俺に取り憑いた幽霊が同級生を求めて困る

ことりさん

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厄介なモノに取り憑かれてしまったらしい

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 ばれていた。


「いやその……なんていうか、」

――バタン。


「お待たせ~、ってあれ、弥彦くんもう大丈夫なの?」

 タイミングが良いのか悪いのか、坂上が戻ってきたのだ。


「はい、ベッドありがとうございました」


 弥彦はそう言うと、取り乱したままの暁生を余所に、保健室を出ようとする。
「あ、おい、ちょっと待って」
「何?」
  咄嗟に暁生は、弥彦の手首を掴んだ。
(ここじゃあ、ちょっと……)

 先生が、にこにこしながらこちらを観察している。暁生は堪らずそのまま、弥彦の手を引っ張り保健室を出た。

「先生、お邪魔しましたー!」

「はいはーい。私も、可愛い恋人と手を繋いでどっか行きたいわ~、こんな晴れた日には、ね」
 
 騒がしい嵐が去って、保健室は再び静けさを取り戻していた。









「あのさ、俺も、なんて言ったらいいのか分かんないんだけど」
「何が? 俺にキスしてきた理由?」
「違う、いや、そうなんだけど……」

 自分でも、何が言いたいのか、上手くまとまらない。そもそも自分ですら呑み込めない状況を、どうやって他人に説明できる。

 暁生が言葉に詰まっていると、弥彦は頭をぽりぽりと掻きながら言った。
「じゃあ、俺からあんたに言うわ、一つね」
「え、何?」

 さっきから、弥彦の台詞は唐突過ぎて、暁生には少しも予測できない。まるで、死を宣告される前の心境である。

「あのさ、あんた、最近意識なくしたり、体が動かなくなる、みたいな経験あったりする?」
「え!? なんで分かるの」

 全く、驚きだった。何もかもお見通しのような弥彦の言葉に、暁生は目を丸くした。

「まだはっきりわかんないけど、たぶん厄介なモノ」
「何、何? なになに?」


「憑いてる」
「ツイテル??」

(は?)



「お・ば・け」

(おばか……じゃないよな、おばけ?)


????



「えー! マジ、やべえじゃん、どうしたらいいの」

「剥がすしかないよね」
「どうやって!?」
「あんた、いちいち声デカイよ」
「ご、ごめん」

「ん?」

 弥彦の表情が引き攣る。暁生には、どこを見ているのかわからなかったが、頭上の一点を凝視している。

(どうした、急に?)

 
「――俺の、知り合いかな」

「だ、だよな。そうだよな。俺の頭の中で、ヤヒコヤヒコ、って誰かがうるさいんだよ」
 ここに来てようやく暁生の悩みが解決できそうである。しかし、弥彦はその言葉を聞いたあと、神妙な面持ちになった。
「誰だ」

(なんだ……)

 弥彦に凄まれた瞬間、暁生の体はまた急に力が抜けるように不自由になった。また体を乗っ取られて堪るか、と必死で意識を強く持とうとするけれど、無念。暁生はその場にしゃがみ込んでしまった。幸いにも意識は失っていない。

「出てこいよ、なんで隠れる?」
「……」

 自分の体なのに、確かに自分ではない何者かが、弥彦の声に反応している。

「目的は、何だ、言えよ。なんでそいつの中にいる?」
「……言ったら叶えてくれるのかよ!!」

(ん?? 今、俺じゃないのに、俺がしゃべったよな)

 暁生は混乱した。自分の声を体内でスピーカーから聞いたような感じだ。誰かが暁生の声を使ってしゃべっている。

「逃げたな」
 弥彦がそう言った瞬間、暁生は自分の体の主導権を取り戻した。あの嫌な重たい感覚が嘘のように消えた。犬のように頭をぶんぶんと振り、暁生は自分の頬をぱん、と叩いた。そして、よし、と喝を入れ弥彦に尋ねた。

「心当たりは、あるんだな」
「……さあね」
「なんだよそれ」
 弥彦は少々神妙な面持ちとなった。

「でも、何か思うことあるみたいな顔つきじゃないか」
「別に――」
「おい、霊感少年、悪霊退散、とか、何でもいいからできないのかよ。このままじゃ困るんだよ」
「……なんで俺がそんなこと、ただで頼まれなくちゃならない」
「ひでえな、ただでなければ、してくれるのか? 何すればいい、金でも強請るのか?」
「……」

 弥彦は黙っている。そして少し考えた後、こう言った。


「じゃあ、ちょっと頼まれ事、聞いてくれるか?」


 弥彦は無双の笑みでこちらを見た。その顔はそこらの女子なんかより綺麗で、怯んでしまった暁生は、とんだ事態になってしまったと途方に暮れた――。
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