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注文の多いオーベルジュ<蛇足編4>
いつから1人だと錯覚していた?
ギリギリセーフ。
転移前に、ダンが持ってたポーションを奪って正解だった。
「大丈夫か? 自分の名前言えるか?」
「ラム様だぁ~ 尊いよぉぉ」
ダメだ。錯乱している。
「良い匂いがするぅぅ」
少年は寝転んだ状態で俺に抱きついたので、股間に顔を埋める形になった。深呼吸するの止めてくれ、マジで。
*
ポーションで回復した少年・秋元優太は高校生かと思ったら、大学二年生だった。
お前アウクトルより年上なのかよ。
「ほら! これがラム様です。フォンスさんにそっくりでしょう?」
「そうか……?」
すっかり元気になった優太が、スマホの写真を見せてくる。彼の写真フォルダはスクショだらけで、人が全然写っていない。
ぼっちの波動を感じる。勝手に親近感を抱いてしまう。
彼の言う「ラム様」とはゲームのキャラクターだった。
「めちゃくちゃ美形で強いんです。恒常だけどTier1なので、リセマラする人多いんですよ。実装から2年経ってるのに評価落ちないって凄くないですか!?」
「そうか……」
「コーヒー大好きキャラなのに猫舌なんです。ギャップ可愛すぎか」
「猫だからな」
「猫じゃなくて黒豹族です! アニマルシードの最上位カーストですよ!」
「そうか……」
優太はこのキャラが俺にそっくりだと主張するが、とてもそう思えない。
プロフィール画像見たが、身長も年齢も全然違う。
何よりラム様とやらは獣人で黒い猫耳と尻尾がついている。
美形というのもよく分からない。他のキャラクターも一緒に載っているのだが、絵が綺麗なので老若男女全員美形だ。
*
仲間に捨てられて落ち込まれるよりは、笑顔で萌え語りされる方がマシなので聞き役に徹しているが段々辛くなってきた。
「俺色々ゲームやってるけどアニシがメインゲーなんです。身内団だからイベント頑張って走らないといけないのに、もうできないんだな……」
ん? 身内団?
「マルチの途中で事故にあっちゃったし、皆責任感じてないと良いな」
皆?
「身内団とは何だ?」
「リアルの友達で構成されたギルドです。ビジネス団は30人だけど、ウチは17人だから2人分走らないと勝てないんです」
俺の頭は真っ白になった。
君は16人も友達がいるのか?
マルチというのは、もしかして友達と通信プレイしているという意味か?
裏切られた! 自撮りに興味ないだけで、友達沢山じゃないか畜生!!
*
「……俺ここにきた時、ちょっと透けてたんです。多分召喚前に死んだからだと思います。気持ち悪いですよね……?」
「いや」
「それだけじゃなくて、俺だけ戦闘系の能力無くて。せめて出来る事はやろうと思ったんですけど、全然上手くできなくて」
「違う。君は死んでいない」
「でも、」
「君は体と魂が別の世界に飛ばされたんだ。瀕死だった君の体は別の世界に行っていた。そこで適切な治療を受けて一命を取り留めている」
「……」
「君が半透明だった理由はそれだ。魂が長時間離れていると肉体は保たない。回復した肉体が後から合流した為、今の君は魂と肉体が揃った状態なんだ。体だけじゃなく、荷物にも変化があったんじゃないか?」
「……確かに此処にきた時は、スマホもゲームも電源入らなくて。ちょと前に何故か復活したんです」
「君はこの先どうしたい? この世界で生きるか? 元の世界へ帰りたいか?」
「……此処は嫌です。事故後に消えているので、元の世界に戻るのも難しいと思います」
「追加の選択肢だ。君の体を保護してくれた世界へ行くか?」
「俺は何の役にも……」
「君の体を手当てしたのは、ダンジョン都市にいる冒険者パーティーだ。意識を取り戻さない君を根気よく治療して、君の体が消えた時には本気で心配していた。見返りを求めて治療した訳ではない」
少なくともダンとナリーは善意100%だ。
「あそこは移民が多い。求められるのは必ずしも戦闘力だけじゃない」
「……良いんでしょうか? まだ神獣も残っているのに……」
「神獣は全て倒した」
「え? 3体残ってたんですよ?」
「もう終わったんだ。そもそも君に神獣を倒す義務はない。やりたければやれば良い程度のものだ」
*
パチパチと薪の燃える音だけが響く。
俺も優太も無一文なので、今日は野営だ。
「……俺そのダンジョン都市へ行きたいです。冒険者の人達にお礼を言いたい。迷惑じゃなければ恩返ししたい」
恩返しの頭に「迷惑じゃなければ」を付けるとは、随分卑屈だ。
好きなものを語っているときは溌剌としていたし、この自己評価の低さは召喚後の環境が原因だな。
「決まりだな。俺は自分の転移しかできない。これから君を転移させることができる人を連れてくる」
「えっと。異世界ってそんなポンポン行き来できるものなんですか?」
「どうなんだろうな。行き来の際にタイムラグが起きるので、もしかしたら暫く1人で過ごす事になるかもしれない」
<収納空間>から野営に必要そうなものを取り出した。彼の状況を考えると人里は避けた方が良いだろう。
「1人で大丈夫か?」
「キャンプサークルに入っているので、これだけあれば何とかなると思います」
「そうか……」
ゲームだけじゃないんだな! リア充かよ!
