Release 僕の神様

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滾れ、文化祭!3

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 今まで文化祭なんてものはただ苦痛でしかなかった。本当は輪に入りたいのに、僕は自ら進むことができない。だからいつも影でみんなの賑わう姿を見るだけだった。



 でも、今回は違う。相変わらず友だちなんていないけど、それでも自分に役割が合って、しっかり参加している。



 仮装パレードの衣装は、まるで既成品のような完成度だった。



 へーちゃんのおかげだ。2年1組は偶然にもあまり裁縫が得意な人がいなかったが、へーちゃんだけはレベルが違うくらい上手だった。みんなが苦戦するところは彼が一肌脱いでくれたし、クラスメイト全員分の衣装の仕上げをしてくれた。僕が縫った布切れが、へーちゃんの手によって人の着れるものになったときは感動したものだ。



 ちなみに僕の衣装はモブキャラのもので、その世界観にあった外国の貴族風衣装だ。布はペラペラだけど、ジャラジャラした装飾品は眩しくて僕に不釣り合いだ。



 パレードは仮装しながら商店街を歩く。昨年は僕の衣装は忘れられていたので一人だけ制服でひっそりと歩いていた。でも、今はみんなと作った衣装を身に纏っている。



 「類沢可愛いじゃん!」



 「え、あ、ありがとう」



 喋る魔法の雪だるまに扮した近衛くんが類沢さんに声を掛けている。類沢さんは、明日のステージで主役を張るので誰よりも晴れやかなドレスに身を包んでいた。



 照れくさそうな類沢さんを、近衛くんと加山くんが称賛している。彼らは不良だから怖い、なんて勝手に思い込んでいた自分が情けない。人は見かけに寄らないようだ。



 「うわぁ、似合いすぎて引くわ」



 「似合ってねぇし」



 「お姫様が声低すぎて嫌だー! でも見た目だけキレイで腹立つ!!」



 もう一人のステージの主役の周りには榊さんをはじめ、女子がたくさん集まっていた。



 へーちゃんもまた、きらびやかな衣装に身を包んでいる。キラキラした類沢さんのドレスよりは控えめなドレスであるけど、へーちゃんは不機嫌そうな顔をしていた。まぁ、君が殆ど作ったんだけどね。



 眉間にシワを寄せているが、でも彼は元の顔が良いので女装も似合っていた。せっかくなら本格的にしたいと榊さんがウィッグを用意し、へーちゃんの顔に化粧まで施している。そのお陰で、長身の美人女性にしか見えない。元々目は大きいし、まつ毛も長くてボリュームがあったけど、更に女性的になった。



 ただ、もちろん声は変わってないので喋れば完全に男だけど。



 「マジでキメェ……おい榊、写真撮んな」 



 「いいでしょ? ヤバイ、双郷が超可愛い」



 「やめろって」



 パレードが始まり、僕らはミンミンと蝉のなく声を聞きながら水筒とスマホだけ手に持って歩き始める。他のクラスには着ぐるみのような人もいたし、ダンボール星人もいたので、熱中症にならないか心配だ。



 僕らのクラスは、かなり注目を浴びていた。



 やっぱり衣装の完成度が高いし、何よりへーちゃんが様になり過ぎている。美しいドレスを纏って歩く美人、遠目で見れば性別すらわからない。パレードを見ている商店街の人たちがへーちゃんを見て目を輝かせているのは、すぐに感じた。



 へーちゃん当人は楽しくないのか、表情は特にない。眉間にシワを寄せることはやめたが、楽しそうに笑うこともなく、ただ前を見て歩いているだけだ。



 ……それで人を惹きつけるんだから凄いよね。



 「わああ!! ナナだぁ!!」



 観客の中のひとりが、大きな歓声を上げた。



 幼児さんだろうか。お母さんに手を繋がれた女の子がキラキラした目でへーちゃんを指差している。ナナというのは、僕らの仮装のテーマであるアニメ映画の主人公で、へーちゃんが明日演じるキャラの名前だ。



