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1000年前から愛してる
彼は新世代中立派
「トーレくん、私待ってますから」
「シェリ。君まで付き合う事はないんだよ」
「何言ってるんですか! トーレくん一人に辛い思いをさせたりしません。私は貴方の彼女なんですから!」
「ありがとう……。行ってくるよ」
潤んだ瞳で恋人を戦地へ送り出すシェリ。彼女はストッパー役として教室でアウクトルと待機だ。
今回、彼女は他の女性陣には声を掛けなかった。
アウクトルに恋する乙女たちに、彼の交際宣言+犯罪行為諸々を伝えあぐねたともいう。
=========
放課後、トーレは一人カフェへ赴いた。
気乗りしないが、逃げる訳にはいかない。ちなみに、これから行われる会話は例の装飾品でリアルタイム中継される。図らずも盗撮を黙認した形になってしまった。
「いらっしゃい。君は確か、アウクトルの友達の…」
フォンスはトーレを覚えていたらしい。
会うのは2回目だが、相変わらず色気のある彫像のような男だ。
彫像と称したのは、フォンスが鉄面皮だとか、挙動がぎこちないという意味ではない。浮世離れして整った容姿をしているので、同じ人間だと思えないのだ。
それなりに自分の容姿に自信があるトーレだが、目の前の男とは比べるべくもない。次元が違いすぎて自尊心がゴリゴリ削られるので、正直隣に並びたくない。
トーレは先日の事件について、シェリに後から話を聞かされた。
現地で過ごした数日間で、王女に手を出したとか何とか。
彼女のことを信じていないわけじゃないが、正直誘拐されたのがシェリじゃなくて良かった。彼のような男に大事な恋人を近づけたくない。恋人だけじゃなく、母親にも姉にも近づけたくない。
突然訪問して「話したい事があるから店を閉めてほしい」なんて断られても仕方ない話だが、フォンスは快く応じてくれた。
トーレのバイト仲間には、学園の先輩がいる。
彼女のバイトの目的は、このカフェに通う資金稼ぎだ。
ここは学生にとっては価格帯が高いので、数回行けば小遣いを使い果たす。
定期的に通うことで店長に名前を覚えてもらい、ゆくゆくは目覚ましボイスを収録させてもらいたいと休憩時間に熱く語っていた。
一度会っただけのトーレの不躾な要望を受け入れてくれた彼だ。貢がなくても、頼めば挨拶くらい録音させてくれそうだ。
容姿も良ければ、性格も良い。一人でカフェを切り盛りしているくらいだ、料理上手で生活能力も高いのだろう。
良い人なんだろうが、同性としては劣等感を刺激されるので、友人になりたいタイプではない。
初対面では女にモテそうとしか思わなかったが、今は別の見方をしてしまう。
肉体関係云々で、アウクトルが具体例を述べたせいで本人を前にしてつい想像してしまった。
気分が悪くなるかと思ったが、別にそんなことは無かった。ここまで異次元だと性別も超越するのか。
トーレの視線は自然とフォンスの手元に移動したが、そこに指輪はない。
次にロングTシャツから覗く形の良い鎖骨付近を彷徨うが、チェーンらしきものもない。
全身隈なくさらい、アクセサリーと思しきものは左耳の飾りしか見つけられなかった。
「……あのー、もしかしてそのイヤーカフ。元は指輪だったり…?」
本日数回目の嫌な予感。
「そうだ」
「アールから贈られた?」
「ああ。俺を監視するための道具だ」
フォンスがイヤーカフの機能を説明する。先日アップデートされたので、より高機能となった。
「……何でそれ受け入れてるんですか?」
トーレは身震いした。
恋人同士のプレイの範疇じゃない、完全にストーカーの域に入っている。
「俺は元々神が差し向けた存在だ。どうあっても警戒心は残る」
「――っそれは」
「そんな俺の後見をするんだ。監視する手段を設けるのは順当だし、俺も身の潔白を証明するために受け入れるのは吝かではない」
フォンスの目には諦念が宿っている。
幼馴染、完全にやらかしてる。
トーレはフォンスの特殊性癖を疑った自分を恥じた。
これは恋人に贈る指輪じゃない。断言できる、絶対に違う。
「ちなみにフォンスさんから、アールに贈った指輪は」
「指輪の形態を取っているが、要は俺の全財産だ」
トーレは絶句した。
彼はシェリに指輪を購入する為にアルバイトを始めた。親からもらう小遣いで購入するのは誠実ではないと感じたからだ。
働くことで金銭の重みを知ったトーレ。成人男性の全財産と聞いて肝が冷えた。
対等ってなんだ?
どちらの指輪も一方的にフォンスに負担がかかっている。
「た、高い石選ぶと天井知らずですね」
「石は俺の血から作成した。石に材料費はかかっていない」
ヒエッ。
「……い、異世界の風習ですか?」
どうかそうであってほしい。祈るような気持ちで聞く。
「俺の故郷では、血は呪具の作成に用いる。血液の使用はアウクトルの希望だ」
「……」
彼は友人が体液入りクッキーを好きな人に強要したような衝撃を受けた。
もしくは髪の毛入りミサンガ。どこかの国にはそんな風習があるのかもしれないが、少なくとも自分は受け入れられない。
「何故全財産使って、指輪を彼に贈ろうと思ったんですか?」
この流れでは碌な回答が来ないとわかりつつも、トーレは一縷の希望をかけて問うた。
「宵闇の魔法使いを魔界に受け入れる為、アウクトルが出した条件だったんだ」
自主的な交換じゃないのかよ!
