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第六章 加速する愛
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「兄さん!! 凛は……」
「洸、凛くんは大丈夫やから静かにしぃ」
「先に風呂に入ってきてまえ。今回は怒って熱出た訳やないから、凛の熱がどのくらい長引くか分からんのや。ずっと気ぃ張っとったら、お前の方が体調崩すで」
洸が急いで帰ってくると、凛くんは鼻をスンスンさせて手を伸ばすが、起きる気配はなく、洸を探す素振りをする。
「凛くん、洸のとこ探しとんのか?? 洸、風呂入る前に一旦こっち来てくれんか?? そんで今着とる服置いてけ」
「え……今着てるやつ?? 洗ったやつじゃダメ??」
「俺等も嫌やけど凛の為やし、シャツだけ握らせとるんや」
洸は渋々シャツを脱ぎ、凛くんに声をかけてから風呂に行き、凛くんは洸のシャツも抱きしめると、また毛布に潜った。
やっぱ熱出とる時の凛くんは、特別可愛いんよなあ。可哀想やけど、こうして世話できるんが、むちゃくちゃ嬉しい。ゼルなんか、ずっと顔緩んどるし……そういや、愁は幼児返りしとる凛くん見るんは初めてやったよな?? あいつ、大丈夫なんかな。一応連絡しとくか。
「愁、聞こえとるか??」
「聞こえてるけど、何かあった??」
「あぁ……凛くんが熱出してもうてな。今は寝とるけど、凛くん起きたら幼児返りしとるから、あんまオーバーリアクションせんでや」
「熱!? 大丈夫なのか!? 怒る事でもあったとか……」
「いいや、久しぶりに番と離れたストレスやって。せやから、いつまで続くか分からんし、そっちの仕事出来るだけ片付けて来た方がええで」
「分かった。取り敢えず俺の仕事はかなり進んだし、あとは駿にも任せるから大丈夫だ」
それから洸が風呂から上がってきて、凛くんが起きるまで、それぞれやりたい事をやっていると、凛くんがモゾモゾと動き始めて、毛布から顔を出して俺達の顔を確認すると、周りを見渡して愁を探し始めた。
「愁が居ない」
「凛くんが呼ばんと来れへんよ。呼んであげたらええわ」
「愁……きて、匂いしない」
ん?? 凛くん呼んどるのに、愁の奴何やっとんのや??
「愁、何しとんのや。凛くん呼んどるで」
「ん?? 呼ばれてないけど……凛くん、ちゃんと魔法使えてる??」
いや、使えとらんな。
「ふぇ……愁が……愁がきてくれない。ゼン、愁呼んで」
「凛くん、魔法使てみ。鈴でもええから、ちゃんと愁のこと呼んでみ」
凛くんは泣きながらゼルにしがみつき、愁を呼んでいるが、魔法はやはり使えていなかった。しかし、愁は鈴の音が聞こえたのか、こっちに来て凛くんの頭を撫でる。
「凛くん、そんなに泣いてどうしたの??」
「愁、来るの遅い。いっぱい呼んだのに……」
泣いて熱が上がってるのか、凛くんは赤い顔で愁にしがみつくと、スンスンと匂いを嗅いで、キスを要求しだした。
「可愛すぎるんだけど……これ幼児返り??」
「せやで。可愛いやろ。凛くん、こっちおいで」
俺が凛くんを呼ぶと、嬉しそうにこっちに走ってきたが、フラついているため、机に足をぶつけて俺の膝の上に倒れてきた。
「机邪魔やな。洸、そっち持ってくれんか?? 熱ある時の凛は、俺等のことしか見えとらんから危ないんや」
「確かに危ないね。今回は熱発散させてあげないの??」
「今回は発散させても、意味ないと思うんよなあ。寧ろもっと熱上がりそうやし、風邪になっても大変やからな」
ゼルと洸が机を動かしている間、凛くんは俺にもキスを要求してきて、軽めにキスをすると満足そうに、俺の顔に自分の猫耳をスリスリとしてきて、尻尾は俺の腕に巻き付けてくる。
「凛くん、毛布かけな寒いやろ?? 愁、そこに落ちた毛布取ってくれんか??」
「なんか可愛いけど、やたら色気あるね。それも熱のせい??」
「熱あるといつもならせん事、自分からしてくるからなあ……それで色気あるように見えるんや」
「凛、俺にはチュウしてくれへんの??」
ゼルは俺の後ろに来て、凛くんに顔を近づけると、凛くんがゼルの首に手を回して、自分からキスをしにいき、そのまま洸の所にも行って、ぎゅっと抱きついた後、洸にもキスを要求し、満足すると俺とゼルの間に戻ってきて、毛布に潜ってしまった。
「満足して寝たんか??」
「いや、まだ寝とらんな。毛布の中で何かやっとる」
何しとるんや?? なんかモゾモゾしとるけど……
「何してるのか凄い気になる。俺から見ても寝てるようにしか見えないし」
「ゼンのとこで何かしてるのか?? 毛布めくったら怒るかな」
「やめたほうがええな。わざわざ隠れてやっとるし、喜ぶか泣くかのどっちかやな。凛くんが隠しとるんやったら、見られたくないんやろ」
「言うて、兄貴も気になっとるんやろ??」
巣作りちゃうかなとは思っとるけど、毛布の中で巣作りするんはどうなんやろな。落ち着きたいっちゅう事なんかな。それやったら、自分の部屋に行った方がええと思うんやけど……
すると、凛くんは顔を出して、愁の服を引っ張り始め、ゼルも何をしているのか気づいたのか、凛くんの部屋の扉をチラッと見る。愁にはシャツだけ脱いでもらい、凛くんに愁のシャツを渡すと、またモゾモゾと巣作りを始めた。
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