 「ナナ!! ね、こっち見てー!!」



 「どこの夢の国のキャストだよ」



 小さな女の子を見ながら近衛くんが笑う。彼は彼で雪だるまの衣装がなかなか奇抜で目立っている。



 へーちゃんはずっと止めなかった足を、女の子の前で止めた。そして彼女の方に顔を向け、優しく笑いかけて手を振る。



 「きゃー!!」



 女の子だけでなく、近くにいた若い女の人たちまで黄色い声を上げている。



 いや、わかる。まるで俳優さんだもん。



 でも、凄いのは美人だということではない。彼は本当にどこかの夢の国のキャストにでもなったつもりなのか、キレイに笑って見せたのだ。その笑みはあまりに自然で、その演技力の高さに思わず素顔を知っていてもドキリと胸が打たれる。



 へーちゃんは、完全にお姫様だった。



 「ナナー! 大好きー!! 写真とって!!」



 女の子がお母さんの手から放れ、へーちゃんに近寄っていく。お母さんは「こら」と困ったように娘を追ってきた。申し訳無さそうに小さくなっている。



 「あたし、ナナがプリンセスで一番好きなの!!」



 へーちゃんが作ったドレスに抱きつきながら、女の子は言う。お母さんはアワアワしながら女の子の手を掴む。



 「ご、ごめんなさい! ほら、行くわよ!」



 「やだぁ!! ナナと写真とる!!」



 「……」



 クラスメイトたちは、へーちゃんを追い越してもよかった。商店街のもう少し進んだ場所にアピールポイントがあり、そこでクラスが集まっていればいいので歩く順番なんか関係ないのだ。



 それでも、みんなわざわざ立ち止まってへーちゃんの動向を見ている。小さな女の子の可愛らしいお願いをどうするのだろうと心配している。



 「こら、いい加減にしなさい!」



 「お母さん、大丈夫ですよ」



 顔が赤くなり始めたお母さんに、へーちゃんは優しく笑いかけた。そして、女の子の目線に合わせるようにしゃがむ。せっかく汚れないように足首より上の長さにしたドレスの裾は、へーちゃんがしゃがむことで汚い地面に着いてしまった。



 「……ごめんね、僕、お姫様じゃないんだ」



 喋ってしまえば男性なことはわかってしまう。きっとへーちゃんが女性であればお姫様のフリでもしたのだろうが、残念ながらそれはできない。へーちゃんは、女の子の手をそっと握り、眉を八の字にした。



 「可愛いって言ってくれてありがとう」



 「ナナはお兄ちゃんなのー?」



 「本物のナナは女の子だけど、僕は男の子なんだ。ごめんね」



 「でもあたしはいいよ! だってお兄ちゃん、ナナそっくりだもん! 写真くーだーさい!」



 お姫様が男でも受け入れられたようで、女の子は人懐っこく笑う。へーちゃんはそんな彼女に笑いながら「いいよ」と答えた。



 小さな女の子には優しいへーちゃんは、優しい顔を崩すことなく女の子と写真を撮った。お母さんが何度も何度も頭を下げるなか、「大丈夫ですよ」と愛想よく笑う。その間に野次馬たちもシャッターチャンスを逃すまいとカシャカシャ写真を撮っていた。



 「双郷ってあーいう顔するのね」



 ボソリと榊さんが呟く。確かに、普段の口が悪くて仏頂面の彼からは想像がつかないかもしれない。



 でも、彼は元々は明るい人間だった。僕の知るへーちゃんのまま高校生になっていたら、多分クラスの中心にいるような陽キャになっていただろう。



 そう思うと、中学生からのへーちゃんは一体どんな生活をしていたのだろうと気になってしまう。彼を変えてしまったのは、何だったのだろう。それが単に時の流れのせいで、これがへーちゃんの思春期だというなら別にいいけど……でも、それで納得できない僕がいる。



