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12.精霊王へ紹介
しおりを挟むこれから王都へ出発するぞ!という時に、僕の影から大量の蝶が出てきて、ジンカとともに大樹の森に連れて来られた。
精霊のゲートを使われたのだろう。
そして目の前にはドリュアがいて、ジンカはすぐに跪いた。
「楽にせよ。ヌイも……とりあえず、こちらに」
そう言って、ドリュアは自身の膝をポンポンとアピールする。
座ってほしいのだろう。
僕がドリュアの元へ行くと、頭を上げたジンカが、蝶に囲まれてしまった。
「ニッ!(ドリュア!ジンカが大変)」
「問題ない。ヌイのそばにおいても良いか、確かめているだけだ。あの蝶の半分は、クロノアの目になっている」
「にゃ?(どうしてクロノア?)」
「ヌイの名付けをし、初めに加護を与えたのはクロノアだ。ヌイのそばにおく者を見たいと思うのは当然だろう」
見たいって言ってるけど、要は品定めってことじゃない?クロノアは僕の保護者みたいなものだから仕方ないけど、まさかドリュアも?加護を与えたら、こんなに過保護になるものなのかな。
すると、一匹の蝶が僕の頭にとまり、クロノアの声が頭に響く。
『ヌイ、元気そうだね』
「にゃ?(クロノア?)」
『そうだよ。相変わらず可愛いな。でも、忘れてたでしょ。相棒ができたら呼んでって言ったよね?』
「……にゃ(……忘れてた)」
『ドリュア、キミはどう?あの人間に対する森の拒否反応はない?』
拒否反応?それってジンカと関係あるの?
「問題ない。元々この国にいる者だ。ヌイのそばにおいてもいいだろう」
『そっかそっか!ボクの方も問題はないかな。ジンカって言ったっけ?スキルがボクにピッタリだし、ヌイへの依存具合もいい感じ。拒否反応もなさそうだしね』
依存……ジンカって僕に依存してたの?そこまでじゃないと思ってた。
そもそも、僕に依存する理由が分からない。
アニマルセラピー……精神安定剤的な感じじゃないの?僕、依存されるような事はしてないよ。
「にゃ?(拒否反応の確認、必要?)」
『必要だよ。ヌイが行く場所には、彼らも行くでしょ?ヌイのものなら、ヌイは手放さないだろうし、ヌイが住処を決めたら森の拒否反応は確認しないとね。特に、秘境にはいずれ帰ってくるつもりなんでしょ?』
「にゃー(うん。色々と大変なんだね)」
「加護を与えれば、その者に害がある場合、森は害となる者を拒絶する。森全体が加護持ちの味方だからな」
なるほど……やっぱり大変なんだね。
でも、ジンカが問題なしならいいや。
これからも、人が増えたら呼ばれるのかな。
とりあえず、ジンカにも共有しておこう。
そうしてジンカに全てを伝えると、ジンカは安心した様子でホッと息を吐き、感謝を口にする。
そこで、名を呼ぶことも許されたジンカ。
僕は最初から呼んでしまっているのだが、それについては何も言われていないため、僕も触れないでおく。
許されたジンカの反応が、ジンカにしては異常なほど驚いていたため、知るのが怖いのだ。
「ドリュア様、一つお訊きしてもよろしいでしょうか」
「ああ」
「ヌイは……神獣になるのでしょうか」
「ふむ……なぜ知っている?先祖返りが神獣になることは伏せられて――」
「にゃー!(僕が言った!)」
胸を張り、自信満々にドヤァをする。
すると、頭に響くクロノアからは『お前かー!』と言われ、ドリュアは手で顔を覆ってしまった。
「私が訊きたいのは、クロノア様とドリュア様が、ヌイを信仰しているのかという話です」
『ボクがヌイを信仰?それはないよ。ヌイは我が子のようなものだよ?それに精霊王が信仰心を抱くなんてあり得ないよ。そうだよね、ドリュア――……ドリュア?』
クロノアの言葉が聞こえないジンカは平然としているが、なぜかドリュアは何も言わずに顔を隠したまま固まっている。
そこで、ドリュアの手を退けるように、僕は下から顔を捩じ込んでみた。
「にゃ?(ドリュア、僕のこと好き?)」
「……好き。口下手な私と話をしてくれ、癒しを与えてくれた」
「みゃーん(僕もドリュア好きだよ)」
フハハハ!これでドリュアもイチコロだ!さぁ、僕の下僕に――
「ンニッ」
「本当か!」
突然顔を両手で包まれ、近づいてくるドリュアの顔があまりにも必死だった。
精霊王とは?と言いたいが、ドリュアはそんなことも気にせず、目を輝かせている。
一方、僕の頭に乗っていた蝶であるクロノアは、僕とドリュアの間に入ろうと必死だ。
今は離れているため、クロノアが何を言っているのか分からないが、ドリュアに文句でも言うようにぶつかっている。
「良かった。あまりにもあっさりとした別れに、次に会った時はどうしたものかと、ずっと考えていた。突然踏み入り、私の心を乱したのはヌイが初めてだ」
ん?ドリュアさん、大丈夫ですか?まさか病み属性じゃないよね?急に喋るようになったじゃん。
大丈夫そ?僕、これからまたいなくなるよ?というか、僕は何もしてないし、ドリュアと喋ったのなんて少しだけだよ。
そのクソデカ感情はどこから湧いて出てきたんだい?
『ドリュア!ボクの可愛い子から離れて!キミ、自分が精霊王だと分かっててヌイを信仰してるの!?』
「ヌイ、ドリュア様と少し離れて喋ろうか」
僕の頭に蝶が戻ってくると、クロノアの叫び声が聞こえ、ジンカは僕を呼ぶ。
漸くドリュアから抜け出せると思い、僕は顔を引っ込めて、ドリュアの膝から降りた。
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