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守りたいもの
離縁申請⁇
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「離縁…、申請?」
ポツリとクロードがこぼした言葉に、アリスはギョッとして、慌てて立ち上がった。
そしてつかつかと机に向かって歩いて行くと、ガバッと封筒を手に取った。
「アリス、それは何ですか?」
「な、なんでもないわ。手紙の書き損じよ」
「じゃあ見せてください」
「だから、これは書き損じで…」
「なら別に、見せたって構わないでしょう?」
「……っ」
封筒を後手に黙ってしまったアリスに、クロードは近づいた。
「…アリス…」
耳元で囁くと、フッとアリスの肩から力が抜ける。
「あ……っ!」
力の抜けたアリスから封筒を取り上げるのは簡単だった。
「離縁申請って…?どういうことですか?」
サッと封筒の表書きと中身に目を走らせたクロードは、怒ったような顔でアリスを見つめた。
話し方もだいぶくだけていたはずなのに、再び敬語に戻っている。
どうやらクロードは、怒ると敬語になるらしい。
そんなおかしな考えに現実逃避していたアリスの頬を、クロードが両手で挟み込んだ。
「こっちを見てアリス。ちゃんと答えてください」
アリスの肩がピクリと震える。
「アリスは俺と離縁したいんですか?じゃあさっき好きって言ってくれたのは嘘ですか?」
「ち、違うの。それは、ずいぶん前に取り寄せたもので…」
焦って否定しようとするアリスを、クロードは冷ややかに見据えた。
「たしかに以前の俺たちの関係なら離縁の準備をするのもわかるけど…。でも今机の上にあるってことは、最近準備したからなんじゃないんですか?」
「……旦那様が、避寒地から帰って来てからです…」
「旦那様…、ね…。その頃って、俺が騎馬試合の後話があるって言った頃ですよね?」
「……そうです」
「なるほど。俺が貴女に気持ちを打ち明けようと浮かれていた間、貴女は離縁を考えていたわけですね?」
「ち、違…っ」
「たしかにまだ気持ちを打ち明けてはいなかったけど…、でもここしばらくは、俺たち結構いい雰囲気でしたよね?それなのに、アリスは俺と離縁したかったんですか?」
「そうじゃなくて、それは捨て忘れていただけで…」
「でもアリスの署名、ちゃんとしてありますよ」
「……」
なんと答えたら良いのかわからず、アリスは口を噤んだ。
あの申請書は、ルイーズがクロードの初恋の人だと聞かされたり、ルイーズにクロードからのプレゼントだと髪飾りを見せつけられたアリスが勝手に辛い気持ちになって、勝手に離縁しようと取り寄せたものだ。
でも、それも誤解だったとわかった。
だいたい、あの事件でクロードに助けられた日から、アリスにはもう離縁する気なんてこれっぽっちもなくなっている。
本当に、この封筒の存在さえ忘れていたのだ。
アリスはクロードの顔を見上げた。
クロードは傷ついたような顔で薄く笑っている。
「白い結婚の証明だって…。貴女は、こんな証明まで受けようとしてたんですか?」
封筒の中身は、いわゆる離縁に必要な書類だった。
夫婦の署名と、それを証明する人物の署名。
そして、『白い結婚』の証明書。
つまり、アリスはこの証明書を記入してもらうために然るべき所で自分の純潔を証明しなければならない。
まるで泣き出しそうなクロードの顔に、アリスの胸がギュッと苦しくなった。
「違うの…。ごめんなさい、クロード」
アリスはクロードに近づき、ギュッとその両手を握った。
「私、苦しくて。貴方が好きで。でも貴方の心はずっと王女様にあると思ってて…」
「どうしてそんなこと…。護衛は任務で、色恋とは全く関係ない…」
「だって、レイモン様から王女様は貴方の初恋の人だって聞いて。それに髪飾りだってショールだって、貴方が王女様に贈ったものだって…」
「バカな…。あれは勝手に王女が買ったものだとさっきも説明したじゃないですか」
「だって知らなかったんだもの、そんなこと。貴方はいつだって王女様第一だったし、だから私のことなんて邪魔だろうと私…」
