75 / 84
ようこそ実力主義のグランピングへ<蛇足編3>
だが断る ※
酒場で出した結論は「俺にその気がないなら、応じなくて正解。蒸し返したり、深く思い悩む必要もない」だった。
人に断言してもらったことで気が楽になった。
*
俺にあてがわれた部屋には、アウクトルが居た。
旅行中に彼を蔑ろにしたことは、俺の都合なので素直に謝罪した。
アウクトルは不機嫌というよりは葛藤している様子だった。
おそらく俺を許すかどうか迷っているのだろう。
座っている彼の正面に移動する。
「今回の旅行。お前なりに色々考えてくれたんだろう。勝手に予定を変えて悪かった」
「……酒場で女と飲んできたんじゃないのか?」
「女性はメルセが途中で合流しただけだ」
「……」
女遊びしに行ったと思っていたのか。
顔の広いダン達と一緒にいたからか、やたら女性冒険者に声をかけられたが、俺の目的は相談することだったので相席は断った。
「……埋め合わせをすると言ったな」
「ああ。何でも言え」
俺がやったことは二人で遊びに行ったのに、出先で知り合った連中と勝手に盛り上がったようなものだ。
どんな温厚な友人だろうと怒るだろう。絶交されても仕方ない行為だ。
*
手を伸ばしてくるアウクトルを見つめる。
脳震盪起こすレベルで頭叩かれたり、スイカを砕きそうな威力でデコピンされるかもしれないが甘んじて受けよう。
アウクトルは俺の顎を指で固定すると、親指で唇に触れた。
確かめるように下唇をゆっくりとなぞる。
俺が動かないからか、口の中に指を入れることは無いがフニフニと軽く力を加えた。
アウクトルは何も言わないが、彼が何を要求しているのかは明らかだ。
俺の全身から冷や汗が出る。
「ベッドへ…」
無反応な俺に焦れたのか、アウクトルは決定的な言葉を放った。
行っちゃダメだ、行っちゃダメだ、行っちゃダメだ、行っちゃダメだ、行っちゃダメだ!
――ヤるしかない!! 今…! ここで!!
俺にその気がないなら、応じなくて正解。
しかし今回は例外だ。何でもすると自分から宣言している。
「れ、例外中の例外だ。いいな」
「ああ……」
危険なギャンブルだが、俺は賭け事に強いから大丈夫!
俺はアウクトルの肩に手を置くと軽く力を込めた、ベッド行きは絶対に阻止だ。
彼の足の隙間にさり気無く膝を置き、ソファから立てないようにする。
要望を完全に無視するのは不可能だ。ならば気付かないふりをして、ある程度発散させる!
「目を閉じろ」
素直に従ったのを見届けて、薄く開かれた唇に触れる。
過去で散々やったので、つい条件反射で舌を入れてしまった。
「お邪魔しました~」と引き抜きたいが、アウクトルが舌を絡めてきたので応じた。
殊更時間をかけてゆっくりと動く。丁寧にしているのではなく、これは時間稼ぎだ。
ここで刺激しすぎると、後に引けなくなるので加減が重要だ。
もどかしいのか、膝に彼の股間が当てられるが全力で無視する!
尻を撫でられるが、全力で無視する!!
*
お互いの息遣いしか聞こえない空間に、ノックの音が響く。
「はいっ!」
俺が応じたから当然なのだが、扉が開く。
音速で移動し、扉がこれ以上開かないよう足で止める。
「フォンスさん?」
「気にしないでくれ! どうしたんだ!?」
部屋の中が見えないよう、隙間に体を捩じ込んでダンの視界を塞ぐ。
「マーセさんの快気祝いに、ケーキもらったんです。日持ちしないから、食べられそうなら下に来てください」
「わかった。すぐに行く」
「アウクトルさんの部屋をノックしたんですが反応がなくて。もう寝ちゃったんですかね?」
「念の為、俺からも声をかけておこう」
俺はこれを待っていた。
実は階段を登る際に、マーセの友人が仕事終わりに菓子折りを持参したのを目撃したのだ。
彼等は善良だから、必ず俺たちに声をかけてくると思った。問題はそれが今日か、明日かだが見事俺は賭けに勝った。
扉が閉じるのを待って、アウクトルを振り返る。
「ざ、残念だが、今日はここまでだ」
=========
アウクトルは、俺で童貞を捨てることを諦めていなかった。
そりゃそうだ。
アラサー童貞に「焦らなくて良い」と言われたら、逆に焦る。存在そのものが反面教師だ。
彼には申し訳ないが、中断された事で俺は助かった。
その後は大人しくしてくれたので、当面は大丈夫だろう……大丈夫だよな?
