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BLカテで乙女ゲーとか誰得
解釈違いですぅ
公爵邸は王城から馬車で1時間の距離だった。
今回は正式な手順を踏んだお出かけなので、馬車の準備に1時間も掛かった。
帰りは準備時間が短縮されるとはいえ、それでも移動だけで往復3時間強。
やはり馬車という移動手段は不便だ。彼が別の方法を用意できることを祈る。
俺たちを迎えたトロイスは、相変わらず物腰柔らかだった。
訪問の意図を図りかねているのだろう、僅かに困惑の色が見える。
「単刀直入に言うわ。貴方が盲目の振りをしているのは瞳の色を隠す為。本当の髪色は黒なんでしょ?」
事前に共有していた情報をシューラが告げる。
「聖女様が何をおっしゃっているのか図りかねます」
「その髪、脱色を重ねたからその色なのよね」
「何故そのような勘違いをされたのか……」
「一日中魔道具を起動させているなら、貴方の魔力は高いはず。なのに色素が薄い。不自然だわ」
先日は注意して見ていなかったので気づかなかったが、こうして相対する事でシューラは確信を得た。彼の魔素吸収量は異常に高い。
国に報告すると脅せば、トロイスは白旗を上げた。
彼はモノクルを外して目を開けた。
地球の日本人に多い色。
先日回収した瞳ほど真っ黒ではないが、注視しなければ虹彩と瞳孔の境目が分からないくらいには黒かった。
トロイス曰く、宵闇の魔法使いは公爵家の祖先らしい。
突出した魔力の持ち主で、大結界の作成までは様々な功績が残されているのだが、その後は不明。晩年含め一切の情報なし。
権力者がもみ消したんだろう。
宵闇の魔法使いは、魔の者だ。経緯は憶測の域を出ないが、結界作成後に殺されて動力源にされたのだ。
=========
宵闇の魔法使いのことを考えると俺の胸はモヤついたが、良いこともあった。
聖女様の忠実なる下僕・ツヴァイが成果を抱えて帰還したのだ。
結論。
ここは魔界と縁もゆかりも無い、全く別の異世界だった。
お疲れさまでした! はい解散!
=========
俺たちにとって浄化は時間稼ぎというか、暇つぶしだった筈なのだが、シューラは感情移入してしまったらしい。
魔界からお迎えが来るまで、浄化を行うと主張した。
実情はどうであれ、彼女は誘拐されて働かされている状態だ。
しかも連中はシューラが死ぬと予測している。
そんな環境でも彼女は義憤にかられ、最後の聖女という役割を完遂する決意をしたのだ。
俺は若者の正義感というか、共感性を舐めていた。
トロイスが馬車よりも快適な魔道具を用意してくれることになったので、それまで俺たちは待機。
魔道具を操作するのは勿論トロイス。
あれ? 俺たちも公爵家の人間を動力源にしてない?
いやいや、俺たちは彼を殺したりしないからな。
ちょっと秘密を握って、利用してるだけだからな。
トロイスを脅……仲間に引きいいれた俺たちは、そのまま彼の家に厄介になることにした。
祖先の一件と、トロイス自身の身を守るため公爵家は王家を警戒している。
王家の影の侵入を許さない厳戒態勢。監視を気にせず会話できるって素晴らしい。
王家としても、公爵家に聖女が滞在するのはハニトラ成功の兆しなので大歓迎。
トロイスを除いて、Win-Winの関係だ。
=========
「……アウクトルとシェリだったら、直ぐに迎えに来てくれると思ったんだけど。やっぱり異世界に行くのって難しいのかしら」
「時間軸が違う可能性があるから一概には言えない」
「ああ。こっちの一日が、彼方では1分かもしれないって事ね」
「平気なのか?」
アラサーの俺と、10代の彼女では1年の重みが違うと思うのだが、シューラが気にしている様子はない。
「魔族に寿命はないの。今の生に飽きたら、自ら輪廻の輪に入るのよ」
「要は自殺か。外見年齢は何が影響しているんだ?」
老人姿で永久に生きるのは嫌だな。
「幼少期は成長に従って変化するけど、成人後は個人差があるわ。好んで特定の年齢に固定することもあるし、魔力の減弱で意図せず加齢した外見になることもあるの。最もパフォーマンスが良い状態を維持する人が多いわね」
