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1000年前から愛してる
あなたの番です
帰宅した俺をアウクトルが出迎えた。
「大丈夫だ」
そう言い残した直後に、彼女は姿を消した。
転移ではない。
テレビの電源を消すように、彼女の存在そのものが消えた。
残された腕輪が地面に落ちる。
彼女がいた場所に残されたのは小さな光。以前話した通り、自分に異変があれば即座に子供を転移させるよう設定していたのだろう。
「そういうことか」
背後から響いた声に振り向くと、そこにはアウクトル・ゲネリスが立っていた。
「お前――」
「安心しろ。分体と同期した事で、今までの記憶も取得した」
「安心しろって……」
「時間遡行魔術と、お前との魂のリンクは俺が引き継いだ。残りの役目も俺が代わりに果たそう」
「じゃあ。アウクトルは」
「お前にとっては、あの分体がアウクトルなのだな」
皮肉げに吐き捨てるが、言葉の響きとは反対に彼の表情は弱々しい。
「問題ない。全てが終われば。俺が時間遡行を解除する。一度リンクを切る必要があるが、未来で再構築された分体と再び契約すれば良い」
「……」
「この光が俺たちの第一子か。四天王に優劣をつけぬ為、全て揃ってから誕生させる」
アウクトルは腕輪を拾い上げると、当然のように自分の腕に装着した。漂っていた光は嬉しそうに彼に擦り寄った。
「――残りの3人は」
「今度はお前の番だ。俺たちは対等なのだろう」
仕方がない。この時代の魔王を女にする訳にはいかない。
あと、俺自身があの一連の流れを繰り返すのが嫌というのもある。
向けられた魔術を大人しく受け入れた。
でも言わせてもらうけど、アウクトルが1人で俺が3人だろ?
対等であっても、平等じゃないよな絶対!
そして俺は女になった。
=========
女体化した俺はアウクトルに連れられて、魔王城へ移動した。
今後はこの城で生活することになる。
街で色々調べたとは言え、俺は素人だ。戦々恐々することなく、プロによる出産のサポートを受けられるのは素直にありがたい。
周囲を納得させるために、不本意だが妻役を引き受ける事も了承した。
子供複数作るけど、単なる協力関係とか説明難しいからな。
女体化したアウクトルは早々に妊娠したので、専らワンピースと部屋履きで過ごしていた。
俺は妊娠するまで、男の服で良いかと思っていたけど、自前の衣類はサイズが違い過ぎて着れなかった。
今の俺の体格は、ヴォイソスに近い。
彼女はお嬢様だったので、上等で上品なドレスが標準装備だった。
ヴォイソスが来ていたドレスのデザインを真似すれば間違いはないだろう。
この時代はコルセット全盛期だが、俺の故郷は脱コルセットが半分くらい浸透していた。
俺は女性のファッションに詳しくないが、ちょっと前衛的なデザインくらいに受け取られるはずだ。
女体化直後にアウクトルにデザイン画を見せたら、ノリノリで魔術で作成してくれた。
ついでにシャツとズボンも頼んだけど拒否された。ケチめ。
「ちょっと待て」
魔族たちが集められている広間に向かう途中、彼の腕を取り胸で挟む。
「……何をしている」
「女性はよくこの姿勢をとるから、よほど楽なのかと思ったんだが……そうでもないな」
「……後でその女どもの名前を教えろ」
「いちいち覚えていない」
「……くれぐれも俺以外にはするな」
「お前にもしない。支えとしても微妙だし、密着し過ぎて歩きにくい」
普通のエスコートの方がマシだ。
=========
その日、魔王城に登城する者は他日に比べて少なかった。
最近の魔王城は、7日毎に休息日が設けられている。
正式に公布された訳ではなく、城の主が7日毎に丸1日姿を消すので暗黙の了解でそうなった。
