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絶海の孤島編
前世からニュース見ない派
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(肉体の成長に悩む美少年。非常に美味しいシチュエーションだけど、どう展開させるか難しいな)
使用人に続き、新たな妄想対象を得たラインハルトだが上等な素材の活かし方に悩んだ。
ラインハルトが求めているのはBLでありピンではない。妄想するためには相手が必要だ。
(友人よりは使用人の方がリアリティがあるか……)
真剣な顔をして下衆なことを考えるラインハルトだが、側から見たら物思いに耽る美形だ。転生時に神から与えられた最大のギフトは、何を考えようと誤魔化してくれるこの容姿だろう。
*
朝食はバイキング形式だった。
第1陣の参加者は11人。
使用人の数が少ないので、一人一人にサーブするのは難しいのだろう。
食後はコレクションが収納されているホールに移動して、配られた用紙に己の見解を書きこむ。
用紙には品番が印字されており、その品の扱いに対してフリーに書き込めるようになっている。
品番を記したプレートを添えたコレクションは自由に見て回れるよう配置されており、参加者によって専門が違うので、各々自分の得意分野のみ記入すれば良い。
数が多いので丸々2日間、時間が与えられている。
書き込んだ紙は明日の夕食前に回収。それまでであれば訂正可能。
訂正するつもりが無ければ、本日提出しても構わない。
明後日からは集計結果をもとに、詳細を確認すべき部分があれば当主が個別に聴取する。
状況によっては複数人が呼ばれ、まとめて意見を求められるらしい。
(専攻していただけあって、保管方法は問題ないな)
ノエル本人に専門知識があるため、成金の道楽とは違う。
劣化要因となる光、温度、湿度に配慮し、学術的資料として博物館並みに保管されている。
鑑定のために今はケースから出されているが、ショーケースは博物館でよく見る仕様なので専門業者に特注したのだろう。床に厳重に固定されているので盗難防止になっている反面、自力での配置換えは困難だ。
衣類に関しては、特注なのであろうマネキンに装着させた状態での保管。色移りを防ぐためにマネキンに彩色はなし。型崩れを防ぎ、当時の状態を再現しているのは良いのだが、着用すると平置きに比べ、重力により一部に圧力がかかるので長期保管となると悩む所だ。
*
昼食は外でガーデンパーティー形式だった。
ずっと照明の弱い室内で過ごしていたので、庭に出た時の開放感は別格だった。
(エルが居るな)
トリル、ゲルスの2人に挟まれるように昨夜大浴場で会った少年が立っている。
3人ともミステリアスな美形なので、耽美系の名に相応しいBL本の表紙のような立ち姿だ。
息子が居るならとビエルサ・フランシスの姿を探すがまだ会場入りしていないようだ。
「当館の主人のビエルサ・フランシスです。この度は僕の招待に応じていただき有り難うございます。不躾なお願いにも関わらず、遠路遥々お越しいただいた先生方には大変感謝しております――」
(エルってビエルサの愛称かよ! 若いとは聞いていたけど、若過ぎだろう!)
堂々と挨拶を始めた少年にラインハルトは驚いたが、同じように驚いている者は居ない。
子供が当主であることを当然のような顔をして受け止めている彼等は、事前にフランシス侯爵家について情報を集めていたのだろう。
(やってしまった……!)
ラインハルトの趣味とは関係ない部分では人間に興味が薄い悪癖が仇となった。
*
ガーデンパーティなので席も自由。
気軽に雑談しながら食事できるので、ラインハルトもビエルサの置かれた状況を小耳に挟むことができた。
後は素知らぬ顔をして知ったかぶりをするしかないが、昨晩ビエルサ本人に対しラインハルトはフランシス家の縁者かどうか聞いてしまっている。
(エルが動揺してたのは、僕の質問内容に戸惑ったからか)
ノエルが身内を馬車の事故で亡くした事は、館に来る途中で送迎の人間から聞いていたがそれは息子夫婦だった。
一人息子だったので、孫のビエルサがノエルの後継者になった。
息子に続きたった1人の孫にまで何かあっては耐えられないと、ノエルはビエルサを屋敷から出さずに育てた。
親戚からビエルサの後見人を選ぶ話も出たが、他ならぬビエルサ本人が拒否。天才的な頭脳の持ち主である彼は顧問弁護士を味方につけ、甘い汁を吸おうと群がってきた親族を自ら撃退した。その姿を見てノエルも、ビエルサが後見人なしで当主になることを了承した。
ビエルサが親族を退けたのは彼が12歳の時のこと。
幼い少年の快進撃はロドストの社交界では割と有名な話のようだ。
(間に2~3国挟んでいたら言い訳ができるけど、隣国じゃ難しいよな)
せめてビエルサが美少年だと知っていたら、ラインハルトも興味を持ったかもしれないがそんな情報の入り方はしない。
(ニュースなんて不安を煽るだけの物だとチェックしない主義だったけど、今後はちゃんと新聞に目を通そう)
ラインハルトが反省していると、一通り挨拶を済ませたビエルサが近寄ってきた。
「先生、昨晩ぶりですね」
「ええ。その……すみません、僕の勉強不足で」
「何の事でしょうか? それよりも午前中、何か気になる品はありましたか?」