「邪魔なわけないでしょう?でも、じゃあもしかして貴女は…、王女に嫉妬したんですか?」
「そうよ。嫉妬して、苦しくて、貴方から逃げようと思ったの」
「アリス…!」
クロードがきつくアリスを抱きしめた。
そして次の瞬間、アリスは宙に浮いていた。
クロードが抱き上げたのだ。
「白い結婚が理由で離縁が成立するなら、俺は今すぐ貴女を抱く」
「……は?」
「もう誰にも白い結婚なんて言わせない」
「ま、待ってください!だいたい貴方は腕を怪我して!」
「大丈夫」
クロードはアリスを片手で軽々と抱き上げている。
騎士の腕は強いのだ。
クロードはそのまま、ずんずんと夫婦の寝室に進んだ。
あの、いつも鍵がかかっていた扉を開けて。
「でもその、片手が不自由だと色々不便なんじゃ…」
アリスはクロードを心配してそう言ったのだが、クロードはちょっとだけ首を傾げた。
そして、悪戯っぽく笑った。
「それは、脱がせるのに不便だから?それとも、貴女に上手に触れられないから?」
「………はあ⁇……脱……っ⁈……触っ⁈」
「だったら、貴女が手伝って、アリス」
「ちょ、ちょっと、クロード…っ」
「大丈夫。このくらい全然痛くない。それに、貴女に触れればきっと治る」
ふんわりと微笑むクロードに、アリスは目が釘付けになった。
(え⁈何この子、いつの間にこんな色気を…!)
「本当はずっとこうしたかったんだ」
そう言うと、クロードはアリスをベッドの上におろした。
片腕とは思えないほど、ふんわりと、優しく。
言うまでもなく、アリスはその晩若い夫に翻弄され続けた。
堅物騎士クロードは、花嫁から二度と嫌だと言われないようにと、優しく優しく抱いたらしい。
それは、奇しくも一年前の初夜の晩、家令のマルセルに受けた忠告を忠実に守った成果だった。
おそらくクロードにとっても初めての経験だっただろうし腕を怪我していたため上手に出来たかどうかはわからないが、アリス自身も初めてだったのだから判断出来るわけもない。
とにかく、二人にとってとても幸せな夜であったことは間違いない。
その後当然のことではあるが、あれから、二人の寝室の間の扉は鍵が取り外されたと言う。
ポツリとクロードがこぼした言葉に、アリスはギョッとして、慌てて立ち上がった。
そしてつかつかと机に向かって歩いて行くと、ガバッと封筒を手に取った。
「アリス、それは何ですか?」
「な、なんでもないわ。手紙の書き損じよ」
「じゃあ見せてください」
「だから、これは書き損じで…」
「なら別に、見せたって構わないでしょう?」
「……っ」
封筒を後手に黙ってしまったアリスに、クロードは近づいた。
「…アリス…」
耳元で囁くと、フッとアリスの肩から力が抜ける。
「あ……っ!」
力の抜けたアリスから封筒を取り上げるのは簡単だった。
「離縁申請って…?どういうことですか?」
サッと封筒の表書きと中身に目を走らせたクロードは、怒ったような顔でアリスを見つめた。
話し方もだいぶくだけていたはずなのに、再び敬語に戻っている。
どうやらクロードは、怒ると敬語になるらしい。
そんなおかしな考えに現実逃避していたアリスの頬を、クロードが両手で挟み込んだ。
「こっちを見てアリス。ちゃんと答えてください」
アリスの肩がピクリと震える。
「アリスは俺と離縁したいんですか?じゃあさっき好きって言ってくれたのは嘘ですか?」
「ち、違うの。それは、ずいぶん前に取り寄せたもので…」
焦って否定しようとするアリスを、クロードは冷ややかに見据えた。
「たしかに以前の俺たちの関係なら離縁の準備をするのもわかるけど…。でも今机の上にあるってことは、最近準備したからなんじゃないんですか?」
「……旦那様が、避寒地から帰って来てからです…」
「旦那様…、ね…。その頃って、俺が騎馬試合の後話があるって言った頃ですよね?」
「……そうです」
「なるほど。俺が貴女に気持ちを打ち明けようと浮かれていた間、貴女は離縁を考えていたわけですね?」
「ち、違…っ」
