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第五章

迷い人の店

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さて、残りは辺境伯の話を聞きに行くくらいだが、今日はこのくらいにして、まだ夕暮れにもなっていないが拠点に帰る。

俺が帰りつくと、まだ誰も帰って来てなかった。

「マスタァ?今のうちに血、もらっていっ?」
「あ?ああ、そうだな。なら寝室に行くか」




寝室に移動し首を差し出すと、リモアは首筋に吸い付き、血を吸い始めた、

意識が混濁するような、あの感覚に襲われる。
だが・・・、

意識がはっきりしてみると、俺の腹の下にリモアがいるが、リモアはいつものように「そんなにきついのかよ!」ってくらいぐったりしてなかった。

「あれ?して・・・ないことはないな。何時間たった?」

腹の下のリモアが、首をかしげあごに人差し指を当てながら答える。

「ん~~~っ!30分ぐらいだよっ!」
「・・・・・・短いな」
「一回しかしてないよっ!」
「・・・どうした?それだけで血は足りるのか?」

リモアは俺の腹の下から這い出てから、

「うんっ!ちゃんともらったよっ!」
「・・・ん?血を吸ったのに獣にならないのか?」

リモアはパタパタと飛んで、つける意味があるのかわからない面積の黒のブラとパンツ、いつもの赤と黒を基調としたドレスを着た。

「ん~~~っ、なんかねっ、少しわかってきたみたいっ。調整?出来るようになってきたかもっ!」
「おお、やるじゃん。それは朗報だな」
「あとね・・・」

リモアはちょっと顔を赤らめる。
リモアらしくない表情だ。

「で、・・・出来・・・、た、たまには獣じゃない、普通のマスターともしてみたいな・・・なんてねっ」
「・・・は?」

俺は突然の言葉に、あっけに取られてしまった。
俺のその態度にリモアは、

「っ!べーっ!!!!」

真っ赤な顔であっかんべーをして、パタパタと部屋から出ていってしまった。

「・・・おおおお、」

(なんだあいつ、まさか惚れたのか?いつの間に?・・・まあ、これだけ身体を重ねてれば惚れても、またはマンネリ化してもおかしくないが・・・。なんか新鮮だ・・・)

みんながまだ帰ってこないので、俺は数日ぶりに一人で夕飯の準備を始めた。



◇◇◇◇◇◇



今日はチキン南蛮にした。下味の準備時間が30分ほどしかなかったが、チキン南蛮なら南蛮風味のタレを絡めるので問題は少ない。
むしろ問題はタルタルソースだ。この異世界にはマヨネーズが既にあるので、そう難しい訳じゃないが、手間がかかる。

みじん切りの玉ねぎを水にさらし、多少の辛味抜きをしてから、固めに茹でた卵もつぶす。きゅうりもみじん切りにしたあとに、布でくるんで水気を絞る。
たまねぎ、卵、きゅうりを入れてマヨネーズ、塩コショウ、軽く砂糖、最後にレモンを絞り入れて混ぜれば完成だ。

夕飯を作り終えたあたりで、みんなが帰って来た。

「おか━━━、お、おおおおお?」

みんな、服が違っている。新鮮だ。

モーラは、小麦色の肌に真っ白なくるぶしまでのワンピースを着ている。
胸元は大きくVの字に開き、胸の谷間を強調している。そして前開きスリットがパンツが見えるギリギリまで切れ込んでいる。

メリッサとアリサは、二人のいつもの服装を交換したような形だ。
メリッサは、下から覗いたらパンツが見えるんじゃないかと思えるくらいの、ギリギリのホットパンツを履き、上はシンプルなTシャツだ。
・・・・・・間違えた。シンプルではなかった。バックプリントで『拳姫』と漢字で書かれている。
どうみてもアリサの入れ知恵だ。

アリサはフレアのミニスカートだ。JKの制服のようにプリーツが入っている。
いや・・・・・・これも間違えた。上はへそがちらちら見えるほど短いセーラー服だ。
一体このコスプレみたいなセーラー服を、どこで買ってくるのか。

メイは・・・・・・、

「アリサ、お前の仕業だな?」
「なんのことかしら?でも嬉しいでしょ?」
「・・・・・・」

黒のぴっちぴちの超ミニのタイトスカートに、生地はポリエステルか?まさか?、テロテロに光沢がある白のYシャツを着ている。あっ、絹か?
そして、どこで用意したのか伊達だろうメガネをかけている。
メイの身体も肉感的なので、ぴっちぴちでエロく仕上がっている。
はい、女教師ですね。わかります。

