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それぞれの役割
初めてのデート①
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「ああ、この傷は『サウルの反乱』の折にガイモス将軍の剣で付いた傷と言われているんです」
クロードが博物館館内の柱の、小さな傷を撫でながらそう言った。
「まぁそうなんですの?旦那様は物知りなんですのね」
「この甲冑は伝説の騎士アーチーのものですね。大昔のものなのに、こんな完璧な状態で残っているなんて、素晴らしいと思いませんか?」
「ええ、本当に素晴らしいですわね」
クロードはアリスの返事に満足そうに頷くとやっと隣の展示に目を移した。
開館してすぐにこの博物館に来たのだが、もう何時間ここにいるのだろう。
クロードは一つ一つの展示の前からなかなか動かず、まだ三分の一も見終えていない。
結婚してこうして二人で外出するのは、例の夜会以外初めて。
要するに、初めてのデートである。
アリスとしてはデートらしいエスコートを少しだけ期待したのだが、やはりクロードはクロードだ。
正直アリスは疲れてきてもいたが、少年のように目を輝かせてはしゃぐクロードを見ているのも、案外楽しいと思った。
「あ、あそこは古代王国の遺物が展示してあるスペースですね。ちょっと見てきていいですか?」
「ええ。私はここで待っていますわ」
先の方に人だかりが出来ていて、クロードが迷わず向かう。
人気のあるコーナーは所々人が集まっていて、そこに突っ込んで行くクロードをアリスは少し離れたところで待っている。
最初はクロードに誘われたが、アリスは人混みが苦手だから気にせず見て来て欲しいと話したのだ。
古代王国の遺物を前に、クロードは食い入るように展示を眺めた。
本当はあらゆる角度から堪能したいが、やはり人気のあるコーナーは人が多く、なかなか身動きが取れない。
(それにしても…)
クロードは今日のデートは成功だと、すっかり満足していた。
以前から騎士仲間のミハエルにアリスをデートに誘い出せと発破をかけられていたが、そんなことは出来るわけがないと思い込んでいた。
あの、美しく聡明な女性が、自分のような堅物の騎士とデートする姿が想像できなかったのだ。
だが、子犬のタロをきっかけに話す機会も増え、彼女に笑顔が増えた。
自分に対する雰囲気も柔らかくなり、来訪を喜んでくれているような素振りも見える。
それに、先日の夜会でナルシスと対峙する彼女を見て、激しく思ったのだ。
こいつにだけは、彼女を渡したくないと。
彼女は俺の妻なのだ、と。
今はまだ…、ではあるが。
意を決してデートに誘ってみれば、彼女はすんなりとOKしてくれた。
しかも、クロードが好きな博物館に行こうとまで提案してくれたのだ。
この後はレストランで遅い昼食をとって、ブティックで正装し、劇場に向かうことになっている。
正に、完璧なデートコースである。
遺物を堪能して人混みから抜け出ると、先程アリスがいた辺りに彼女の姿はなかった。
違う展示でも見ているのかと辺りを見回したが、アリスの姿は見えない。
(馬鹿か、俺は…っ)
つい展示に夢中になって、長い時間アリスを放置してしまった。
呆れて帰ってしまったのか、時間を持て余して先に進んでしまったのか。
先の方に人だかりがあり、もしかしたら人気の展示があってアリスがいるかもしれないと寄って行ってみれば、なんと人だかりの中心にいたのは展示ではなくクロードの妻アリスだった。
アリスの周りを囲んでいるのは若い男たちで、どうやら一緒に見て回ろうと誘っているようだ。
「アリス!」
クロードは人だかりを掻き分けてアリスの元へ辿り着くと、彼女の手を取った。
「大丈夫ですか?」
焦ったようにたずねるクロードに、アリスはにっこり笑った。
「ええ。私が一人だと思って、皆さんご親切に案内を申し出てくださっていたの」
「案内…?」
ギロリと眼光鋭く辺りを見回せば、男たちはビクリと肩をすくめた。
「気づかいありがとう。妻が世話になりました」
「い、いえ…」
クロードに睨まれた男たちは、そそくさとその場を去った。
「すみません、一人にして」
