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回収屋
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不幸中の幸いで、俺が意識を失っていたのは一晩だけだった。どうやって判断したかと言うと、焚き火の燃えカスの温度だ。
俺はワイバーンの居なくなった崖から、自分の依頼分の絶壁草を採取して、都市へと帰る。
冒険者ギルドから金を受けとる。金は予想通り20万エルになった。
ここはシンジューシティ。隣にはシブユシティがある。シンジューシティには大陸最大の歓楽街、カブラキ町がある。
3連続でヤれるものをヤりそこねている。
下半身的うっぷんも溜まると言うものだ。
いつもの安い立呑屋で一杯ひっかけることも考えたが、また嫌な気分にされたくない。
俺も異世界に来た当初は、対人間なら無敵と思い、かなり無茶をした。
魔力なしと嫌みを言われてはぶん殴り、酒場でケンカをしては出禁をくらい、そんなことを繰り返してる間に酒を飲みに行ける店がなくなってしまった。
もう、俺もこの異世界で20年、年も35だ。我慢も覚えた。
今日はまとまった金が出来たので、女がいる店に飲みに行くことにした。
カブラキ町の町を練り歩く。
ネオンがきらびやかに彩られた町を歩くと、客の呼び込みをしている男女たちが、客の奪い合いの声かけをしている。
「おにいさん!寄ってってよ!可愛いうさみみの子が新入店だよっ!」
「安いよ!一時間4000エルぽっきりだ!」
「メイドリフレいかがですかぁ~、今なら写真で選べまぁ~~~すっ」
本当にここは異世界なのかと疑いたくなる。
一体どうやったら、こんな異世界になるのだろうか。
だが・・・俺が歩くと、呼び込みたちは大人しくなる。
ヒソヒソと陰口が聞こえてくる。
「おい、『勇者』が来たぜ?」
「あいつ、貧乏なくせに態度がでけぇからな」
「関わるな、あいつに関わっても損しかねえぞ」
(・・・・・・まあ、自業自得だな・・・)
だが、こっちから乱暴したことはない。向こうから魔力なしと罵ってきたり、ぼったくられるから暴れただけだ。それでも暴れられた方は大損害だ。
俺じゃない客からぼったくればいいのに、店がこわされてしまうのだから。
ふと、俺の30m手前あたりに女が倒れこんだ。
年は20代だろう、ミニスカートを履いたいかにも水商売の女だ。そいつはどうやら、黒服の男と揉めているようだ。
あっ、今、顔面を蹴られた。
(・・・・・・仕方ねえな)
「商品を大事にしないなんて、商人の風上にもおけねえな。あっ、客の方か?」
女の顔面を蹴り飛ばした男が俺を見る。
「てめえは・・・、『勇者』ジン・・・」
女も俺を見る。口から血を流しながら俺に走ってきて、俺の背中に隠れる。
「おい、『勇者』、てめえには関係ねーだろ。それともてめえがその女の焦げ付きを精算するのか?」
男は俺に睨みを利かせる。
「まったく興味はねえな。そうだ、お前の所に遊びに行っていいか?」
「・・・てめえは出禁だ。わかってるだろ」
俺は着流しのたもとからタバコを取り出し、火をつける。
「いや、何、焦げ付きを遊ばせる余裕があるんだろ?俺にも遊ばせろよ」
「てめえ・・・・・・蛾突会にケンカ売ろうってのか?」
男は更に凄み、胸の内ポケットに手を忍ばせる。
俺は両手をあげて、タバコをくわえたまま笑みを浮かべる。
「おいおい、やめとけよ。お前がそれを抜いた時にはお前の首がついてるか、保証出来ねえぜ?」
「ぐっ・・・」
男は悔しさを隠しもせずに表情にだし、固まっている。
「仕方ねえ、お前のところで遊ばせてくれねえなら、このねえちゃんと遊ぶわ」
俺は俺の後ろに隠れている女の腕をつかみ、俺のとなりに引き出して、腰を抱く。
男は、ギリギリと歯を食い縛り、
「覚えておけよ・・・・・・」
「ああ、覚えとくからサービスチケットを忘れるなよ」
黒服の男は去っていった。
俺は左に抱いている女の顔を見る。
「さて、飯でも食うか、ねえちゃん。・・・食えるか?」
口の中を切ってるのは間違いない。
「大丈夫です。こんな私でも良いなら、ご一緒させてください」
