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ボーイ(28)・ミーツ・ボーイ(17)
地獄のフォンスくん家
俺の生まれた家は、英雄の末裔として現存する唯一の家系だ。
何故断言できるかと言えば、我が家は代々<英雄>と呼ばれる称号が自動的に継承されるからだ。
あと聖剣も受け継いでいる。
無数に枝分かれした血族としての子孫はきっとこの世に大勢いるのだろうが、エアステ家を英雄の末裔たらしめているのは、ひとえにこの称号の存在だ。
生存するエアステ家の人間の中で、常に一人だけが受け継ぐ称号の今の持ち主は俺。
5歳の時に継承した。
特に何か事件があったわけではなく、特殊な儀式を行ったわけでもない。
いつも通りの日常を送っていたら、予兆なしに加護は俺のものになった。
加護が俺に移ったその日、先代の加護持ちだった祖父が死んだ。
祖父は蛮族の討伐任務中だった。
殿を務めていた祖父は突如称号を失い、その瞬間加護によって底上げされていたステータスが大幅に低下。
付近の味方は英雄の不調に気づかず、彼は敵の槍に貫かれ落馬した。
誰も悪くない。敢えて言うならタイミングが悪かった。あるいは神の采配か。
祖父の遺品を持ってきた同僚は、涙ながらに祖母に謝罪していた。
しかし彼らから英雄を奪う一因となった子供を見る瞳には隠し切れない恨みが滲んでいた。
祖母は愛する夫の死と、その切欠が孫であることに憔悴して実家へ戻った。
見送りの際、表面上は俺を気遣う言葉を掛けてくれたが、最後まで彼女が俺を見ることはなかった。
以来祖母とは今日に渡るまで疎遠な状態。
距離を置いたのは、お互い傷つけることのないよう、彼女なりの精一杯だったのだと思うことにしている。
母は俺を産んだ時に亡くなっている。
今も大差ないかもしれないが、当時の医療では出産は命懸けなのだ。初産だったので、俺は一人っ子。
祖母が家を出て行った数日後、父は自殺した。
俺が称号を継承したことで、彼が英雄の座を継ぐ可能性は無くなった。
<英雄>に限らず、称号は基本年長者から若年者へ受け継がれるもので、その逆は古今東西一度も報告されていない。
俺が死んで、他に血族がいない場合は万が一ということもあるが、元々彼は自分が加護持ちになる事を望んでいたわけではない。
自分の代で家系が絶えるのを危惧していただけなので、彼の最後は失意の死ではない。
次代への加護の継承を見届けたことで、父はずっと抱えていた死の誘惑に抗うことを止めたのだ。
父は母を亡くしてから、義務感だけで生きていた。
気鬱を抱えながらの子育て、そこに父親の突然の死と長年の重責からの解放。
子供に対してどの程度の情があったのかは定かではないが、記憶にある限り父との思い出は淡々としたやり取りしかない。
遊んでもらった思い出も、笑いかけられた覚えも、叱られた事もない。
いつも通りの夜を過ごし、翌朝彼はドアノブにかけたタオルで首を吊った。
第一発見者は俺。
遺言書はなかった。彼は俺に何も残してくれなかった。
現在生存している親戚は父方の祖母のみ。
国から管理されていたはずなのに何故、と思うかもしれない。
国からの管理が厳しくなったのは、俺の代からだ。ある程度自由を認めていた結果、監督能力不足を問われる事態に発展したからだ。
祖父の代に英雄の血筋を増やそうと躍起になり、父の代で御家騒動が勃発。
兎に角産めや増やせやで、祖父の代は妾を囲う事が推奨された。
正妻が率先して妾を選び、子供の数がステータスになるという異常事態。
結果人間関係が複雑化し、人の数が増えたことで一家門の中で幾つもの派閥ができ、熾烈な権力争いに発展。
身内同士で潰しあい、最後に残ったのが騎士としては才能が無く当主レースにエントリーされないどころか存在を忘れられていた俺の父。
実家とは距離を置き、地方で細々と生活していた男は、幸か不幸か嵐に巻き込まれることなく生き残ってしまった。
母が亡くなった後、子供が俺一人では不安だと父は周囲から何度も再婚を勧められたが、心身ともに疲れ切っていた父は親世代の失敗を挙げて新しい妻を娶ることはなかった。
母方の親戚は存在しているが、絶縁状態。
子供を愛する親なら、殺し合いに発展するほど親族争いが過激な家に娘を嫁がせようとは思わない。
昔から仕えている使用人の話によると母は豪胆な人で、両親の静止を振り切って及び腰の父を押し切って結婚したらしい。ほとんど押しかけ女房状態だったとか。
周囲の反対を跳ね除けて恋愛婚しただけに、母親側の親戚にとって我が家は俺自身含め関わりたい相手ではない。
母の友人達も、彼女の死と共に疎遠になった。
母が亡くなるまでは、何だかんだと若い二人を応援してくれるお節介たちがいたらしい。
俺が成人した今も、母方の親族とは社交の場で目が合えば会釈する程度なので距離感は顔見知りと同等。
俺は従兄弟の名前どころか、従兄弟が何人いるのかも知らない。
父は物静かで、社交的とは言い難い性格だったため、元々交友関係は狭かった。
彼の死因は公表していないが、推察は容易。
残された子供に手を差し伸べてくれるような酔狂な大人は現れなかった。