「私なら大丈夫ですわ。どうぞ展示の続きをご覧になって」
「いや、二人で来ているのに離れて申し訳ありませんでした。それに、貴女を一人にするべきではなかった。貴女は目立ちすぎるのに…」
クロードはそう言うと唇を噛んだ。
アリスの容姿は異性を惹きつける。
それをわかっていながら放置するとは、とんだ馬鹿者である。
「またはぐれるといけないので」
小さく言い訳しながら、クロードはアリスの手を握った。
繋がれた手から熱を感じ、アリスは体中体温が上がるのを自覚していた。
クロードが博物館館内の柱の、小さな傷を撫でながらそう言った。
「まぁそうなんですの?旦那様は物知りなんですのね」
「この甲冑は伝説の騎士アーチーのものですね。大昔のものなのに、こんな完璧な状態で残っているなんて、素晴らしいと思いませんか?」
「ええ、本当に素晴らしいですわね」
クロードはアリスの返事に満足そうに頷くとやっと隣の展示に目を移した。
開館してすぐにこの博物館に来たのだが、もう何時間ここにいるのだろう。
クロードは一つ一つの展示の前からなかなか動かず、まだ三分の一も見終えていない。
結婚してこうして二人で外出するのは、例の夜会以外初めて。
要するに、初めてのデートである。
アリスとしてはデートらしいエスコートを少しだけ期待したのだが、やはりクロードはクロードだ。
正直アリスは疲れてきてもいたが、少年のように目を輝かせてはしゃぐクロードを見ているのも、案外楽しいと思った。
「あ、あそこは古代王国の遺物が展示してあるスペースですね。ちょっと見てきていいですか?」
「ええ。私はここで待っていますわ」
先の方に人だかりが出来ていて、クロードが迷わず向かう。
人気のあるコーナーは所々人が集まっていて、そこに突っ込んで行くクロードをアリスは少し離れたところで待っている。
最初はクロードに誘われたが、アリスは人混みが苦手だから気にせず見て来て欲しいと話したのだ。
古代王国の遺物を前に、クロードは食い入るように展示を眺めた。
本当はあらゆる角度から堪能したいが、やはり人気のあるコーナーは人が多く、なかなか身動きが取れない。
(それにしても…)
クロードは今日のデートは成功だと、すっかり満足していた。
以前から騎士仲間のミハエルにアリスをデートに誘い出せと発破をかけられていたが、そんなことは出来るわけがないと思い込んでいた。
あの、美しく聡明な女性が、自分のような堅物の騎士とデートする姿が想像できなかったのだ。
だが、子犬のタロをきっかけに話す機会も増え、彼女に笑顔が増えた。
自分に対する雰囲気も柔らかくなり、来訪を喜んでくれているような素振りも見える。
それに、先日の夜会でナルシスと対峙する彼女を見て、激しく思ったのだ。
こいつにだけは、彼女を渡したくないと。
彼女は俺の妻なのだ、と。
今はまだ…、ではあるが。
意を決してデートに誘ってみれば、彼女はすんなりとOKしてくれた。
しかも、クロードが好きな博物館に行こうとまで提案してくれたのだ。
この後はレストランで遅い昼食をとって、ブティックで正装し、劇場に向かうことになっている。
正に、完璧なデートコースである。
遺物を堪能して人混みから抜け出ると、先程アリスがいた辺りに彼女の姿はなかった。
違う展示でも見ているのかと辺りを見回したが、アリスの姿は見えない。
(馬鹿か、俺は…っ)
つい展示に夢中になって、長い時間アリスを放置してしまった。
呆れて帰ってしまったのか、時間を持て余して先に進んでしまったのか。
先の方に人だかりがあり、もしかしたら人気の展示があってアリスがいるかもしれないと寄って行ってみれば、なんと人だかりの中心にいたのは展示ではなくクロードの妻アリスだった。
アリスの周りを囲んでいるのは若い男たちで、どうやら一緒に見て回ろうと誘っているようだ。
「アリス!」
クロードは人だかりを掻き分けてアリスの元へ辿り着くと、彼女の手を取った。
「大丈夫ですか?」
焦ったようにたずねるクロードに、アリスはにっこり笑った。
「ええ。私が一人だと思って、皆さんご親切に案内を申し出てくださっていたの」
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