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晴れ渡る青空の中、教会の鐘の音が響き渡る。
サンフォース領の中心に建立された荘厳な教会で、今、結婚式が終わったのだ。
並んで教会から出て来た見目麗しいカップルに、見学者たちは熱狂し、祝福の声をあげる。
花嫁は女性ながら伯爵位を継いでいるサンフォース伯爵アリス、二十三歳。
幼い頃から神童の誉れ高く、現在も才色兼備で名高い淑女である。
爵位を継いで日が浅いにも関わらず、すでに事業運営、領地経営にも才を遺憾無く発揮している彼女は、領民を愛し、領地を愛し、伯爵家を愛し…、そして何より、夫を愛している。
一方花婿は、サンフォース伯爵の夫で近衛騎士団所属のクロード、二十歳。
彼は少し前までルイーズ王女の護衛騎士を勤めていたが、王女が北の離宮に移るのと同時に近衛騎士団に戻された。
現在は騎士の任務に就きながら、妻の家業も手伝っているようだ。
妻を見つめる彼の蕩けるような目を見ればわかるように、彼もまた、妻をこの上なく愛している。
実は二人は、一年以上前に王都で結婚式を挙げているため、今回は二回目の結婚式である。
一度目とは違って身内だけのささやかな式だが、主役の二人はとても幸せそうだ。
一度目の結婚式では誓いの口づけもなく目を合わせることさえしなかった二人が、終始見つめ合い、微笑み合う姿は、列席者たちをも幸せな気分にさせてくれる。
今回こうして二度目の結婚式を挙げることになったのは、夫クロードの発案である。
クロードは終始妻の顔も見ず仏頂面で通した一度目の結婚式を反省し、気持ちが通じ合った今、本物の結婚式を挙げたいと提案したのだ。
同じようなことを考えていた妻アリスもまた、すぐに賛成したことは言うまでもない。
だから今回、二人は遅い新婚旅行を兼ねながら領地に赴く計画を立て、こうして旅行の最後に身内だけの結婚式も行うことにした。
出発は、正に王都とサンフォース伯爵領を結ぶ鉄道が全面開通したその日。
その日夫婦で開通セレモニーに列席した二人は、そのまま最初の汽車に乗り込み、新婚旅行と洒落込んだのだ。
つまりこれは鉄道の宣伝であり、また、結婚式は領民たちに対して新領主夫妻のお披露目の意味もこめている。
また、この新婚旅行の費用だが、実は全て王室から出ている。
三ヶ月程前に起きたアリス監禁事件がルイーズ王女によるものだったため、王室からがっぽり賠償金をもらったのだ。
それから、御前試合で準優勝したクロードだったが、あの後、優勝したミハエルと同等の報奨金が出ている。
試合後にクロードの怪我が発覚し、それがあの例の事件で負ったものだと判明したため、賠償金を兼ねたというわけである。
決して、やり手の妻アリスが脅し取ったわけではない。
「おめでとう、アリス。まさか、二度もこんな役をする羽目になるとはな」
アリスの父は祭壇に向かう途中、少々皮肉げにそう言った。
花嫁を花婿の元へエスコートするのは、父の役目である。
言葉は皮肉げであるが、その眼差しを見れば、言葉とは裏腹に相当嬉しいのだろうということがわかる。
「ありがとう、お父様。私、幸せよ」
愛娘の満面の笑みを見て、父もさらに眉尻を下げた。
「兄上、遠いところありがとうございました」
クロードは祝いを言う人垣の中に長兄パトリスの姿を見つけ、歩み寄った。
「ああ、領地に来たついでだよ。王都に帰ったら、ナルシスとレイモンに土産話でもしてやろうと思ってな」
そう言って悪戯っぽく笑う兄に、クロードも苦笑する。
王都を出発する前に、クロードはアリスを連れてコラール侯爵家に顔を出している。
これからしばらく新婚旅行のため留守にすると、挨拶に行ったのだ。
クロードはいちおう、事件の日にアリスが逃げる手助けをしてくれたナルシスに礼を言った。
しかし引き続き、
「兄二人もが妻に懸想しているなど心外です。アリスは正真正銘私の妻ですし兄上たちが入り込む隙は全くありませんので、もう二度と近づかないでください」
