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BLカテで乙女ゲーとか誰得
お前の罪を数えろ!
城に戻ったシューラは「気がついたら森にいた。立ち往生していたところをリリーに助けられた」と嘯いた。
見知らぬ世界で心細い思いをする聖女様の心の拠り所として、女傭兵リリーは専属護衛として雇われることになった。
城の連中は、何処の馬の骨とも知らない俺を大事な聖女様の側に置くことに抵抗を示したが、その聖女様直々のご指名となれば無下にできなかったのだ。
せめて代替案となる女騎士を国が用意していたら話は違ったのだろうが、ハニトラする気満々だった連中が用意した護衛は全員男。顔面偏差値高めのホスト集団。
いくらイケメンでも、周囲が男だけって普通にストレスだと思うんだが。
=========
「本当にこれ、もらっちゃって良いの?」
スカートの裾に触れながらシューラは遠慮がちに問うた。
「問題ない。…彼女がその服を着ることはもう無いからな」
彼女が身を包むのは、「裕福な商家の娘スタイル」のブラウスとスカートのセット。俺がうっかり預ったまま持ってきてしまったアデュートルの私服だ。
入城したシューラを待ち構えていたのは、侍女軍団によるおもてなしという名の身支度だった。
中世ヨーロッパ基準の世界で、彼女の膝丈ワンピースは目に毒だ。
連中はシューラに聖女として相応しい着替えを多数用意したのだが、彼女はその尽くを拒否した。
コルセットとクリノリン必須のドレスも、聖女をイメージしたヒラヒラ装束も「動きにくい」「趣味じゃない!」「コスプレみたいで嫌!!」と、シューラは受け付けなかった。
最後の台詞は、似たようなデザインの服に馴染み深い俺に刺さった。
魔界初日の黒歴史が俺を襲う。うっ、頭が。
仕方がないので、俺は<収納空間>からアデュートルの私服を引っ張り出してシューラにあげた。
アデュートルはシンプル主義で動きやすさ重視だったので、彼女の服ならこの世界にマッチしつつもシューラのお眼鏡に適うだろう。
聖女が平民服を着用することに侍女達は不満げだったが、これ以上の譲歩は無理だと悟ったのだろう。その日の夜には、やや格調を上げた「田舎でバカンスを楽しむ貴族の子女スタイル」のワンピースで部屋のクローゼットが一杯になった。
「……その人とはどんな関係だったの?」
「幼馴染で、子供の頃から俺の従者をしてくれていた」
「そう。…どんな人?」
「しっかりしていて、面倒見が良かったな。有能で、実力に裏打ちされた矜持があった」
面倒見が良いと表現したが、正直過干渉の域に達していた。
特にここ数年は酷かった。
鎧着ているわけでも無いのに着替えを手伝おうとしたり、俺が風呂に入っていると体を洗おうと乱入してきたり、休みの日でも朝起こしに来たり……アイツ、俺の事自分の子供だと思ってるんじゃないか?
2歳年下のアデュートルは、彼方の世界では行き遅れと称される年齢だ。同世代の女性達は、とっくに結婚して子供を儲けている。
俺の世話をやくのは一種の代償行為なのか。
俺だって、彼女が婚期を逃すのを黙って見ていた訳ではない。
彼女が結婚適齢期になってからは、従者を辞めて所帯を持つように何度も勧めた。しかしその度に「貴方の側にいられないなら、そんな人生要らない」とか「一緒に居られるならどんな形でも構わない」と泣かれてしまうのだ。
器量良し、甲斐甲斐しい性格、大抵のことはスマートにこなせる器用さ、高い知性。彼女のスペックならば、その気になればいつでも結婚できたはずなのに。
………………あれ?
俺はとんでも無い事に気づいた。
これってあれじゃん。
独身を追い詰める、悪意なき結婚圧力じゃないか。
俺は自分がされて嫌なことを、彼女にしていたのか!
