【完結】転生魔女、逆ハー狙いの転生聖女から国を救います

瀬里@SMARTOON8/31公開予定

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番外編 聖女の品格

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感想をくださった皆様ありがとうございました。
近況報告でも報告した通り、この作品が「角川ビーンズ小説大賞Webテーマ部門」で
三次選考通過して、現在読者投票中です。
……なあんて書いてたら、番外編、ここで投稿してないことに気づきました(笑)

投稿版は、デュークが腹黒王子様化してたり、ヴァレリウスが、前半から登場したりなど、少し改稿しております。
「角川ビーンズ小説大賞」で検索するとでてくるので、よろしかったらご覧ください。
気が向いたら、投票までしてくださると嬉しいです。



----------------
「まーりあちゃんは、せーいじょー。きょーうのおつとめ楽しいなー。たらったらったらったたー」

 王都の中心部、中央神殿へと続く石畳の大きな通りを、歌いながら踊るように抜けていくのは、ピンクの髪の聖女、マリアだ。
 古くから門前町として栄えたこの通りには、小さな商店が立ち並び、人通りも多い。
 マリアはパフォーマンスも兼ねて、少し手前で馬車を降り、人々に声をかけながら神殿へと向かう。

「マリア様ー。今日もかわいー」
「ありがとー。マリアうれしー」
「マリアちゃーん。ポーズ決めてー」
「てへ。きゅるん? こおんな感じ?」
「さいっこー!!」
「やーん、みんなもさいっこー。っあいたっ」

 ノリノリでポーズを決めたマリアは、後頭部を扇で叩かれて、頭を抱える。
 一人で先に行ってしまったマリアを、ぜいぜい言いながら追いかけてきたのは、クローディアだった。

「あなたっいい加減になさいなっ。聖女の品格をなんだと思ってらっしゃるの」
「ひーん、お姉さまいたーい。でも、マリアを叱ってくれる、お姉さま、大好き」
「なっなな、あなたはっもうっ」
「おおっ尊い。聖女様二人の微笑ましい絡みが見られるとは。ああ、わざわざこの時間に来たかいがあった」

 マリアは、ちゃんと分かっている。
 マリアが大げさに痛がったり、少しでもクローディアに反発すれば、民衆の怒りがクローディアに向いてしまう。あっという間に悪役令嬢のできあがりだ。
 マリアの大好きなクローディアをそんな不幸な目に合わせられない。
 だから、クローディアに懐いて見せる。
 民衆の気持ちをうまく逸らして百合のデュオを応援したいという気持ちに誘導するのだ。
 そして、民衆は、特に男たちは百合が大好きなのだ。これを利用しない手はない。

「お姉さま、ファンサは重要なんですよー」
「ちょっと何を言ってるかわからわないわ」

 クローディアは、絡みつくマリアに邪険な回答を返しながらも、決して振り払うことはない。
 実はそんなところもマリアは大好きだったりする。

「もうっ、高貴さとか品格とかツンデレ担当はお姉さま。マリアは親しみやすさとかあざとかわいい担当って決めたじゃないですかっ。そんなにぜいぜい言ってたら、お姉さまの高貴さが台無しですわ。ささ、こちらに座って」
「やっぱり何を言っているか分からないけれど……あら、気が利くのね。ありがとう」

 マリアは、周りからよく見えやすいベンチにクローディアを移動させて座らせる。
 ちなみに、周りの人だかりは、聖女デュオの追っかけである。
 マリアがこの体制を敷いてから、確実にマリア達を推してくれるファンが増えた。

「はい、お姉さま、これをお飲みになって。レモンと蜂蜜を炭酸水で割ったものだそうです」
「あら、変わった容器ね。街ではこんなものが流行ってるのね……けほっけほっ」
「あら、お姉さまおこぼしになって」

 マリアがわざとこぼれやすいカップで渡したのに疑わない。ちょろいところもマリアのお気に入りだ。
 いやだわ、恥ずかしいとあわててハンカチを取り出そうとするクローディアの手首をマリアはキュッとつかむ。じっとクローディアの顔を覗き込むと、クローディアの顔は、恥ずかしさからか照れて赤くなり、そっとマリアから目を逸らした。
 そのしぐさと表情は、確実に民衆のツボを捕らえているはずだ。
 ごくり、と周囲から生唾を飲み込む音が聞こえてくる。

(お姉さま、ぐっじょーぶ!!)