とキツく釘を刺した。
その時ナルシスは今にも泣き出しそうな顔でアリスを見つめ、レイモンは悔しそうにクロードを睨んでいた。
結局、近衛騎士団を辞してサンフォース伯爵の専属騎士になるつもりだったクロードは騎士団に籍を置いたままである。
王太子と、騎士団長の強い反対にあって、辞するのは諦めたのだ。
アリスにしてみても、前途洋々の、これから騎士として花開くはずのクロードを自分の側だけに囲い込むなんてしたくなかった。
怪我をしながらも騎馬試合で準優勝するほどの実力を持つ彼を辞めさせてしまったら、王国にとっても損失だと思ったのだ。
結局クロードは近衛騎士団に残り、しかし一つの隊に縛られることはなく団長直属の騎士という、なんとも曖昧な立場になった。
騎士の道を捨てて女伯爵の夫として生きていく覚悟を決めていたクロードにとっては少々不満である。
だかそうではあっても、クロードはいつでもアリスを支えられるように、これから領地経営や事業経営を学ぶつもりでいる。
「団長は人使いが荒いから結局ちょくちょく呼び出されると思うけど」
「貴方は剣を握ってる時が一番イキイキしているものね。でも、危ないことをしてはダメよ。命の危機があったら一番に逃げてね」
アリスはいつも、騎士の妻らしからぬことをクロードに告げている。
王国や王家を命がけで守るのは騎士の勤めであるのだが、アリスにとってはそんなものより夫の命の方が大切だ。
だからクロードはーー。
「わかってるよ。俺は貴女の騎士だからね」
と笑顔で答える。
「今でも俺の夢は貴女の専属騎士になることだから。その時は傭兵たちを排して俺一人だけでも貴女を守れるよう強くなって帰ってくるからね」
「クロード…」
「アリス…」
「はいはい、そういうのは邸に帰ってから存分にどうぞ」
見つめ合う二人に割って入ったのは侍女のフェリシーだ。
さすがにフェリシーは最近の二人のイチャイチャ具合にも慣れてきたのだが、見物客を置いてきぼりで二人だけの世界に入られても困る。
「無理…。俺、まだ直視出来ない」
「ええ、私もです」
そんなフェリシーを呆れたように見ているのは、秘書のラウルと家令のマルセルだ。
ずっとアリスの側で色恋沙汰には無頓着な彼女を見てきた二人は、すっかり恋する乙女になった主人の顔にまだまだ慣れないらしい。
しかしアリスが彼らの前でこんな顔を見せるのは、もちろんごくたまにのこと。
普段は相変わらずキレキレの頭脳と態度で家業を取り仕切っているのだから。
領民たちが祝福の花びらを降らせる中、アリスとクロードは満面の笑みで歩みを進める。
と、そこへ、愛犬タロが駆け寄ってきた。
「あらタロ。お祝いに来てくれたの?」
アリスがタロの頭を一撫でして抱き上げようとすると、フェリシーはそれを遮った。
「だめですよ奥様、汚れます」
「あらいいのよ、タロはある意味私たちのキューピッドだからね。ねぇタロ」
愛おしそうに頬ずりするアリスに、タロも嬉しそうにアリスの顔をぺろぺろと舐めた。
「ふふ、タロ、わかるの?あなた、もうすぐ弟か妹ができるのよ?」
「……は?また仔犬を拾うのか?」
「…何言ってるの?私たちの子よ」
「………は?アリス?」
「…………?奥様?」
「…………お嬢?」
「「「「………はぁ⁈」」」」
クロードをはじめとする周囲の、驚きの声が重なる。
しかしアリスは「ふふっ」と小さく笑うと、左手をタロの頭に置いたまま自分のお腹に右手をやった。
クロードは慌ててタロを自分の方に引き寄せると、
「貴女って人は!どうして今このタイミングでそんなこと言うんだ!」
と叫んだ。
「だってクロードの驚く顔が見たかったんだもの」
悪びれもせず微笑むアリスに、クロードはため息をつく。
「それに、わかったのはサンフォース領に入ってからなの。妊娠がわかったら、きっと結婚式を取りやめるって言い出したでしょ?クロード」
「当たり前だろ?」
「でもお腹の子も私もピンピンしてるもの。結果オーライで許して」
「お腹の子…」
