魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

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1000年前から愛してる

謎は全て解けた!

 トーレの目的がイマイチ把握できないが、この訪問は俺にとっても渡りに船だ。
 アウクトルとの関係で、実は俺も思うところがあったのだが、誰に相談すれば良いかわからなかったのだ。
 俺はここに来てから、プライベートな相談をできるような同性の友達がいない。
 故郷でも男友達いなかっただろうって? 終わったことは良いんだよ!
 魔界で一番相談しやすい存在は、俺と似たような立場のオニキス。しかし彼女は異性だし、俺と同じ移民なので今回の相談相手としては不向き。
 トーレなら俺の事情も、アウクトルの事もよく知っている。
 君に決めた!

 今までは深く考えることなく、唐突に始まる性的な展開に流される一方だった。
 深く考えずにいたけど、いい加減ちゃんと考察して向き合うべきだと思った。

 自慰については、まあ思春期の行き過ぎた戯れという事にできる。
 要は彼女いない者同士での性欲の発散だ。素股とか、一人だとできないからな。

 しかし、キスはおかしい。
 カフェでアウクトルは自主的に俺にディープキスをしようとした。
 友人同士の戯れでは絶対にしない。世の中には酔うとキス魔になる人種が存在するらしいが、あの時は素面だった。

 そして極め付けが温泉での口淫と、尻への接触。その後、未遂で終わったがキスされそうになったこと。

 認めよう。
 明らかに彼は、俺を性の対象として見ている。


 俺が導き出した仮説は2つ。

 1つ、魔界では友人同士で性的な行為を行うのが普通。
 現在の魔界の常識なのか、過去の常識なのかは問わない。
 脱衣の件でアウクトルは古い価値観を維持してることが判明した。日本の稚児文化のように、現代では消失していたとしても1000年前は男同士の触れ合いが一般的だった可能性がある。

 2つ、アウクトルは俺の事をセフレだと思ってる。
 彼の外見や、信奉者の存在を考えると性欲処理の相手に事欠かなさそうだが、下手に手を出すと揉める可能性があるのかもしれない。アイドルがファンと関係を持つ的なヤツだ。その点、俺の存在は彼にとって都合が良かったに違いない。


「トーレ君に聞きたい事がある」

 とりあえず1つ目の仮説の検証だ。

「君とアウクトルは性的な行為をしているのか?」

「何だって!!!??」

 彼の敬語が吹っ飛んだ。

「いやあの、俺は男同士の付き合いに詳しくないんだ…。男兄弟はいないし…、父や祖父も早くに他界した。親しい男友人も少なかったから……」

 見栄を張った。親しい男友達はゼロだ。

「普通は下ネタ?…とか、猥談?…とか男同士で、性的な話題で盛り上がるんだろう? 俺はそういったことの経験がないんだ…」
「本気で言ってます?」

 珍獣を見る目だ。

「違うのか? 魔界ではそのような事はしないんだな? なら、当然友人同士で性的な接触もないんだな?」
「…ちょっと、何言ってるのかわかりません」
「ええと何と言ったら良いのか。…魔界では、同性の友人同士で性行為を行う文化があるのかと」
「あるわけないでしょうっ!!」
「昔はあったとか?」
「初耳ですよ!!」

 トーレが全力で否定する。
 マジか。仮説1が消えたぞ。2は嫌すぎる。

「何でそんな考えに至ったんですか!?」
「アウクトルが、その――」

 なんて言ったら良いんだ?

「お前の友達、俺に欲情してくるんだ」なんて言えない。

「フォンスさんは、アールと付き合ってるんですよね!?」

 トーレが叫ぶように問いかけた。

「付き合ってないが」

「――――――え?」

「俺は彼と付き合ってない」



 静寂が場を支配した。

 =========

 俺は貴族階級の出身だ。
 つまり男女のお付き合いは家ありきのもの。
 基本的に家の当主から打診があり、何度か顔合わせの場を設けて問題がなければ婚約成立。夜会などで当人がアプローチする事もあるが、それは「後で我が家から打診をしますよ」と言う予告のようなもの。
 どちらも俺には縁がなかった。
 平民に近い生活をしている貴族であっても、男女の仲になる前は家同士で条件を結ぶ。

 他国や平民だと別の流れがあるのかもしれないが、残念ながら俺は知らない。

 地球では告白文化、デーティング文化があった。
 俺の認識では、魔界は告白文化だ。
 シューラと女子トークしている時に、彼女からそう聞かされた。

「意中の相手に『好きです』『付き合ってください』と好意を告げて、相手が受諾する返事をしたら交際開始。俺はそう認識している」
「そそそうですね! それで合ってます!」

 うん。間違ってはいないようだ。

「俺は彼にそのような事を言われた記憶はない」

 勿論俺からも言ってない。
 トーレの顔から血の気が引いた。今にも倒れそうだ。


 気まずい沈黙が続く。

「……フォンスさんは、アールの事をどう思ってるんですか?」

 先に口を開いたのはトーレ。

「好きか、嫌いか。本心を教えてください」

 2択なのかよ。
 それなら――

「好きだ」

 嫌いではない。



 次の瞬間、トーレはアウクトルに姿を変えていた。否、転移で彼らの位置が入れ替わったのだろう。
「…やっぱり聞いていたか」

 なんて表情してるんだ。
 いつもの傲岸不遜な魔王様は何処へいったんだ。

「アウクトル。お前は男が恋愛対象なのか?」
「――違う」
「そうか。俺もだ」

 恋愛対象が女なら、彼女作れ。

「聞いていた通りだ。お前は良い男だ。相応しい相手を見つけられる」

 シューラとかな。やっぱり彼女、アウクトルの事好きだと思うんだ。

「ご両親に紹介できるような相手と堂々と付き合うべきだ。俺とは良き隣人関係でいよう」

 くれぐれも面倒くさがってセフレで性欲解消するなよ。



「――――すまなかった。きちんとしよう」

 俺の気持ちが伝わったらしい。
 アウクトルが俺を抱きしめた。

 仕方ない。彼はまだ10代だ。本体の年齢考えたらちょっとアレだけど、とにかく若気の至りというか間違うこともある。
 俺は謝罪のハグを受け入れた。
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