「マリアが拭いて差し上げますわ」
「あ、あら、ありがとう」

 マリアは、そのままクローディアの顔に顔を近づける。

(ふふん、これこそ、民衆が求めているもの。百合プレイ。これでマリアとお姉さまの聖女デュオの人気は爆上がりよっ)

 マリアは、クローディア様が口の端からこぼしたレモン水をなめとろうと、クローディアの頬に唇をよせた。

「そこまでだ。マリア嬢」
「ぴぎっ」
「まあ、オスカー様」
「ほう。マリア嬢は何を怯えた子ネズミのようになっているんだ? まるで悪だくみが見つかった時の反応のように見えるが」

(違うわよっ。首根っこをつかみ上げられたら誰でもそうなるわよっ)

「オスカー様、そんなことをおっしゃらないで。マリアは私がこぼしてしまった飲み物を拭いてくれようとしただけですのよ」

 ぜいぜいと気道を確保するマリアの背中をなぜながら、クローディアは優しくマリアを擁護してくれる。
 クローディアの、そんな風にきちんと公平に物事を見られるところもマリアは大好きだ。
 ちょろいけど。

「あの、私が、はしたなくて、がっかりされました?」
「そんなことはない。ただ、そなたの愛らしい顔に触れる権利は、私だけのものにしておきたくてな。――マリア嬢、その役目は婚約者たるこの俺に譲ってくれるな」
「はい、異論はございませんっ」

 既にこの場は、王太子の登場に持っていかれてしまった。
 いつの間にか場の雰囲気は、百合デュオではなく、ロイヤルラブロマンス状態で、周りの群衆は恋する乙女たちで埋め尽くされている。

(まあ、お姉さまのためにはこれもありだわ。でも、マリアはたっいさーん)

「マリア嬢」
「はひっ」
「君が聖女になってから、色々な事件が起き、聖女としての修練をとる時間を与えられなかったのを、私は王太子として非常に心苦しく思っている」
「はあ」
「そこで、君は、クローディアもかつてこなしていた『行』を行ってみてはどうかな」
「え、『行』って何、『行』って」
「そう、そうですわね。いい考えですわ。オスカー様。あれをこなせばマリアも、少し精神的に落ち着くのではないでしょうか」
「ちょっと待って嫌な予感しかしな……」
「心が鍛えられれば、今後ますます聖女としての活動に深みを持たせ、品格を増すことができるでしょう」
「ねえ話をきい……」
「ええ、それでは、私、手配いたしますわ」

 とんとん拍子に話は進んでしまった。


 後日判明する。
 行とは、水行・火行・山行の事だった。
 水行とは、水垢離・滝行。
 火行は、火渡り。
 山行とは、山駆け。
 他にも、写経・読経・座禅

(ちがーうっ。なんか世界観違うから!!)

 マリアは精神の深みではなく、肉体的な逞しさがレベルアップした。

  ◇◇◇◇◇◇

「兄上、やはりあの者が聖女というのは問題があるのではっ」
「まあ、あるだろうな。あの者だけでは問題だろう。しかし、物事には適材適所という言葉がある。クローディアがうまく御するだろう」

 オスカーの執務室に駆け込んできたのは、弟の第二王子ラッセルだった。
 おそらく、マリアが聖女の試練である数カ月にわたる「行」に送り出されたということを聞いたのだろう。

「しかし、彼女はっ、あのような者、聖女に向いているとは思えません。クローディア様がいらっしゃるのですから、もはやあの者は不要なのでは」
「お前の言い分は分かる」

 ラッセルの言い分は、痛いほどわかる。
 ーーしかし、彼の想いをすぐに叶えるわけにはいかないのだ。

「しかし、国が落ち着くまでは、此度の件で活躍した聖女二人の体制は続ける必要がある。……悪いな。さすがに聖女と王族が兄弟続けてすぐにというわけにはいかない。お前が行動に移すのは、少し待ってもらうことになる。余計な虫がつかないようにすることぐらいしか力になれなくて済まないな」
「……っ」

 ラッセルの頬に赤みがさす。
 オスカーが、マリアを数ヶ月、人里離れた場に修行に出したのは、この弟の気持ちを慮っての事だ。隣国のパーセン家子息に向けるマリアの気持ちを知って、弟がやきもきしていたのを知っている。

「ラッセル、実はちょうどお前を呼び出そうとしたところだった。聖女の修練所近くの国有地に鉱山が見つかった。一ヶ月後、調査隊を派遣する。お前が指揮を取れ」
「はっ、はい! 拝命致します」