体は子供だが、中身は大人なビエルサはラインハルトの無知を無かったことにしてくれた。ラインハルトの失態を軽く流してくれたので、話題を逸らすための質問だと分かっていても喜んで回答した。
意外なことにビエルサはラインハルトの返答に、しっかりと自分の意見を述べた。
「もしかしてコレクション内容を覚えているんですか?」
(単に覚えているだけじゃなく、この反応だと歴史の知識も深いはずだ)
少なくとも考古学科のゼミ生並みの知識。それに対しかなり鋭い考察も行っているので、もしかしたら彼等以上かもしれない。
「一番詳しいと自負しているのは、ラインハルト先生が研究されている古代マーロンです。他は一般的な範囲です。お爺様に教わりました」
(天才というのは誇張では無いな)
「お爺様とは仲が良かったんですね」
「幼い頃に両親が他界したので、僕にとってノエル・フランシスは祖父であり、父であり、尊敬すべき先代当主です」
「遅れましたが、この度はお悔やみ申し上げます」
「肺炎になる寸前までかくしゃくとしていたので、祖父の弱った姿を見ていないせいかあまり実感がないんです。平均寿命を大きく超えてましたし、やりたい事は片っ端からやるタイプの人だったので悔いは無かったと思います。僕も祖父のように生きたいです」
ビエルサの独特な雰囲気のせいか、前向きな意見だがラインハルトはどうにも危うい印象を受けた。
「……僕は好きな人に影響を受けやすいんです」
「ああ、それで」
大浴場、古代マーロン史は祖父の影響なのだろう。
「好きな人の好きなものを、自分まで好きになるというのは心理学的に同一化と呼ばれるらしいです」
「防衛機制の一種ですね」
「先生お詳しいですね」
「一般的な範囲ですよ。僕には同一化と摂取の違いは分かりません」
同一化は自分と相手を無意識のうちに混同し、相手の行動や考え方を自己のものと誤認する現象だ。幼少期は親が、思春期は恋愛対象や憧憬対象が対象となり易い。
摂取は断片的に相手を取り入れるらしい。これもまた親や、憧れている相手が対象になる。
(僕が読んだ本は、この2つに関して似たような事を実例に書いていたから区別できないんだよな)
確かなのは行き過ぎると危険という事だけだ。
対象者と自分の境目が分からなくなったり、対象者を失った場合に鬱になったりする。
使用人に続き、新たな妄想対象を得たラインハルトだが上等な素材の活かし方に悩んだ。
ラインハルトが求めているのはBLでありピンではない。妄想するためには相手が必要だ。
(友人よりは使用人の方がリアリティがあるか……)
真剣な顔をして下衆なことを考えるラインハルトだが、側から見たら物思いに耽る美形だ。転生時に神から与えられた最大のギフトは、何を考えようと誤魔化してくれるこの容姿だろう。
*
朝食はバイキング形式だった。
第1陣の参加者は11人。
使用人の数が少ないので、一人一人にサーブするのは難しいのだろう。
食後はコレクションが収納されているホールに移動して、配られた用紙に己の見解を書きこむ。
用紙には品番が印字されており、その品の扱いに対してフリーに書き込めるようになっている。
品番を記したプレートを添えたコレクションは自由に見て回れるよう配置されており、参加者によって専門が違うので、各々自分の得意分野のみ記入すれば良い。
数が多いので丸々2日間、時間が与えられている。
書き込んだ紙は明日の夕食前に回収。それまでであれば訂正可能。
訂正するつもりが無ければ、本日提出しても構わない。
明後日からは集計結果をもとに、詳細を確認すべき部分があれば当主が個別に聴取する。
状況によっては複数人が呼ばれ、まとめて意見を求められるらしい。
(専攻していただけあって、保管方法は問題ないな)
ノエル本人に専門知識があるため、成金の道楽とは違う。
劣化要因となる光、温度、湿度に配慮し、学術的資料として博物館並みに保管されている。
鑑定のために今はケースから出されているが、ショーケースは博物館でよく見る仕様なので専門業者に特注したのだろう。床に厳重に固定されているので盗難防止になっている反面、自力での配置換えは困難だ。
衣類に関しては、特注なのであろうマネキンに装着させた状態での保管。色移りを防ぐためにマネキンに彩色はなし。型崩れを防ぎ、当時の状態を再現しているのは良いのだが、着用すると平置きに比べ、重力により一部に圧力がかかるので長期保管となると悩む所だ。
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昼食は外でガーデンパーティー形式だった。
ずっと照明の弱い室内で過ごしていたので、庭に出た時の開放感は別格だった。
(エルが居るな)
トリル、ゲルスの2人に挟まれるように昨夜大浴場で会った少年が立っている。
3人ともミステリアスな美形なので、耽美系の名に相応しいBL本の表紙のような立ち姿だ。
息子が居るならとビエルサ・フランシスの姿を探すがまだ会場入りしていないようだ。
「当館の主人のビエルサ・フランシスです。この度は僕の招待に応じていただき有り難うございます。不躾なお願いにも関わらず、遠路遥々お越しいただいた先生方には大変感謝しております――」
(エルってビエルサの愛称かよ! 若いとは聞いていたけど、若過ぎだろう!)
