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BLカテで乙女ゲーとか誰得
給料3ヶ月分
それからのアウクトルの行動は早かった。
速攻で風呂から上がり息つく暇もなく魔界へ帰還。
ジュメリ姉妹を家に転送。
タイムトライアルかと思うくらい、無駄のない動きだった。
彼の解析によると、あの召喚魔法は落とし穴のようなものらしい。
特定世界や、特定の条件を満たす人物を選んでいる訳ではなく、ただ穴を開けて付近の物を指定された場所に移動させているだけ。
アヴァール産の聖女は、瘴気に対する先天的な特殊体質もち。
召喚聖女は、元の世界と彼方で瘴気の濃度差がある状態に晒されることになる。そうなると瘴気の影響を全く受けない、若しくは過敏に反応のどちらかに傾いた。
これが彼の見立てだった。それなりに筋は通っている。
召喚魔法は、彼が降臨すると同時に魔眼を千里眼モードにして現存する資料を焼いたらしい。
人殺せそうな視線だと思ってたけど、もしかしてあの時魔術を使ってたのかもしれない。
ピリピリしていたのは、他に神経使っていて余裕がなかったのかも。
痒いところに手が届く感じで、色々並行して処理していたのに、要救助者が若い女の子に挟まれて楽しんでいるように見えたら不愉快だろう。
風呂で妙な真似をしてきたのは、捨て身の嫌がらせだったんだな。体張りすぎだろ。
=========
俺は魔界で宵闇の魔法使いを埋葬することにした。
彼方の世界は彼女に優しくなかった。
俺は魔界に来てよかったと思っている。
既に遺体だけど、ここが彼女にとっても優しい世界であって欲しい。
シューラが言っていたように、魔族には寿命がない。
自殺者は自分の遺体を残す死に方をしないので、魔界に墓地は存在しない。
周囲に相談した結果、カフェ近くの木の下に埋葬することになった。
「家の側に埋めるなんて、死体遺棄みたいで嫌だな」と思ってしまったが、勝手に見知らぬ森に埋める方が後々問題になる。
アウクトル立ち合いのもと<収納空間>から宵闇の魔法使いの体シリーズを取り出す。
黒髪、黒目の全裸の女性が出てきた。
アッーーーーー!
光が魔界の空を駆ける。
俺の店が消失した。
=========
宵闇の魔法使い・オニキスは、研究員として魔界で暮らすことになった。
「これは貴方がくれた名前…。この先、私はオニキスとして生きたい」
復活前の状態でも意識はあったようだ。
別に命名したつもりはないのだが、わかりやすいので良いと思う。
新しい環境で、新しい名前で生きるのはアリだ。
俺もそうすれば良かったかもしれないが、良い名前が思いつかないので結局はフォンスを名乗りそうだ。
「私は貴方の望む物を作りたい」
場所はオニキスが所属する研究室。
カフェを失った俺は、現在はコーヒーを職場に配達するサービスを仕事にしている。
今日のデリバリーはここで最後。
彼女の仕事は、新たな魔道具の作成だ。
具体的に何を作るか個人で案を出し、許可が出れば予算を使用できる。
テーマに困ったのか彼女は俺を頼ってきた。
「貴方の好きな物を教えて。私はそれを研究する」
「研究は時間がかかる。自分が興味をもてるものにした方が良い」
「私が興味あるのは、貴方が好きな物」
故郷では上から命じられた道具を作ってきたのかもしれないが、もう彼女は自由なのだ。
しかし長年従い続けてきたのなら、急に自分の意志で動けと言われても難しいのかもしれない。
「俺の好きなものと言ったら、水族館とか……?」
「それは何?」
以前アウクトルにしたのと同じ説明をした。
しかし今回はもっと深堀する。
「……水槽を作るためにアクリル素材が欲しい。アクリルというのは、ガラスよりも軽くて丈夫だが透過性に優れた素材のことだ。他に海水の運搬技術、水を循環させる技術も必要だな……」
求められるままに答えていたが、オニキスのポカンとした表情で我にかえった。
オタクの早口トークというヤツをしてしまったのかも。
いい歳をした男が、人を置き去りに自分の話したいことだけを一方的に語っていたなら恥ずかしい。
「ふふっ。やることがいっぱいね」
「そうなんだよ!」
羞恥で縮こまる俺に、彼女が微笑んだ。
よかった。あまり気にしていないようだ。
「やりがいがありそうだわ。ねえ、もう帰ってしまうの…?」
俺の背に、オニキスの寂しそうな声がかかる。
「居候の身だから、夕飯の時間に遅れるわけにはいかないんだ」
吹っ飛んだ店をアウクトルは再建してくれなかった。
俺は今アーヴォ家に居候している。
気儘な一人暮らしに慣れた俺に、他所のご家庭での生活は辛い。
=========
オニキスを魔界の住民として受け入れるにあたり、アウクトルは俺に条件を出した。
それを達成するまで、店はお預け。俺は彼の監視下での生活を強いられる。
・パドレにオーダーメイドの指輪を依頼する。
・予算は給料3ヶ月分。
・完成した指輪はアウクトルに捧げる。
これが彼の出した条件。
俺が魔界に移住したのは3ヶ月前。つまり奴は、俺から全財産巻き上げるつもりなのだ。
闇医者が命の価値として、患者から大金を巻き上げるのと同じだ。
何故指輪なのかはわからない。
現金の方が価値が高いと思うのだが、パドレに依頼するという所に何か意味があるのかもしれない。
今日も夕食後はデザインの相談が待っている。憂鬱だ。
速攻で風呂から上がり息つく暇もなく魔界へ帰還。