 ラッセルは、来たときとは全く逆の表情で執務室を去っていった。
 お節介は、血筋かもしれない。オスカーは、素直になれない弟の後ろ姿を見送りながら、もう一人の弟の姿を思い浮かべるのだった。

「あいつにも何か後押しをしなければならないかな」

 おそらく、とある魔女がその表情を見たら、その腹黒さもきっと血筋だ、と叫ぶに違いない。

ーー


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感想 6

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みんなの感想(6件)

芹香
2023.05.21 芹香

番を見つけた…を拝読して、面白かったのでリンクを辿ってこちらに参りました。面白くて一気読み致しましたが、ヒロインが誰と結ばれるかは、ハッキリしなくて終わってて、想像が膨らみます。

王子も良いですが、ヴァレリウスも昔の事を知っていて、ずっと支えてくれていたので 良いなぁ…と思ってしまいました。更には、なんだかんだ言って、ロウガがずっとヒロインを守ってくれてたわけで、実はロウガも押しだったりします。

皆素敵なので、誰と結ばれるかハッキリしないままの方が、それぞれの押しで想像できるから良いかもしれませんね♪

面白い物語を有難うございました。

2023.05.21 瀬里@SMARTOON8/31公開予定

うれしい感想ありがとうございます!
ヒロインが誰を選ぶか、わざとぼかしています。
それぞれのキャラの良さを押さえてくださって、ほんとに嬉しいです。
また書きたいーっとパワーを頂きました!

このお話、カクヨム版では、実は、ちょっとデュークを俺様キャラにしてみたり、ヴァレリウスをもう少し前半に登場させたり少し小変更をかけてます。
もし気になりましたらちょこっと覗いてみてくださいませ。

感想、ありがとうございました!

解除
まり
2023.01.07 まり

完結後に一気読みさせていただきました。
キャラクターも文章もイキイキしていて、次はどうなるの!?とぐいぐい引き込まれました。
マイナスな感想が思い付かず……なのですが、ここではお話が未完だと思うので、続編で完結まで読めたらなあ、というのが個人的な希望です。
黒幕の背景など明かされていないことはもちろんですが、やはり恋愛ものなのでメリルが誰と結ばれるのかが気になります~!
みんな魅力的なので、誰と結ばれるか分からないエンドも余韻があっていいなあ、とは思うのですが。
今のところヴァレリウスが報われなくて健気で、思わず「がんばれー!」とエールを送ってしまいました笑
何でも持っているのに肝心なところで不器用っていうのがかわいいですね✨
デュークもロウガも素敵だし、マリアもおバカ可愛くて好きです♪
楽しいお話をありがとうございました!

2023.01.08 瀬里@SMARTOON8/31公開予定

あたたかい感想ありがとうございます!
ヴァレリウス人気嬉しいです。
現在、書き直しの構成検討中です。
ヴァレリウスの登場回数を増やすリクエストもあるので、前半でもうちょっと登場させようかな、と思ってます。あと、デュークをもちょっと腹黒にする予定です。
マリアちゃん、想像以上にはっちゃけちゃって、キャラが動き出すってこれね! と楽しんで書きました。
また機会がありましたら読んでくださいー!

解除
かなみん
2022.12.27 かなみん

完結おめでとうございます〜
マイナスな部分の評価も募集しているということで。
基本的にとてもテンポ良く読めて楽しかったです。ダレることがなかったのが良いのだと思います。
ただ、強いて言うなら1話から2話が唐突な感じがします。サアヤからメリルの場面転換が時間と場所と平和値など全ての変化が大きいのに対して転換が一瞬過ぎて追いつけない感覚です。
アニメなら空のシーンが挟まるでしょうし、劇なら長めの暗転があるでしょう。
先にメリルの庵の風景描写があると少し追いつけるかもしれません。
そこでワッ!とペースが慌てた以外は特に早すぎて転ぶことも、遅すぎて不必要に焦れるところもなかったと思います。
大変面白かったです。婚約者殿が私はかなりお気に入りなので報われてほしいな。

2022.12.27 瀬里@SMARTOON8/31公開予定

感想ありがとうございます。
アドバイスすごく嬉しいです。
一話二話の場面転換ですね。そう言われると! 確かに、いきなりすぎますね。
とても参考になります。
ありがとうございます。
ヴァレリウス君、推してもらってありがとうございます。
書き直す際には、もうちょっと前の方でも出そうかな・・・。

解除

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