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藤地陸人:2。
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3:多喜田友佑
力が望木くんと話をしてかれることになったので、僕はもう一人の重要人物である藤地くんの元へ向かった。
帰りのホームルームが終わると、僕は急いで廊下に出て先生に怒られない程度の早歩きで商業科のクラスへ行った。幸い一番後ろの席の藤地くんはちょうどリュックを背負うタイミングであり、まだ帰っていなかった。
「藤地くん!」
「げ」
僕が声をかけると、藤地くんは露骨に嫌そうに目を細める。こんなに嫌な顔をされることも殆どないので何だか悲しい気持ちになったが、それでも僕は怯まず彼の側に駆け寄った。
「どうしても聞きたいことがあるんだ! ちょっと時間作ってくれないかな?」
「これから用事あるから無理だし」
「歩きながらでいいんだ! 前見せた金髪の女の人のことで話しを聞きたいんだ」
「誰かの保護者でしょ? それしか知らないし」
取り付く間もなく、藤地くんがスタスタと歩きだす。本来ならここで諦めてもいいものだったが、それでも僕はヒナちゃんのことを知りたくて、彼の後ろ姿をすぐに追いかけた。
「お願い! 僕の大切な人に関わることなんだ!」
「僕には関係ないし」
「そうだけど……なんか、そう、何かおごるから! それならどうかな!?」
物で釣るなんて良くないとはわかっていたけどそれでも彼に踏み込みたくて、僕は無理矢理藤地くんの手首を掴む。藤地くんは僕に強引に動きを制限され、迷惑そうに唇を曲げた。
「しつこいし」
「関係ないかもしれないけど、もしかしたら関係あるかもしれないじゃないか!」
「は?」
「最近の殺人事件、被害者の二人は僕らの保育所の関係者だったんだよ? もしかしたら……僕らだって知らずに関わっているかもしれない。何より……ヒナちゃんが、関わっているかもしれないんだ」
「……ヒナちゃんって」
「ミーチューバーだよ。僕の推しで……あの金髪の女性にそっくりなんだ。僕は、彼が巻き込まれていないか心配なんだ」
「……」
「僕、今力と勝ちゃんとヒナちゃんが誰なのか探してるんだ。その為に君の話を聞きたくて」
「じゃあ、僕の疑問にも答えてよ」
「え?」
藤地くんはハァと大きくため息を吐くと、頭をかきながら冷たい目に僕を映した。
「何であの曽田って人と探してるの」
「え? それは僕が頼んだからで……」
「僕、朱梨ちゃんのお母さんに似た人が曽田の家に入るの見たし」
「……え?」
力の家に、ヒナちゃんが?
ここに来て急に頭が真っ白になる。何故藤地くんがそれを知っているのかもわからないし、本当だとして何故力の家にヒナちゃんが入っていくのだろうか。
藤地くんはポカンと間抜けに口を開けている僕を馬鹿にするように目を細めると、乱暴に彼を掴んでいた僕の手を振り払った。
「何で知ってるって顔してるけど……僕、実はヒナちゃんねるのファンだし。だから、君が僕らに抜け駆けしてヒナちゃんに会ってることも知ってるし」
「それって……ヒナちゃんのストーカーってこと?」
「違うし! そう言われると思ったから言いたくなかったんだし!!」
「わ、えっと、ごめん!」
目を真っ赤にして怒る藤地くんに僕はアワアワと頭を下げながら、思考を巡らせる。
藤地くんはストーカーをしていた。それを隠したくて黙っていた。それは怒り具合からも本当だと思う。
なら、彼の言うヒナちゃんが力の家に入ったというのは本当なのだろうか。
ということは……力は、ヒナちゃんが誰なのか知っている? それか、力こそがヒナちゃんということなのだろうか?
「ヒナちゃんの家が力の家ってこと?」
「知らないし。家に入るところは見るけど、いつも遅くまで粘っても出てこなくて帰るところは見たことがないし……」
完全にストーカーじゃないか。
だけど話してくれた以上責めることはできないだろう。ただ、ヒナちゃんには忠告しておいた方が良いかもしれない。
藤地くんは苛立ったように腕を組みながら落ち着きなく体をクネクネと動かす。
「てか、君こそファンとして抜け駆けして話しかけるって正気なの?」
「それは、ごめんなさい……」
「ひだまりで何回も会ってるでしょ」
「ご、ごめんなさい……」
「何話してたし」
「……」
何故ストーカーに責められてるんだろう。
僕は脱力しながら彼にヒナちゃんとの会話を伝えた。当然大した話はしていないのだけど、それでもファンとしては羨ましいのだろう。露骨に嫌な顔をして無言で全てを聞いていた。
「君も僕を見習って影から応援するし。マジでありえないし」
「う、うん……」
見習うわけにはいかないけど、確かにファンとして負い目があるのは事実なので僕は力なく頷く。それを見てやっと藤地くんは満足そうに笑った。
「ついでに僕にこれだけ話させたんだから曽田にヒナちゃんじゃないのか君から聞いてほしいし」
「それは、そうだね……」
「ちゃんと僕にも報告するし」
「う、うん……わかった」
ストーカーをしていて自分のことは棚に上げて藤地くんはウンウンと頷くとそのまま早歩きでいなくなってしまった。
僕は廊下に一人取り残されながらグルグル回る頭を整理する。
力はヒナちゃんを知っている。
それか力がヒナちゃん本人だ。
なら、どうして彼は自分から望木くんに話を聞きに行ったのか。
力が知りたいのはヒナちゃんのことでなく、朱梨ちゃんのことなのだろうか。
でも、どうして朱梨ちゃんを知りたいのか。