何て事だ。仕事とはいえ長年尽くしてもらっておきながら、ソロハラするなんてとんだ最低野郎だ。そりゃアデュートルだって泣いて抗議するさ。
「彼女に俺は取り返しのつかない事をした。死んでも償いきれない罪だ……」
マリハラ、ソロハラする連中は、責任持って良い人紹介しろと思う。俺はしてなかった。即ち有罪。
犯してしまった罪の大きさに俺は項垂れた。
重い空気に耐えられなかったのか、シューラは「事情はわからないけど、自分を責め過ぎないで」と慰めてきた。
=========
着替えを終えたシューラのもとに、浄化の旅の同行者たちがご機嫌伺いに訪れた。
彼女の旅の仲間は5人。
第二王子アインス、宰相の息子ツヴァイ、公爵の息子トロイス、魔術師長の息子フィーア、騎士団長の息子コンク。
アインスは同級生枠。典型的な王子様キャラ。ダークブロンドにラピスラズリのような瞳の持ち主。王道過ぎて特に個性はない。
ツヴァイとトロイスは先輩枠。何方も銀髪なのだが、親戚ではない。
神経質そうなツヴァイに比べ、トロイスは長身で柔和なタイプなので何とかキャラ被りは避けている。
ツヴァイはアメジストのような薄紫の瞳なのだが、トロイスは不明だ。
何故かと言うと、彼は幼い頃に事故で目を傷つけてしまい瞳を閉じた状態で生活しているのだ。装着したモノクル型の魔道具で視覚情報を直に脳に送っているので、健常者と変わりない生活を送れるのだとか。
フィーアはショタ枠だ。髪も瞳もダークブラウン。生意気なクソガキで、俺の事をジロジロ見た後「顔は悪くないけど、デカ過ぎて無理。あと地味。聖女様に気に入られてるからって、調子に乗らないでよね」と喧嘩売ってきた。
俺もお前も色味で言ったら同じ筑前煮だからな。俺が人参、薩摩揚げ担当で、お前は椎茸だ。
最年長のコンクは大人枠。赤銅色の長髪と、サマーグリーンの瞳。異国の血が入っているのか、メンバーの中では唯一褐色の肌の持ち主。今回のお役目に乗り気でないのか、自己紹介以外でシューラに話しかけることはなかった。
まるで乙女ゲームの攻略対象者のような連中だ。
事あるごとに「5」が出てくるけど、この国では縁起の良い数字なのか。
これがゲームなら、タイトルにも反映されていそうだ。
俺、乙女ゲーやったことないけど。
見知らぬ世界で心細い思いをする聖女様の心の拠り所として、女傭兵リリーは専属護衛として雇われることになった。
城の連中は、何処の馬の骨とも知らない俺を大事な聖女様の側に置くことに抵抗を示したが、その聖女様直々のご指名となれば無下にできなかったのだ。
せめて代替案となる女騎士を国が用意していたら話は違ったのだろうが、ハニトラする気満々だった連中が用意した護衛は全員男。顔面偏差値高めのホスト集団。
いくらイケメンでも、周囲が男だけって普通にストレスだと思うんだが。
=========
「本当にこれ、もらっちゃって良いの?」
スカートの裾に触れながらシューラは遠慮がちに問うた。
「問題ない。…彼女がその服を着ることはもう無いからな」
彼女が身を包むのは、「裕福な商家の娘スタイル」のブラウスとスカートのセット。俺がうっかり預ったまま持ってきてしまったアデュートルの私服だ。
入城したシューラを待ち構えていたのは、侍女軍団によるおもてなしという名の身支度だった。
中世ヨーロッパ基準の世界で、彼女の膝丈ワンピースは目に毒だ。
連中はシューラに聖女として相応しい着替えを多数用意したのだが、彼女はその尽くを拒否した。
コルセットとクリノリン必須のドレスも、聖女をイメージしたヒラヒラ装束も「動きにくい」「趣味じゃない!」「コスプレみたいで嫌!!」と、シューラは受け付けなかった。
最後の台詞は、似たようなデザインの服に馴染み深い俺に刺さった。
魔界初日の黒歴史が俺を襲う。うっ、頭が。
仕方がないので、俺は<収納空間>からアデュートルの私服を引っ張り出してシューラにあげた。
アデュートルはシンプル主義で動きやすさ重視だったので、彼女の服ならこの世界にマッチしつつもシューラのお眼鏡に適うだろう。
聖女が平民服を着用することに侍女達は不満げだったが、これ以上の譲歩は無理だと悟ったのだろう。その日の夜には、やや格調を上げた「田舎でバカンスを楽しむ貴族の子女スタイル」のワンピースで部屋のクローゼットが一杯になった。
「……その人とはどんな関係だったの?」
「幼馴染で、子供の頃から俺の従者をしてくれていた」
「そう。…どんな人?」
「しっかりしていて、面倒見が良かったな。有能で、実力に裏打ちされた矜持があった」
面倒見が良いと表現したが、正直過干渉の域に達していた。
特にここ数年は酷かった。
鎧着ているわけでも無いのに着替えを手伝おうとしたり、俺が風呂に入っていると体を洗おうと乱入してきたり、休みの日でも朝起こしに来たり……アイツ、俺の事自分の子供だと思ってるんじゃないか?