「ほう・・・、ますます訳ありってやつか。まあ、暇してるからな、話は聞いてやる」
俺は思いっきり下心だが、とりあえず女の細腰を抱いたまま、レストランに向かってあるきだした。
流石に口内が痛いらしく、飯は食わないので酒をと言われた。上等な酒を奢ってやる。俺は飯を食って一服をすると、俺は女に事情を聞く。
「あんまりこういうことはしねえんだが、何かの縁だ、話は聞いてやる」
「なら、ホテルに行きましょう」
「・・・おもしれえ冗談だ、ねえちゃん」
「冗談ではありませんよ?」
「・・・・・・」
俺は女を睨み付ける。
「何が目的だ。美人局か?」
女はふふふと微笑む。
「ジンさんに美人局が成功するでしょうか?私なら美人局さんの心配をしてしまいますよ」
「・・・・・・」
当たり前だ。俺は最強とまではいかない。でもそんじょそこらのやつに負けるつもりはないし、俺より強いやつが美人局なんてセコイ真似をするとも思えない。
「ジンさんほどの人です。そんな人に私の事情をただで聞いてもらうなんて、欲が深すぎます。私を抱いていただけるだけで、事情を聞いてもらえるなんて、破格の料金ですよ」
女はにっこりと微笑む。
「ヤっても依頼を受けるとは限らねえ」
「もちろんです。これは話を聞いてもらえる報酬ですから。・・・私なんかで報酬になるかはわかりませんが・・・」
「・・・処女か?」
女は頭を下げた。
「申し訳ありません。違います」
「いや、それは願ったりだ。ちゃんと気をやる術はもってるか」
女は顔を赤らめて、
「恥ずかしながら・・・」
「一晩だぞ?」
「2晩でも3晩でも」
「変態プレイもするぞ?」
「殺していただいても構いません」
「・・・・・・」
俺はあまりの美味しい話にうさんくささが拭えない。
「それだけきつい依頼か」
「いえ、ジンさんなら造作もないと思います。私をお疑いですね?ですが、私を殺すつもりなら、ジンさんは安全ではないですか?例えどこの事務所が出てきても問題ないのですから。それに依頼は断っていただいても良いのです。さあ、行きましょう」
俺は女に手を取られ、ホテル街に歩く。
(確かに危ないと思ったら抵抗すればいい、仮にこの女が暗殺者だとしても、なんとかする自信はある。・・・まあ、付いていってみるか)
◇◇◇◇◇◇◇◇
本当に罠はなかった。久しぶりにおいしく頂いた。
この最近のスカシのイライラをぶつけるように、何度もしてしまった。
しかも前戯は要らないと言う。むしろさせてもらえなかった。
まあ、それは面倒なだけだから、俺にとってはラッキーだ。
俺は夜のカラブキ町を目的地に向かって歩く。
そう、約24時間もしまくってしまったのだ。
依頼は簡単だった。ある事務所の所長が、ツケで飲んで飲み代を払わないと言う。
この世界、ツケで受けるか受けないかは女次第だ。そして万が一客が払わなければ女がそれを払わなきゃいけない。何故そこまでするかというと、それほどまでに売上のノルマがあるからだ。だが、カラブキ町では常識の範囲だ。
(そういや、日本でもこんなんがあるとか、ネットで見たな)
もう、消えかけてる記憶を辿りながら、着流しのたもとからタバコを出して、ふかしながら歩いていると、目的の事務所にたどり着いた。
事務所の入り口で門番をしている男四人が俺を見ると、
「お、お前はっ!『勇者』ジン!」
「何しに来た!!!」
俺は冷静に話しかける。
「お前んとこの所長に話がある。通るぜ」
「ふ、ふざけんじゃねー!!!」
四人のうち一人が、殴りかかってくる。俺は少しずれてそいつの足を引っ掻ける。
男はつまづき、ゴロゴロとスッ転んだ。
次の男がワッパを抜き、俺の腹めがけて両手で刺してくる。
それも俺は左によけ、そいつの額に終わりかけのタバコを押し付ける。
「ぎゃああああああああ!」
男は額を押さえて転げ回る。
次の男は俺の背中に回り込んでいた。
「しねえええええええ!」
「いや、黙って斬れよ」
俺はそれもひょいとよけ、そいつの背中を軽く蹴り飛ばす。
男はズザザザザザとスッ転んだ。
次の男は、胸の内ポケットに手を入れたので、俺はダッシュで男に近づき、内ポケットから抜かせないように腕を掴んだ。
「そいつはいけねえな」
俺はまぶたを半分閉じ、
