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第一部
第86話 崖っぷち
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声に反応したウェイン卿は、崖下に目をやり、その目を見開いた。
(……あれれ?)
幽霊でも見たみたいな表情を浮かべ、固まっている。
(これは……?)
ついこの前まで、ウェイン卿は感情を表に出さない人だと思っていた。無表情で、いつも冷静で、そんなところも素敵であった。
ところが、今、目の前で、
(ウェイン卿が……仰天、している?)
そんな顔もまた、たまらなく貴重。値千金の素敵さ。胸はまた、ずきゅんと鳴った。
(……この表情もまた、尊い……記憶に焼き付けておこう)
見開かれた赤い瞳を見上げ、この状況で、はじめに何を言うべきか? と思考を巡らせる。
(やはり、まずは、ご迷惑をおかけしたことに対する謝罪。ここから叫ぶべき……? いや、まず崖を上ってから、丁重に謝罪しよう)
声が届きやすいように、片手を口の横に添える。
「あのー! この度は、ご足労をおかけしましたー! 今から、登れるところを探して参りま――」
言い終わらぬ内に、ウェイン卿は二階の屋根の高さくらいはありそうな崖をずざざざっと踵を付け、土埃とともに滑り降りてきた。
……ん? 垂直の崖って、その方法で降りられるの?
思った瞬間、目の前に、ウェイン卿の秀麗な顔があった。
赤い瞳は、見開かれたまま。唇が切れ、血が滲んでいる。私服らしき白シャツは土で汚れ、肩には、人の足跡らしきものまである。
(一体、何が……?)
そう言えば、レオンの服も土で汚れ、唇も切れていた。
今日のメイデイランドでは、何か、土にまみれるような催しが開かれていたんだろうか……?
あ、祭り?……祭りかな? 世の中には、様々なお祭りがあると聞く。
牛に追いかけられる祭り。オレンジを投げ合う祭り。山車を引き回す祭り。そう言ったやんちゃ系の類いのお祭りに、二人とも参加した……?
男性とは、いくつになっても少年の心を持つものである、といつか読んだ本に書いてあった。ウェイン卿やレオンみたいな人でも、祭りの魅力には逆らえないのだろう……参加してるとこ、ちょっと見たかった。
「……あのう、お怪我されているようですが、だいじょ――」
ウェイン卿の両腕が、すいっと伸びて、顔の横を通る。
次の瞬間、背中が後ろから、ぐっと押された。
(…………あれ?)
目の前に、土で汚れた白いシャツが迫ったかと思うと、固いものにどんっと顔からぶつかる。
(…………ん?)
あれー? これ、なんっか、おかしくない?
背中に、腕が回されている、ような気がする。
頬に、シャツ一枚越しの熱い肌が触れている、ような気がする。
汗と土の匂いがする、ような気がする。
耳元で、自分のものとは違う鼓動が響いている、ような気がする。
(……ええっと、つまり……?)
一旦、目を閉じて考える。ふっ、と余裕を込めて笑ってみる。
いやいやいや、ないないない。ないわー。
抱き締められている……ような気がするなんてことは、ありえない。正気を保て、しっかりしろ。
恐る恐る、目を開けてみる。
至近距離に、白シャツの袖が見えた。背にぐっと力が込められたかと思うと、体が浮き上がる。地面に触れているのは、爪先だけ。耳と首筋に自分のものでない髪が触れる、ふわふわした感覚。
(あれあれあれあれあれあれ?)
こ、こ、こ、これは……もしかすると……もしかするんじゃ……?
耳元で、囁くような声が掠れて響く。
「……令嬢……」
「はっ、はいっ!!」
まるで泣き出しそうな声が、また囁く。
「……リリアーナ……」
「はっ、はい……!」
声の響きの切なさに、じいん…と胸のあたりが熱を持つ。
(……これは、もしかしたら、たぶん、きっと、)
――心配、してくれていたのだ。
(『友人』って、『友人』って……まじすごい!)
