魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

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ようこそ実力主義のグランピングへ<蛇足編3>

僕の眼前のヤバイやつ

 少年の荷物にあったロープを使い、無事遭難者を救助した。
 てっきり感動の再会を繰り広げるのかと思いきや、彼等の顔には安堵よりも焦りがある。

「早くしないと階層主が出るぞ」
「こんなに大規模に破壊したんだ。複数体出現する可能性があるね」
「深層の階層主だなんて……ああ、もうお終いだ!」

 何やら不味い状況らしい。

「すまない。俺がした事なので、責任は取る」
「……アンタには悪いが、俺たちにはどうしようもない。本来は万全の準備をして1体ずつ対峙するんだ」
「アンタもしかして…!」
「仕方ないだろう! 俺たち――」

 何やら喧嘩が始まってしまった。大柄な男の言葉を遮るように、空気を震わせる鳴き声が響いた。

 複数箇所から叫び声のようなものや、唸るようなものと様々。巨大な生き物の鳴き声に聞こえるが、反響して分かりにくくなっているだけでこれは警報か?
 音が大きすぎて、俺たちは大声を出さないと会話は不可能になった。
 階層主とはフロアの管理人の事だろう。自動再生する施設だが、派手にやりすぎるとマナー違反判定されるようだ。

「どうすれば良い? 謝るべきか? 賄賂を渡すべきか?」
「倒してくださいっ!!」
「そんなことできる訳ないだろう! 真面目に働いている管理人だぞ。自分の都合が悪くなったからと、暴力を振るうなんてとんでもない!」
「何言ってるんですか!?」

 何言ってるんだは此方の台詞だ。そんな事したら、出禁どころか逮捕されるだろ!

「ああ来た!」

 真っ青になった少年が叫んだ。
 少年につられて天井が在った場所を見上げると、ファンタジーに出てくるようなドラゴンが大口開けていた。

 *

 ドラゴンの後に続くように、次々と大型のファンタジー定番モンスターシリーズが襲いかかってきた。
 攻撃を避けながら話しかけたが、意思の疎通は不可能だった。
 悪いのは俺だが、コスプレ集団に倒して良いとお墨付きをもらっているし、此処までされたら正当防衛に転じても良いだろう。
 思考を切り替えた俺は彼等を殲滅した。最後の方に、初日に何度も現れた骨っぽいのが出てきたが、慣れた相手なのでサクッと片付けた。

 =========

 荷物持ちの少年・リオは目前の光景が信じられなかった。

 リオが所属する【ラトリー】はBランクの冒険者パーティーだ。
 Bではあるが、限りなくAに近いので主にダンジョン中層で活動している。
 去年まではAランクだったが、リーダーのマーセが病に倒れたためBに降格となった。

「いつもより深い場所に潜り、マーセの治療薬の材料を手に入れる」
 これが今回の遠征の目的だ。

 マーセの妹である治療師ナリー、支援攻撃両方行える魔法戦士テラン。そしてリーダー代行のダン、サブリーダーのアヴァン。
 各々がそれなりの力量をもつ冒険者のため、堅実に探索を進めていた。
 しかし安全なダンジョン探索など存在しない。自分達は危険を冒すからこそ、冒険者と呼ばれるのだ。
 道中軽口を叩くことはあっても、油断はなかった。
 あんなことが起こるなんて誰も予想できなかった――。


 *


 突如ダンジョンそのものが悲鳴を上げるかのような振動が冒険者たちを襲った。
 不規則な鳴動に崩れる天井。足元も不安定だが、落ちてくる岩石の方に意識が逸れていたのは確かだ。
 滝まではそれなりに距離があったのに、崖が崩れるのは一瞬だった。

 よりによってダンとテランが深層に落ちた。
 アヴァンはダンの繰り上がりでサブリーダーになったものの、元々は支援職だ。それなりに戦えるが、それなりでしかない。
 他の誰が落ちても問題だったが、冒険者歴が一番長く経験値が高いテランと、戦闘力が一番高いダンの損失は大きい。

 残されたメンバーは決断を迫られたが、自分達で捜索を決行する事にした。
 他所のパーティーに地上に向けた伝言を依頼し、その場で共同捜索してくれる冒険者を募った。
 斧使いのゼルドナ、女戦士のメルセが協力してくれることになった。
 二人はそれぞれダン、ナリーの友人だ。

 *

 深層は高ランクパーティーでも易々と踏み入ることはできない、恐ろしい場所だ。
 中層と深層では別物と言って良いくらい環境が過酷になり、モンスターの強さも跳ね上がる。
 Sランクパーティーが入念に準備をし、年数回と予定を組んで探索する場所が深層だ。

 そんな場所に、無防備に落ちてしまった時点で生存は諦めるべきかもしれないが、幸か不幸か二人は冒険者の街の中でも指折りの実力者。自力での生還は無理でも、生き残っている可能性はある。

 低レベル冒険者は同行しても助けになるどころか、足手まといになってしまう。
 高レベルのゼルドナ、メルセ以外の冒険者達は、支援物資の提供と各所への伝令役を請け負ってくれた。

 *

 運良く深層探索中の高ランクパーティーと遭遇することができれば希望はある。
 一階層降りるたびにメンバーの消耗が激しく、他力本願だがリオは都合の良い希望に縋るしかなかった。誰も口にしなかったが、他のメンバーも同じ思いだっただろう。

 ポーションは尽きた。前衛の3人ーー特に元々戦闘職ではないアヴァンは限界が近い。
 ナリーは口数が減り、話しかけても反応しないことが増えた。
 80階層に降りた時は、モンスターよりも人の気配を探し求めていた。お願いだから、誰か助けてほしい。

 だから、その人の姿を目にした時リオは幻覚だと思ったのだ。
 静かに佇む男性はリオが見た事がないほど整った容姿をしていた。陰鬱な洞窟が幻想的に見えた程だ。
 服装も変わっていた。少し風変わりだが、どちらかといえば街中を歩くような感じの軽装。とても生死の選択を迫られる危険地帯に入る格好ではない。
 幻かと思った彼は、リオ達に気さくに挨拶をすると塩を借りたいと言い出した。

 *

 男はフォンスと名乗った。
 彼と話していると、ここがダンジョンの危険区域であることを忘れそうになる。
 彼の態度は公園でピクニックでもしているかのようだ。

 ナリーがフォンスに依頼をしたら、あっさりダンとテランが見つかった。
 彼は喫茶店の店員と申告したが、それは本当に飲食店なのか?
 実は何かの隠語で、国の極秘機関や特別な役職を指しているのではないか?
 少なくともリオは、無詠唱であんな威力の魔法を使う人物を見た事がない。古代のアーティファクトでも、魔法に長けたエルフでも不可能だ。

 フォンスがダンジョン広域を破壊したことで、階層主達を刺激してしまった。
 縦に破壊したのが更に不味い。
 自分達の姿は他の階層から丸見えだ。今更姿を隠しても手遅れだ。
 非情だがゼルドナがフォンスを囮にしようとしたが、それは叶わなかった。

 *

 理解し難い事だが、フォンスはエンシェントドラゴンと会話しようと試みていた。
 いともたやすくブレスや尾による攻撃を避けながら話しかける。
 やがて諦めたのか話しかけるのを止めると、次の瞬間にはドラゴンは倒れていた。

 ドラゴンに続き、各層の階層主がフォンスに襲いかかったが、彼は最低限の動きで攻撃を交わすと、どの個体も1~2撃であっさり倒してしまった。

 最終的にはダンジョンの守護者が現れたが、雑魚モンスターをあしらうが如く仕留めてしまった。
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