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最悪な日
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最悪だ。
「なんで、あなたがここにいるの……」
下校時間。いつもと同じく利恵と帰り道をともにしていた都子は、途中出会った人物を見て大きなため息をついた。
津田千彰は相変わらずにこにこ笑っていた。今朝見せた別れ際の表情はすでになく、この数時間でもう調子を取り戻したらしい。
「津田千彰……」
呆然としたまま利恵が彼を凝視してつぶやいた。
「あれ、君は俺のこと知ってるんだ」
楽しそうに、口を開く彼。
「都子ちゃん、俺のこと知らなかったんだよ。柚木さんからも言っといてよ、結構ショックだったんだから」
「え、どうしてわたしの名前……」
びっくりしたように利恵が千彰を見つめた。千彰はそんな彼女の様子ににっこりと笑う。
「都子ちゃんの友達でしょ? 知らないわけないじゃん」
「あ、そっか……」
「そっかじゃないでしょ!」
思わずつっこみを入れてしまった都子は、その勢いのまま千彰に顔を向けた。
「ちょっと、本当にあなた何なのよ! ストーカーで訴えるわよっ、もう何の関係もないんだからついてこないで!」
「……関係なくなんかないよ」
都子の言葉に動じることなく、千彰は真っ直ぐと都子を見つめて言った。
「朝の返事、納得できないし」
「だってあなたわたしのことなんか好きじゃないでしょ」
そう言うと、千彰はきょとんとした表情を作った。
「は? 好きだよ。都子ちゃんのこと、超好き」
「あのねー……」
他人が聞けば劇的な告白なのかもしれなかったが、都子の耳には茶番劇にしか聞こえなかった。
「初対面で好きになれるはずないでしょ。ちょっとあなた頭の方大丈夫?」
「うわ、ちょ、ちょっと都子……!」
それは言い過ぎだよ、と隣で利恵が慌てる。
一方言われた本人はまったく気にした様子も見せず、腕を組みながら首をかしげていた。
「あー、確かに、頭が悪いのは認める」
「あっそ」
「でも俺たち初対面じゃないよ」
珍しく――というか初めて見る千彰の真面目な顔に、都子はぐっと息を詰めた。
「都子ちゃんは覚えてないのか……ま、しょーがないっちゃしょうがないね」
「都子……」
じっと、利恵が都子のことを見つめてきた。その表情には千彰に対しての哀れみが含まれている。千彰のあの悲しそうな顔、自分はひねくれているんだろうか、どうしても演技にしか思えない。
「ちゃんと、1回話してみなよ。都子も何か思い出すかもしれないし……わたし、今日は先帰るから、ね? ちゃんと話してみて」
「ちょ、利恵?!」
「バイバイ、また明日ね」
都子が止めるのも聞かず、利恵は駅の方へ駆けていってしまった。
どうして。どうしてこんなことになったんだろう。
本当に、今日は最悪の日になりそうだ。
「なんで、あなたがここにいるの……」
下校時間。いつもと同じく利恵と帰り道をともにしていた都子は、途中出会った人物を見て大きなため息をついた。
津田千彰は相変わらずにこにこ笑っていた。今朝見せた別れ際の表情はすでになく、この数時間でもう調子を取り戻したらしい。
「津田千彰……」
呆然としたまま利恵が彼を凝視してつぶやいた。
「あれ、君は俺のこと知ってるんだ」
楽しそうに、口を開く彼。
「都子ちゃん、俺のこと知らなかったんだよ。柚木さんからも言っといてよ、結構ショックだったんだから」
「え、どうしてわたしの名前……」
びっくりしたように利恵が千彰を見つめた。千彰はそんな彼女の様子ににっこりと笑う。
「都子ちゃんの友達でしょ? 知らないわけないじゃん」
「あ、そっか……」
「そっかじゃないでしょ!」
思わずつっこみを入れてしまった都子は、その勢いのまま千彰に顔を向けた。
「ちょっと、本当にあなた何なのよ! ストーカーで訴えるわよっ、もう何の関係もないんだからついてこないで!」
「……関係なくなんかないよ」
都子の言葉に動じることなく、千彰は真っ直ぐと都子を見つめて言った。
「朝の返事、納得できないし」
「だってあなたわたしのことなんか好きじゃないでしょ」
そう言うと、千彰はきょとんとした表情を作った。
「は? 好きだよ。都子ちゃんのこと、超好き」
「あのねー……」
他人が聞けば劇的な告白なのかもしれなかったが、都子の耳には茶番劇にしか聞こえなかった。
「初対面で好きになれるはずないでしょ。ちょっとあなた頭の方大丈夫?」
「うわ、ちょ、ちょっと都子……!」
それは言い過ぎだよ、と隣で利恵が慌てる。
一方言われた本人はまったく気にした様子も見せず、腕を組みながら首をかしげていた。
「あー、確かに、頭が悪いのは認める」
「あっそ」
「でも俺たち初対面じゃないよ」
珍しく――というか初めて見る千彰の真面目な顔に、都子はぐっと息を詰めた。
「都子ちゃんは覚えてないのか……ま、しょーがないっちゃしょうがないね」
「都子……」
じっと、利恵が都子のことを見つめてきた。その表情には千彰に対しての哀れみが含まれている。千彰のあの悲しそうな顔、自分はひねくれているんだろうか、どうしても演技にしか思えない。
「ちゃんと、1回話してみなよ。都子も何か思い出すかもしれないし……わたし、今日は先帰るから、ね? ちゃんと話してみて」
「ちょ、利恵?!」
「バイバイ、また明日ね」
都子が止めるのも聞かず、利恵は駅の方へ駆けていってしまった。
どうして。どうしてこんなことになったんだろう。
本当に、今日は最悪の日になりそうだ。
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