 「さすが姫様ー! モテモテじゃーん!!」



 「姫ー、俺らにもシャッターチャンスくれよー」



 「茶化してんじゃねーよ」



 女の子がお母さんに連れられていなくなると、近衛くんと加山くんがへーちゃんの背中をバシバシ叩く。へーちゃんは2人には眉間にシワを寄せながら鬱陶しそうにため息をついた。



 程なくして、僕らは商店街に設けられたアピールポイントにたどり着く。簡易的な待機場所が設けられ、先生方が生徒たちに指示していた。商店街の人たちは各々スマホを片手にしながら学生たちの青春を見守っている。



 僕らも待機場所で立ちながら前のクラス……1年生最後のクラスのアピールを眺めることになる。1年3組のテーマは魔法使いらしく、みんながお揃いの魔女の服を着ていた。



 「優は去年何したんだ?」



 「え、」



 たまたま隣りにいたへーちゃんが、後輩たちから僕に視線を変えて尋ねる。声はよく知った彼なのに、何だか知らない女性に声を掛けられた気分で恥ずかしかった。



 「僕のクラスは……その、野菜がテーマだったよ。僕は、やってないけど……」



 「休んだんか?」



 「いや、その……衣装が、手違いで一人分足りなくて」



 「そっか」



 へーちゃんは小さく頷くとポケットから自分のスマホを取り出す。そして、カメラを僕に向けてきた。



 「僕を写す気なの!? 何で!?」



 「ご両親とか心春に見せてやれって」



 「いや恥ずかしいし!!」



 「俺が作った衣装が恥ずかしいのかよ。ふざけんな、傑作だわ!」



 「そーいう意味じゃないよ!!」 



 僕がブンブンと腕を振って拒否をするが、へーちゃんは意地悪っぽく笑って「いいからいいから」と写真を撮ってくる。でも、彼は気づいているのだろうか。僕たちは連絡先を知らないのだ……。



 「あ、俺お前のアカウント登録してなかったわ」



 「そ、そうだよ……気付いてなかったの?」



 「小せぇ頃から遊んでたから交換してる気になってた」



 へーちゃんはそう言って僕の方にスマホの画面を向けてくる。画面にはQRコードが表示されていた。



 メッセージアプリに家族のアカウントしかなかった僕は、読み込まれた双郷平和のアカウントに思わずガッツポーズをしそうになる。へーちゃんのアカウントのアイコンは黒猫だ。猫は変わらず好きなのだろう。



 「猫飼ったの?」



 「いや、向えの家の猫。ちゃんと許可もらって撮ったからな」



 「可愛いねぇ」



 「お前は自分で描いたんか?」



 僕のアイコンははまっているゲームのキャラクターだ。僕は絵が好きで、小学生の頃からずっと描いている。最近はネットにアップして、それが何気に人気が出てきているから唯一の誇りでもあった。



 「そうだよ。まだまだ下手だけどね」



 「いや、スゲェよ」



 へーちゃんはそう言って僅かに口元を弛める。そんな彼が、小学生の頃のへーちゃんに重なる。



 「俺、転校してきた日、お前に態度悪かったよな。ごめん」



 「え?」



 2年1組の番です。



 生徒会の人のアナウンスが聞こえると、クラスメイトたちはぞろぞろと移動した。へーちゃんもポケットのついた衣装の加山くんにスマホを預けてスタスタと進んでしまう。



 慌てて追いかけながら、へーちゃんがわざわざ声を掛けてきた理由を何となく察していた。真面目な彼だ、謝りたいと思っていたのだろう。転校初日から色んな人に声を掛けられて疲れていたのだろうから僕は気にしていなったのに……。