クロードは感慨深げに呟くと、タロをフェリシーに渡し、そっとアリスのお腹に手を当てた。
「ここに、貴女と俺の子が…?」
「ふふ、そうよパパ、よろしくね。でもとりあえず今は領民の皆さんの祝福に応えなきゃ!」
「パパ…」
ジーン…と効果音まで聞こえてきそうなほど感動に打ち震えているクロードを尻目に、アリスは見学者に溢れんばかりの笑顔を見せて手を振っている。
「…先が思いやられますね…」
「あれ、絶対一生お嬢に振り回されるよな」
「まぁ、尻に敷かれるのは確定でしょう」
◇◇◇
かつて、一生恋など知らなくていいと思っていた伯爵令嬢がいた。
伯爵位を継ぎ、一生を領民と仕事に捧げて生きていこうと心に決めた強い女性だ。
そんな彼女は、家門に役立ち仕事の邪魔にならない男と結婚した。
生真面目で無愛想な年下の騎士と。
しかし彼女はその男によって恋と幸せを知ることになる。
人生は、わからないものだとアリスは思う。
二人の結婚生活はまだまだ始まったばかり。
これからだって思いもよらないことが多々あるかもしれない。
元々目指すものが違っていた二人に、色々と厄介な問題が降りかかるかもしれない。
でも…。
アリスは隣に立つクロードの横顔を見上げる。
彼女の視線に気づいたクロードもまたアリスを見下ろす。
そこにはあの無愛想だった面影など全くなく、ただ彼女を愛おしく思う男の蕩けるような瞳がある。
(きっと、彼となら大丈夫)
ふわりと抱き上げられてクロードの首に腕を回したアリスに、彼は悪戯っぽく笑った。
「例の離縁申請はビリビリに破っておいたから。二度ともらって来ないでね、アリス」
♡Happy End♡
読んでいただいてありがとうございました♡
サンフォース領の中心に建立された荘厳な教会で、今、結婚式が終わったのだ。
並んで教会から出て来た見目麗しいカップルに、見学者たちは熱狂し、祝福の声をあげる。
花嫁は女性ながら伯爵位を継いでいるサンフォース伯爵アリス、二十三歳。
幼い頃から神童の誉れ高く、現在も才色兼備で名高い淑女である。
爵位を継いで日が浅いにも関わらず、すでに事業運営、領地経営にも才を遺憾無く発揮している彼女は、領民を愛し、領地を愛し、伯爵家を愛し…、そして何より、夫を愛している。
一方花婿は、サンフォース伯爵の夫で近衛騎士団所属のクロード、二十歳。
彼は少し前までルイーズ王女の護衛騎士を勤めていたが、王女が北の離宮に移るのと同時に近衛騎士団に戻された。
現在は騎士の任務に就きながら、妻の家業も手伝っているようだ。
妻を見つめる彼の蕩けるような目を見ればわかるように、彼もまた、妻をこの上なく愛している。
実は二人は、一年以上前に王都で結婚式を挙げているため、今回は二回目の結婚式である。
一度目とは違って身内だけのささやかな式だが、主役の二人はとても幸せそうだ。
一度目の結婚式では誓いの口づけもなく目を合わせることさえしなかった二人が、終始見つめ合い、微笑み合う姿は、列席者たちをも幸せな気分にさせてくれる。
今回こうして二度目の結婚式を挙げることになったのは、夫クロードの発案である。
クロードは終始妻の顔も見ず仏頂面で通した一度目の結婚式を反省し、気持ちが通じ合った今、本物の結婚式を挙げたいと提案したのだ。
同じようなことを考えていた妻アリスもまた、すぐに賛成したことは言うまでもない。
だから今回、二人は遅い新婚旅行を兼ねながら領地に赴く計画を立て、こうして旅行の最後に身内だけの結婚式も行うことにした。
出発は、正に王都とサンフォース伯爵領を結ぶ鉄道が全面開通したその日。
その日夫婦で開通セレモニーに列席した二人は、そのまま最初の汽車に乗り込み、新婚旅行と洒落込んだのだ。
つまりこれは鉄道の宣伝であり、また、結婚式は領民たちに対して新領主夫妻のお披露目の意味もこめている。
また、この新婚旅行の費用だが、実は全て王室から出ている。
三ヶ月程前に起きたアリス監禁事件がルイーズ王女によるものだったため、王室からがっぽり賠償金をもらったのだ。
