【完結】転生魔女、逆ハー狙いの転生聖女から国を救います

瀬里@SMARTOON8/31公開予定

文字の大きさ
1 / 32

少女、この世界を知る

しおりを挟む
 この世界の在り方に気づいたのは、七つの時だった。

 前世の記憶をもって転生した沙耶は、ラノベによくある王女や貴族令嬢としてではなく、ある村の農家の娘「サアヤ」として三人兄妹の末っ子に生まれた。
 村娘といいながらも結構可愛い容姿をしていたので、周りに勇者になりそうな男の子がいないかちょっと期待してしまったけれど、そんなことはもちろんなくて。
 この世界がどんな世界かは分からないけれど、とりあえず自分の立ち位置が主役級のそれでないことだけはすぐに悟り、のんびり暮らせそうなことにむしろ安心して日々を送っていた。
 自分を可愛がってくる優しい父母と兄達が大好きだったし、人の悪意にさらされることのない長閑な田舎暮らしをサアヤはかなり気に入っていた。

 そんなサアヤの唯一特筆すべき点と言えば、過去に読んだ本やゲームをただ見たり読んだりできるだけの他愛もないスキルを持っていることだった。お金のかからない読書は、農家の娘の生活に潤いを与えてくれる最大級の娯楽だったから、サアヤは暇な時にはスキルを使ってそれらを純粋に楽しんでいた。
 男に騙された前世の苦い記憶から、大きくなったら一度くらい男を手玉にとるような経験をしてみたいとか、せっかく異世界に転生したんだから、もっとおいしいものを食べたり珍しいものを見たりしたいとは思っていて。
 早く大きくなってこの小さな村を出ていく日を心待ちにしている、そんなほんわかと温かい毎日だった。
 村の片隅に住む農家の小さな子供が知ることのできる世界はとても狭くて、サアヤは、スキルで読むことのできる話と現実の世界に接点があるなどとは思いもしなかったのだ。

 けれど、ある日それが一変する。
 村によくやってくる行商人が時々子供向けに紙芝居をしてくれるのだが、その話がサアヤの知っている話によく似ていたのだ。もしかして、とサアヤは小さな心臓を大きく震わせた。

『ねえ、おじさん。これは本当にあった話なの?』
『そうだよ。二十年前だけど、この国で本当にあった話なんだ。今の王様とお妃さまの話だよ』
『そうなんだ。ひょっとして、この王様の子供の王子様って、**に**できるの?』
『はははっお嬢ちゃんは想像力が豊かだなあ』

 周りの友達にも突飛な発想を馬鹿にされ、予想は違ったのだとその時は笑いあって終わりになった。
 けれど、その夜、両親は帰ってこなかった。
 数日後、傷だらけで帰ってきた両親は、想像したことを人に話してはいけないと、サアヤを抱きしめながらそれだけを告げた。母はその日以来足が不自由になり、サアヤは母の代わりに懸命に家の手伝いをするようになった。
 行商人が何者で両親が誰に何をされたのか、真実はわからない。
 ただ、これだけは分かった。サアヤがスキルで知ったことは「現実」で、ただの平民が知っていてはいけないことだったのだ。
 サアヤは、自分の生まれたこの世界は、決して安穏とした楽園ではなかったことをを知ってしまった。
 それ以来、ひたすら口をつぐんで過ごした。

 だが、サアヤが再び口を開かなければならないことが起こってしまう。
 サアヤの住む村から三つほど離れた国境の村で、隣国との小競り合いが始まったのだ。
 隣国に対し、上流に当たるその村が川に毒を流したことが原因だった。
 けれど。
 ――違う。そうじゃない。それは誤解なの。
 サアヤはその「物語」を知っていたのだ。

 それはある**の物語。
 小さな**により**が起き、国中が*****。
 多くの民が**、******国から*****。
 ****の、*****への物語。

 村の上役に必死に伝えようとするが、もちろん、村娘の言葉に耳を傾ける者はおらず、サアヤはその日、村に来ていた魔女に売られるように連れていかれた。

 以来、故郷へは帰ることはなかった。
 ――生まれ故郷であるその国が滅んだのを、サアヤは、遠く離れた異国の地で知った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

処理中です...