俺の知っている異世界はどこにある

俺は日本人だ。
そしてここはノヴァリースと言う

日本人の感覚で言うと異世界だ

「親父、エールだ」
「ちっ、またエールかよ、しみったれてんな!」

俺は酒場の親父をギロリとひと睨みだけしてエールをぐびぐびっと煽る

もうお分かりだろう。俺は異世界転移した日本人だ。たまに現れる異世界からの客人を、この世界の人間は『勇者』と呼ぶ。
誰が召喚したか、神に呼ばれたのか、そんなのはねえ。気づいたらこの世界にいた

チート?ああ、貰ったよ
俺は体術が達人だ。人間相手の喧嘩で負けたことはない。この国一番の騎士ってやつとも戦った。相手は全身鎧で剣と盾、俺は素手でボコボコにしてやった

なら、当然ハーレムでやりたい放題だと思うだろ?世の中そんなに甘くねえ。
何故か、この世界は魔法がある、魔力がある。
もちろん魔法は強い。でも俺クラスの達人なら、魔法を回避して術者をボコるくらい、朝飯前だ。
だが・・・・、この世界のやつらは魔鋼機に乗りやがる。そう、ロボットだ。
魔鋼機は色んなタイプがいるが、基本的に全長が10mほど、魔法をバズーカに仕込んでぶっぱなし、ゾウを一刀両断するほどの7mの大剣をぶん回し、ホバークラフトタイプのやつなんかは、時速60kmで走り回りやがる

そして、魔鋼機は魔力を動力とする

わかるか?俺には魔力がねえんだ
全ての魔鋼機が魔力を必要とする

「親父、もう一杯だ」
「ちっ、しんきくせえったらありゃしない!これを飲んだら帰ってくれ!」

ダン!

また酒場の親父に、エールのジョッキを叩きつけられる

異世界なんだ、魔鋼機に乗れなくても何とでもなると思うだろ?ところがそうはいかねえ。
戦争も魔鋼機が主力、武闘大会も魔鋼機、冒険者も魔鋼機だ。

一番小さな魔物でも象クラスだ。それも地球の象でもかなり強いのに、こっちの象は魔物だ。遥かに強さが違う。
ヴァーリトゥードの大会の優勝者が象と素手で戦えるか?無理に決まっている。
仮に刃物を使って魔物を倒したとしよう。一体どうやって運ぶのか。トラックだって魔力で動くのに。

知識チート?トラックがあるんだぞ?
エネルギー元が魔力なだけで、文明はかなり進んでる。ほぼ日本と変わりゃしねえ。
お得意のマヨネーズも、ガラスも通用しない。電気はないが、ガスや石油だってある。
石油があるならエンジンをって言いたいんだろうが、俺がこの世界に来たのは15だ。そんな知識は持ってない。

「親父、勘定」
「4000エルだ」

完全にぼったくられているが、俺の行ける酒場も少なくなってきた。
俺は#銀貨4枚__4000エル__#をカウンターに置く。

異世界転移してから20年

「何もかもくそったれだ・・・」

俺はコンクリートジャングルを、軽い千鳥足でふらつき歩く。

●完全不定期更新です。気まぐれ更新、ご了承ください●
24h.ポイント 0pt
0
小説 183,704 位 / 183,704件 ファンタジー 42,160 位 / 42,160件

処理中です...