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1000年前から愛してる
魔王様失恋したってよ
「こっちから話題にするのはNG。これは徹底しよう」
「設定として、失恋を知っているのはトーレだけ。アウクトルが自分から話したら、とにかく傾聴する。否定、遮るのは絶対ダメ」
「場所はどうする…?」
「我が家の離れを準備しています。宿泊も可能です」
朝の教室では、アウクトルの友人たちにより作戦会議が行われていた。
議題はズバリ「失恋したアウクトルを慰める方法」。
全ての経緯を知っているのはトーレだけだ。しかし昨日、強制転移の直前に蒼白で慌てるアウクトルの姿をシェリは目撃している。
下手に誤魔化すくらいなら、情報共有して対処した方が良いと判断した。
「……アール来ないね」
間も無くHRだが、アウクトルはまだ登校していない。
「しまった! 今日休みかもしれない!」
単なる失恋ではない。付き合っていると勘違いしていたという特大の黒歴史だ。
傷心で休みどころか、家に引きこもってもおかしくない。
「考えてなかったわ! 休みだったらどうする!?」
「僕が家に行くよ。幼馴染だし、男同士だし。アールも話しやすいはず」
「でもトーレくんだけってどうなんでしょう… 同じ男同士でも、トーレくんは私とラブラブじゃないですか。恋人と上手くいってる人が慰めに来るのって、一歩間違えれば死体蹴りですよ」
「…私も行く。アールの感情が見えればきっと役に立つ…」
「そうね。幼馴染枠としてならアリね。急に休んで心配したって事にすれば良いわ」
「誰が休んだのだ?」
耳元で問いかけられ、シューラは椅子から転げ落ちそうになった。
「おはよう」
悠々と挨拶してきたアウクトル。いつもの自信満々な彼だ。
失恋の悲壮感は一片も見当たらない。見当たらないどころか、むしろ機嫌が良さそうに感じる。
空元気なのか? 精一杯の虚勢なのか?
それにしてはイキイキし過ぎではないか?
ショックが大き過ぎておかしくなった?
混乱が一同を支配した。
ハッとしたアミが、アウクトルの死角に移動した。手をパタパタするジェスチャーをするが、全くわからない。
内容はわからないが、何かを伝えたいことだけはわかった。
「早速で悪いが。俺はやることがある。休むと教師に伝えておいてくれ」
要件だけ言い残し、アウクトルは転移した。
「何あれ!? 予想と全然違うんですけど!」
「…あれは本心。アールは上機嫌」
「はあ!!??」
「トーレくん。昨日アウクトル様が失恋したというのは本当なんですよね?」
「そうだよ。そうなんだけど…なんだか自信がなくなってきた」
フォンスはハッキリ否定した。
彼がアウクトルに恋愛感情を抱いている素振りはなかった。
自分達の会話は漏らすことなくアウクトルは聞いていたはずだし、誤解が生まれる余地はない…筈。
=========
その日、トーレは悶々としながら授業を受けた。
何度も昨日の会話を脳内で反芻する。
徐々に彼の顔色は悪くなっていった。
「トーレくん、大丈夫ですか…?」
恋人の異変に気がついたシェリが声をかける。
「昨日、僕はフォンスさんにアールの事を好きかどうか聞いたんだ。もしかしたら、僕の聞き方が悪かったのかもしれない」
あの会話は中断された。
今思い返せば、好きか嫌いかの2択を迫っていた。トーレはアウクトルの友人で、フォンスはアウクトルの支援を受けている。
フォンスは好きだと答えたが、あの状況ではそう言わざるをえなかったのでは?
自分の所為で新たな誤解が生まれてしまったのかもしれない。
トーレの胃がキリキリ痛んだ。
「トーレくんの所為とは限りません。考えていても解決しませんし、店長さんに直接聞きましょう」
=========
昼休み。
4人を出迎えたフォンスは、相変わらず異次元の美形だ。
他の客の迷惑になってはいけないと思ったが、自分達の他には1グループしか来店していない。
しかしそのグループが問題だった。
まさかの四天王オールスター。
何故学園のカフェに、魔界の重鎮たちが雁首揃えて鎮座しているのか理解不能。
四天王は1階のテーブル席で、無言でコーヒーを飲んでいる。
恐らく他の客がいないのは、彼らの重々しい空気に押されての事だろう。
「無理よ。他の方々とご一緒されているなら、公務中の可能性があるもの」
「孫だからといって、軽々しく声をかけることはできません」
ジュメリ姉妹に視線が集まるが、二人とも拒否をした。
謎の四天王大集合は置いておき、彼らは本題に入った。
「あの――僕の聞き方が悪くて、また誤解が生まれていたらと思って」
項垂れるトーレに、フォンスはその後の顛末を語った。
「お互いに男が恋愛対象ではないと確認をした。その上で、彼には新しい相手を見つけるように言って、俺とは良き隣人の距離でいることを提案した」
容赦がない。
誤解の余地を与えず、完膚なきまでに叩き潰している。
トーレは胃痛から解放されたが、全員に疑問が残った。
何故アウクトルは上機嫌だったんだ?
