魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

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BLカテで乙女ゲーとか誰得

おもしれー女

 魔の者の呪いは、各神殿に隠されているカラダの部位が原因。

 カラダは大気中の魔素回収を高効率で行う。自動充電式電池のような存在で、大結界の動力源になっている。
 結界の維持量を上回った余剰エネルギーが溢れたものが、瘴気として周囲に漏出。
 通常魔素は生命に影響を与えないが、カラダによって濃縮されているため被害が出た。

 聖女とは魔素に対して素養のある人間。
 シューラのように魔素を感知できたり、先代のように魔素を吸収したり、魔素に耐性があったり…
 聖女の能力が固定ではないのがその証左。神殿に行けば目覚めるのではなく、高濃度の魔素に晒されることで、元々持っていた素養毎に自主的に行動したが正解。

 カラダは俺の解呪スキルで対処可能だが、結界の動力源としては使用不可になる。

 以上が、俺たちが提唱する仮説。

 よし。呪いと大結界どっちも無くしちまおうぜ!
 他の国は、結界なしで生きてるんだから平気平気!

 元より聖女システム反対派のメアリー王女。俺たちの方針は満場一致でまとまった。
 踊らない会議は楽で良いね!

 そうと決まれば、話は早い。
 残りの神殿に行きカラダ回収することにした。カラダ探しの始まりだ。
 ツヴァイが資料を持って来るまでの時間潰しに丁度良い。

 ここにアヴァール機動隊が結成された。
 イカれたメンバーを紹介するぜ!
 警察犬・シューラ!
 爆発物処理班・俺!
 パトカー・メアリー!
 ……のはずだったが、メアリーは強制退場となった。先日のいじめ()が国王に報告され、謹慎くらったのだ。

 さようならメアリー。かわいそうだから今晩、こっそり甘いものでも差し入れしよう。
 メンバーにパトカーカウントしているのがおかしいって? イカれてるから良いんだよ。


 メアリーの手配する馬車に代わる移動手段として、俺は自分がシューラを抱えて走ることを提案した。
 実は馬車よりも此方の方が断然早い。現状ではRTAの最適解だ。
 俺は配慮できる男だ。10代の女の子におんぶを強要したりはしない。
 2種類の運搬方法を提案した。

 パターン1)背負い搬送具を使う。
 要は大人用おんぶ紐。
 通常の背負い搬送はロープで要救助者を括り付ける。ロープが膝の裏側に食い込むのを防止するためタオルを挟むのだが、それでも結構な負担になる。
 毎回ロープを通すのも面倒なので、ちゃんとした道具を自作する方が良いと判断。
 俺の背中にあたる部分に緩衝材をかませれば、直接的な密着度を下げる事ができる。
 シューラの視界が進行方向と一致するので、酔い難いのがメリット。

 パターン2)背負子を使う。
 俺の大好きな異世界・地球で障害者登山に使用されていた。
 薪を背負うような感じで、シューラを背負う。
 お互い背中合わせなので、密着度はかなり低い。
 進行方向とシューラの視界が逆なので、酔い易いのがデメリット。

 図解と共にプレゼンしたが、どちらも反応は良くなかった。
 彼女も背に腹は変えられないとわかっているのだろう。ハッキリとした拒絶はしなかったが、苦悶の表情がどちらも嫌だと物語っている。

 移動手段に、国の支援を受ける気はない。
 聖女様が望めば馬車を出してくれるが、もれなく余計な人員が付いてくる。
 前回の突発的なお出かけが例外だったのだ。
 俺たちがやろうとしている事を考えると、監視の目は減らすべきだ。

「プランBに移行しよう」
「他に案があるのね!」

 シューラの表情が明るくなった。
 俺に背負われるの、そんなに嫌だったのか。地味にショックだ。

「王女の代役を用意する。馬車より早い移動手段を持っている可能性がある」
「そんな都合の良い人いたかしら?」

 注意力が逸れたのか、シューラの手が動く。
 扇子で隠していた口元が露わになりそうだったので、俺は咳払いをした。
 場所は王城にある東家。
 庭を愛でながらお茶を楽しむ聖女様と、背後に控える護衛の図。侍女軍団は少し離れた場所で待機。
 最初からこうしていれば良かった。
 すまないメアリー。

 =========

 お茶を終えたシューラは、公爵邸へ先触れを出した。
 攻略対象(仮)トロイスに会うためだ。
 呼び出すことも可能なのだが、出向いた方がお互いの為なのだ。

 ツヴァイはまだ資料を集めの旅から帰ってきていないので、やることがなくなってしまった。
 暇なので宵闇の魔法使いの情報を集めるか。
 俺たちは魔塔へ向かったが、思わぬ邪魔が入った。
 突発イベントの発生だ。
 スキップしたいが無理らしい。

 =========

「城に無頼の輩を招き入れるとは嘆かわしい。第二王子派は余程人材不足のようだ」

 俺たちーー正確には俺に絡んできたのは、帰還した第三王子だった。
 この後に及んで、新しい登場人物とか要らないんだけど!
 未読スキップ主義のシューラは、彼の目的が俺とわかると完全傍観姿勢に入った。
 ここ聖女様の権力の使い所ですよー!

 よく分からない流れで、第三王子と模擬戦することになってしまった。
 これが強制力か。

「困ったな」
「リリーは強いんでしょ? コテンパンにしちゃえばいいじゃない」
「実力差を見せつければ、あっちも文句言えないでしょ」と、シューラは軽く言った。彼女は武術の経験が無いらしい。
「叩き潰すことは簡単なんだが……」

 武術は流派によって型がある。
 詳しい者が見れば、剣を構えた時点で相手の出身がわかる。

 俺の動きは異世界産。
 せめて他の兵士たちの訓練風景を見ていれば真似できたのだが、聖女様に付きっきりで行動していたのが仇となった。
 まあ兵士の動きを模倣したら、それはそれで問題になっただろうが。
 彼らは貴族出身だ。平民傭兵リリーが同じ動きをすれば怪しまれる。
 しかし本来の体捌きよりはマシだ。いざとなったら、元貴族に師事したとかいくらでも捏造できるのだから。

「前哨戦みたいな感じで、他の連中同士を先に戦わせることはできないか?」
「無茶言わないで。あの王子、もうスタンバイしてるじゃない」

 やる気満々。
 兎であろうと全力で狩る獅子、もしくは女相手に本気を出す男。

「仕方がない」

 できるだけ特徴を殺して、最短で終わらせよう。

 =========

 試合は一方的だった。
 王子と対峙した女傭兵は片手で剣を持ったものの、その手は下げたまま。
 構えることすらしなかった。
 審判が構えるよう忠告するが、どこ吹く風で全く動こうとしない。

 プライドを逆撫でされた王子が斬りかかる。
 武勇で知られる王子渾身の一撃を、彼女は軽く身をひねり交わした。そのまま無造作に剣を振り、王子の剣を叩き落とした。
 立ち位置は一歩も動いていない。
 その様は玩具で斬りかかる幼児をあしらう大人のようだった。

「くっ。俺では構えるに値しないという事か…!」

 苦渋に顔を歪ませた王子だが、この場で一番、両者の力量差を理解している。

「面白い女だ」

 一言残すと、彼は部下を引き連れてその場を後にした。

 その台詞本当に言うやつ居るんだな。
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