それから、御前試合で準優勝したクロードだったが、あの後、優勝したミハエルと同等の報奨金が出ている。
試合後にクロードの怪我が発覚し、それがあの例の事件で負ったものだと判明したため、賠償金を兼ねたというわけである。
決して、やり手の妻アリスが脅し取ったわけではない。
「おめでとう、アリス。まさか、二度もこんな役をする羽目になるとはな」
アリスの父は祭壇に向かう途中、少々皮肉げにそう言った。
花嫁を花婿の元へエスコートするのは、父の役目である。
言葉は皮肉げであるが、その眼差しを見れば、言葉とは裏腹に相当嬉しいのだろうということがわかる。
「ありがとう、お父様。私、幸せよ」
愛娘の満面の笑みを見て、父もさらに眉尻を下げた。
「兄上、遠いところありがとうございました」
クロードは祝いを言う人垣の中に長兄パトリスの姿を見つけ、歩み寄った。
「ああ、領地に来たついでだよ。王都に帰ったら、ナルシスとレイモンに土産話でもしてやろうと思ってな」
そう言って悪戯っぽく笑う兄に、クロードも苦笑する。
王都を出発する前に、クロードはアリスを連れてコラール侯爵家に顔を出している。
これからしばらく新婚旅行のため留守にすると、挨拶に行ったのだ。
クロードはいちおう、事件の日にアリスが逃げる手助けをしてくれたナルシスに礼を言った。
しかし引き続き、
「兄二人もが妻に懸想しているなど心外です。アリスは正真正銘私の妻ですし兄上たちが入り込む隙は全くありませんので、もう二度と近づかないでください」
とキツく釘を刺した。
その時ナルシスは今にも泣き出しそうな顔でアリスを見つめ、レイモンは悔しそうにクロードを睨んでいた。
結局、近衛騎士団を辞してサンフォース伯爵の専属騎士になるつもりだったクロードは騎士団に籍を置いたままである。
王太子と、騎士団長の強い反対にあって、辞するのは諦めたのだ。
アリスにしてみても、前途洋々の、これから騎士として花開くはずのクロードを自分の側だけに囲い込むなんてしたくなかった。
怪我をしながらも騎馬試合で準優勝するほどの実力を持つ彼を辞めさせてしまったら、王国にとっても損失だと思ったのだ。
結局クロードは近衛騎士団に残り、しかし一つの隊に縛られることはなく団長直属の騎士という、なんとも曖昧な立場になった。
騎士の道を捨てて女伯爵の夫として生きていく覚悟を決めていたクロードにとっては少々不満である。
だかそうではあっても、クロードはいつでもアリスを支えられるように、これから領地経営や事業経営を学ぶつもりでいる。
「団長は人使いが荒いから結局ちょくちょく呼び出されると思うけど」
「貴方は剣を握ってる時が一番イキイキしているものね。でも、危ないことをしてはダメよ。命の危機があったら一番に逃げてね」
アリスはいつも、騎士の妻らしからぬことをクロードに告げている。
王国や王家を命がけで守るのは騎士の勤めであるのだが、アリスにとってはそんなものより夫の命の方が大切だ。
だからクロードはーー。
「わかってるよ。俺は貴女の騎士だからね」
と笑顔で答える。
「今でも俺の夢は貴女の専属騎士になることだから。その時は傭兵たちを排して俺一人だけでも貴女を守れるよう強くなって帰ってくるからね」
「クロード…」
「アリス…」
「はいはい、そういうのは邸に帰ってから存分にどうぞ」
見つめ合う二人に割って入ったのは侍女のフェリシーだ。
さすがにフェリシーは最近の二人のイチャイチャ具合にも慣れてきたのだが、見物客を置いてきぼりで二人だけの世界に入られても困る。
「無理…。俺、まだ直視出来ない」
「ええ、私もです」
そんなフェリシーを呆れたように見ているのは、秘書のラウルと家令のマルセルだ。
ずっとアリスの側で色恋沙汰には無頓着な彼女を見てきた二人は、すっかり恋する乙女になった主人の顔にまだまだ慣れないらしい。
しかしアリスが彼らの前でこんな顔を見せるのは、もちろんごくたまにのこと。
普段は相変わらずキレキレの頭脳と態度で家業を取り仕切っているのだから。
