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16歳、やり直し
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「王妃様がコニーとお茶会をしたいと言っている」
ある日、ルーデル公爵が困ったように家族にそう伝えてきた。
コンスタンスが実家に戻ってから2ヶ月半、オレリアンが姿を見せなくなって半月程経った頃である。
特に隠していたわけでもない為、ヒース侯爵夫人コンスタンスが夫と別居中で実家のルーデル公爵家に戻っているということは噂にもなっており、当然王太子や王妃の耳にも入っていた。
以前ヒース侯爵が1年間にも及び夫人を自領に住まわせていたことを知る世間が、今度こそ離縁かと噂していることも。
もちろん王妃は息子である王太子から聞いて、コンスタンスが記憶を失っていることも承知しているだろう。
しかもその後コンスタンスに起きた出来事は身内しか知らないはずだから、今の彼女は7歳までの記憶しかないと思っているかもしれない。
「王妃様は自分が斡旋した縁談でコニーが不幸になったと責任を感じておられる。
なんとか力になりたいとお申し出くださっているのだ」
「そんな…!何を、今更…」
夫の話を聞いた公爵夫人は頬を引きつらせた。
たしかに今の混乱を招いている一端は、縁談を仕切った王妃にもあるのだ。
王妃は以前も今も良かれと思って動いているのだろうが、公爵家から見れば余計なお世話以外の何者でもない。
コンスタンスの母と王妃は親友同士であったはずなのだが、結局王族は少なからず傲慢なのだと、いやと言うほど理解させられた。
王家に嫁げば王家に染まり、王族という人種になるのだろう、と公爵夫妻は理解したのだ。
だいたい、王妃とのお茶会という名目でコンスタンスを王宮に呼び出すなんて、随分と意地の悪いことをするものだと思う。
7歳の幼児のようなコンスタンスなら、オレリアンを慕っていると王太子から聞いているはずであるし、もし記憶が戻っていると思っているなら、それこそ意地が悪い。
新婚ホヤホヤの元婚約者夫婦がいる王宮に呼び出すなど、夫妻の可愛い娘に対して、なんてデリカシーに欠ける行為をするのだろうか。
これでは、本当に心配してのことなのか興味本位でなのかわからない。
だからそれを聞いたルーデル公爵夫人は娘を抱きしめて憤った。
そんな誘いを受ける必要は無いと。
王妃に対してルーデル公爵家では、不敬にならない程度に、丁重に、コンスタンスの体調不良を理由に断りを入れることにした。
しかしそれを聞いた王妃は、今度は公爵家に見舞いに来ると言い出した。
「さすがに王妃様のお見舞いまで断るわけにはいきませんわ。
お父様、お母様、お兄様、私は王宮に参ります」
コンスタンスは覚悟を決めたようにきっぱりと家族に告げた。
例えお忍びではあっても、王妃を公爵家に迎え入れるには何かと準備が面倒である。
実家への迷惑を慮ったコンスタンスは、結局自分が王宮に赴くのが一番いいと思ったのだ。
しかし母は悲痛な顔で彼女を抱きしめた。
「無理しなくていいのよ、コニー。
もう王家の言うことなんて聞かなくていいわ」
王宮に行けば王太子と会う可能性だってあるのだ。
例え不敬の汚名を被っても、これ以上愛する娘を傷つけたくはない。
「大丈夫ですわ。
記憶は取り戻したふりをしてお会いしてきます。
そうすればもう、いらない詮索をされることもないでしょう。
どちらにしろ、このままで済むとは思えないのです」
「それは、そうだが…」
父であるルーデル公爵も眉間に皺を寄せ、唇を噛む。
王妃が会うと言い出したのだ。
一度でも顔を見せない限り、話は終わらないだろう。
おそらく王妃は、コンスタンスが夫と別居していたのも、記憶喪失に陥ったのも、不幸な結婚と未だに王太子を慕うが故と思い込んでいる。
だから以前王太子が言っていたようにコンスタンスを夫と離縁させ、王妃付きの侍女にした上で側妃として召上げるという件を話すつもりなのかもしれない。
そしてそれが、コンスタンスの幸せにも繋がると思い込んでいるらしいから厄介だ。
だからそんな与太話を潰すには、コンスタンスがすっかり元通りになって幸せな結婚生活を送っていることをわかってもらうのが一番だ。
しかし、実際のところ、コンスタンスは未だ記憶を失っていて、夫とは別居中である。
仕方がない…。
公爵は目を閉じ、大きく息を吐いた。
そして目を開くと、娘を真っ直ぐに見つめた。
こうなったら、王太子がコンスタンスを側妃に迎えたいと言った件を、本人の耳に入れないわけにはいかないだろう。
