魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

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注文の多いオーベルジュ<蛇足編4>

止まるんじゃねぇぞ

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 帰還先の魔界はまだ夜だった。
 夜中なので当然だが、オーベルジュの灯は落ちている。街灯がない為、光源と呼べるものは月光のみ。
 ふと空を見上げると満天の星空。
 周囲に民家がないから星がよく見える。

「俺の故郷も、こんな星空だったな」

 星に詳しい人間からしたら星座が全然違うのだろうが、俺は興味がないので同じに見える。

「懐かしいか」
「それなりに」

 側のアウクトルに問われたので、素直に答える。
 魔界に来てからはずっと都市部に暮らしていたので、こんなにハッキリ星が見えなかったし、そもそも空を見上げる事自体が無かった。

 *

 どちらが言い出した訳でもなく、自然と俺達は草原に寝転び夜空を見上げた。
 虫も活動しない時間帯なのか、サワサワと草が風にそよぐ音だけが聞こえる。

「お前は動きがあるものを眺めるのが好きだったな」
「止めろ!!」

 空に向かってアウクトルが手を伸ばしたので、慌ててしがみついた。
 あっぶね。今コイツ何しようとした?
 エンタメ感覚で星の軌道変えるとか洒落にならないぞ。

「流星群……」
「良いから! 俺はこうして見てるだけで充分だ!」

 気を抜くとやらかしそうなので、腕を抱き込んで拘束する。
 筋肉ホールド亜型だ。

「……随分濃い一日だったな」
「嫌だったか?」
「別に。偶にはこんな日があっても良いんじゃないかと思う」
「そうか」


 =========


「上手くいきましたね」
「マンネリ防止にはやはりハプニングです。ロマンチックとラッキースケベを織り交ぜることによって、常にフォンスさんを翻弄するんです」

 顔を見合わせて微笑み合う二人。
 満足げに語るのはインファとポステだ。

「やり過ぎると慣れてしまったりウンザリされるので、偶にはアリくらいに留めるのが肝要です」
「フォンスは、偶にはありだと言っていた。つまり今回は成功なんだな」
「はい! 結婚はゴールではありません。結婚した事に安心してときめきを忘れたらダメです!」
「『ウチは喧嘩もなく仲良くやってる』『レスだけど気にしてない』これらの台詞が出たら危険信号です。浮気・離婚の盛大なフラグです!」

 今回の合宿は、文芸サークルの持ち込み企画だ。
 例年合宿しているなんて嘘だ。
 運動部へのポーズ依頼も過激な指示が明るみになって、去年の時点で学校から禁止されるようになった。
 現在、文芸サークルは運動部へ接近禁止令が出ている。

 彼女達は筆が早いので、夏の新刊はとっくに入稿済み。
 今回は魔王様のラブラブ生活に貢献すると同時に、彼女達の欲望を満たす両者Win-Winの作戦だった。

 魔王城の一室で、三人は次なる企画の為に今回の反省点を分析する。

「フォンスさんとラッキースケベの相性が悪いのが今後の課題ですね」
「ラッキースケベは恥じらいと動揺が肝ですからね。フォンスさんの場合、一瞬動揺してもすぐ平常状態に戻ってしまいますし、身体能力高すぎてハプニング系は成功率低すぎます。あのポーズとか、普通の人がやったら1分経たずに顔面騎乗状態になる筈なのに、10分微動だにせずキープですよ!」
「衝突ネタも悉く回避されましたね。最高したのが転移時の胸元ダイブのみ」
「成功ついでに、お前達の言っていた『甘える』『拗ねる』を実践したが反応が悪かった」

 アウクトルの言葉に、二人はぎこちなく笑った。

「それはまあ……」
「アウクトル様の威風堂々たるお姿は素晴らしいと思うのですが……ちょっとわかりにくいと申しますか」

 正直解説されても「ん?」としか思えない甘え方と拗ね方だ。
 何だ「抱きしめても良いぞ」って。
 時間に関しては「もぅ遅~い!」のノリなのだろうが、どう贔屓目に見ても気付けないレベル。

「そうだ資料! 参考資料お渡しします!」
「きっとアウクトル様なら直ぐに習得されます!」

 二人は積極的に案を出す。
 今回それなりに美味しい思いができたアウクトルは満足気だ。

 日中の色々が効いたのか、夜にはフォンスからアウクトルに抱きついた状態で星空観察をした。
 風呂も邪魔さえ入らなければ、良い所まで行けた気がする。

 フォンスにとってはとんだ迷惑だが、彼女達の欲望が尽きぬ限り第二、第三の企画が生まれる事だろう。
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