「それを抜いたら、お前を殺さなきゃいけなくなる」
もうすでに男はガタガタと震えている。
「入っていいか?」
男は無言で首がとれるくらいに、縦に何度も首を振った。
俺は事務所に入る。事務所の中には、外の騒ぎを聞いて、武装して待っていた所員たちが20人ほどがいた。
「邪魔するぜ」
俺が事務所に入ると、反り返った刀のような物をもったやつが斬りかかってきた。
「やめええええええい!!!」
奥の扉から大声でだれかが叫んだ。
既にその刀を右手の指2本で白羽取りしている俺は、刀の男に、
「だ、そうだ。入るぜ」
刀を離し、奥の扉を開けて中に入る。
その部屋の一番奥に事務所机に座った、いかついハゲ男が俺を睨んでいる。
俺は構わずソファーに座り、たもとからタバコを出して火をつける。
「ジンの・・・、何しに来た」
俺はソファーにふんぞり返り、タバコをふかす。
「わかるだろ?」
「お前の関係者か?」
「いや、ただの通りすがりだ」
「なら何故お前が出張ってくる」
「お土産を貰っちまったんでね」
「・・・・・・」
ハゲ男は黙り込んだ。
「穴が欲しいならいくらでも用意してやる」
「わりいが、てめえらのガキの使いになるつもりはねえよ。てめえも事務所を張るくらいなら300万くらいの金をケチケチすんじゃねえ。器が知れるぞ」
ハゲは俺を睨む。俺はタバコをふかし、涼しい目で男を見つめる。
3分ほどたつと、男は立ち上がり、背後の金庫から金貨40枚を俺の前に置いた。
「2度と来るな」
「なるほど、だがそれは俺のセリフだ。2度とあの女に関わるな」
「・・・・・・約束する」
俺は金を持って事務所を出た。
所員たちは、武装したまま俺をお見送りしてくれた。
ホテルに戻り、俺は金を女に渡す。
「手切れ金込みだとよ」
「それは受け取れません。私からの報酬もお支払します」
女は金貨15枚を俺に渡してきた。
「報酬はいらねえ。前払いが良かったからな。そっちが気前を見せたんだ。俺にも気前をはらせろ」
俺は金貨5枚だけ取り、ホテルを後にした。
(久しぶりに勇者くさいことをしちまったぜ・・・)
だが、数日後、俺は体内から膿を産み出す生き物になっていた。
文字通り女から「お土産」を貰っていた。
「異世界なんて来るんじゃなかった・・・、くそったれが・・・・・・」
俺はワイバーンの居なくなった崖から、自分の依頼分の絶壁草を採取して、都市へと帰る。
冒険者ギルドから金を受けとる。金は予想通り20万エルになった。
ここはシンジューシティ。隣にはシブユシティがある。シンジューシティには大陸最大の歓楽街、カブラキ町がある。
3連続でヤれるものをヤりそこねている。
下半身的うっぷんも溜まると言うものだ。
いつもの安い立呑屋で一杯ひっかけることも考えたが、また嫌な気分にされたくない。
俺も異世界に来た当初は、対人間なら無敵と思い、かなり無茶をした。
魔力なしと嫌みを言われてはぶん殴り、酒場でケンカをしては出禁をくらい、そんなことを繰り返してる間に酒を飲みに行ける店がなくなってしまった。
もう、俺もこの異世界で20年、年も35だ。我慢も覚えた。
今日はまとまった金が出来たので、女がいる店に飲みに行くことにした。
カブラキ町の町を練り歩く。
ネオンがきらびやかに彩られた町を歩くと、客の呼び込みをしている男女たちが、客の奪い合いの声かけをしている。
「おにいさん!寄ってってよ!可愛いうさみみの子が新入店だよっ!」
「安いよ!一時間4000エルぽっきりだ!」
「メイドリフレいかがですかぁ~、今なら写真で選べまぁ~~~すっ」
本当にここは異世界なのかと疑いたくなる。
一体どうやったら、こんな異世界になるのだろうか。
だが・・・俺が歩くと、呼び込みたちは大人しくなる。
ヒソヒソと陰口が聞こえてくる。
「おい、『勇者』が来たぜ?」
「あいつ、貧乏なくせに態度がでけぇからな」
「関わるな、あいつに関わっても損しかねえぞ」
(・・・・・・まあ、自業自得だな・・・)
だが、こっちから乱暴したことはない。向こうから魔力なしと罵ってきたり、ぼったくられるから暴れただけだ。それでも暴れられた方は大損害だ。
俺じゃない客からぼったくればいいのに、店がこわされてしまうのだから。