休息日の主君の行方は誰も知らない。
夜、城に戻った主君は毎回上機嫌だ。その後は日が経つにつれ機嫌が低下。そして次の休息日が近づくと浮き足立つ。
姿を消している間に何をしているのか、臣下達は気になったが主君が語ろうとしないのであれば踏み込むことは憚られた。
ある休息日の夜、魔王は全ての魔族を召集した。
一斉招集など前代未聞。もしや他族との開戦宣言か。不安を抱きながら駆けつけた彼らが目にしたのは、主君とその傍に立つ人間の女。
凄みすら感じる美貌の持ち主だ。大地の色を持つ豊かな髪は緩やかに弧を描き、無造作に流されている。理知的な茜色の瞳。コルセットのないドレスを身に纏い、大胆な曲線を描く肢体を惜し気もなく晒している。
まさに至高の魔王の隣に立っても見劣りしない存在感。
「お前達に紹介しよう。我が伴侶だ」
広間にどよめきが広がる。
寝耳に水の者もいれば、最近の主君の様子から薄々その存在を察していたものまで様々。しかし、予測していた者達もまさか相手が人間だとは思わなかった。
「俺たちの間には既に子もいる。今後、更に増える予定だ」
続く電撃発表に魔族達は驚けば良いのか、祝えば良いのか場は混乱を極めた。
「ーー畏れながら我が君に申し上げます。その者は人族ではございませんか」
「そうだ。しかしこの世界の人族ではない。異世界の人間だ。お前達の知る人族とは別物と心得よ」
異世界という謎の単語に、またざわめきが生まれた。「別の世界とは一体」「どちらにせよ人間ではないか」等々。
「お前達の戸惑い、わからぬでもない」
魔王の一声で、広間の騒めきが鎮まる。魔族であれば、何人たりとも魔王の発言を遮ることは叶わない。
「俺が他種族から妻を娶ることに納得出来ぬ者もいるだろう」
確かに不満を抱く者は多いが、それを表に出すような不心得者はいない。魔族にとって魔王の意志は最優先。彼が決めたことであれば、内心どう思おうと受け入れるのが魔族だ。
「お前達に、その目で我が伴侶を見極め、受け入れる機会をやろう――」
そして魔王は、魔王妃VS魔族の格闘大会の開催を宣言した。
なんで!!!???
「大丈夫だ」
そう言い残した直後に、彼女は姿を消した。
転移ではない。
テレビの電源を消すように、彼女の存在そのものが消えた。
残された腕輪が地面に落ちる。
彼女がいた場所に残されたのは小さな光。以前話した通り、自分に異変があれば即座に子供を転移させるよう設定していたのだろう。
「そういうことか」
背後から響いた声に振り向くと、そこにはアウクトル・ゲネリスが立っていた。
「お前――」
「安心しろ。分体と同期した事で、今までの記憶も取得した」
「安心しろって……」
「時間遡行魔術と、お前との魂のリンクは俺が引き継いだ。残りの役目も俺が代わりに果たそう」
「じゃあ。アウクトルは」
「お前にとっては、あの分体がアウクトルなのだな」
皮肉げに吐き捨てるが、言葉の響きとは反対に彼の表情は弱々しい。
「問題ない。全てが終われば。俺が時間遡行を解除する。一度リンクを切る必要があるが、未来で再構築された分体と再び契約すれば良い」
「……」
「この光が俺たちの第一子か。四天王に優劣をつけぬ為、全て揃ってから誕生させる」
アウクトルは腕輪を拾い上げると、当然のように自分の腕に装着した。漂っていた光は嬉しそうに彼に擦り寄った。
「――残りの3人は」
「今度はお前の番だ。俺たちは対等なのだろう」
仕方がない。この時代の魔王を女にする訳にはいかない。
あと、俺自身があの一連の流れを繰り返すのが嫌というのもある。
向けられた魔術を大人しく受け入れた。
でも言わせてもらうけど、アウクトルが1人で俺が3人だろ?
対等であっても、平等じゃないよな絶対!