パドレはあれが人生で最適な体型なのか。
少しほろ苦くなる。
「……君たちは、アウクトルの友人という認識で間違いないか?」
一瞬動きを止めたシューラだが、直ぐに是と答えた。
「君たちは彼と魔王を別物だと考えているのか? 答えたくなければ構わないが」
四天王の説明時、シューラは魔王を崇拝する言動をしていた。
しかしアウクトル・アーヴォに関しては普通のクラスメイトとして接しているようだ。彼の名前を出した時、時々動きが鈍るのも気になる。
「私はほぼ同一だと考えているわ。シェリは多分、完全に同一だと思っている派ね」
友達同士でも違うらしい。
「私たち姉妹は、アウクトル・アーヴォを見極めるよう入学時に家長から指示されたの」
今はお友達だが、切欠は親の命令だったのか。
「分体という存在については、大きく肯定派、中立派、否定派に別れるの。お祖父様は肯定派だけど、我が家は中立派だったわ」
アイドルオタクと一緒で、魔王が好きという根底は同じでも解釈は様々。
肯定派は魔王=分体なので、分体を魔王と等しく崇める。もしくは分体は魔王様が生み出した存在なので本体には劣るが、崇拝対象。ジュメリ姉妹がこれ。
中立派は、分体と本体を別存在として見ているので、分体は崇拝対象ではない。しかし分体は魔王の魔術なので、その存在は受け入れている。
否定派は別名・魔王至上主義過激派。魔王様大好きだからこそ、分体が許せない。
彼らにとって分体は、自分を魔王だと思い込んでいるパチモン。
至高の魔王は唯一無二、複数存在するなんてあり得ない。魔王様の術であろうが、偽物の存在自体が不愉快。
分体に魔力リソースを裂いているなら、分体を殺して一刻も早く本体を目覚めさせたい。彼らは隙あらばアウクトル・アーヴォを葬ろうとしているらしい。
変わり種だと「分体はその成長に伴って本体からかけ離れ、独立した存在になる」という考えもあるのだとか。
四天王ですら意見が分かれているらしい。
上層部だけでこの状態なら、一般市民に周知していないのも納得だ。単純に母数が増えると考えれば、国民の何割かが過激派テロリストになる。
アウクトル本人がどう考えているのか、この先機会があれば聞いてみよう。
多分その頃には忘れてるだろうけど。
今回は正式な手順を踏んだお出かけなので、馬車の準備に1時間も掛かった。
帰りは準備時間が短縮されるとはいえ、それでも移動だけで往復3時間強。
やはり馬車という移動手段は不便だ。彼が別の方法を用意できることを祈る。
俺たちを迎えたトロイスは、相変わらず物腰柔らかだった。
訪問の意図を図りかねているのだろう、僅かに困惑の色が見える。
「単刀直入に言うわ。貴方が盲目の振りをしているのは瞳の色を隠す為。本当の髪色は黒なんでしょ?」
事前に共有していた情報をシューラが告げる。
「聖女様が何をおっしゃっているのか図りかねます」
「その髪、脱色を重ねたからその色なのよね」
「何故そのような勘違いをされたのか……」
「一日中魔道具を起動させているなら、貴方の魔力は高いはず。なのに色素が薄い。不自然だわ」
先日は注意して見ていなかったので気づかなかったが、こうして相対する事でシューラは確信を得た。彼の魔素吸収量は異常に高い。
国に報告すると脅せば、トロイスは白旗を上げた。
彼はモノクルを外して目を開けた。
地球の日本人に多い色。
先日回収した瞳ほど真っ黒ではないが、注視しなければ虹彩と瞳孔の境目が分からないくらいには黒かった。
トロイス曰く、宵闇の魔法使いは公爵家の祖先らしい。
突出した魔力の持ち主で、大結界の作成までは様々な功績が残されているのだが、その後は不明。晩年含め一切の情報なし。
権力者がもみ消したんだろう。
宵闇の魔法使いは、魔の者だ。経緯は憶測の域を出ないが、結界作成後に殺されて動力源にされたのだ。
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宵闇の魔法使いのことを考えると俺の胸はモヤついたが、良いこともあった。
聖女様の忠実なる下僕・ツヴァイが成果を抱えて帰還したのだ。
結論。
ここは魔界と縁もゆかりも無い、全く別の異世界だった。
お疲れさまでした! はい解散!