公爵は言葉を選び、慎重に娘に話し始めた。
ある日、ルーデル公爵が困ったように家族にそう伝えてきた。
コンスタンスが実家に戻ってから2ヶ月半、オレリアンが姿を見せなくなって半月程経った頃である。
特に隠していたわけでもない為、ヒース侯爵夫人コンスタンスが夫と別居中で実家のルーデル公爵家に戻っているということは噂にもなっており、当然王太子や王妃の耳にも入っていた。
以前ヒース侯爵が1年間にも及び夫人を自領に住まわせていたことを知る世間が、今度こそ離縁かと噂していることも。
もちろん王妃は息子である王太子から聞いて、コンスタンスが記憶を失っていることも承知しているだろう。
しかもその後コンスタンスに起きた出来事は身内しか知らないはずだから、今の彼女は7歳までの記憶しかないと思っているかもしれない。
「王妃様は自分が斡旋した縁談でコニーが不幸になったと責任を感じておられる。
なんとか力になりたいとお申し出くださっているのだ」
「そんな…!何を、今更…」
夫の話を聞いた公爵夫人は頬を引きつらせた。
たしかに今の混乱を招いている一端は、縁談を仕切った王妃にもあるのだ。
王妃は以前も今も良かれと思って動いているのだろうが、公爵家から見れば余計なお世話以外の何者でもない。
コンスタンスの母と王妃は親友同士であったはずなのだが、結局王族は少なからず傲慢なのだと、いやと言うほど理解させられた。
王家に嫁げば王家に染まり、王族という人種になるのだろう、と公爵夫妻は理解したのだ。
だいたい、王妃とのお茶会という名目でコンスタンスを王宮に呼び出すなんて、随分と意地の悪いことをするものだと思う。
7歳の幼児のようなコンスタンスなら、オレリアンを慕っていると王太子から聞いているはずであるし、もし記憶が戻っていると思っているなら、それこそ意地が悪い。
新婚ホヤホヤの元婚約者夫婦がいる王宮に呼び出すなど、夫妻の可愛い娘に対して、なんてデリカシーに欠ける行為をするのだろうか。
これでは、本当に心配してのことなのか興味本位でなのかわからない。
だからそれを聞いたルーデル公爵夫人は娘を抱きしめて憤った。
そんな誘いを受ける必要は無いと。
王妃に対してルーデル公爵家では、不敬にならない程度に、丁重に、コンスタンスの体調不良を理由に断りを入れることにした。
しかしそれを聞いた王妃は、今度は公爵家に見舞いに来ると言い出した。
「さすがに王妃様のお見舞いまで断るわけにはいきませんわ。
お父様、お母様、お兄様、私は王宮に参ります」
コンスタンスは覚悟を決めたようにきっぱりと家族に告げた。
例えお忍びではあっても、王妃を公爵家に迎え入れるには何かと準備が面倒である。
実家への迷惑を慮ったコンスタンスは、結局自分が王宮に赴くのが一番いいと思ったのだ。
しかし母は悲痛な顔で彼女を抱きしめた。
「無理しなくていいのよ、コニー。
もう王家の言うことなんて聞かなくていいわ」
王宮に行けば王太子と会う可能性だってあるのだ。
例え不敬の汚名を被っても、これ以上愛する娘を傷つけたくはない。
「大丈夫ですわ。
記憶は取り戻したふりをしてお会いしてきます。
そうすればもう、いらない詮索をされることもないでしょう。
どちらにしろ、このままで済むとは思えないのです」
「それは、そうだが…」
父であるルーデル公爵も眉間に皺を寄せ、唇を噛む。
王妃が会うと言い出したのだ。
一度でも顔を見せない限り、話は終わらないだろう。
おそらく王妃は、コンスタンスが夫と別居していたのも、記憶喪失に陥ったのも、不幸な結婚と未だに王太子を慕うが故と思い込んでいる。
だから以前王太子が言っていたようにコンスタンスを夫と離縁させ、王妃付きの侍女にした上で側妃として召上げるという件を話すつもりなのかもしれない。
そしてそれが、コンスタンスの幸せにも繋がると思い込んでいるらしいから厄介だ。
だからそんな与太話を潰すには、コンスタンスがすっかり元通りになって幸せな結婚生活を送っていることをわかってもらうのが一番だ。
しかし、実際のところ、コンスタンスは未だ記憶を失っていて、夫とは別居中である。
仕方がない…。
公爵は目を閉じ、大きく息を吐いた。
そして目を開くと、娘を真っ直ぐに見つめた。
こうなったら、王太子がコンスタンスを側妃に迎えたいと言った件を、本人の耳に入れないわけにはいかないだろう。
公爵は言葉を選び、慎重に娘に話し始めた。
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