領民たちが祝福の花びらを降らせる中、アリスとクロードは満面の笑みで歩みを進める。
と、そこへ、愛犬タロが駆け寄ってきた。
「あらタロ。お祝いに来てくれたの?」
アリスがタロの頭を一撫でして抱き上げようとすると、フェリシーはそれを遮った。
「だめですよ奥様、汚れます」
「あらいいのよ、タロはある意味私たちのキューピッドだからね。ねぇタロ」
愛おしそうに頬ずりするアリスに、タロも嬉しそうにアリスの顔をぺろぺろと舐めた。
「ふふ、タロ、わかるの?あなた、もうすぐ弟か妹ができるのよ?」
「……は?また仔犬を拾うのか?」
「…何言ってるの?私たちの子よ」
「………は?アリス?」
「…………?奥様?」
「…………お嬢?」
「「「「………はぁ⁈」」」」
クロードをはじめとする周囲の、驚きの声が重なる。
しかしアリスは「ふふっ」と小さく笑うと、左手をタロの頭に置いたまま自分のお腹に右手をやった。
クロードは慌ててタロを自分の方に引き寄せると、
「貴女って人は!どうして今このタイミングでそんなこと言うんだ!」
と叫んだ。
「だってクロードの驚く顔が見たかったんだもの」
悪びれもせず微笑むアリスに、クロードはため息をつく。
「それに、わかったのはサンフォース領に入ってからなの。妊娠がわかったら、きっと結婚式を取りやめるって言い出したでしょ?クロード」
「当たり前だろ?」
「でもお腹の子も私もピンピンしてるもの。結果オーライで許して」
「お腹の子…」
クロードは感慨深げに呟くと、タロをフェリシーに渡し、そっとアリスのお腹に手を当てた。
「ここに、貴女と俺の子が…?」
「ふふ、そうよパパ、よろしくね。でもとりあえず今は領民の皆さんの祝福に応えなきゃ!」
「パパ…」
ジーン…と効果音まで聞こえてきそうなほど感動に打ち震えているクロードを尻目に、アリスは見学者に溢れんばかりの笑顔を見せて手を振っている。
「…先が思いやられますね…」
「あれ、絶対一生お嬢に振り回されるよな」
「まぁ、尻に敷かれるのは確定でしょう」
◇◇◇
かつて、一生恋など知らなくていいと思っていた伯爵令嬢がいた。
伯爵位を継ぎ、一生を領民と仕事に捧げて生きていこうと心に決めた強い女性だ。
そんな彼女は、家門に役立ち仕事の邪魔にならない男と結婚した。
生真面目で無愛想な年下の騎士と。
しかし彼女はその男によって恋と幸せを知ることになる。
人生は、わからないものだとアリスは思う。
二人の結婚生活はまだまだ始まったばかり。
これからだって思いもよらないことが多々あるかもしれない。
元々目指すものが違っていた二人に、色々と厄介な問題が降りかかるかもしれない。
でも…。
アリスは隣に立つクロードの横顔を見上げる。
彼女の視線に気づいたクロードもまたアリスを見下ろす。
そこにはあの無愛想だった面影など全くなく、ただ彼女を愛おしく思う男の蕩けるような瞳がある。
(きっと、彼となら大丈夫)
ふわりと抱き上げられてクロードの首に腕を回したアリスに、彼は悪戯っぽく笑った。
「例の離縁申請はビリビリに破っておいたから。二度ともらって来ないでね、アリス」
♡Happy End♡
読んでいただいてありがとうございました♡
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
素敵なお話でした!
りとさまの感想欄から飛んできました。 一気に読んでしまいました。
これから作者さまのお話に浸ろうと思います!
ririka様
感想ありがとうございます♪
素敵な話と言っていただいて嬉しい♡
りと様に感謝しないとですね!
わぁ、終わっちゃった。残念!一気読みしました。楽しかったです。素敵な作品、ありがとうございました。
deko様
感想ありがとうございます😊
素敵と言っていただけて本当に嬉しいです〜😍
1日1話がツラい😭
今日クロードが助けに来ると思ったけど明日なんですね😭
明日楽しみに待ってます🥺
ですよね。またまたごめんなさい🙏
う〜ん、明日より、よかったら二話ためて明後日読んでください❣️