魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

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ボーイ(28)・ミーツ・ボーイ(17)

ビニール傘…間違えた、聖剣だ

 話がまとまったため、自称神には一旦お帰りいただいた。

 異世界に顕現するのは力の消耗が激しいらしい。

 3時間後にまた来るらしいので、急いで引っ越し準備に取り掛かる。


 突然だが俺は移動時の荷物は極力減らしたい派だ。
 外出時は手ぶらが理想。

 先ほど記録更新したスキルの中でも、特に愛用しているのが異空間への収納。
 スキル名はまんま<収納空間>だ。

 俺はこの<収納空間>さんと共に生きてきたといっても過言ではない。
 俺にとって<収納空間>さんは単なるスキルではない。
 心の友だ。友人なのでさん付けする。
 俺と共に成長し、容量を増やし多機能になった<収納空間>さんは究極のパートナー。

 食料だけでなく新生活に必要そうなもは全部収納していく。
 はいそこ、夜逃げとか言わない。
 使わないかもしれないけど買い直すとなると金がかかるので大型家具も持っていこう。
 当面の着替えも、雑貨も必要。

 いつか読もうと思って死蔵していた本から、コーヒーミルまで大小様々なものを突っ込んだが、我が家に代々伝わる聖剣は置いていくことにした。


 俺の持つ聖剣は、神代に世界の守り人の証として、湖の乙女から託されたとかいう出所不明の伝説がある。

 返上済みのエアステ家の領地に湖はない。
 伝説の湖を埋め立てるなんて事はしないはずなので、聖剣は他所から持ち込まれたのだろうが、そんな伝説の残る湖俺は知らない。
 知っていたら、どんな手を使ってもその土地の領主に聖剣を押し付けてる。

 聖剣は長年エアステ家にあるが、決して個人の所持品ではない。

 道具として現役な文化財なのだ。

 =========

 ぶっちゃけると俺は聖剣が嫌いだ。

 正確に言えば、帯剣しなければいけないのが嫌だった。
 聖剣はわかりやすい英雄の象徴でもあったので、人目につく場所では帯剣が求められた。これがストレス。
 鞘を腰に下げないと、体の重心がズレている気がして落ち着かないという剣豪もいるが、俺はそういうタイプではない。
 余計なものは持ちたくない。
 常に身軽でいたい。

 そもそも剣に思い入れがない。
 攻守考えた時に便利というか無難な武具だとは思う。
 武器であれば基本的に何でも使いこなせるので、実は武器種にこだわりはない。
 寧ろ素手でもある程度いける。

 単独任務であれば適宜状況に応じた武器を使い分けるが、誰かと組むとなると聖剣の使用が暗黙の了解になる。
 これを無視すると「聖剣の使い手でありながら飛び道具を使うとは何事か!」と後で文句を言われる。
 他国に遠征した際、実際言われた。
 命懸けの実戦で縛りプレイ強いられるとか辛すぎだろ。

 最近は自分の魔力を固めて、ライトなセーバーみたいに使うのが楽だと思ってる。
 伸縮自在だし、軽いし、出すのも消すのも一瞬。
 魔力枯渇したら武器も消えるけど、そもそも枯渇するような事態って死亡確定状態なのでそうなったら潔く散る所存。

 そんな俺にとって聖剣というのは、晴れた日の傘も同然。
 これを毎日持ち歩くことを強いられているんだ、普通に嫌だろ。しかも折り畳めないんだぜ。
 ビニール傘をコンビニに忘れたフリして置き去りにするが如く、この世界に置いていこうと思う。


 あと騎士服も置いていこう。

 年頃の少年少女が制服の着用を嫌うように、三十路近い俺は我が国の隊服が嫌いだ。

 我が国指定の騎士の制服は2種類ある。

 1つ目は、白ベースの式典用。
 マジで真っ白、異世界の結婚式に着ていったら顰蹙必須。
 汚れが目立つので着用時は気が気じゃない。

 式典の日の天候は本当に死活問題なので、毎回晴れるよう祈っていたら<晴れ男>のスキルを取得した。
 非常にダサい名前だが、仲間には感謝されている。
 俺が出席する時は、みんな裾が汚れるのを気にせずに済むので、できる限り出席できるよう上司がスケジュール調節している。

 金具部分を除いて、外側は全部真っ白なのに、マントの裏だけ真っ赤なのがイラッとする。
 気を遣うのそこじゃ無ぇよ。


 2つ目は、黒ベースの戦闘服。
 基本はこれを着用する。

 何故かシルバーのワンポイントが所々に入っているせいで、夜間の戦闘時はチラチラ月光反射する。反射板かよ。
 同士討ちを避けられるが、勿論敵にもバレる。
 狩猟本能誘発するのか、獣に至っては積極的に襲い掛かってくる。

 昼間は街中でも、自然の中でも黒すぎて浮くし、何より黒のロングコートなんて不審者感が凄い。
 国に認められた正義の騎士のはずなのに、犯罪者臭がする。
 汚れ隠せることしかメリットなかった。


 俺の容姿は普通。

 髪の毛は茶色、瞳の色は赤みのある茶色。
 癖っ毛なので、短髪にすると制御不能になるし、長髪は絡まる。
 髪自体の重みがある程度必要なので、長年髪型を変えていない。
 気がついたら幼馴染達が俺の私服から髪型までプロデュースするようになっていた。
 こだわりはないので好きにさせている。皆、暇…いや、気を遣ってくれて優しいな。

 華やかさとは無縁の茶色系男子。
 食べ物で例えるなら筑前煮。
 もっと洒落た感じにするならビーフシチュー。

 金髪碧眼の幼馴染ならまだしも、俺の容姿だと白服は浮くし、黒服は埋没する。
 どちらも純粋に使い所ないので、借りパクはしない。
 聖剣の隣に置いておけば、まとめて国に返却してくれるだろう。

 我が家に住み込みの使用人はいないが、朝になれば通いの何人かが出勤する。
 誰かしら俺の部屋に入るはずなので、デスクの上に辞職願と彼等の紹介状を置いておく。
 幼馴染達にもそれぞれ手紙を書いた。
 これなら自発的な失踪だと認識されるはず。

 だから夜逃げじゃないよ。
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