*
魔界に戻り、傍のアウクトルを見る。
メルセに指摘されたが、俺たちは距離が近いらしい。確かに一歩横に移動したら確実にぶつかりそうな距離だが、過去では膝に乗ったりしていたから至近距離の自覚は無かった。
「どうした?」
「俺とお前の距離が近いと、ある人に指摘されたんだ。俺にはその自覚がないんだが、お前はどうだ?」
「……何ら問題ない距離だ。今後も特に意識する必要はあるまい」
表情は変わらないが、アウクトルの声は彼の機嫌が良い事を示している。
表情豊かなタイプではないが、付き合いが長い所為か、ちょっとした変化が分かるようになった気がする。
人に断言してもらったことで気が楽になった。
*
俺にあてがわれた部屋には、アウクトルが居た。
旅行中に彼を蔑ろにしたことは、俺の都合なので素直に謝罪した。
アウクトルは不機嫌というよりは葛藤している様子だった。
おそらく俺を許すかどうか迷っているのだろう。
座っている彼の正面に移動する。
「今回の旅行。お前なりに色々考えてくれたんだろう。勝手に予定を変えて悪かった」
「……酒場で女と飲んできたんじゃないのか?」
「女性はメルセが途中で合流しただけだ」
「……」
女遊びしに行ったと思っていたのか。
顔の広いダン達と一緒にいたからか、やたら女性冒険者に声をかけられたが、俺の目的は相談することだったので相席は断った。
「……埋め合わせをすると言ったな」
「ああ。何でも言え」
俺がやったことは二人で遊びに行ったのに、出先で知り合った連中と勝手に盛り上がったようなものだ。
どんな温厚な友人だろうと怒るだろう。絶交されても仕方ない行為だ。
*
手を伸ばしてくるアウクトルを見つめる。
脳震盪起こすレベルで頭叩かれたり、スイカを砕きそうな威力でデコピンされるかもしれないが甘んじて受けよう。
アウクトルは俺の顎を指で固定すると、親指で唇に触れた。
確かめるように下唇をゆっくりとなぞる。
俺が動かないからか、口の中に指を入れることは無いがフニフニと軽く力を加えた。
アウクトルは何も言わないが、彼が何を要求しているのかは明らかだ。
俺の全身から冷や汗が出る。
「ベッドへ…」
無反応な俺に焦れたのか、アウクトルは決定的な言葉を放った。
行っちゃダメだ、行っちゃダメだ、行っちゃダメだ、行っちゃダメだ、行っちゃダメだ!
――ヤるしかない!! 今…! ここで!!
俺にその気がないなら、応じなくて正解。
しかし今回は例外だ。何でもすると自分から宣言している。
「れ、例外中の例外だ。いいな」
「ああ……」
危険なギャンブルだが、俺は賭け事に強いから大丈夫!
俺はアウクトルの肩に手を置くと軽く力を込めた、ベッド行きは絶対に阻止だ。
彼の足の隙間にさり気無く膝を置き、ソファから立てないようにする。
要望を完全に無視するのは不可能だ。ならば気付かないふりをして、ある程度発散させる!
「目を閉じろ」
素直に従ったのを見届けて、薄く開かれた唇に触れる。
過去で散々やったので、つい条件反射で舌を入れてしまった。
「お邪魔しました~」と引き抜きたいが、アウクトルが舌を絡めてきたので応じた。
殊更時間をかけてゆっくりと動く。丁寧にしているのではなく、これは時間稼ぎだ。
ここで刺激しすぎると、後に引けなくなるので加減が重要だ。
もどかしいのか、膝に彼の股間が当てられるが全力で無視する!
尻を撫でられるが、全力で無視する!!
*
お互いの息遣いしか聞こえない空間に、ノックの音が響く。
「はいっ!」
俺が応じたから当然なのだが、扉が開く。
音速で移動し、扉がこれ以上開かないよう足で止める。
「フォンスさん?」
「気にしないでくれ! どうしたんだ!?」
部屋の中が見えないよう、隙間に体を捩じ込んでダンの視界を塞ぐ。
「マーセさんの快気祝いに、ケーキもらったんです。日持ちしないから、食べられそうなら下に来てください」
「わかった。すぐに行く」
「アウクトルさんの部屋をノックしたんですが反応がなくて。もう寝ちゃったんですかね?」
「念の為、俺からも声をかけておこう」
俺はこれを待っていた。
実は階段を登る際に、マーセの友人が仕事終わりに菓子折りを持参したのを目撃したのだ。
彼等は善良だから、必ず俺たちに声をかけてくると思った。問題はそれが今日か、明日かだが見事俺は賭けに勝った。
扉が閉じるのを待って、アウクトルを振り返る。
「ざ、残念だが、今日はここまでだ」
=========
アウクトルは、俺で童貞を捨てることを諦めていなかった。
そりゃそうだ。
アラサー童貞に「焦らなくて良い」と言われたら、逆に焦る。存在そのものが反面教師だ。
彼には申し訳ないが、中断された事で俺は助かった。
その後は大人しくしてくれたので、当面は大丈夫だろう……大丈夫だよな?
*
魔界に戻り、傍のアウクトルを見る。
メルセに指摘されたが、俺たちは距離が近いらしい。確かに一歩横に移動したら確実にぶつかりそうな距離だが、過去では膝に乗ったりしていたから至近距離の自覚は無かった。
「どうした?」
「俺とお前の距離が近いと、ある人に指摘されたんだ。俺にはその自覚がないんだが、お前はどうだ?」
「……何ら問題ない距離だ。今後も特に意識する必要はあるまい」
表情は変わらないが、アウクトルの声は彼の機嫌が良い事を示している。
表情豊かなタイプではないが、付き合いが長い所為か、ちょっとした変化が分かるようになった気がする。
あなたにおすすめの小説
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
引きこもり魔法使いが魔法に失敗したら、ヤンデレ補佐官が釣れた。
零壱
BL
──魔法に失敗したら、脳内お花畑になりました。
問題や事件は何も起こらない。
だが、それがいい。
可愛いは正義、可愛いは癒し。
幼児化する主人公、振り回されるヤンデレ。
お師匠やお師匠の補佐官も巻き込み、時には罪のない?第三者も巻き込み、主人公の世界だけ薔薇色・平和が保たれる。
ラブコメです。
なんも考えず勢いで読んでください。
表題作、2話、3話、5話、6話再掲です。
4話(噂の王子視点)と、師匠×トーリの馴れ初め番外編は同人誌に掲載(シリアスなので)
他サイトにも再掲しています。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。