上 下
328 / 361
第六章 加速する愛

14

しおりを挟む


~sideゼン~


「兄さん!! 凛は……」


「洸、凛くんは大丈夫やから静かにしぃ」


「先に風呂に入ってきてまえ。今回は怒って熱出た訳やないから、凛の熱がどのくらい長引くか分からんのや。ずっと気ぃ張っとったら、お前の方が体調崩すで」


 洸が急いで帰ってくると、凛くんは鼻をスンスンさせて手を伸ばすが、起きる気配はなく、洸を探す素振りをする。


「凛くん、洸のとこ探しとんのか?? 洸、風呂入る前に一旦こっち来てくれんか?? そんで今着とる服置いてけ」


「え……今着てるやつ?? 洗ったやつじゃダメ??」


「俺等も嫌やけど凛の為やし、シャツだけ握らせとるんや」


 洸は渋々シャツを脱ぎ、凛くんに声をかけてから風呂に行き、凛くんは洸のシャツも抱きしめると、また毛布に潜った。


 やっぱ熱出とる時の凛くんは、特別可愛いんよなあ。可哀想やけど、こうして世話できるんが、むちゃくちゃ嬉しい。ゼルなんか、ずっと顔緩んどるし……そういや、愁は幼児返りしとる凛くん見るんは初めてやったよな?? あいつ、大丈夫なんかな。一応連絡しとくか。


「愁、聞こえとるか??」


「聞こえてるけど、何かあった??」


「あぁ……凛くんが熱出してもうてな。今は寝とるけど、凛くん起きたら幼児返りしとるから、あんまオーバーリアクションせんでや」


「熱!? 大丈夫なのか!? 怒る事でもあったとか……」


「いいや、久しぶりに番と離れたストレスやって。せやから、いつまで続くか分からんし、そっちの仕事出来るだけ片付けて来た方がええで」


「分かった。取り敢えず俺の仕事はかなり進んだし、あとは駿にも任せるから大丈夫だ」


 それから洸が風呂から上がってきて、凛くんが起きるまで、それぞれやりたい事をやっていると、凛くんがモゾモゾと動き始めて、毛布から顔を出して俺達の顔を確認すると、周りを見渡して愁を探し始めた。


「愁が居ない」


「凛くんが呼ばんと来れへんよ。呼んであげたらええわ」


「愁……きて、匂いしない」


 ん?? 凛くん呼んどるのに、愁の奴何やっとんのや??


「愁、何しとんのや。凛くん呼んどるで」


「ん?? 呼ばれてないけど……凛くん、ちゃんと魔法使えてる??」


 いや、使えとらんな。


「ふぇ……愁が……愁がきてくれない。ゼン、愁呼んで」


「凛くん、魔法使つこてみ。鈴でもええから、ちゃんと愁のこと呼んでみ」


 凛くんは泣きながらゼルにしがみつき、愁を呼んでいるが、魔法はやはり使えていなかった。しかし、愁は鈴の音が聞こえたのか、こっちに来て凛くんの頭を撫でる。


「凛くん、そんなに泣いてどうしたの??」


「愁、来るの遅い。いっぱい呼んだのに……」


 泣いて熱が上がってるのか、凛くんは赤い顔で愁にしがみつくと、スンスンと匂いを嗅いで、キスを要求しだした。


「可愛すぎるんだけど……これ幼児返り??」


「せやで。可愛いやろ。凛くん、こっちおいで」


 俺が凛くんを呼ぶと、嬉しそうにこっちに走ってきたが、フラついているため、机に足をぶつけて俺の膝の上に倒れてきた。


「机邪魔やな。洸、そっち持ってくれんか?? 熱ある時の凛は、俺等のことしか見えとらんから危ないんや」


「確かに危ないね。今回は熱発散させてあげないの??」


「今回は発散させても、意味ないと思うんよなあ。寧ろもっと熱上がりそうやし、風邪になっても大変やからな」


 ゼルと洸が机を動かしている間、凛くんは俺にもキスを要求してきて、軽めにキスをすると満足そうに、俺の顔に自分の猫耳をスリスリとしてきて、尻尾は俺の腕に巻き付けてくる。


「凛くん、毛布かけな寒いやろ?? 愁、そこに落ちた毛布取ってくれんか??」


「なんか可愛いけど、やたら色気あるね。それも熱のせい??」


「熱あるといつもならせん事、自分からしてくるからなあ……それで色気あるように見えるんや」


「凛、俺にはチュウしてくれへんの??」


 ゼルは俺の後ろに来て、凛くんに顔を近づけると、凛くんがゼルの首に手を回して、自分からキスをしにいき、そのまま洸の所にも行って、ぎゅっと抱きついた後、洸にもキスを要求し、満足すると俺とゼルの間に戻ってきて、毛布に潜ってしまった。


「満足して寝たんか??」


「いや、まだ寝とらんな。毛布の中で何かやっとる」


 何しとるんや?? なんかモゾモゾしとるけど……


「何してるのか凄い気になる。俺から見ても寝てるようにしか見えないし」


「ゼンのとこで何かしてるのか?? 毛布めくったら怒るかな」


「やめたほうがええな。わざわざ隠れてやっとるし、喜ぶか泣くかのどっちかやな。凛くんが隠しとるんやったら、見られたくないんやろ」


「言うて、兄貴も気になっとるんやろ??」


 巣作りちゃうかなとは思っとるけど、毛布の中で巣作りするんはどうなんやろな。落ち着きたいっちゅう事なんかな。それやったら、自分の部屋に行った方がええと思うんやけど……


 すると、凛くんは顔を出して、愁の服を引っ張り始め、ゼルも何をしているのか気づいたのか、凛くんの部屋の扉をチラッと見る。愁にはシャツだけ脱いでもらい、凛くんに愁のシャツを渡すと、またモゾモゾと巣作りを始めた。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪役令嬢の生産ライフ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:747pt お気に入り:5,536

残業シンデレラに、王子様の溺愛を

恋愛 / 完結 24h.ポイント:617pt お気に入り:331

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

BL / 連載中 24h.ポイント:915pt お気に入り:301

婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:2,143

真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,279pt お気に入り:245

【R18】爆乳ママは息子の友達たちに堕とされる

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:710pt お気に入り:206

堅物監察官は、転生聖女に振り回される。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,583pt お気に入り:151

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

BL / 連載中 24h.ポイント:53,975pt お気に入り:5,035

処理中です...