「こんなん、どこで買ってくるんだよ・・・」
「ヨシト様、以前私がお誘いした店をご存知ですか?」
「ん?」

メイが俺のところに来て、耳打ちをする。

「(あの、鞭やローソクの・・・)」
「っ!ああああああ!!あったな、そう言えば!」

確かに遥か前に一度メイに誘われていた。俺はあの時はスルーしたが。

「なんかねお兄ちゃん、迷い人のお店なのよ。迷い人がいるみたい」
「・・・・・・迷宮都市にか?」
「それがヨシト、ここにはいないみたいなんだ。どうもフリーポート合衆国に現れて、そこから商品を仕入れてるみたいなんだよ」

モーラが解説してくれた。

「なるほど・・・・・・、迷い人か。一度俺も行ってみるか」

アリサの入れ知恵だけでなく、どうやら迷い人の知識でこれらが作られたらしい。
服もそうだが、迷い人ってのに興味が引かれる。結構いるとの話なのに、はじめて耳にしたし。
まあ、それはいいのだが・・・。

「お前、いい加減にしろよ?」
「なにが?」
「服を買えよ」
「私も言ったのよ。体操服とブルマがあったから、それをソフィアに着させようと思ったんだけどね」

葉っぱだ。
葉っぱは、まだ葉っぱのままだ。服を買いに言ったのに葉っぱのままだ。
どうなってやがる。

「ブルマはえっちいからって、また葉っぱを買ったのよ」
「・・・・・・買った?」

よーーーーーく見てみると、葉っぱが本物の葉っぱではなくなっている。造花の葉っぱだ。
素材はなんだこれ。

「いやまて、葉っぱ。どうみてもブルマより葉っぱのが露出が高いだろ!意味がわからねえ!」

葉っぱは顔を赤らめて、

「・・・・・・あんなパンツで歩くみたいな・・・」
「多分お前にだけは言われたくないと思うぞ」

葉っぱは下半身は確かに腰ミノみたいに覆われているので、下半身の露出は葉っぱのが低い。だが、ピラピラめくれるし、上半身は葉っぱのブラなのだ。体操服とは雲泥の差だ。

「・・・まあいい」

こいつに突っ込んでいると疲れる。なんにせよ、その店には一度行かなくてはならないだろう。

「とりあえず飯にしよう」


飯はかなり好評だった。

「やっぱりヨシトの料理は本当に美味しいね」
「ヨシト様、ありがとうございます」
「ホント。どうして兄妹でこうもちがうのかしら?」
「お兄ちゃん料理とかしてたの?」
「俺だって独り暮らしをしてたんだ。このくらいはするだろ」
「・・・意外だわ。エロゲーばっかりしてたんじゃないのね」
「アリサ、2度とその話はするな」


飯が終わり、またみんなで風呂に入り、それぞれの部屋に入りベッドに横になる。
メリッサの忠告通りにメイを誘うが、メイはまだ大丈夫と言うので、メリッサと一緒に寝た。

(まさかと思うが、メイは一人獣タイムがトラウマになったか?・・・ちょっと笑えるな。前よりはいい。むしろ明日の夜が楽しみになったな)



◇◇◇◇◇◇◇



一夜明けて朝飯を食っていると、拠点に誰かがやって来た。

「ヨシト殿はいらっしゃるか」

スマホだった。

「あっ、スマホ」
「スマートフォだ。略さないでもらいたい」
「ちょうど良かった。今日にも辺境伯様のとこに行こうとしてたんだ」
「ならばちょうど良い。我らも迎えにあがったのだ。準備がよろしいなら馬車を表に用意してある。このまま出られるか」
「わかった。女がいるからな、30分ほど貰えるか?」
「構わない」

全員に内容を伝えて、準備をさせた。
もちろん、昨日の服ではなく戦闘装備だ。
武器だけは俺とメリッサの亜空間倉庫に収納して、防具などは身に付けていく。
晩餐会などではない、辺境伯は信用している。だが、万が一に備えるのは必要だろう。
装備なしで行って「今なら殺れるかも」等色気を出してこないとも限らないからだ。

俺たちは準備を整えて、スマホの用意した2台の馬車に乗り込んだ。

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