2歳年下のアデュートルは、彼方の世界では行き遅れと称される年齢だ。同世代の女性達は、とっくに結婚して子供を儲けている。
俺の世話をやくのは一種の代償行為なのか。
俺だって、彼女が婚期を逃すのを黙って見ていた訳ではない。
彼女が結婚適齢期になってからは、従者を辞めて所帯を持つように何度も勧めた。しかしその度に「貴方の側にいられないなら、そんな人生要らない」とか「一緒に居られるならどんな形でも構わない」と泣かれてしまうのだ。
器量良し、甲斐甲斐しい性格、大抵のことはスマートにこなせる器用さ、高い知性。彼女のスペックならば、その気になればいつでも結婚できたはずなのに。
………………あれ?
俺はとんでも無い事に気づいた。
これってあれじゃん。
独身を追い詰める、悪意なき結婚圧力じゃないか。
俺は自分がされて嫌なことを、彼女にしていたのか!
何て事だ。仕事とはいえ長年尽くしてもらっておきながら、ソロハラするなんてとんだ最低野郎だ。そりゃアデュートルだって泣いて抗議するさ。
「彼女に俺は取り返しのつかない事をした。死んでも償いきれない罪だ……」
マリハラ、ソロハラする連中は、責任持って良い人紹介しろと思う。俺はしてなかった。即ち有罪。
犯してしまった罪の大きさに俺は項垂れた。
重い空気に耐えられなかったのか、シューラは「事情はわからないけど、自分を責め過ぎないで」と慰めてきた。
=========
着替えを終えたシューラのもとに、浄化の旅の同行者たちがご機嫌伺いに訪れた。
彼女の旅の仲間は5人。
第二王子アインス、宰相の息子ツヴァイ、公爵の息子トロイス、魔術師長の息子フィーア、騎士団長の息子コンク。
アインスは同級生枠。典型的な王子様キャラ。ダークブロンドにラピスラズリのような瞳の持ち主。王道過ぎて特に個性はない。
ツヴァイとトロイスは先輩枠。何方も銀髪なのだが、親戚ではない。
神経質そうなツヴァイに比べ、トロイスは長身で柔和なタイプなので何とかキャラ被りは避けている。
ツヴァイはアメジストのような薄紫の瞳なのだが、トロイスは不明だ。
何故かと言うと、彼は幼い頃に事故で目を傷つけてしまい瞳を閉じた状態で生活しているのだ。装着したモノクル型の魔道具で視覚情報を直に脳に送っているので、健常者と変わりない生活を送れるのだとか。
フィーアはショタ枠だ。髪も瞳もダークブラウン。生意気なクソガキで、俺の事をジロジロ見た後「顔は悪くないけど、デカ過ぎて無理。あと地味。聖女様に気に入られてるからって、調子に乗らないでよね」と喧嘩売ってきた。
俺もお前も色味で言ったら同じ筑前煮だからな。俺が人参、薩摩揚げ担当で、お前は椎茸だ。
最年長のコンクは大人枠。赤銅色の長髪と、サマーグリーンの瞳。異国の血が入っているのか、メンバーの中では唯一褐色の肌の持ち主。今回のお役目に乗り気でないのか、自己紹介以外でシューラに話しかけることはなかった。
まるで乙女ゲームの攻略対象者のような連中だ。
事あるごとに「5」が出てくるけど、この国では縁起の良い数字なのか。
これがゲームなら、タイトルにも反映されていそうだ。
俺、乙女ゲーやったことないけど。
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