11 / 21
11.ヌイのもの(sideジンカ)
しおりを挟む私は、生まれた時からいくつもの道が用意されていた。
侯爵家の嫡男でありながら、自由を許され、期待もされず、しかし弟達の見本であり続けた。
両親が悪いわけではない。
私が持つべきだったものを持っていなかった。
ただそれだけ。
だが、人生が変わるほどのものがスキルであり、特別な家系スキルだ。
スキルの中でも、先天的なものと後天的なものがあり、家系スキルは先天的スキルだ。
だからこそ、どう頑張っても私は後継者候補にすら入れない。
一度、どこかの貴族が、スキル持ちでなくとも血を継いでいればスキルが引き継がれるかもしれないと思い、優秀だった嫡男に継いでもらったらしい。
だがその後、何度代替わりしても家系スキルを持った者が生まれることはなく、最後には結婚もせずに途絶えた。
家系スキルはステータスにもなるため、結婚しなかったのは良い判断だろう。
もしくは結婚相手がいなかったのかもしれない。
そして家系スキルを持った他の家族は、家を出れば消えてしまうのだから、家系スキルを守る為にも、スキルを持った者が継ぐのは仕方のないことだ。
「――……俺はなんとなく分かってたよ~。だから、ここにいる間は兄上に甘えてた。それに、兄上を見てれば公爵家に入っても問題なく立ち回れるだろうから」
ルートはやはり気づいていたらしい。
歳の離れたルートは大学へ通っているが、今年で卒業だ。
そしてジークの方は、貴族学校を卒業しており、騎士学校へ通いながら冒険者をやっている。
今が一番ちょうどいい時期なのだ。
しかし、問題のジークは眉を寄せて私を見る。
「なぜだ。ジンカ兄上、今になってなぜ言う気になった?」
「今がちょうどいいからだよ。それに、私にはヌイがいる。ジークのおかげでヌイと会えて、本当に良かった」
ヌイがいるから、私は嫡男という立場を諦められるのかもしれないね。
本当は、私が継ぎたかった。
父上や母上を支えるために、それなりに頑張ってきたつもりだからね。
でも、もういいんだ。
私にはヌイがいる。
ヌイがいる場所が、私の居場所になる。
私は……居場所を欲していたのかもしれない。
「にゃーん(ジンカは僕が貰うから諦めて。ジンカはもう僕のジンカだから)」
可愛らしい声とともに、脳内に直接言葉が浮かび上がる。
まるで魔法の呪文のようだ。
自然と理解できてしまうのだから、この魔具を作ってくれた研究者には感謝しかない。
「んなー(ジークのお兄ちゃん、貰ってごめんね)」
「うっ……可愛い!」
ヌイが可愛すぎる。
ヌイのものなんて……私は幸せ者だ。
その証拠に、この場にいる全員が、私を羨ましげに見ているじゃないか。
ヌイは私の肩に乗り、頬擦りしてくる。
これがなんとも言えないほど可愛いのだ。
柔らかい毛を押し付けられ、温もりとともにゴロゴロという音も聞こえてくる。
「はぁ……分かった。ヌイが気に入ったなら、ジンカ兄上を連れて行け。スキルに関しては、どうにもできない。ジンカ兄上が幸せになるならそれでいい」
「ふふ、ありがとう。ジークもヌイについて行きたいだろうに……ごめんね?」
ジークに謝りつつも、笑みを浮かべながらヌイの頭を撫でれば、ジークは悔しそうにする。
ジークは分かりづらいが、ヌイのことが好きすぎるあまり、ストーカーになっている。
ヌイからしてみれば"沼"と言うらしいが、ストーキングは別だろう。
「いいな~、兄上……ヌイちゃん、兄上をよろしくね~。兄上には俺達もいるけど、兄上からしてみたらヌイちゃんが一番だろうから」
「みゃ!(任せて!)」
「……ヌイ、ジンカ兄上を頼む。ジンカ兄上、ヌイを絶対に絶対に――」
「分かったよ。守ってと言いたいんだね。守るのは当然だけれど、私はヌイの望みを叶えるのが優先だからね」
弟二人が納得したところで、父上と母上がヌイに私のことを頼む。
そこには、スキルに関することも含まれているのだろう。
その日以降、ヌイは私の部屋で眠るようになり、仕事の引き継ぎの合間に、王都へ行く為の準備を進めた。
そうして数日が経ち、私は現在、ヌイがドリュアと呼んでいる大樹の森の精霊王を前に、蝶の精霊達に囲まれていた。
31
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
✻✻✻
2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
悪役の僕 何故か愛される
いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ
王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。
悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。
そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて…
ファンタジーラブコメBL
シリアスはほとんどないです
不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる