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再び、王都へ
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王都に戻ってきたヒース侯爵夫妻は、自邸に戻る前にまず妻の実家であるルーデル公爵邸に立ち寄った。
これから先も、夫婦としてコンスタンスと一緒に暮らしていく許しを得るためである。
離縁はともかく一旦は実家に戻すよう言われるかと覚悟していたが、公爵側は思いのほかあっさりとオレリアンを許した。
結婚以来1年に及ぶコンスタンスへの仕打ちを忘れたわけではない。
だが、彼女の事故の後、オレリアンは人が変わったように公爵邸に通い詰め、その上妻のためにと2ヶ月にも及ぶ休暇をもぎ取っていた。
また、義母や元恋人の問題もすでに片付いている。
さらに、ヒース領ではとにかく夫婦仲が良かったというリアの証言もあるし、それより何より、コンスタンスの夫を見る目が全てを物語っている。
『二度とコンスタンスを傷つけない』という約束の元、公爵も兄エリアスも彼女を取り戻すことは一旦諦めた。
もちろん約束を破ればすぐに取り戻すつもりだが。
そうしてオレリアンは、妻を連れて悠然と自邸に帰ったのである。
コンスタンスは事故後ルーデル公爵邸に移るまで部屋に篭っていたこともあり、王都の侯爵邸はほとんど覚えていなかった。
あの時は彼女の看護もルーデル公爵家で担っていたため、使用人たちとも全く接していない。
しかし、カレンが出て行き、王都に残していたセイの指導もあって、ヒース侯爵邸の雰囲気はガラリと変わっていた。
セイはカレンの息がかかっていた使用人は全て解雇し、真面目で誠実で口が固い者のみを邸に残した。
だから皆、ヒース領の邸の者たちと同じようにあたたかく侯爵夫妻を迎えてくれたのである。
もちろん皆、コンスタンスの記憶喪失のことも承知している。
到着したその日から、当然のようにオレリアンとコンスタンスは同じ部屋で眠っている。
さすがに2ヶ月も一緒にいれば慣れたのか、オレリアンが寝不足になることはなくなった。
というか、かえって可愛い抱き枕のおかげで安眠しているくらいである。
そして、翌日から、オレリアンは職務に復帰した。
コンスタンスもいずれは社交界に復帰しなくてはいけないだろうが、今はまだ、侯爵邸で蜜月の続きを楽しむつもりだ。
初日の仕事から戻りコンスタンスと一緒に晩餐をとった後、王都の邸での執事となったセイが、急な来客を告げに来た。
「こんな夜遅くに誰が?」
入浴も終え、コンスタンスの待つ寝室に向かおうとしていた矢先の事である。
今日は初日だったし、離れている時間も長かったから、たくさん話したいことがあると妻が言っていたのに。
訝しげに尋ねるオレリアンにセイが告げた名前は、
「お忍びで、王太子殿下がおいでになりました」
とのことだった。
この国の次期国王で、現王太子であるフィリップである。
「何故」と考える余裕も無く、オレリアンは身支度を整え、フィリップ王太子を通してある応接間に急いだ。
もちろん、コンスタンスには伏せたままだ。
部屋に入り、跪こうとすると、フィリップが片手を挙げてそれを制する。
しかし背の高いオレリアンが立ったままでは王太子を見下ろす形になってしまうため、オレリアンは片膝をつき、頭を垂れた。
フィリップは伴のものを2人だけ連れ、本当にお忍びで来たようだ。
1人は護衛騎士、あと1人は宰相の嫡男で、フィリップの側近である。
さて、どういうことなのだろうか。
侯爵に叙されたとはいえ有力貴族でもなく近衛騎士の1人でしかないオレリアンが、直接王太子と関わる案件など思いつかない。
あるとすれば、王太子に婚約を解消された令嬢を妻に迎えたこと。
そして、妻の安寧のために義母との絶縁状に王太子にサインを頼んだこと。