 五木くんが仮装パレード係の代表として、胸を張りながら大きな声で挨拶をする。僕はぼんやりとそれを聞きながら、へーちゃんを横目で見る。



 へーちゃんは商店街の人たちにキャーキャー言われてニコニコ笑っていた。手を振ってと言われれば手を振っているし、相変わらず有名人のようだ。



 この場での主役は間違いなくへーちゃんだ。



 あまりの彼の眩しさに、僕はすっかり見とれていた。




 なんて悠長に人のことを見ている場合ではなかった。



 アピールが終わり、後は高校に戻るだけなのだが帰りは地獄の登り坂だった。



 他のクラスメイトに抜かされ、僕はとぼとぼひとりで歩く。何度も汗を拭うけれど、結局は頬から垂れてくる。



 「大丈夫か」



 「あ、へーちゃん……」



 最後尾でフラフラしていると、ドレス姿のへーちゃんが待っていた。へーちゃんも相当暑いのだろう。顔は真っ赤だし、ウィッグの髪が汗で顔に貼り付いている。



 「近衛くんと加山くんは?」



 「先に行ってもらった。マジ暑いし、こんな汗かいたのに明日も着るとか最悪だわ。絶対臭ぇじゃん」



 部活をしていない女子よりも遅い僕の歩くペースに合わせながら、へーちゃんは「何で俺こんなん作ったんだろ」とブツブツ言っている。



 「へーちゃんは、前の学校の文化祭何したの?」



 「ロミオとシンデレラの劇。俺は裏方だったけど、当日にロミオ役の奴が他のクラスの飲食店全部回って腹壊して代理で出た」



 「当日に代理できちゃうんだ……」



 「ずっと練習は見てたからな」



 去年は王子様だったのか。さぞ似合ったのだろう。  



 「へーちゃんは凄いね」



 「あのな、……」



 僕の素直な称賛にへーちゃんは何故か眉を寄せる。でも、何かを言いかけてやめた。



 へーちゃんは褒められたり感謝を言われると、微妙な顔をする。多分、彼にとっては特別なことなんて何もしてないからなのだろう。彼が僕のような弱者を気にかけるのも、周りの人に手を貸すのも、彼にとっては当たり前でしかないのだ。



 僕にとってはそれが凄いのだけど……へーちゃんはしっくりこないらしい。



 「あのさ、へーちゃん」



 「ん?」



 水筒の水を飲み干してから、僕は隣を歩いてくれるへーちゃんを見る。赤い顔は疲れが見て取れるのに、それでも不思議なくらい彼の顔はキレイだと思う。



 見た目も、頭の出来も、運動能力も。恐らく人としての魅力も。全て僕よりも持ち合わせている彼が、僕にはただ眩しく見えた。



 「へーちゃんは、他人を良いなって思うことある?」



 こういうことを言う時点で、僕はきっと駄目な人間のかもしれない。



 でも、僕だってできることなら明るい世界で生きたかった。へーちゃんのように、人に囲まれてキラキラしたかった。



 へーちゃんは真面目だから、本気で答えを考えてくれている。僅かに首を傾ける様子は、幼くも見えた。



 「羨ましいと思うことは、まぁ、あるけど……。大抵頑張ればどうにかなるって思ってるから」  



 「まさかの根性論」



 「俺はスゲェから。だから、頑張れば何だってできるんだ」



 へーちゃんはいつだって、そうだった。



 彼は自分に努力を課す。やればできるはずだからと、どんなことにも一生懸命だった。



 だからきっと、彼はキラキラして見えるのだろう。



 いつの間にかクラスメイトたちの姿は見えず、僕らは取り残されてしまっていた。でも、それが嫌だとは思わなかった。隣に他人がいることが、へーちゃんがいることが、心強い。



 「優は自分を過小評価し過ぎなんじゃねぇの?」



 「そうかな……でも、僕、実際何もできないし」 

 

 「そんなことないだろ。学校だって毎日休まず来てるし、宿題も忘れねぇし。あと、絵、ずっと続けてるし上手いだろ。俺はあんな絵描けねぇよ」



 彼はズルいと思う。



 へーちゃんは、嘘を吐いたりしない。彼はいつも真摯に向き合ってくれるから、こんなうさん臭そうな褒め言葉もすぐに信じられる。



 当日まで、まさかぼっちではなく誰かと過ごせると思ってなかったから、僕は高鳴る鼓動を抑えられなかった。友だちと過ごせる学校行事って楽しい!!