ジュメリ姉妹を家に転送。
タイムトライアルかと思うくらい、無駄のない動きだった。
彼の解析によると、あの召喚魔法は落とし穴のようなものらしい。
特定世界や、特定の条件を満たす人物を選んでいる訳ではなく、ただ穴を開けて付近の物を指定された場所に移動させているだけ。
アヴァール産の聖女は、瘴気に対する先天的な特殊体質もち。
召喚聖女は、元の世界と彼方で瘴気の濃度差がある状態に晒されることになる。そうなると瘴気の影響を全く受けない、若しくは過敏に反応のどちらかに傾いた。
これが彼の見立てだった。それなりに筋は通っている。
召喚魔法は、彼が降臨すると同時に魔眼を千里眼モードにして現存する資料を焼いたらしい。
人殺せそうな視線だと思ってたけど、もしかしてあの時魔術を使ってたのかもしれない。
ピリピリしていたのは、他に神経使っていて余裕がなかったのかも。
痒いところに手が届く感じで、色々並行して処理していたのに、要救助者が若い女の子に挟まれて楽しんでいるように見えたら不愉快だろう。
風呂で妙な真似をしてきたのは、捨て身の嫌がらせだったんだな。体張りすぎだろ。
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俺は魔界で宵闇の魔法使いを埋葬することにした。
彼方の世界は彼女に優しくなかった。
俺は魔界に来てよかったと思っている。
既に遺体だけど、ここが彼女にとっても優しい世界であって欲しい。
シューラが言っていたように、魔族には寿命がない。
自殺者は自分の遺体を残す死に方をしないので、魔界に墓地は存在しない。
周囲に相談した結果、カフェ近くの木の下に埋葬することになった。
「家の側に埋めるなんて、死体遺棄みたいで嫌だな」と思ってしまったが、勝手に見知らぬ森に埋める方が後々問題になる。
アウクトル立ち合いのもと<収納空間>から宵闇の魔法使いの体シリーズを取り出す。
黒髪、黒目の全裸の女性が出てきた。
アッーーーーー!
光が魔界の空を駆ける。
俺の店が消失した。
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宵闇の魔法使い・オニキスは、研究員として魔界で暮らすことになった。
「これは貴方がくれた名前…。この先、私はオニキスとして生きたい」
復活前の状態でも意識はあったようだ。
別に命名したつもりはないのだが、わかりやすいので良いと思う。
新しい環境で、新しい名前で生きるのはアリだ。
俺もそうすれば良かったかもしれないが、良い名前が思いつかないので結局はフォンスを名乗りそうだ。
「私は貴方の望む物を作りたい」
場所はオニキスが所属する研究室。
カフェを失った俺は、現在はコーヒーを職場に配達するサービスを仕事にしている。
今日のデリバリーはここで最後。
彼女の仕事は、新たな魔道具の作成だ。
具体的に何を作るか個人で案を出し、許可が出れば予算を使用できる。
テーマに困ったのか彼女は俺を頼ってきた。
「貴方の好きな物を教えて。私はそれを研究する」
「研究は時間がかかる。自分が興味をもてるものにした方が良い」
「私が興味あるのは、貴方が好きな物」
故郷では上から命じられた道具を作ってきたのかもしれないが、もう彼女は自由なのだ。
しかし長年従い続けてきたのなら、急に自分の意志で動けと言われても難しいのかもしれない。
「俺の好きなものと言ったら、水族館とか……?」
「それは何?」
以前アウクトルにしたのと同じ説明をした。
しかし今回はもっと深堀する。
「……水槽を作るためにアクリル素材が欲しい。アクリルというのは、ガラスよりも軽くて丈夫だが透過性に優れた素材のことだ。他に海水の運搬技術、水を循環させる技術も必要だな……」
求められるままに答えていたが、オニキスのポカンとした表情で我にかえった。
オタクの早口トークというヤツをしてしまったのかも。
いい歳をした男が、人を置き去りに自分の話したいことだけを一方的に語っていたなら恥ずかしい。
「ふふっ。やることがいっぱいね」
「そうなんだよ!」
羞恥で縮こまる俺に、彼女が微笑んだ。
よかった。あまり気にしていないようだ。
「やりがいがありそうだわ。ねえ、もう帰ってしまうの…?」
俺の背に、オニキスの寂しそうな声がかかる。
「居候の身だから、夕飯の時間に遅れるわけにはいかないんだ」
吹っ飛んだ店をアウクトルは再建してくれなかった。
俺は今アーヴォ家に居候している。
気儘な一人暮らしに慣れた俺に、他所のご家庭での生活は辛い。
=========
オニキスを魔界の住民として受け入れるにあたり、アウクトルは俺に条件を出した。
それを達成するまで、店はお預け。俺は彼の監視下での生活を強いられる。
・パドレにオーダーメイドの指輪を依頼する。
・予算は給料3ヶ月分。
・完成した指輪はアウクトルに捧げる。
これが彼の出した条件。
俺が魔界に移住したのは3ヶ月前。つまり奴は、俺から全財産巻き上げるつもりなのだ。
闇医者が命の価値として、患者から大金を巻き上げるのと同じだ。
何故指輪なのかはわからない。
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今日も夕食後はデザインの相談が待っている。憂鬱だ。
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