転移前に、ダンが持ってたポーションを奪って正解だった。
「大丈夫か? 自分の名前言えるか?」
「ラム様だぁ~ 尊いよぉぉ」
ダメだ。錯乱している。
「良い匂いがするぅぅ」
少年は寝転んだ状態で俺に抱きついたので、股間に顔を埋める形になった。深呼吸するの止めてくれ、マジで。
*
ポーションで回復した少年・秋元優太は高校生かと思ったら、大学二年生だった。
お前アウクトルより年上なのかよ。
「ほら! これがラム様です。フォンスさんにそっくりでしょう?」
「そうか……?」
すっかり元気になった優太が、スマホの写真を見せてくる。彼の写真フォルダはスクショだらけで、人が全然写っていない。
ぼっちの波動を感じる。勝手に親近感を抱いてしまう。
彼の言う「ラム様」とはゲームのキャラクターだった。
「めちゃくちゃ美形で強いんです。恒常だけどTier1なので、リセマラする人多いんですよ。実装から2年経ってるのに評価落ちないって凄くないですか!?」
「そうか……」
「コーヒー大好きキャラなのに猫舌なんです。ギャップ可愛すぎか」
「猫だからな」
「猫じゃなくて黒豹族です! アニマルシードの最上位カーストですよ!」
「そうか……」
優太はこのキャラが俺にそっくりだと主張するが、とてもそう思えない。
プロフィール画像見たが、身長も年齢も全然違う。
何よりラム様とやらは獣人で黒い猫耳と尻尾がついている。
美形というのもよく分からない。他のキャラクターも一緒に載っているのだが、絵が綺麗なので老若男女全員美形だ。
*
仲間に捨てられて落ち込まれるよりは、笑顔で萌え語りされる方がマシなので聞き役に徹しているが段々辛くなってきた。
「俺色々ゲームやってるけどアニシがメインゲーなんです。身内団だからイベント頑張って走らないといけないのに、もうできないんだな……」
ん? 身内団?
「マルチの途中で事故にあっちゃったし、皆責任感じてないと良いな」
皆?
「身内団とは何だ?」
「リアルの友達で構成されたギルドです。ビジネス団は30人だけど、ウチは17人だから2人分走らないと勝てないんです」
俺の頭は真っ白になった。
君は16人も友達がいるのか?
マルチというのは、もしかして友達と通信プレイしているという意味か?
裏切られた! 自撮りに興味ないだけで、友達沢山じゃないか畜生!!
*
「……俺ここにきた時、ちょっと透けてたんです。多分召喚前に死んだからだと思います。気持ち悪いですよね……?」
「いや」
「それだけじゃなくて、俺だけ戦闘系の能力無くて。せめて出来る事はやろうと思ったんですけど、全然上手くできなくて」
「違う。君は死んでいない」
「でも、」
「君は体と魂が別の世界に飛ばされたんだ。瀕死だった君の体は別の世界に行っていた。そこで適切な治療を受けて一命を取り留めている」
「……」
「君が半透明だった理由はそれだ。魂が長時間離れていると肉体は保たない。回復した肉体が後から合流した為、今の君は魂と肉体が揃った状態なんだ。体だけじゃなく、荷物にも変化があったんじゃないか?」
「……確かに此処にきた時は、スマホもゲームも電源入らなくて。ちょと前に何故か復活したんです」
「君はこの先どうしたい? この世界で生きるか? 元の世界へ帰りたいか?」
「……此処は嫌です。事故後に消えているので、元の世界に戻るのも難しいと思います」
「追加の選択肢だ。君の体を保護してくれた世界へ行くか?」
「俺は何の役にも……」
「君の体を手当てしたのは、ダンジョン都市にいる冒険者パーティーだ。意識を取り戻さない君を根気よく治療して、君の体が消えた時には本気で心配していた。見返りを求めて治療した訳ではない」
少なくともダンとナリーは善意100%だ。
「あそこは移民が多い。求められるのは必ずしも戦闘力だけじゃない」
「……良いんでしょうか? まだ神獣も残っているのに……」
「神獣は全て倒した」
「え? 3体残ってたんですよ?」
「もう終わったんだ。そもそも君に神獣を倒す義務はない。やりたければやれば良い程度のものだ」
*
パチパチと薪の燃える音だけが響く。
俺も優太も無一文なので、今日は野営だ。
「……俺そのダンジョン都市へ行きたいです。冒険者の人達にお礼を言いたい。迷惑じゃなければ恩返ししたい」
恩返しの頭に「迷惑じゃなければ」を付けるとは、随分卑屈だ。
好きなものを語っているときは溌剌としていたし、この自己評価の低さは召喚後の環境が原因だな。
「決まりだな。俺は自分の転移しかできない。これから君を転移させることができる人を連れてくる」
「えっと。異世界ってそんなポンポン行き来できるものなんですか?」
「どうなんだろうな。行き来の際にタイムラグが起きるので、もしかしたら暫く1人で過ごす事になるかもしれない」
<収納空間>から野営に必要そうなものを取り出した。彼の状況を考えると人里は避けた方が良いだろう。
「1人で大丈夫か?」
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「そうか……」
ゲームだけじゃないんだな! リア充かよ!
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