「たしかにまだ気持ちを打ち明けてはいなかったけど…、でもここしばらくは、俺たち結構いい雰囲気でしたよね?それなのに、アリスは俺と離縁したかったんですか?」
「そうじゃなくて、それは捨て忘れていただけで…」
「でもアリスの署名、ちゃんとしてありますよ」
「……」
なんと答えたら良いのかわからず、アリスは口を噤んだ。
あの申請書は、ルイーズがクロードの初恋の人だと聞かされたり、ルイーズにクロードからのプレゼントだと髪飾りを見せつけられたアリスが勝手に辛い気持ちになって、勝手に離縁しようと取り寄せたものだ。
でも、それも誤解だったとわかった。
だいたい、あの事件でクロードに助けられた日から、アリスにはもう離縁する気なんてこれっぽっちもなくなっている。
本当に、この封筒の存在さえ忘れていたのだ。
アリスはクロードの顔を見上げた。
クロードは傷ついたような顔で薄く笑っている。
「白い結婚の証明だって…。貴女は、こんな証明まで受けようとしてたんですか?」
封筒の中身は、いわゆる離縁に必要な書類だった。
夫婦の署名と、それを証明する人物の署名。
そして、『白い結婚』の証明書。
つまり、アリスはこの証明書を記入してもらうために然るべき所で自分の純潔を証明しなければならない。
まるで泣き出しそうなクロードの顔に、アリスの胸がギュッと苦しくなった。
「違うの…。ごめんなさい、クロード」
アリスはクロードに近づき、ギュッとその両手を握った。
「私、苦しくて。貴方が好きで。でも貴方の心はずっと王女様にあると思ってて…」
「どうしてそんなこと…。護衛は任務で、色恋とは全く関係ない…」
「だって、レイモン様から王女様は貴方の初恋の人だって聞いて。それに髪飾りだってショールだって、貴方が王女様に贈ったものだって…」
「バカな…。あれは勝手に王女が買ったものだとさっきも説明したじゃないですか」
「だって知らなかったんだもの、そんなこと。貴方はいつだって王女様第一だったし、だから私のことなんて邪魔だろうと私…」
「邪魔なわけないでしょう?でも、じゃあもしかして貴女は…、王女に嫉妬したんですか?」
「そうよ。嫉妬して、苦しくて、貴方から逃げようと思ったの」
「アリス…!」
クロードがきつくアリスを抱きしめた。
そして次の瞬間、アリスは宙に浮いていた。
クロードが抱き上げたのだ。
「白い結婚が理由で離縁が成立するなら、俺は今すぐ貴女を抱く」
「……は?」
「もう誰にも白い結婚なんて言わせない」
「ま、待ってください!だいたい貴方は腕を怪我して!」
「大丈夫」
クロードはアリスを片手で軽々と抱き上げている。
騎士の腕は強いのだ。
クロードはそのまま、ずんずんと夫婦の寝室に進んだ。
あの、いつも鍵がかかっていた扉を開けて。
「でもその、片手が不自由だと色々不便なんじゃ…」
アリスはクロードを心配してそう言ったのだが、クロードはちょっとだけ首を傾げた。
そして、悪戯っぽく笑った。
「それは、脱がせるのに不便だから?それとも、貴女に上手に触れられないから?」
「………はあ⁇……脱……っ⁈……触っ⁈」
「だったら、貴女が手伝って、アリス」
「ちょ、ちょっと、クロード…っ」
「大丈夫。このくらい全然痛くない。それに、貴女に触れればきっと治る」
ふんわりと微笑むクロードに、アリスは目が釘付けになった。
(え⁈何この子、いつの間にこんな色気を…!)
「本当はずっとこうしたかったんだ」
そう言うと、クロードはアリスをベッドの上におろした。
片腕とは思えないほど、ふんわりと、優しく。
言うまでもなく、アリスはその晩若い夫に翻弄され続けた。
堅物騎士クロードは、花嫁から二度と嫌だと言われないようにと、優しく優しく抱いたらしい。
それは、奇しくも一年前の初夜の晩、家令のマルセルに受けた忠告を忠実に守った成果だった。
おそらくクロードにとっても初めての経験だっただろうし腕を怪我していたため上手に出来たかどうかはわからないが、アリス自身も初めてだったのだから判断出来るわけもない。
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