このわたしが、ウェイン卿に心配してもらえるほどの一端の存在に成り上がれるとは……
人間、諦めずに生きているといいことある。じわりと、視界が霞む。
「……ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした。」
感動のあまり、声が湿る。ウェイン卿は腕に一層力をこめ、わたしはますます密着することになった。
さて、
一応、ここでおさらいしておく。
わたしは長年、引き籠もっていた。
それは、いわゆる、恋愛免疫ゼロ女。
恋愛免疫ゼロ女にとって、家族以外で初めて抱き締められた相手が、長年の重症の恋煩いの相手だというのは、非常に、破壊的に、終末的に、危機的状況であると言えた。
――顔が、熱い。
耳まで真っ赤であろう、と思われた。この状況で、顔面の平静を保つことは、いくらなんでも無理であった。
全身全霊をもってしても、無理であった。
心臓が、バックンドックンと、ありえない轟音を立て始めた。
(こ……このままでは、本当に爆発してしまうぅっ……!)
ぎゅっと目を閉じ、別のことを考えようとしても、やはり、全くの無駄であった。
広くて固い胸板。熱い体温。太陽と汗の香り。違うリズムを刻んで脈打つ鼓動。
熱い吐息が、耳朶と首筋にかかる。ぞくりと背筋が震える。
――全身が、痺れるみたい。
吐息が首筋に触れる度、喉の奥から何かが漏れ出そうになって、必死に飲み込む。
ウェイン卿の熱い掌が、ゆっくりと髪を撫でおろす。
触れられた背から、全身に痺れが走り抜け、指先を震えさせた。
押し寄せる心地好さに耐え切れず、唇から吐息が零れ落ちる。
途端に、腰が砕けそうになり、慌てて四肢に力を込める。
ウェイン卿は、そっと、言い聞かせるみたいに、また掠れた声で囁いた。
「もう、大丈夫……」
「は……? はあ……?」
こっちは一片たりとも、大丈夫な状況ではなかったが、嘆息交じりに掠れた声が、耳元でまた囁く。
「戻った……」
「は、はい! 左様でございますね!」
さらに、ぎゅっと締め付けられ、痺れが走る。くらくらと目眩に襲われる。
……駄目だ。まずい。まずい……これでは、これは、まるで、わたしは、
まるっきり………変質者だ!
ウェイン卿は、あくまでも純粋に、『友人』の心配をしてくれているというのに!
それなのにそれなのに!
頭に浮かぶのは、不埒で、邪な煩悩ばかり。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっっーっ!)
内心で何度も謝りながら、気を失わないよう、精一杯、踏ん張った。
そして、とても長い間、ウェイン卿の腕は、わたしを抱き締めたまま、離さなかった。
(……あれれ?)
幽霊でも見たみたいな表情を浮かべ、固まっている。
(これは……?)
ついこの前まで、ウェイン卿は感情を表に出さない人だと思っていた。無表情で、いつも冷静で、そんなところも素敵であった。
ところが、今、目の前で、
(ウェイン卿が……仰天、している?)
そんな顔もまた、たまらなく貴重。値千金の素敵さ。胸はまた、ずきゅんと鳴った。
(……この表情もまた、尊い……記憶に焼き付けておこう)
見開かれた赤い瞳を見上げ、この状況で、はじめに何を言うべきか? と思考を巡らせる。
(やはり、まずは、ご迷惑をおかけしたことに対する謝罪。ここから叫ぶべき……? いや、まず崖を上ってから、丁重に謝罪しよう)
声が届きやすいように、片手を口の横に添える。
「あのー! この度は、ご足労をおかけしましたー! 今から、登れるところを探して参りま――」
言い終わらぬ内に、ウェイン卿は二階の屋根の高さくらいはありそうな崖をずざざざっと踵を付け、土埃とともに滑り降りてきた。
……ん? 垂直の崖って、その方法で降りられるの?
思った瞬間、目の前に、ウェイン卿の秀麗な顔があった。
赤い瞳は、見開かれたまま。唇が切れ、血が滲んでいる。私服らしき白シャツは土で汚れ、肩には、人の足跡らしきものまである。
(一体、何が……?)
そう言えば、レオンの服も土で汚れ、唇も切れていた。
今日のメイデイランドでは、何か、土にまみれるような催しが開かれていたんだろうか……?
あ、祭り?……祭りかな? 世の中には、様々なお祭りがあると聞く。
牛に追いかけられる祭り。オレンジを投げ合う祭り。山車を引き回す祭り。そう言ったやんちゃ系の類いのお祭りに、二人とも参加した……?
