ベリアルの声など届かない。

「グアアアアア!!!!!!」

「ベリアル!!!!!!逃げるんだ!!!!!!」

「シャイニーは力ずくだが、俺はテクニックなんだ。じゃあな。」
そういうと、マグプル9は、天高く飛び上がる。

そして、その影が太陽とかぶると、マグプルの背中から火のようなものが放出された。

そして、マグプル9は、自身の炎の宿った右足を突き出すと、勢いよく、ベリアルに向かって、突き進む。

ベリアルは、腕を剣のように変化させると、突き進むマグプル9に向かって振りかざした。

「グアアアアアアア!!!!!!!!」

と、次の瞬間、二人がぶつかり合い、爆弾でも仕掛けられていなのか疑うほどに大きな爆発を起こし、その道路を煙幕で包み込んだ。

「グアアアアア!!!!!」
そして、次に包み込んだのは、ベリアルの悲鳴。

「ベリアル!!!!!!」

俺は煙幕を手で払いながら、悲鳴の方向に向かった。
払っても払っても晴れない煙幕。

俺は鬱陶しく思いながらも、突き進む。
「ベリアル!!!」
すると、コツンと、足元に何かが当たった。

「え…」

下を向くと、そこには指輪をつけた手…
その指輪には見覚えがあった。

花柄の指輪。
これはライリーがベリアルに渡したプレゼントの一つだ。

「う、腕がちぎれただけだよな…!!!おいベリアル!!!!お前に痛覚ないんだし…早く___」

「残念だけど、ベリアルはもう死んだよ。」
そういうと、一気に霧が晴れた。

目の前からは風が吹き、風が吹いていた方向には、マグプル9。
そして、その周りには、血が飛び散っていた。

そして、その中には、マグプルだった肉片の一部が…

「ねぇ…嘘だろ………うわぁ…ああああ………つ…!!!!」
俺は涙を拭き取り、拳を強く握ると、マグプルに背を向けて、走った。

ああ!!!くそ!!!!!!

俺には戦闘能力が、ほぼ無いと言っていい。

だから、腰には銃をぶら下げている。

RIは全員が異能の力を持っているが、俺は生まれつき、が得意だった。

変装っていうのは、顔の形や、体格を変える能力。
能力に気づいてなかったとき、俺はとても醜かった。

その体は、歪で、周りの人からは化け物なんて呼ばれた。

人間なのに、迫害された。

でも、母だけは俺を愛してくれた。
迫害されても、俺だけを庇ってくれた。

その時だったろうな。
人間を初めて憎んだのは。

「変身…!!!!」

俺はビル群を急に曲がり、路地の中に入る。

湿ったその路地の向こう側には一筋の光があった。
俺はその路地を駆け抜けると、バイクが一つ置いてあった。

「ら、ラッキー!!!」
俺は、体を変化させ、少し前にショッピングモールで見たあの、白い髪をした少年へと変わる。

そして、バイクを起動させ、走らせる。
轟音を鳴らしてバイクは走り始め、あっというまに、避難所へと着いた。

「こ、ここで人に紛れれば!!!」

避難所の近くにバイクをとめ、降りる。
起眞市立高等学校。

ユミーが通っているという学校だ。
避難所としては確かに最適だな。

俺は校門を潜り抜け、そして、体育館らしき場所へと向かう。


__________

って、一体、体育館はどこにあるんだ?

致命的だった。
そういえば俺は、ここら辺の学校のことを全く知らない。

これはもはや…誰かに聞くしか…

「おい、そこの少年。」

俺は、急に見知った声…というか、先ほどまで聞き覚えのあった声が突然現れ、ビクンと動揺してしまった。

しかし、ここは、動揺してしまったら、確実に怪しまれる…
俺はお得意のポーカーフェイスで、「えっと…なんでしょうか…?」
と真面目な普通の少年のように振る舞うように答えた。

「すまんが、ここら辺で怪人を見なかったか?」

そこには、頭に帽子を被った20後半あたりの様な男が居た。
しかし、腰には、先ほどベリアルを殺した奴と全く同じ見た目をしたベルト。

変身を解除してはいるが、こいつは確実にマグプル9。
そいつだ!!!!!

だが、今は所詮は人間…
殺せる…!!!

「か、怪人ですか?いやちょっと僕は分からないですね…」

俺はそう惚けながらポケットの中に手を入れる。
ユミーに護身用でもらった銃がその中には入っていた。

「そうか。わかった。それじゃあ__」
と言いながら、マグプルは踵を返す。

今しか無い!!!!!

銃をポケットの中から取り出し、そして、拳銃を構える。
が、その銃口はマグプルの掌によって抑えられた。

「な、何!?」

「まあ、なんかジャケットのポケットが膨れてたしな。それに、服、着替えなかったのか?お前、まさか変装系の能力か?まさかね。」

「クッソ!!!!!」

俺はそう言いながら、銃口の引き金を引こうとした。
が、引けなかった。

「銃ってのは、上のスライドする部分を少しでも後退させると引き金にロックが掛かる…知らなかったか…?」

「く!!!!」

俺は、銃を一度、その手のひらから離させると、マグプルに向かって投げつける。

「くっ!!!!」

多少、その銃を投げつける攻撃が効いたようで、マグプルは怯んだ。

俺は、その隙に、今度は、闇に黒猫となって隠れた。
ここでしばらくマグプルが引くまで待つか…

今度は人間じゃない…大丈夫な筈だ…
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