ファンタジーな世界に猫が一匹、仲間を集めて旅をする

翠雲花

文字の大きさ
12 / 21

12.精霊王へ紹介

しおりを挟む


 これから王都へ出発するぞ!という時に、僕の影から大量の蝶が出てきて、ジンカとともに大樹の森に連れて来られた。
 精霊のゲートを使われたのだろう。
 そして目の前にはドリュアがいて、ジンカはすぐに跪いた。


「楽にせよ。ヌイも……とりあえず、こちらに」


 そう言って、ドリュアは自身の膝をポンポンとアピールする。
 座ってほしいのだろう。
 僕がドリュアの元へ行くと、頭を上げたジンカが、蝶に囲まれてしまった。


「ニッ!(ドリュア!ジンカが大変)」

「問題ない。ヌイのそばにおいても良いか、確かめているだけだ。あの蝶の半分は、クロノアの目になっている」

「にゃ?(どうしてクロノア?)」

「ヌイの名付けをし、初めに加護を与えたのはクロノアだ。ヌイのそばにおく者を見たいと思うのは当然だろう」


 見たいって言ってるけど、要は品定めってことじゃない?クロノアは僕の保護者みたいなものだから仕方ないけど、まさかドリュアも?加護を与えたら、こんなに過保護になるものなのかな。


 すると、一匹の蝶が僕の頭にとまり、クロノアの声が頭に響く。


『ヌイ、元気そうだね』

「にゃ?(クロノア?)」

『そうだよ。相変わらず可愛いな。でも、忘れてたでしょ。相棒ができたら呼んでって言ったよね?』

「……にゃ(……忘れてた)」

『ドリュア、キミはどう?あの人間に対する森の拒否反応はない?』


 拒否反応?それってジンカと関係あるの?


「問題ない。元々この国にいる者だ。ヌイのそばにおいてもいいだろう」

『そっかそっか!ボクの方も問題はないかな。ジンカって言ったっけ?スキルがボクにピッタリだし、ヌイへの依存具合もいい感じ。拒否反応もなさそうだしね』


 依存……ジンカって僕に依存してたの?そこまでじゃないと思ってた。
 そもそも、僕に依存する理由が分からない。
 アニマルセラピー……精神安定剤的な感じじゃないの?僕、依存されるような事はしてないよ。


「にゃ?(拒否反応の確認、必要?)」

『必要だよ。ヌイが行く場所には、彼らも行くでしょ?ヌイのものなら、ヌイは手放さないだろうし、ヌイが住処を決めたら森の拒否反応は確認しないとね。特に、秘境にはいずれ帰ってくるつもりなんでしょ?』

「にゃー(うん。色々と大変なんだね)」

「加護を与えれば、その者に害がある場合、森は害となる者を拒絶する。森全体が加護持ちの味方だからな」


 なるほど……やっぱり大変なんだね。
 でも、ジンカが問題なしならいいや。
 これからも、人が増えたら呼ばれるのかな。
 とりあえず、ジンカにも共有しておこう。


 そうしてジンカに全てを伝えると、ジンカは安心した様子でホッと息を吐き、感謝を口にする。
 そこで、名を呼ぶことも許されたジンカ。
 僕は最初から呼んでしまっているのだが、それについては何も言われていないため、僕も触れないでおく。
 許されたジンカの反応が、ジンカにしては異常なほど驚いていたため、知るのが怖いのだ。


「ドリュア様、一つお訊きしてもよろしいでしょうか」

「ああ」

「ヌイは……神獣になるのでしょうか」

「ふむ……なぜ知っている?先祖返りが神獣になることは伏せられて――」

「にゃー!(僕が言った!)」


 胸を張り、自信満々にドヤァをする。
 すると、頭に響くクロノアからは『お前かー!』と言われ、ドリュアは手で顔を覆ってしまった。


「私が訊きたいのは、クロノア様とドリュア様が、ヌイを信仰しているのかという話です」

『ボクがヌイを信仰?それはないよ。ヌイは我が子のようなものだよ?それに精霊王が信仰心を抱くなんてあり得ないよ。そうだよね、ドリュア――……ドリュア?』


 クロノアの言葉が聞こえないジンカは平然としているが、なぜかドリュアは何も言わずに顔を隠したまま固まっている。
 そこで、ドリュアの手を退けるように、僕は下から顔を捩じ込んでみた。


「にゃ?(ドリュア、僕のこと好き?)」

「……好き。口下手な私と話をしてくれ、癒しを与えてくれた」

「みゃーん(僕もドリュア好きだよ)」


 フハハハ!これでドリュアもイチコロだ!さぁ、僕の下僕に――


「ンニッ」

「本当か!」


 突然顔を両手で包まれ、近づいてくるドリュアの顔があまりにも必死だった。
 精霊王とは?と言いたいが、ドリュアはそんなことも気にせず、目を輝かせている。
 一方、僕の頭に乗っていた蝶であるクロノアは、僕とドリュアの間に入ろうと必死だ。
 今は離れているため、クロノアが何を言っているのか分からないが、ドリュアに文句でも言うようにぶつかっている。


「良かった。あまりにもあっさりとした別れに、次に会った時はどうしたものかと、ずっと考えていた。突然踏み入り、私の心を乱したのはヌイが初めてだ」


 ん?ドリュアさん、大丈夫ですか?まさか病み属性じゃないよね?急に喋るようになったじゃん。
 大丈夫そ?僕、これからまたいなくなるよ?というか、僕は何もしてないし、ドリュアと喋ったのなんて少しだけだよ。
 そのクソデカ感情はどこから湧いて出てきたんだい?


『ドリュア!ボクの可愛い子から離れて!キミ、自分が精霊王だと分かっててヌイを信仰してるの!?』

「ヌイ、ドリュア様と少し離れて喋ろうか」


 僕の頭に蝶が戻ってくると、クロノアの叫び声が聞こえ、ジンカは僕を呼ぶ。
 漸くドリュアから抜け出せると思い、僕は顔を引っ込めて、ドリュアの膝から降りた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...