新米女神の運命の赤い糸

りんご飴

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気まぐれな赤い糸

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 彼女を初めて見た時、あまりの可愛らしさに、グレンは息をのんだ。

 艶やかなミルクティー色の髪。こぼれ落ちそうほど大きな新緑の瞳。ほっそりとしていながら胸もそこそこにあり、尻のラインが色っぽい。

 一瞬で自分を魅了した相手が大地の女神だと知った時、妙に納得した。こんなにも可愛らしく美しいなんて、女神でもなければありえない。

 昔から女性はあまり得意な方ではなかった。
 あからさまな女性のアピールにも、一つも興味を引かれたことはない。
 男女の付き合いなんて、自分には関係のないことだと思っていた。

 とはいえグレンには、子供の頃に家同士が決めた婚約者がいる。
 3つ年下の婚約者は妹のような存在で、女性として見たことは一度もなかった。

 グレンは大地の女神リアの手を取り、その小さな白い手にそっと唇を寄せた。

 ビクリと震える手が愛おしい。

 グレンがした行為は、リアに怒られてもおかしくない。
 それでも、口付けることを自制出来なかった。

「リア様」

 呼ぶと、美しい新緑の瞳に自分が映される。  

「リア様。初めてお会いした時から、私の瞳にはあなたしか映りません。
 私ではリア様のお相手に役不足でしょうか?」

 手を引かれないことを確認しながら、もう一度口付けたくなる欲望を何とか押さえつけた。
 この思いを今伝えなければ、自分は美しい女神に男として視界に入れて貰えない。そう感じたら、自分でも驚くほどストレートな言葉が口から出ていた。

「本気で言ってるの?」

「もちろんです。リア様がお許しいただければ、私の本気をお見せ出来るかと」

 困ったように様子を伺う姿さえ可愛らしくて、グレンは理性が焼ききれないことを祈った。



※※※※※※



 リアは考えていた。

(グレンの本気って何かしら)

 グレンは素敵な男性だと思う。
 キリリとした目元も素敵だし、繋いだ大きな手は安心する。
 何より優しくて、少し可愛らしくもある。

(グレンが運命の相手だったとしても、何の不満もないわ)

 リアがそう思った時、小指の赤い糸がスルリと揺るんだ。

 見つめる切れ長の瞳は怖いくらい真剣で、リアは目を離せない。
 恋だとか愛だとか言えるほど、グレンの事を知らない。だけど、そう遠くない未来に、自分の気持ちが愛に育つような気がしている。

「……許します」

 グレンの瞳がパッと見開いて、顔を真っ赤に染めながら笑顔に変わる。

(ふふふ。やっぱり可愛らしいわ)

 いつの間にか腰に添えられた手でグイと引き寄せられ、リアの頭はグレンの胸にピタリとくっついた。
 強引に見えて、決して力ずくではない行為だった。遠慮がちに抱きしめられて、リアはくすぐったい気持ちで、彼の胸に頬を擦り寄せた。
 清涼感のある爽やかな香りは彼の香水だろうか。

 ドドドドッ。

 聞こえたグレンの心臓の音は、とても速い。

 頬に大きな手が触れる。

 優しく顔を上向きにされると、真剣な表情のグレンがいた。

(胸がドキドキする)

 自分の胸も、彼と同じように鼓動が速い。
 彼の顔が近付いて来る。
 先の行為をリアはもう知っている。地上に来てから最初に覚えた快楽を期待して、自然と目を閉じていた。
 それを了承と受け取って、二人の唇が重なった。




 一度そっと唇を重ねて、愛おしい女神の唇の柔らかさを堪能する。
 そのまま唇を離さずに、リアの下唇を啄む。

「っん…………」

 僅かに漏れた声がたまらない。

 ちゅっちゅっ。

 わざと音をたてた。

 ビクリと震えた華奢な身体を離すまいと、やんわりと抱きしめる腕に力を込める。
 イヤイヤをするように首を振る彼女を、宥めるようにペロリと唇を舐めた。

「リア様? どうしました?」

 そっぽを向いたリアの顔を覗きこむと、彼女は可愛く睨んで、ほんのり唇を尖らせる。
 思わず、ちゅっと啄めば、「もう!」と可愛らしい抗議をした。

「キス、嫌でした?」

「…………音が……ゾワゾワするからぁ」

「ーーーーっ! リ、リア様……では、音をたてずにもっと深いキスにしましょうか」

「深く?」

「舌を、出して下さい」

 言われた通り、濡れた唇からチラリと舌が覗いた。
 グレンの喉がゴクリと鳴った。

 先ほどと同じようにキスをする。小さな舌を一度チュルと吸って、自身の舌でリアの舌を辿って口内に侵入した。

「ふ、んんん…………」

 舌を絡めると、ビクリと身体が跳ねる。大丈夫と教えるように腰から尻のラインを撫でて、ついでに尻の丸みを確かめた。

 尻の柔かさがたまらない。最初は遠慮がちに撫でるだけだった手は、柔かな尻をクックッと揉みながら、時折尻の割れ目を指先でなぞると、リアの腰が揺れた。

「っふ、ぁ……」

 キスの合間に漏れる吐息は、尻を揉むほどに艶やかさを増していく。

 もっともっと激しく、出来るなら布越しではなく直にリアを味わいたい。下着に手を入れて、指に食い込む肉感を存分に味わってから、奥に潜む割れ目に手をのばしたい。

 そう思った時だった。

「グレン様~~~っ!」

 遠くからでもよく響く声がした。

 キスに夢中になっていたグレンは、一瞬にして現実に戻された。

 それでも名残惜しくて、最後に一度リアの唇にちゅっと音をたててから、身体を離す。

「エルサ」

 グレンの口から出た言葉は女性の名前だ。

 遠くから早足でやって来る少女と、その後ろを必死についてくる男女がいる。

 グレンはリアを自分の背中の後ろに隠した。

「グレン様! 私という婚約者がありながら、どういうことですか!」

「エルサ、話を聞いてくれ」

 エルサと呼ばれた少女は怒りで顔を真っ赤にしながら、目にたくさんの涙を溜めている。

(あら……、婚約者がいたのね)

 彼女の言葉と表情で、男女の付き合いを全く知らないリアにも、だいたいの状況が分かった。

 いつの間にか、グレンの小指に巻き付こうとしていた赤い糸が、シュルとリアの小指に戻って来ていた。
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