ふと、俺の30m手前あたりに女が倒れこんだ。
年は20代だろう、ミニスカートを履いたいかにも水商売の女だ。そいつはどうやら、黒服の男と揉めているようだ。
あっ、今、顔面を蹴られた。
(・・・・・・仕方ねえな)
「商品を大事にしないなんて、商人の風上にもおけねえな。あっ、客の方か?」
女の顔面を蹴り飛ばした男が俺を見る。
「てめえは・・・、『勇者』ジン・・・」
女も俺を見る。口から血を流しながら俺に走ってきて、俺の背中に隠れる。
「おい、『勇者』、てめえには関係ねーだろ。それともてめえがその女の焦げ付きを精算するのか?」
男は俺に睨みを利かせる。
「まったく興味はねえな。そうだ、お前の所に遊びに行っていいか?」
「・・・てめえは出禁だ。わかってるだろ」
俺は着流しのたもとからタバコを取り出し、火をつける。
「いや、何、焦げ付きを遊ばせる余裕があるんだろ?俺にも遊ばせろよ」
「てめえ・・・・・・蛾突会にケンカ売ろうってのか?」
男は更に凄み、胸の内ポケットに手を忍ばせる。
俺は両手をあげて、タバコをくわえたまま笑みを浮かべる。
「おいおい、やめとけよ。お前がそれを抜いた時にはお前の首がついてるか、保証出来ねえぜ?」
「ぐっ・・・」
男は悔しさを隠しもせずに表情にだし、固まっている。
「仕方ねえ、お前のところで遊ばせてくれねえなら、このねえちゃんと遊ぶわ」
俺は俺の後ろに隠れている女の腕をつかみ、俺のとなりに引き出して、腰を抱く。
男は、ギリギリと歯を食い縛り、
「覚えておけよ・・・・・・」
「ああ、覚えとくからサービスチケットを忘れるなよ」
黒服の男は去っていった。
俺は左に抱いている女の顔を見る。
「さて、飯でも食うか、ねえちゃん。・・・食えるか?」
口の中を切ってるのは間違いない。
「大丈夫です。こんな私でも良いなら、ご一緒させてください」
「ほう・・・、ますます訳ありってやつか。まあ、暇してるからな、話は聞いてやる」
俺は思いっきり下心だが、とりあえず女の細腰を抱いたまま、レストランに向かってあるきだした。
流石に口内が痛いらしく、飯は食わないので酒をと言われた。上等な酒を奢ってやる。俺は飯を食って一服をすると、俺は女に事情を聞く。
「あんまりこういうことはしねえんだが、何かの縁だ、話は聞いてやる」
「なら、ホテルに行きましょう」
「・・・おもしれえ冗談だ、ねえちゃん」
「冗談ではありませんよ?」
「・・・・・・」
俺は女を睨み付ける。
「何が目的だ。美人局か?」
女はふふふと微笑む。
「ジンさんに美人局が成功するでしょうか?私なら美人局さんの心配をしてしまいますよ」
「・・・・・・」
当たり前だ。俺は最強とまではいかない。でもそんじょそこらのやつに負けるつもりはないし、俺より強いやつが美人局なんてセコイ真似をするとも思えない。
「ジンさんほどの人です。そんな人に私の事情をただで聞いてもらうなんて、欲が深すぎます。私を抱いていただけるだけで、事情を聞いてもらえるなんて、破格の料金ですよ」
女はにっこりと微笑む。
「ヤっても依頼を受けるとは限らねえ」
「もちろんです。これは話を聞いてもらえる報酬ですから。・・・私なんかで報酬になるかはわかりませんが・・・」
「・・・処女か?」
女は頭を下げた。
「申し訳ありません。違います」
「いや、それは願ったりだ。ちゃんと気をやる術はもってるか」
女は顔を赤らめて、
「恥ずかしながら・・・」
「一晩だぞ?」
「2晩でも3晩でも」
「変態プレイもするぞ?」
「殺していただいても構いません」
「・・・・・・」
俺はあまりの美味しい話にうさんくささが拭えない。
「それだけきつい依頼か」
「いえ、ジンさんなら造作もないと思います。私をお疑いですね?ですが、私を殺すつもりなら、ジンさんは安全ではないですか?例えどこの事務所が出てきても問題ないのですから。それに依頼は断っていただいても良いのです。さあ、行きましょう」
俺は女に手を取られ、ホテル街に歩く。
(確かに危ないと思ったら抵抗すればいい、仮にこの女が暗殺者だとしても、なんとかする自信はある。・・・まあ、付いていってみるか)
◇◇◇◇◇◇◇◇