無理やり買わせてるじゃないか。そりゃ作ってる時浮かない顔するよ。
「シェリ。君まで付き合う事はないんだよ」
「何言ってるんですか! トーレくん一人に辛い思いをさせたりしません。私は貴方の彼女なんですから!」
「ありがとう……。行ってくるよ」
潤んだ瞳で恋人を戦地へ送り出すシェリ。彼女はストッパー役として教室でアウクトルと待機だ。
今回、彼女は他の女性陣には声を掛けなかった。
アウクトルに恋する乙女たちに、彼の交際宣言+犯罪行為諸々を伝えあぐねたともいう。
=========
放課後、トーレは一人カフェへ赴いた。
気乗りしないが、逃げる訳にはいかない。ちなみに、これから行われる会話は例の装飾品でリアルタイム中継される。図らずも盗撮を黙認した形になってしまった。
「いらっしゃい。君は確か、アウクトルの友達の…」
フォンスはトーレを覚えていたらしい。
会うのは2回目だが、相変わらず色気のある彫像のような男だ。
彫像と称したのは、フォンスが鉄面皮だとか、挙動がぎこちないという意味ではない。浮世離れして整った容姿をしているので、同じ人間だと思えないのだ。
それなりに自分の容姿に自信があるトーレだが、目の前の男とは比べるべくもない。次元が違いすぎて自尊心がゴリゴリ削られるので、正直隣に並びたくない。
トーレは先日の事件について、シェリに後から話を聞かされた。
現地で過ごした数日間で、王女に手を出したとか何とか。
彼女のことを信じていないわけじゃないが、正直誘拐されたのがシェリじゃなくて良かった。彼のような男に大事な恋人を近づけたくない。恋人だけじゃなく、母親にも姉にも近づけたくない。
突然訪問して「話したい事があるから店を閉めてほしい」なんて断られても仕方ない話だが、フォンスは快く応じてくれた。
トーレのバイト仲間には、学園の先輩がいる。
彼女のバイトの目的は、このカフェに通う資金稼ぎだ。
ここは学生にとっては価格帯が高いので、数回行けば小遣いを使い果たす。
定期的に通うことで店長に名前を覚えてもらい、ゆくゆくは目覚ましボイスを収録させてもらいたいと休憩時間に熱く語っていた。
一度会っただけのトーレの不躾な要望を受け入れてくれた彼だ。貢がなくても、頼めば挨拶くらい録音させてくれそうだ。
容姿も良ければ、性格も良い。一人でカフェを切り盛りしているくらいだ、料理上手で生活能力も高いのだろう。
良い人なんだろうが、同性としては劣等感を刺激されるので、友人になりたいタイプではない。
初対面では女にモテそうとしか思わなかったが、今は別の見方をしてしまう。
肉体関係云々で、アウクトルが具体例を述べたせいで本人を前にしてつい想像してしまった。
気分が悪くなるかと思ったが、別にそんなことは無かった。ここまで異次元だと性別も超越するのか。
トーレの視線は自然とフォンスの手元に移動したが、そこに指輪はない。
次にロングTシャツから覗く形の良い鎖骨付近を彷徨うが、チェーンらしきものもない。
全身隈なくさらい、アクセサリーと思しきものは左耳の飾りしか見つけられなかった。
「……あのー、もしかしてそのイヤーカフ。元は指輪だったり…?」
本日数回目の嫌な予感。
「そうだ」
「アールから贈られた?」
「ああ。俺を監視するための道具だ」
フォンスがイヤーカフの機能を説明する。先日アップデートされたので、より高機能となった。
「……何でそれ受け入れてるんですか?」
トーレは身震いした。
恋人同士のプレイの範疇じゃない、完全にストーカーの域に入っている。
「俺は元々神が差し向けた存在だ。どうあっても警戒心は残る」
「――っそれは」
「そんな俺の後見をするんだ。監視する手段を設けるのは順当だし、俺も身の潔白を証明するために受け入れるのは吝かではない」
フォンスの目には諦念が宿っている。
幼馴染、完全にやらかしてる。
トーレはフォンスの特殊性癖を疑った自分を恥じた。
これは恋人に贈る指輪じゃない。断言できる、絶対に違う。
「ちなみにフォンスさんから、アールに贈った指輪は」
「指輪の形態を取っているが、要は俺の全財産だ」
トーレは絶句した。
彼はシェリに指輪を購入する為にアルバイトを始めた。親からもらう小遣いで購入するのは誠実ではないと感じたからだ。
働くことで金銭の重みを知ったトーレ。成人男性の全財産と聞いて肝が冷えた。
対等ってなんだ?
どちらの指輪も一方的にフォンスに負担がかかっている。
「た、高い石選ぶと天井知らずですね」
「石は俺の血から作成した。石に材料費はかかっていない」
ヒエッ。
「……い、異世界の風習ですか?」
どうかそうであってほしい。祈るような気持ちで聞く。
「俺の故郷では、血は呪具の作成に用いる。血液の使用はアウクトルの希望だ」
「……」
彼は友人が体液入りクッキーを好きな人に強要したような衝撃を受けた。
もしくは髪の毛入りミサンガ。どこかの国にはそんな風習があるのかもしれないが、少なくとも自分は受け入れられない。
「何故全財産使って、指輪を彼に贈ろうと思ったんですか?」
この流れでは碌な回答が来ないとわかりつつも、トーレは一縷の希望をかけて問うた。
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