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それぞれの役割
王女の執着
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「私、来週から離宮に行くことにしたわ。二ヶ月程王都を離れるから護衛よろしくね」
ルイーズ王女がそんなことを言ってきたのは、クロードがアリスとデートに行った日から間も無くのことだった。
あのデートのことはどこから漏れたのかルイーズの耳に入っていたらしく、あの後根掘り葉掘り聞かれて閉口した。
もちろん当たり障りのない話しかしていないが、妻とのデートを何故他人であるはずのルイーズに気にされるのか意味がわからない。
それに、その日からルイーズはやたらと機嫌が悪く、休みの日でもクロードを呼び出すようになった。
ホワイトな職場のはずなのにおかしいが、他の侍女や護衛騎士たちもクロードが来ないと王女の機嫌が治らないと懇願してくるのだ。
だからクロードは、あのデートの日以来サンフォース邸を訪ねられなくなっている。
さて離宮だが、王家には国内の数ヶ所に直轄領があって、それぞれに離宮が建てられている。
王都は冬は寒く夏は蒸し暑いため、王族は避暑や避寒のために離宮で過ごすことが多いのだ。
しかし田舎は退屈だと嫌うルイーズは、昨年までは王都に残ることが多かったと聞く。
この冬も王都に残ると思いきや避寒地に行くと言うので、クロードたちは少なからず驚いていた。
当然クロードたち護衛騎士もルイーズに付き従って離宮に向かわなければならないからだ。
(二ヶ月も…)
正直、クロードは気乗りしなかった。
おそらく離宮に向かえば休みもおざなりになってしまい、四六時中ルイーズ王女に振り回されることだろう。
あれほど夢見ていた職なのに、就いてみれば王女のわがままに振り回され、休みも返上して働いている。
今だって…。
「クロード、足が痛いわ、運んで」
ルイーズ王女が両手を差し出すのを見て、クロードは王女を抱き上げた。
こうして部屋からダイニングまでお姫様抱っこで運んで行くのだ。
もちろんこんな役目をさせられるのはクロードだけである。
あそこに運べ、ここに運べ、とその度抱き上げさせられ、他にも、
「クロード、私が眠るまで本を読んで。あなたの声の低さがちょうどいいのよ」
「クロード、腕が痛いの。マッサージして」
「ブティックに行くわ。一緒にドレスを選んでちょうだい」
と本来なら侍女に言いつけるようなこともクロードにやらせるのだ。
「御身に触れるわけにはいかない」と断れば、クロードには国王の許可が特別に出ていると言われてしまう。
実際、ルイーズ王女に甘い国王はなんでも許してしまうのだ。
これで後になって不敬罪に問われたりしたら、勘弁してくれとクロードは思う。
それに、こうして特別扱いされるクロードを、騎士仲間たちが妬むのは当然のことだ。
王女のわがままと騎士仲間の嫉妬を受け続ける二ヶ月間を思って、クロードの気持ちは重く沈んだ。
それに。
(やっと少し近づいたと思ったのに…)
クロードは初めて触れた、アリスの柔らかな唇を思い出していた。
最近、明らかに二人の距離は近づきつつある。
(アリス…)
思わず呟いてしまった名前に、クロードはハッとした。
彼女の名前を口に出すと、胸がギュッと苦しくなる。
こんなに頭の中を彼女が占めるなんて。
政略結婚で、期限の決まった結婚のはずなのに、自分は一体どうしてしまったのだろう。
二ヶ月でさえ胸が痛いのに、王女が隣国に嫁ぐ時、自分は笑ってアリスに別れを告げることが出来るのだろうか。
(やっぱり、触れてはいけなかったのか…)
あの夜の自分は明らかに浮かれていた。
彼女が自分の裾を掴んでいる姿があまりにも可愛らしくて。
愛おしさがこみ上げてきて、気づけば唇を奪ってしまっていたのだ。
まさか自分にあんな軟派な行為が出来るとは思ってもみなかったのだが。
(二ヶ月の離宮行きは、冷静になれという天の思し召しなのかもしれないな…)
結局、二ヶ月の離宮行きをアリスに伝えることができたのは、離宮に行く直前だった。
サンフォース邸に戻ろうとすると、王女が何かと駄々をこねるからだ。
それでもなんとか「王都を離れる前に荷物を取って来なければ」などと理由をつけて邸に戻った。
アリスに会うのは、実にあのキス以来初めてである。
雰囲気に浮かされて思わずキスしてしまったが、クロードはもちろんそれを謝罪する気はなかった。
謝ってしまったら、あのキスが無かったことになってしまうではないか。
触れたことを無かったことにしたくはない一方で、やはり触れなければよかったのかと思う気持ち。
いつの間にか大きくなってしまったこの気持ちに、クロードは未だ名前を付けられずにいる。
サンフォース邸を訪れると、アリスは執務中だったらしいのにエントランスまで迎えに出てくれた。
少し嬉しそうに見えて、クロードも嬉しくなる。
クロードは仕事のせいでここを訪ねられなかったと何度も言い訳した。
もしかしたらアリスは気にも留めていないかもしれないが、キスをしてしまったことを気にして足が遠のいていたと思われるのだけは絶対に嫌だったのだ。
その上で、二ヶ月間王都を離れることを話した。
アリスは、「二ヶ月あったら、タロもすっかり大人になってしまいますね」と寂しそうに笑った。