 ずっと、いつだってへーちゃんは僕の味方になってくれる。



 彼にとって僕は友だちのカテゴリーの中のひとりに過ぎないけど、できればもう少し仲良くなりたい。



 それこそ、小学生のときのように笑い合いたい。



 その後は暑さと疲れで無言になりながら、僕らは何とか学校に辿り着いた。玄関では王子役の榊さんが仁王立ちしながら出迎えてくれた。



 「記念撮影するから教室に急ぎなさい!」



 「散々撮ってたじゃねぇか……」



 疲れ果てたへーちゃんが掠れた声を漏らす。それでも言われた通り、少し急ぎ足で教室に向かった。僕も慌てて彼らを追う。



 教室に向かうと、みんなの汗臭さと暑さに胸がムカムカする。いつも運動なんかしないのにあの炎天下を歩いてきたのだ。苦しくて当然だった。



 「優、大丈夫か?」  



 へーちゃんが僕に声を掛けてくれる。他の人たちは写真撮影に夢中で、和気あいあいと並び順を決めている。



 せめて……写真撮影だけでも頑張るんだ。



 「大、」 



 丈夫と続けようとして、気持ち悪さが限界を超える。



 僕の異変を察知したのか、へーちゃんが目を丸くする。



 「相沼くん、大丈夫かい?」



 限界突破した僕は、その場に座り込んで嘔吐していた。



 でも、その吐瀉物は床も僕の服にも殆ど垂れていない。へーちゃんが僕の前に手を伸ばし、キャッチしていたのだ。  



 「袋……なかったらバケツでいいや。用意してくれ」 



 「そうだな!」



 「私、先生呼んでくるわ」



 榊さんが先生を呼びに出て行き、五木くんが掃除用具用ロッカーからバケツを取り出す。へーちゃんは手に受け止めた吐瀉物をバケツに入れた。



 「ご、ごめん……へーちゃん……手」



 「大丈夫。俺こそ気付かなくて悪かった」



 いや、全然謝ることじゃないよ。



 「まだ吐きそうか?」



 「ううん……大丈夫そう……。五木くんもありがとう……」



 その後、榊さんが先生を呼んでくれて僕は先生に連れられて保健室へ向かった。結構、記念撮影には参加することはできなかった。



 少しベッドで休ませてもらった。目を閉じ、今日を振り返る。



 へーちゃんがいてよかった。それが、一番の感想だった。



 彼がいなければ準備にすら参加しなかっただろう。友だちの連絡先交換だって、へーちゃんがはじめてだ。そしてなにより、こんなに誰かと話しながら行事に参加できたのは彼が僕を気遣ってくれたからだ。



 良い思い出をなぞれば、具合はすぐによくなった。ホームルームの時間からかなり経っていたけど、まだ生徒がたくさん学校に残っていて明日のステージ発表の練習をしている。



 「あ、相沼くん。大丈夫?」



 保健室から出て教室に着くと、類沢さんがモジモジしながら声を掛けてくれた。彼女は明日の主役なので頑張って練習をしているのだろう。



 だが、教室内にはもう一人の主役であるへーちゃんはいない。



 「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。その、へーちゃんは帰ったの?」



 「うん。双郷くん、バイトがあるんだって」



 「え、これからバイトなの?」



 「そうみたい」



 ハードスケジュールなんだなぁ。



 へーちゃんだって疲れていただろうに、大丈夫だろうか。



 いや、彼は大丈夫なのだろう。大丈夫だと思ってなければそこにシフトを入れたりしないはずだ。 

 

 「相沼くんも今日はゆっくり休んでね」 



 「うん、ありがとう」



 お互いに人見知りなので、目を合わせられないまま会話を終える。僕はリュックを背負い、ひとりで帰路に立った。
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