何故断言できるかと言えば、我が家は代々<英雄>と呼ばれる称号が自動的に継承されるからだ。
あと聖剣も受け継いでいる。
無数に枝分かれした血族としての子孫はきっとこの世に大勢いるのだろうが、エアステ家を英雄の末裔たらしめているのは、ひとえにこの称号の存在だ。
生存するエアステ家の人間の中で、常に一人だけが受け継ぐ称号の今の持ち主は俺。
5歳の時に継承した。
特に何か事件があったわけではなく、特殊な儀式を行ったわけでもない。
いつも通りの日常を送っていたら、予兆なしに加護は俺のものになった。
加護が俺に移ったその日、先代の加護持ちだった祖父が死んだ。
祖父は蛮族の討伐任務中だった。
殿を務めていた祖父は突如称号を失い、その瞬間加護によって底上げされていたステータスが大幅に低下。
付近の味方は英雄の不調に気づかず、彼は敵の槍に貫かれ落馬した。
誰も悪くない。敢えて言うならタイミングが悪かった。あるいは神の采配か。
祖父の遺品を持ってきた同僚は、涙ながらに祖母に謝罪していた。
しかし彼らから英雄を奪う一因となった子供を見る瞳には隠し切れない恨みが滲んでいた。
祖母は愛する夫の死と、その切欠が孫であることに憔悴して実家へ戻った。
見送りの際、表面上は俺を気遣う言葉を掛けてくれたが、最後まで彼女が俺を見ることはなかった。
以来祖母とは今日に渡るまで疎遠な状態。
距離を置いたのは、お互い傷つけることのないよう、彼女なりの精一杯だったのだと思うことにしている。
母は俺を産んだ時に亡くなっている。
今も大差ないかもしれないが、当時の医療では出産は命懸けなのだ。初産だったので、俺は一人っ子。
祖母が家を出て行った数日後、父は自殺した。
俺が称号を継承したことで、彼が英雄の座を継ぐ可能性は無くなった。
<英雄>に限らず、称号は基本年長者から若年者へ受け継がれるもので、その逆は古今東西一度も報告されていない。
俺が死んで、他に血族がいない場合は万が一ということもあるが、元々彼は自分が加護持ちになる事を望んでいたわけではない。
自分の代で家系が絶えるのを危惧していただけなので、彼の最後は失意の死ではない。
次代への加護の継承を見届けたことで、父はずっと抱えていた死の誘惑に抗うことを止めたのだ。
父は母を亡くしてから、義務感だけで生きていた。
気鬱を抱えながらの子育て、そこに父親の突然の死と長年の重責からの解放。
子供に対してどの程度の情があったのかは定かではないが、記憶にある限り父との思い出は淡々としたやり取りしかない。
遊んでもらった思い出も、笑いかけられた覚えも、叱られた事もない。
いつも通りの夜を過ごし、翌朝彼はドアノブにかけたタオルで首を吊った。
第一発見者は俺。
遺言書はなかった。彼は俺に何も残してくれなかった。
現在生存している親戚は父方の祖母のみ。
国から管理されていたはずなのに何故、と思うかもしれない。
国からの管理が厳しくなったのは、俺の代からだ。ある程度自由を認めていた結果、監督能力不足を問われる事態に発展したからだ。
祖父の代に英雄の血筋を増やそうと躍起になり、父の代で御家騒動が勃発。
兎に角産めや増やせやで、祖父の代は妾を囲う事が推奨された。
正妻が率先して妾を選び、子供の数がステータスになるという異常事態。
結果人間関係が複雑化し、人の数が増えたことで一家門の中で幾つもの派閥ができ、熾烈な権力争いに発展。
身内同士で潰しあい、最後に残ったのが騎士としては才能が無く当主レースにエントリーされないどころか存在を忘れられていた俺の父。
実家とは距離を置き、地方で細々と生活していた男は、幸か不幸か嵐に巻き込まれることなく生き残ってしまった。
母が亡くなった後、子供が俺一人では不安だと父は周囲から何度も再婚を勧められたが、心身ともに疲れ切っていた父は親世代の失敗を挙げて新しい妻を娶ることはなかった。
母方の親戚は存在しているが、絶縁状態。
子供を愛する親なら、殺し合いに発展するほど親族争いが過激な家に娘を嫁がせようとは思わない。
昔から仕えている使用人の話によると母は豪胆な人で、両親の静止を振り切って及び腰の父を押し切って結婚したらしい。ほとんど押しかけ女房状態だったとか。
周囲の反対を跳ね除けて恋愛婚しただけに、母親側の親戚にとって我が家は俺自身含め関わりたい相手ではない。
母の友人達も、彼女の死と共に疎遠になった。
母が亡くなるまでは、何だかんだと若い二人を応援してくれるお節介たちがいたらしい。
俺が成人した今も、母方の親族とは社交の場で目が合えば会釈する程度なので距離感は顔見知りと同等。
俺は従兄弟の名前どころか、従兄弟が何人いるのかも知らない。
父は物静かで、社交的とは言い難い性格だったため、元々交友関係は狭かった。
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残された子供に手を差し伸べてくれるような酔狂な大人は現れなかった。
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