「設定として、失恋を知っているのはトーレだけ。アウクトルが自分から話したら、とにかく傾聴する。否定、遮るのは絶対ダメ」
「場所はどうする…?」
「我が家の離れを準備しています。宿泊も可能です」
朝の教室では、アウクトルの友人たちにより作戦会議が行われていた。
議題はズバリ「失恋したアウクトルを慰める方法」。
全ての経緯を知っているのはトーレだけだ。しかし昨日、強制転移の直前に蒼白で慌てるアウクトルの姿をシェリは目撃している。
下手に誤魔化すくらいなら、情報共有して対処した方が良いと判断した。
「……アール来ないね」
間も無くHRだが、アウクトルはまだ登校していない。
「しまった! 今日休みかもしれない!」
単なる失恋ではない。付き合っていると勘違いしていたという特大の黒歴史だ。
傷心で休みどころか、家に引きこもってもおかしくない。
「考えてなかったわ! 休みだったらどうする!?」
「僕が家に行くよ。幼馴染だし、男同士だし。アールも話しやすいはず」
「でもトーレくんだけってどうなんでしょう… 同じ男同士でも、トーレくんは私とラブラブじゃないですか。恋人と上手くいってる人が慰めに来るのって、一歩間違えれば死体蹴りですよ」
「…私も行く。アールの感情が見えればきっと役に立つ…」
「そうね。幼馴染枠としてならアリね。急に休んで心配したって事にすれば良いわ」
「誰が休んだのだ?」
耳元で問いかけられ、シューラは椅子から転げ落ちそうになった。
「おはよう」
悠々と挨拶してきたアウクトル。いつもの自信満々な彼だ。
失恋の悲壮感は一片も見当たらない。見当たらないどころか、むしろ機嫌が良さそうに感じる。
空元気なのか? 精一杯の虚勢なのか?
それにしてはイキイキし過ぎではないか?
ショックが大き過ぎておかしくなった?
混乱が一同を支配した。
ハッとしたアミが、アウクトルの死角に移動した。手をパタパタするジェスチャーをするが、全くわからない。
内容はわからないが、何かを伝えたいことだけはわかった。
「早速で悪いが。俺はやることがある。休むと教師に伝えておいてくれ」
要件だけ言い残し、アウクトルは転移した。
「何あれ!? 予想と全然違うんですけど!」
「…あれは本心。アールは上機嫌」
「はあ!!??」
「トーレくん。昨日アウクトル様が失恋したというのは本当なんですよね?」
「そうだよ。そうなんだけど…なんだか自信がなくなってきた」
フォンスはハッキリ否定した。
彼がアウクトルに恋愛感情を抱いている素振りはなかった。
自分達の会話は漏らすことなくアウクトルは聞いていたはずだし、誤解が生まれる余地はない…筈。
=========
その日、トーレは悶々としながら授業を受けた。
何度も昨日の会話を脳内で反芻する。
徐々に彼の顔色は悪くなっていった。
「トーレくん、大丈夫ですか…?」
恋人の異変に気がついたシェリが声をかける。
「昨日、僕はフォンスさんにアールの事を好きかどうか聞いたんだ。もしかしたら、僕の聞き方が悪かったのかもしれない」
あの会話は中断された。
今思い返せば、好きか嫌いかの2択を迫っていた。トーレはアウクトルの友人で、フォンスはアウクトルの支援を受けている。
フォンスは好きだと答えたが、あの状況ではそう言わざるをえなかったのでは?
自分の所為で新たな誤解が生まれてしまったのかもしれない。
トーレの胃がキリキリ痛んだ。
「トーレくんの所為とは限りません。考えていても解決しませんし、店長さんに直接聞きましょう」
=========
昼休み。
4人を出迎えたフォンスは、相変わらず異次元の美形だ。
他の客の迷惑になってはいけないと思ったが、自分達の他には1グループしか来店していない。
しかしそのグループが問題だった。
まさかの四天王オールスター。
何故学園のカフェに、魔界の重鎮たちが雁首揃えて鎮座しているのか理解不能。
四天王は1階のテーブル席で、無言でコーヒーを飲んでいる。
恐らく他の客がいないのは、彼らの重々しい空気に押されての事だろう。
「無理よ。他の方々とご一緒されているなら、公務中の可能性があるもの」
「孫だからといって、軽々しく声をかけることはできません」
ジュメリ姉妹に視線が集まるが、二人とも拒否をした。
謎の四天王大集合は置いておき、彼らは本題に入った。
「あの――僕の聞き方が悪くて、また誤解が生まれていたらと思って」
項垂れるトーレに、フォンスはその後の顛末を語った。
「お互いに男が恋愛対象ではないと確認をした。その上で、彼には新しい相手を見つけるように言って、俺とは良き隣人の距離でいることを提案した」
容赦がない。
誤解の余地を与えず、完膚なきまでに叩き潰している。
トーレは胃痛から解放されたが、全員に疑問が残った。
何故アウクトルは上機嫌だったんだ?
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