魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

文字の大きさ
3 / 84
ボーイ(28)・ミーツ・ボーイ(17)

俺は嫌われてない

 フォンス・フィダンツィア・エアステ。現在28歳。
 英雄の末裔として、周囲から求められるままに戦い続ける事約20年、正直俺は行き詰まっていた。

 災害指定されるレベルの古代種は倒し切り、永きに渡り社会の影に根を広げていた巨悪組織の幾つかを根絶した今、人々を悩ませるのは精々国単位の権力闘争や貧困等の社会問題。
 個人の武力では解決することのできない種類のものに移り変わった。

 つまり腕っ節が強いだけの俺が必要とされる事態は目下見当たらず。魔獣は絶滅した訳ではないが、現在生存しているのは全て現地の戦力で討伐可能。

 これからの時代、人の敵は人。
 この先人類が一丸となるような分かりやすい敵はなく、競争社会の中で人同士が己の利益を求めて争い合うことになるだろう。

 新しい世界にとって、英雄の存在は危険だ。
 取扱注意程度で済めば良いが、人間の枠からあからさまに外れた存在を容認し続ける程世間は優しくない。
 この世界で比類するものが無いレベルの武力が、一人の意志を持った人間として存在しているのだから。

 世界の新たな脅威として、何がきっかけで討伐命令が下されるかわからない。
 昨日まで笑顔で挨拶していた同僚が、次の日には大義名分掲げて剣を抜くとも限らない。
 権力者がその気になれば、いくらでも罪の一つや二つ捏造できる。
 そうなれば今まで一緒に戦ってきた者達は、内心がどうであれ従うだろう。
 彼らの人間性を卑下しているわけではない。俺と親交が深いほど、俺の能力を理解しているやつほど、俺に対して脅威を感じているはずだからだ。

 きっと彼らは正義の為に、俺を討つ。

 =========

 どうやって穏やかに引退するか、ついでに最近勢いを増した婚活のプレッシャーから逃げるか。
 これが今の俺の悩みだ。

 子供の頃から国の方針に従い、ある程度成長してからは各国からの要望で世界中を飛び回っては剣を振るってきたのだ。
 世のため人のため、本当は生活のためだけど散々働いてきた。
 平和になったら未来に備えて次代作れとか、俺たちの安心の為に死ねとか冗談じゃない。
 残りの人生は誰に命令されることもなく、金や人間関係に頭を悩ますことなく、悠々自適に生活したい。

 英雄の末裔というのは比喩ではなく、家系図にしっかり記されているリアルな話だ。
 エアステ家は、国際社会で中堅に位置する島国の中流貴族である。
 周辺諸国にも英雄の家系と認識されており、代々騎士の輩出を求められてきたので知名度は高いが社交や領地経営は最低限。
 寧ろ下手に権力を持ったり、経済力を身につけては御し難くなると周囲によって勢力をコントロールされてきた。
 嫌な言い方をすると、貴重種として保護もしくは、飼い殺しにされてきたのだ。

 幼い頃に両親を亡くした俺は、以降国に囲われて生きてきた。
 騎士になったのは、国に生かされていた身では職業選択の自由がなかったからだ。
 自由がなかったのは職業だけじゃない。
 思想の偏りを持たせない、英雄を堕落させない等々、様々な思惑で配慮されまくった俺の職場環境は至ってクリーンで味気ない。

 職場以外の人間関係?

 一つ仕事が終われば、次の仕事のため移動の繰り返し。一ヶ所に長期滞在することなく任務中は基本野営。
 長年付き合いがあるプライベートな存在なんて、実家の使用人と数人の幼馴染くらい。
 そんな幼馴染も結局は俺の従者として働いているんだから、プライベート要素は半分しかない。

 生まれてこのかた恋人どころか、政略結婚のけの字もなかった。
 下手に異性を紹介すると、俺の交友関係に敏感なお偉いさん達を刺激することになるから皆遠慮したんだと思いたい。
 飲み会に誘われたことがないのも、オフに娼館に誘われたことがないのも、俺がワクで、スキルの問題で性的欲求がないからだと信じてる。
 遠巻きにされていた気がしないでもないけど、世間話はできていたし嫌われては無いはず。ダメだ、だんだん自信無くなってきた。

 つまり俺にとって結婚と言うクエストは、世界三大魔獣をソロ狩りするよりも難題なのだ。

 出会いがないは言い訳にならない。
 認めよう、俺はモテない。
 勿論童貞。
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

引きこもり魔法使いが魔法に失敗したら、ヤンデレ補佐官が釣れた。

零壱
BL
──魔法に失敗したら、脳内お花畑になりました。 問題や事件は何も起こらない。 だが、それがいい。 可愛いは正義、可愛いは癒し。 幼児化する主人公、振り回されるヤンデレ。 お師匠やお師匠の補佐官も巻き込み、時には罪のない?第三者も巻き込み、主人公の世界だけ薔薇色・平和が保たれる。 ラブコメです。 なんも考えず勢いで読んでください。 表題作、2話、3話、5話、6話再掲です。 4話(噂の王子視点)と、師匠×トーリの馴れ初め番外編は同人誌に掲載(シリアスなので) 他サイトにも再掲しています。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。