本当に罠はなかった。久しぶりにおいしく頂いた。
この最近のスカシのイライラをぶつけるように、何度もしてしまった。
しかも前戯は要らないと言う。むしろさせてもらえなかった。
まあ、それは面倒なだけだから、俺にとってはラッキーだ。
俺は夜のカラブキ町を目的地に向かって歩く。
そう、約24時間もしまくってしまったのだ。
依頼は簡単だった。ある事務所の所長が、ツケで飲んで飲み代を払わないと言う。
この世界、ツケで受けるか受けないかは女次第だ。そして万が一客が払わなければ女がそれを払わなきゃいけない。何故そこまでするかというと、それほどまでに売上のノルマがあるからだ。だが、カラブキ町では常識の範囲だ。
(そういや、日本でもこんなんがあるとか、ネットで見たな)
もう、消えかけてる記憶を辿りながら、着流しのたもとからタバコを出して、ふかしながら歩いていると、目的の事務所にたどり着いた。
事務所の入り口で門番をしている男四人が俺を見ると、
「お、お前はっ!『勇者』ジン!」
「何しに来た!!!」
俺は冷静に話しかける。
「お前んとこの所長に話がある。通るぜ」
「ふ、ふざけんじゃねー!!!」
四人のうち一人が、殴りかかってくる。俺は少しずれてそいつの足を引っ掻ける。
男はつまづき、ゴロゴロとスッ転んだ。
次の男がワッパを抜き、俺の腹めがけて両手で刺してくる。
それも俺は左によけ、そいつの額に終わりかけのタバコを押し付ける。
「ぎゃああああああああ!」
男は額を押さえて転げ回る。
次の男は俺の背中に回り込んでいた。
「しねえええええええ!」
「いや、黙って斬れよ」
俺はそれもひょいとよけ、そいつの背中を軽く蹴り飛ばす。
男はズザザザザザとスッ転んだ。
次の男は、胸の内ポケットに手を入れたので、俺はダッシュで男に近づき、内ポケットから抜かせないように腕を掴んだ。
「そいつはいけねえな」
俺はまぶたを半分閉じ、
「それを抜いたら、お前を殺さなきゃいけなくなる」
もうすでに男はガタガタと震えている。
「入っていいか?」
男は無言で首がとれるくらいに、縦に何度も首を振った。
俺は事務所に入る。事務所の中には、外の騒ぎを聞いて、武装して待っていた所員たちが20人ほどがいた。
「邪魔するぜ」
俺が事務所に入ると、反り返った刀のような物をもったやつが斬りかかってきた。
「やめええええええい!!!」
奥の扉から大声でだれかが叫んだ。
既にその刀を右手の指2本で白羽取りしている俺は、刀の男に、
「だ、そうだ。入るぜ」
刀を離し、奥の扉を開けて中に入る。
その部屋の一番奥に事務所机に座った、いかついハゲ男が俺を睨んでいる。
俺は構わずソファーに座り、たもとからタバコを出して火をつける。
「ジンの・・・、何しに来た」
俺はソファーにふんぞり返り、タバコをふかす。
「わかるだろ?」
「お前の関係者か?」
「いや、ただの通りすがりだ」
「なら何故お前が出張ってくる」
「お土産を貰っちまったんでね」
「・・・・・・」
ハゲ男は黙り込んだ。
「穴が欲しいならいくらでも用意してやる」
「わりいが、てめえらのガキの使いになるつもりはねえよ。てめえも事務所を張るくらいなら300万くらいの金をケチケチすんじゃねえ。器が知れるぞ」
ハゲは俺を睨む。俺はタバコをふかし、涼しい目で男を見つめる。
3分ほどたつと、男は立ち上がり、背後の金庫から金貨40枚を俺の前に置いた。
「2度と来るな」
「なるほど、だがそれは俺のセリフだ。2度とあの女に関わるな」
「・・・・・・約束する」
俺は金を持って事務所を出た。
所員たちは、武装したまま俺をお見送りしてくれた。
ホテルに戻り、俺は金を女に渡す。
「手切れ金込みだとよ」
「それは受け取れません。私からの報酬もお支払します」
女は金貨15枚を俺に渡してきた。
「報酬はいらねえ。前払いが良かったからな。そっちが気前を見せたんだ。俺にも気前をはらせろ」
俺は金貨5枚だけ取り、ホテルを後にした。
(久しぶりに勇者くさいことをしちまったぜ・・・)
だが、数日後、俺は体内から膿を産み出す生き物になっていた。
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