だが考えを巡らすオレリアンにフィリップが言い放ったのは、驚くべき言葉だった。
「コニーを、私に返してはくれぬか」
と。
これから先も、夫婦としてコンスタンスと一緒に暮らしていく許しを得るためである。
離縁はともかく一旦は実家に戻すよう言われるかと覚悟していたが、公爵側は思いのほかあっさりとオレリアンを許した。
結婚以来1年に及ぶコンスタンスへの仕打ちを忘れたわけではない。
だが、彼女の事故の後、オレリアンは人が変わったように公爵邸に通い詰め、その上妻のためにと2ヶ月にも及ぶ休暇をもぎ取っていた。
また、義母や元恋人の問題もすでに片付いている。
さらに、ヒース領ではとにかく夫婦仲が良かったというリアの証言もあるし、それより何より、コンスタンスの夫を見る目が全てを物語っている。
『二度とコンスタンスを傷つけない』という約束の元、公爵も兄エリアスも彼女を取り戻すことは一旦諦めた。
もちろん約束を破ればすぐに取り戻すつもりだが。
そうしてオレリアンは、妻を連れて悠然と自邸に帰ったのである。
コンスタンスは事故後ルーデル公爵邸に移るまで部屋に篭っていたこともあり、王都の侯爵邸はほとんど覚えていなかった。
あの時は彼女の看護もルーデル公爵家で担っていたため、使用人たちとも全く接していない。
しかし、カレンが出て行き、王都に残していたセイの指導もあって、ヒース侯爵邸の雰囲気はガラリと変わっていた。
セイはカレンの息がかかっていた使用人は全て解雇し、真面目で誠実で口が固い者のみを邸に残した。
だから皆、ヒース領の邸の者たちと同じようにあたたかく侯爵夫妻を迎えてくれたのである。
もちろん皆、コンスタンスの記憶喪失のことも承知している。
到着したその日から、当然のようにオレリアンとコンスタンスは同じ部屋で眠っている。
さすがに2ヶ月も一緒にいれば慣れたのか、オレリアンが寝不足になることはなくなった。
というか、かえって可愛い抱き枕のおかげで安眠しているくらいである。
そして、翌日から、オレリアンは職務に復帰した。
コンスタンスもいずれは社交界に復帰しなくてはいけないだろうが、今はまだ、侯爵邸で蜜月の続きを楽しむつもりだ。
初日の仕事から戻りコンスタンスと一緒に晩餐をとった後、王都の邸での執事となったセイが、急な来客を告げに来た。
「こんな夜遅くに誰が?」
入浴も終え、コンスタンスの待つ寝室に向かおうとしていた矢先の事である。
今日は初日だったし、離れている時間も長かったから、たくさん話したいことがあると妻が言っていたのに。
訝しげに尋ねるオレリアンにセイが告げた名前は、
「お忍びで、王太子殿下がおいでになりました」
とのことだった。
この国の次期国王で、現王太子であるフィリップである。
「何故」と考える余裕も無く、オレリアンは身支度を整え、フィリップ王太子を通してある応接間に急いだ。
もちろん、コンスタンスには伏せたままだ。
部屋に入り、跪こうとすると、フィリップが片手を挙げてそれを制する。
しかし背の高いオレリアンが立ったままでは王太子を見下ろす形になってしまうため、オレリアンは片膝をつき、頭を垂れた。
フィリップは伴のものを2人だけ連れ、本当にお忍びで来たようだ。
1人は護衛騎士、あと1人は宰相の嫡男で、フィリップの側近である。
さて、どういうことなのだろうか。
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あるとすれば、王太子に婚約を解消された令嬢を妻に迎えたこと。
そして、妻の安寧のために義母との絶縁状に王太子にサインを頼んだこと。
だが考えを巡らすオレリアンにフィリップが言い放ったのは、驚くべき言葉だった。
「コニーを、私に返してはくれぬか」
と。
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