=========
俺たちにとって浄化は時間稼ぎというか、暇つぶしだった筈なのだが、シューラは感情移入してしまったらしい。
魔界からお迎えが来るまで、浄化を行うと主張した。
実情はどうであれ、彼女は誘拐されて働かされている状態だ。
しかも連中はシューラが死ぬと予測している。
そんな環境でも彼女は義憤にかられ、最後の聖女という役割を完遂する決意をしたのだ。
俺は若者の正義感というか、共感性を舐めていた。
トロイスが馬車よりも快適な魔道具を用意してくれることになったので、それまで俺たちは待機。
魔道具を操作するのは勿論トロイス。
あれ? 俺たちも公爵家の人間を動力源にしてない?
いやいや、俺たちは彼を殺したりしないからな。
ちょっと秘密を握って、利用してるだけだからな。
トロイスを脅……仲間に引きいいれた俺たちは、そのまま彼の家に厄介になることにした。
祖先の一件と、トロイス自身の身を守るため公爵家は王家を警戒している。
王家の影の侵入を許さない厳戒態勢。監視を気にせず会話できるって素晴らしい。
王家としても、公爵家に聖女が滞在するのはハニトラ成功の兆しなので大歓迎。
トロイスを除いて、Win-Winの関係だ。
=========
「……アウクトルとシェリだったら、直ぐに迎えに来てくれると思ったんだけど。やっぱり異世界に行くのって難しいのかしら」
「時間軸が違う可能性があるから一概には言えない」
「ああ。こっちの一日が、彼方では1分かもしれないって事ね」
「平気なのか?」
アラサーの俺と、10代の彼女では1年の重みが違うと思うのだが、シューラが気にしている様子はない。
「魔族に寿命はないの。今の生に飽きたら、自ら輪廻の輪に入るのよ」
「要は自殺か。外見年齢は何が影響しているんだ?」
老人姿で永久に生きるのは嫌だな。
「幼少期は成長に従って変化するけど、成人後は個人差があるわ。好んで特定の年齢に固定することもあるし、魔力の減弱で意図せず加齢した外見になることもあるの。最もパフォーマンスが良い状態を維持する人が多いわね」
パドレはあれが人生で最適な体型なのか。
少しほろ苦くなる。
「……君たちは、アウクトルの友人という認識で間違いないか?」
一瞬動きを止めたシューラだが、直ぐに是と答えた。
「君たちは彼と魔王を別物だと考えているのか? 答えたくなければ構わないが」
四天王の説明時、シューラは魔王を崇拝する言動をしていた。
しかしアウクトル・アーヴォに関しては普通のクラスメイトとして接しているようだ。彼の名前を出した時、時々動きが鈍るのも気になる。
「私はほぼ同一だと考えているわ。シェリは多分、完全に同一だと思っている派ね」
友達同士でも違うらしい。
「私たち姉妹は、アウクトル・アーヴォを見極めるよう入学時に家長から指示されたの」
今はお友達だが、切欠は親の命令だったのか。
「分体という存在については、大きく肯定派、中立派、否定派に別れるの。お祖父様は肯定派だけど、我が家は中立派だったわ」
アイドルオタクと一緒で、魔王が好きという根底は同じでも解釈は様々。
肯定派は魔王=分体なので、分体を魔王と等しく崇める。もしくは分体は魔王様が生み出した存在なので本体には劣るが、崇拝対象。ジュメリ姉妹がこれ。
中立派は、分体と本体を別存在として見ているので、分体は崇拝対象ではない。しかし分体は魔王の魔術なので、その存在は受け入れている。
否定派は別名・魔王至上主義過激派。魔王様大好きだからこそ、分体が許せない。
彼らにとって分体は、自分を魔王だと思い込んでいるパチモン。
至高の魔王は唯一無二、複数存在するなんてあり得ない。魔王様の術であろうが、偽物の存在自体が不愉快。
分体に魔力リソースを裂いているなら、分体を殺して一刻も早く本体を目覚めさせたい。彼らは隙あらばアウクトル・アーヴォを葬ろうとしているらしい。
変わり種だと「分体はその成長に伴って本体からかけ離れ、独立した存在になる」という考えもあるのだとか。
四天王ですら意見が分かれているらしい。
上層部だけでこの状態なら、一般市民に周知していないのも納得だ。単純に母数が増えると考えれば、国民の何割かが過激派テロリストになる。
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多分その頃には忘れてるだろうけど。
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