堂々と挨拶を始めた少年にラインハルトは驚いたが、同じように驚いている者は居ない。
子供が当主であることを当然のような顔をして受け止めている彼等は、事前にフランシス侯爵家について情報を集めていたのだろう。
(やってしまった……!)
ラインハルトの趣味とは関係ない部分では人間に興味が薄い悪癖が仇となった。
*
ガーデンパーティなので席も自由。
気軽に雑談しながら食事できるので、ラインハルトもビエルサの置かれた状況を小耳に挟むことができた。
後は素知らぬ顔をして知ったかぶりをするしかないが、昨晩ビエルサ本人に対しラインハルトはフランシス家の縁者かどうか聞いてしまっている。
(エルが動揺してたのは、僕の質問内容に戸惑ったからか)
ノエルが身内を馬車の事故で亡くした事は、館に来る途中で送迎の人間から聞いていたがそれは息子夫婦だった。
一人息子だったので、孫のビエルサがノエルの後継者になった。
息子に続きたった1人の孫にまで何かあっては耐えられないと、ノエルはビエルサを屋敷から出さずに育てた。
親戚からビエルサの後見人を選ぶ話も出たが、他ならぬビエルサ本人が拒否。天才的な頭脳の持ち主である彼は顧問弁護士を味方につけ、甘い汁を吸おうと群がってきた親族を自ら撃退した。その姿を見てノエルも、ビエルサが後見人なしで当主になることを了承した。
ビエルサが親族を退けたのは彼が12歳の時のこと。
幼い少年の快進撃はロドストの社交界では割と有名な話のようだ。
(間に2~3国挟んでいたら言い訳ができるけど、隣国じゃ難しいよな)
せめてビエルサが美少年だと知っていたら、ラインハルトも興味を持ったかもしれないがそんな情報の入り方はしない。
(ニュースなんて不安を煽るだけの物だとチェックしない主義だったけど、今後はちゃんと新聞に目を通そう)
ラインハルトが反省していると、一通り挨拶を済ませたビエルサが近寄ってきた。
「先生、昨晩ぶりですね」
「ええ。その……すみません、僕の勉強不足で」
「何の事でしょうか? それよりも午前中、何か気になる品はありましたか?」
体は子供だが、中身は大人なビエルサはラインハルトの無知を無かったことにしてくれた。ラインハルトの失態を軽く流してくれたので、話題を逸らすための質問だと分かっていても喜んで回答した。
意外なことにビエルサはラインハルトの返答に、しっかりと自分の意見を述べた。
「もしかしてコレクション内容を覚えているんですか?」
(単に覚えているだけじゃなく、この反応だと歴史の知識も深いはずだ)
少なくとも考古学科のゼミ生並みの知識。それに対しかなり鋭い考察も行っているので、もしかしたら彼等以上かもしれない。
「一番詳しいと自負しているのは、ラインハルト先生が研究されている古代マーロンです。他は一般的な範囲です。お爺様に教わりました」
(天才というのは誇張では無いな)
「お爺様とは仲が良かったんですね」
「幼い頃に両親が他界したので、僕にとってノエル・フランシスは祖父であり、父であり、尊敬すべき先代当主です」
「遅れましたが、この度はお悔やみ申し上げます」
「肺炎になる寸前までかくしゃくとしていたので、祖父の弱った姿を見ていないせいかあまり実感がないんです。平均寿命を大きく超えてましたし、やりたい事は片っ端からやるタイプの人だったので悔いは無かったと思います。僕も祖父のように生きたいです」
ビエルサの独特な雰囲気のせいか、前向きな意見だがラインハルトはどうにも危うい印象を受けた。
「……僕は好きな人に影響を受けやすいんです」
「ああ、それで」
大浴場、古代マーロン史は祖父の影響なのだろう。
「好きな人の好きなものを、自分まで好きになるというのは心理学的に同一化と呼ばれるらしいです」
「防衛機制の一種ですね」
「先生お詳しいですね」
「一般的な範囲ですよ。僕には同一化と摂取の違いは分かりません」
同一化は自分と相手を無意識のうちに混同し、相手の行動や考え方を自己のものと誤認する現象だ。幼少期は親が、思春期は恋愛対象や憧憬対象が対象となり易い。
摂取は断片的に相手を取り入れるらしい。これもまた親や、憧れている相手が対象になる。
(僕が読んだ本は、この2つに関して似たような事を実例に書いていたから区別できないんだよな)
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