男性とは、いくつになっても少年の心を持つものである、といつか読んだ本に書いてあった。ウェイン卿やレオンみたいな人でも、祭りの魅力には逆らえないのだろう……参加してるとこ、ちょっと見たかった。
「……あのう、お怪我されているようですが、だいじょ――」
ウェイン卿の両腕が、すいっと伸びて、顔の横を通る。
次の瞬間、背中が後ろから、ぐっと押された。
(…………あれ?)
目の前に、土で汚れた白いシャツが迫ったかと思うと、固いものにどんっと顔からぶつかる。
(…………ん?)
あれー? これ、なんっか、おかしくない?
背中に、腕が回されている、ような気がする。
頬に、シャツ一枚越しの熱い肌が触れている、ような気がする。
汗と土の匂いがする、ような気がする。
耳元で、自分のものとは違う鼓動が響いている、ような気がする。
(……ええっと、つまり……?)
一旦、目を閉じて考える。ふっ、と余裕を込めて笑ってみる。
いやいやいや、ないないない。ないわー。
抱き締められている……ような気がするなんてことは、ありえない。正気を保て、しっかりしろ。
恐る恐る、目を開けてみる。
至近距離に、白シャツの袖が見えた。背にぐっと力が込められたかと思うと、体が浮き上がる。地面に触れているのは、爪先だけ。耳と首筋に自分のものでない髪が触れる、ふわふわした感覚。
(あれあれあれあれあれあれ?)
こ、こ、こ、これは……もしかすると……もしかするんじゃ……?
耳元で、囁くような声が掠れて響く。
「……令嬢……」
「はっ、はいっ!!」
まるで泣き出しそうな声が、また囁く。
「……リリアーナ……」
「はっ、はい……!」
声の響きの切なさに、じいん…と胸のあたりが熱を持つ。
(……これは、もしかしたら、たぶん、きっと、)
――心配、してくれていたのだ。
(『友人』って、『友人』って……まじすごい!)
このわたしが、ウェイン卿に心配してもらえるほどの一端の存在に成り上がれるとは……
人間、諦めずに生きているといいことある。じわりと、視界が霞む。
「……ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした。」
感動のあまり、声が湿る。ウェイン卿は腕に一層力をこめ、わたしはますます密着することになった。
さて、
一応、ここでおさらいしておく。
わたしは長年、引き籠もっていた。
それは、いわゆる、恋愛免疫ゼロ女。
恋愛免疫ゼロ女にとって、家族以外で初めて抱き締められた相手が、長年の重症の恋煩いの相手だというのは、非常に、破壊的に、終末的に、危機的状況であると言えた。
――顔が、熱い。
耳まで真っ赤であろう、と思われた。この状況で、顔面の平静を保つことは、いくらなんでも無理であった。
全身全霊をもってしても、無理であった。
心臓が、バックンドックンと、ありえない轟音を立て始めた。
(こ……このままでは、本当に爆発してしまうぅっ……!)
ぎゅっと目を閉じ、別のことを考えようとしても、やはり、全くの無駄であった。
広くて固い胸板。熱い体温。太陽と汗の香り。違うリズムを刻んで脈打つ鼓動。
熱い吐息が、耳朶と首筋にかかる。ぞくりと背筋が震える。
――全身が、痺れるみたい。
吐息が首筋に触れる度、喉の奥から何かが漏れ出そうになって、必死に飲み込む。
ウェイン卿の熱い掌が、ゆっくりと髪を撫でおろす。
触れられた背から、全身に痺れが走り抜け、指先を震えさせた。
押し寄せる心地好さに耐え切れず、唇から吐息が零れ落ちる。
途端に、腰が砕けそうになり、慌てて四肢に力を込める。
ウェイン卿は、そっと、言い聞かせるみたいに、また掠れた声で囁いた。
「もう、大丈夫……」
「は……? はあ……?」
こっちは一片たりとも、大丈夫な状況ではなかったが、嘆息交じりに掠れた声が、耳元でまた囁く。
「戻った……」
「は、はい! 左様でございますね!」
さらに、ぎゅっと締め付けられ、痺れが走る。くらくらと目眩に襲われる。
……駄目だ。まずい。まずい……これでは、これは、まるで、わたしは、
まるっきり………変質者だ!
ウェイン卿は、あくまでも純粋に、『友人』の心配をしてくれているというのに!
それなのにそれなのに!
頭に浮かぶのは、不埒で、邪な煩悩ばかり。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっっーっ!)
内心で何度も謝りながら、気を失わないよう、精一杯、踏ん張った。
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