そして俺は女になった。
=========
女体化した俺はアウクトルに連れられて、魔王城へ移動した。
今後はこの城で生活することになる。
街で色々調べたとは言え、俺は素人だ。戦々恐々することなく、プロによる出産のサポートを受けられるのは素直にありがたい。
周囲を納得させるために、不本意だが妻役を引き受ける事も了承した。
子供複数作るけど、単なる協力関係とか説明難しいからな。
女体化したアウクトルは早々に妊娠したので、専らワンピースと部屋履きで過ごしていた。
俺は妊娠するまで、男の服で良いかと思っていたけど、自前の衣類はサイズが違い過ぎて着れなかった。
今の俺の体格は、ヴォイソスに近い。
彼女はお嬢様だったので、上等で上品なドレスが標準装備だった。
ヴォイソスが来ていたドレスのデザインを真似すれば間違いはないだろう。
この時代はコルセット全盛期だが、俺の故郷は脱コルセットが半分くらい浸透していた。
俺は女性のファッションに詳しくないが、ちょっと前衛的なデザインくらいに受け取られるはずだ。
女体化直後にアウクトルにデザイン画を見せたら、ノリノリで魔術で作成してくれた。
ついでにシャツとズボンも頼んだけど拒否された。ケチめ。
「ちょっと待て」
魔族たちが集められている広間に向かう途中、彼の腕を取り胸で挟む。
「……何をしている」
「女性はよくこの姿勢をとるから、よほど楽なのかと思ったんだが……そうでもないな」
「……後でその女どもの名前を教えろ」
「いちいち覚えていない」
「……くれぐれも俺以外にはするな」
「お前にもしない。支えとしても微妙だし、密着し過ぎて歩きにくい」
普通のエスコートの方がマシだ。
=========
その日、魔王城に登城する者は他日に比べて少なかった。
最近の魔王城は、7日毎に休息日が設けられている。
正式に公布された訳ではなく、城の主が7日毎に丸1日姿を消すので暗黙の了解でそうなった。
休息日の主君の行方は誰も知らない。
夜、城に戻った主君は毎回上機嫌だ。その後は日が経つにつれ機嫌が低下。そして次の休息日が近づくと浮き足立つ。
姿を消している間に何をしているのか、臣下達は気になったが主君が語ろうとしないのであれば踏み込むことは憚られた。
ある休息日の夜、魔王は全ての魔族を召集した。
一斉招集など前代未聞。もしや他族との開戦宣言か。不安を抱きながら駆けつけた彼らが目にしたのは、主君とその傍に立つ人間の女。
凄みすら感じる美貌の持ち主だ。大地の色を持つ豊かな髪は緩やかに弧を描き、無造作に流されている。理知的な茜色の瞳。コルセットのないドレスを身に纏い、大胆な曲線を描く肢体を惜し気もなく晒している。
まさに至高の魔王の隣に立っても見劣りしない存在感。
「お前達に紹介しよう。我が伴侶だ」
広間にどよめきが広がる。
寝耳に水の者もいれば、最近の主君の様子から薄々その存在を察していたものまで様々。しかし、予測していた者達もまさか相手が人間だとは思わなかった。
「俺たちの間には既に子もいる。今後、更に増える予定だ」
続く電撃発表に魔族達は驚けば良いのか、祝えば良いのか場は混乱を極めた。
「ーー畏れながら我が君に申し上げます。その者は人族ではございませんか」
「そうだ。しかしこの世界の人族ではない。異世界の人間だ。お前達の知る人族とは別物と心得よ」
異世界という謎の単語に、またざわめきが生まれた。「別の世界とは一体」「どちらにせよ人間ではないか」等々。
「お前達の戸惑い、わからぬでもない」
魔王の一声で、広間の騒めきが鎮まる。魔族であれば、何人たりとも魔王の発言を遮ることは叶わない。
「俺が他種族から妻を娶ることに納得出来ぬ者もいるだろう」
確かに不満を抱く者は多いが、それを表に出すような不心得者はいない。魔族にとって魔王の意志は最優先。彼が決めたことであれば、内心どう思おうと受け入れるのが魔族だ。
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