……悩んでいても仕方ない。
話が終わったら力と玄関で待ち合わせしているのだ。そこで話を聞けば良い。
僕は一人頷き、駆け足で階段を駆け下りた。
力が望木くんと話をしてかれることになったので、僕はもう一人の重要人物である藤地くんの元へ向かった。
帰りのホームルームが終わると、僕は急いで廊下に出て先生に怒られない程度の早歩きで商業科のクラスへ行った。幸い一番後ろの席の藤地くんはちょうどリュックを背負うタイミングであり、まだ帰っていなかった。
「藤地くん!」
「げ」
僕が声をかけると、藤地くんは露骨に嫌そうに目を細める。こんなに嫌な顔をされることも殆どないので何だか悲しい気持ちになったが、それでも僕は怯まず彼の側に駆け寄った。
「どうしても聞きたいことがあるんだ! ちょっと時間作ってくれないかな?」
「これから用事あるから無理だし」
「歩きながらでいいんだ! 前見せた金髪の女の人のことで話しを聞きたいんだ」
「誰かの保護者でしょ? それしか知らないし」
取り付く間もなく、藤地くんがスタスタと歩きだす。本来ならここで諦めてもいいものだったが、それでも僕はヒナちゃんのことを知りたくて、彼の後ろ姿をすぐに追いかけた。
「お願い! 僕の大切な人に関わることなんだ!」
「僕には関係ないし」
「そうだけど……なんか、そう、何かおごるから! それならどうかな!?」
物で釣るなんて良くないとはわかっていたけどそれでも彼に踏み込みたくて、僕は無理矢理藤地くんの手首を掴む。藤地くんは僕に強引に動きを制限され、迷惑そうに唇を曲げた。
「しつこいし」
「関係ないかもしれないけど、もしかしたら関係あるかもしれないじゃないか!」
「は?」
「最近の殺人事件、被害者の二人は僕らの保育所の関係者だったんだよ? もしかしたら……僕らだって知らずに関わっているかもしれない。何より……ヒナちゃんが、関わっているかもしれないんだ」
「……ヒナちゃんって」
「ミーチューバーだよ。僕の推しで……あの金髪の女性にそっくりなんだ。僕は、彼が巻き込まれていないか心配なんだ」
「……」
「僕、今力と勝ちゃんとヒナちゃんが誰なのか探してるんだ。その為に君の話を聞きたくて」
「じゃあ、僕の疑問にも答えてよ」
「え?」
藤地くんはハァと大きくため息を吐くと、頭をかきながら冷たい目に僕を映した。
「何であの曽田って人と探してるの」
「え? それは僕が頼んだからで……」
「僕、朱梨ちゃんのお母さんに似た人が曽田の家に入るの見たし」
「……え?」
力の家に、ヒナちゃんが?
ここに来て急に頭が真っ白になる。何故藤地くんがそれを知っているのかもわからないし、本当だとして何故力の家にヒナちゃんが入っていくのだろうか。
藤地くんはポカンと間抜けに口を開けている僕を馬鹿にするように目を細めると、乱暴に彼を掴んでいた僕の手を振り払った。
「何で知ってるって顔してるけど……僕、実はヒナちゃんねるのファンだし。だから、君が僕らに抜け駆けしてヒナちゃんに会ってることも知ってるし」
「それって……ヒナちゃんのストーカーってこと?」
「違うし! そう言われると思ったから言いたくなかったんだし!!」
「わ、えっと、ごめん!」
目を真っ赤にして怒る藤地くんに僕はアワアワと頭を下げながら、思考を巡らせる。
藤地くんはストーカーをしていた。それを隠したくて黙っていた。それは怒り具合からも本当だと思う。
なら、彼の言うヒナちゃんが力の家に入ったというのは本当なのだろうか。
ということは……力は、ヒナちゃんが誰なのか知っている? それか、力こそがヒナちゃんということなのだろうか?
「ヒナちゃんの家が力の家ってこと?」
「知らないし。家に入るところは見るけど、いつも遅くまで粘っても出てこなくて帰るところは見たことがないし……」
完全にストーカーじゃないか。
だけど話してくれた以上責めることはできないだろう。ただ、ヒナちゃんには忠告しておいた方が良いかもしれない。
藤地くんは苛立ったように腕を組みながら落ち着きなく体をクネクネと動かす。
「てか、君こそファンとして抜け駆けして話しかけるって正気なの?」
「それは、ごめんなさい……」
「ひだまりで何回も会ってるでしょ」
「ご、ごめんなさい……」
「何話してたし」
「……」
何故ストーカーに責められてるんだろう。
僕は脱力しながら彼にヒナちゃんとの会話を伝えた。当然大した話はしていないのだけど、それでもファンとしては羨ましいのだろう。露骨に嫌な顔をして無言で全てを聞いていた。
「君も僕を見習って影から応援するし。マジでありえないし」
「う、うん……」
見習うわけにはいかないけど、確かにファンとして負い目があるのは事実なので僕は力なく頷く。それを見てやっと藤地くんは満足そうに笑った。
「ついでに僕にこれだけ話させたんだから曽田にヒナちゃんじゃないのか君から聞いてほしいし」
「それは、そうだね……」
「ちゃんと僕にも報告するし」
「う、うん……わかった」
ストーカーをしていて自分のことは棚に上げて藤地くんはウンウンと頷くとそのまま早歩きでいなくなってしまった。
僕は廊下に一人取り残されながらグルグル回る頭を整理する。
力はヒナちゃんを知っている。
それか力がヒナちゃん本人だ。
なら、どうして彼は自分から望木くんに話を聞きに行ったのか。
力が知りたいのはヒナちゃんのことでなく、朱梨ちゃんのことなのだろうか。
でも、どうして朱梨ちゃんを知りたいのか。
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