その笑顔にたまらくなって、クロードはまたアリスを抱きしめ、キスをした。
二度目のキスは、少し塩っぱい味がした。
ルイーズ王女がそんなことを言ってきたのは、クロードがアリスとデートに行った日から間も無くのことだった。
あのデートのことはどこから漏れたのかルイーズの耳に入っていたらしく、あの後根掘り葉掘り聞かれて閉口した。
もちろん当たり障りのない話しかしていないが、妻とのデートを何故他人であるはずのルイーズに気にされるのか意味がわからない。
それに、その日からルイーズはやたらと機嫌が悪く、休みの日でもクロードを呼び出すようになった。
ホワイトな職場のはずなのにおかしいが、他の侍女や護衛騎士たちもクロードが来ないと王女の機嫌が治らないと懇願してくるのだ。
だからクロードは、あのデートの日以来サンフォース邸を訪ねられなくなっている。
さて離宮だが、王家には国内の数ヶ所に直轄領があって、それぞれに離宮が建てられている。
王都は冬は寒く夏は蒸し暑いため、王族は避暑や避寒のために離宮で過ごすことが多いのだ。
しかし田舎は退屈だと嫌うルイーズは、昨年までは王都に残ることが多かったと聞く。
この冬も王都に残ると思いきや避寒地に行くと言うので、クロードたちは少なからず驚いていた。
当然クロードたち護衛騎士もルイーズに付き従って離宮に向かわなければならないからだ。
(二ヶ月も…)
正直、クロードは気乗りしなかった。
おそらく離宮に向かえば休みもおざなりになってしまい、四六時中ルイーズ王女に振り回されることだろう。
あれほど夢見ていた職なのに、就いてみれば王女のわがままに振り回され、休みも返上して働いている。
今だって…。
「クロード、足が痛いわ、運んで」
ルイーズ王女が両手を差し出すのを見て、クロードは王女を抱き上げた。
こうして部屋からダイニングまでお姫様抱っこで運んで行くのだ。
もちろんこんな役目をさせられるのはクロードだけである。
あそこに運べ、ここに運べ、とその度抱き上げさせられ、他にも、
「クロード、私が眠るまで本を読んで。あなたの声の低さがちょうどいいのよ」
「クロード、腕が痛いの。マッサージして」
「ブティックに行くわ。一緒にドレスを選んでちょうだい」
と本来なら侍女に言いつけるようなこともクロードにやらせるのだ。
「御身に触れるわけにはいかない」と断れば、クロードには国王の許可が特別に出ていると言われてしまう。
実際、ルイーズ王女に甘い国王はなんでも許してしまうのだ。
これで後になって不敬罪に問われたりしたら、勘弁してくれとクロードは思う。
それに、こうして特別扱いされるクロードを、騎士仲間たちが妬むのは当然のことだ。
王女のわがままと騎士仲間の嫉妬を受け続ける二ヶ月間を思って、クロードの気持ちは重く沈んだ。
それに。
(やっと少し近づいたと思ったのに…)
クロードは初めて触れた、アリスの柔らかな唇を思い出していた。
最近、明らかに二人の距離は近づきつつある。
(アリス…)
思わず呟いてしまった名前に、クロードはハッとした。
彼女の名前を口に出すと、胸がギュッと苦しくなる。
こんなに頭の中を彼女が占めるなんて。
政略結婚で、期限の決まった結婚のはずなのに、自分は一体どうしてしまったのだろう。
二ヶ月でさえ胸が痛いのに、王女が隣国に嫁ぐ時、自分は笑ってアリスに別れを告げることが出来るのだろうか。
(やっぱり、触れてはいけなかったのか…)
あの夜の自分は明らかに浮かれていた。
彼女が自分の裾を掴んでいる姿があまりにも可愛らしくて。
愛おしさがこみ上げてきて、気づけば唇を奪ってしまっていたのだ。
まさか自分にあんな軟派な行為が出来るとは思ってもみなかったのだが。
(二ヶ月の離宮行きは、冷静になれという天の思し召しなのかもしれないな…)
結局、二ヶ月の離宮行きをアリスに伝えることができたのは、離宮に行く直前だった。
サンフォース邸に戻ろうとすると、王女が何かと駄々をこねるからだ。
それでもなんとか「王都を離れる前に荷物を取って来なければ」などと理由をつけて邸に戻った。
アリスに会うのは、実にあのキス以来初めてである。
雰囲気に浮かされて思わずキスしてしまったが、クロードはもちろんそれを謝罪する気はなかった。
謝ってしまったら、あのキスが無かったことになってしまうではないか。
触れたことを無かったことにしたくはない一方で、やはり触れなければよかったのかと思う気持ち。
いつの間にか大きくなってしまったこの気持ちに、クロードは未だ名前を付けられずにいる。
サンフォース邸を訪れると、アリスは執務中だったらしいのにエントランスまで迎えに出てくれた。
少し嬉しそうに見えて、クロードも嬉しくなる。
クロードは仕事のせいでここを訪ねられなかったと何度も言い訳した。
もしかしたらアリスは気にも留めていないかもしれないが、キスをしてしまったことを気にして足が遠のいていたと思われるのだけは絶対に嫌だったのだ。
その上で、二ヶ月間王都を離れることを話した。
アリスは、「二ヶ月あったら、タロもすっかり大人になってしまいますね」と寂しそうに笑った。
その笑顔にたまらくなって、クロードはまたアリスを抱きしめ、キスをした。
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