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始まり〜シイ村

いつの間に1年

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あれから徐々に生き物達が森に戻ってきて、たくさんの鳥の鳴き声が朝を教えてくれる。

ドラゴンは名前がないというので、適当に呼ぶことにした。

エンシェントドラゴンだから、エン。

「ふんっ」なんて鼻で笑われたけど、エン、可愛いと思う。

この世界で必要なことは繰り返しドラゴンが教えてくれたし、魔法の応用なんかも教えてくれて、充実な日々を送っていた。

魔力や体力を使った時は寝るけど、エンもそんなに睡眠を取らなくて大丈夫らしい。
ちょっと午睡するだけで回復しちゃうんだって。

なんと私の魔法で顕現させた食事が魔素で出来てるから、食べてしまえば魔力の補充もできちゃってるんだそうだ。

そんなだから平気で夜通し会話してた日もあった。

前世の私は喉が弱くて長時間喋るだけで喉を痛めていたけど、この妖精の体は本当に体の変調を感じない。

すごいなぁ

好きなことに没頭しても健康を維持できるんだろうな。

因みに、食べようと思えば食べれるから、寝ようと思えば寝られたよ。
まだ寝足りないとか寝起きで怠いとかっていうのも無くスッキリ起きられたよ。
ただ、二度寝が好きだったけど、あの気持ちよさをかんじることはできないのだろうね。

そうそう、エンに元の世界についてもお話しもしたんだけど、温泉とやらに興味が惹かれたらしくて、強請られたから露天風呂作ったよ。

真夜中に入る露天風呂は、真っ暗な夜空にたくさんの星が瞬いていて絶景でサイコーだった!

一緒に入れというから仕方なくお互いに薄いワンピースを着て入った。
相手は人間じゃない、ドラゴンだから混浴について思うことがないのだろうか?
私もどんな風に受け止めたら良いのかわからないけど、ほぼペットかな。人型のペット?
こんなのも贅沢なんだよって、湯にお盆を乗せて日本酒を置いてあげたら、日々のルーティーンに組み込まれてしまったっけ。

「ここで教えられることは大体教え終わった。
 これからもここに居るのか?」

今日も今日とてエンと混浴。
ちょうど流れ星を見つけて幸せな気分になったときだ。

「んー、そうだね、神々を楽しませるって使命があったのを思い出したわ。
 そろそろ人里に行ってみようかな?
 何がしたいか旅をしながら探すのもいいね」

「では共に行こう。様々な国を巡り、時には名所を教えてやろう」

絶対私の食べ物目当てだよね。

「旅は道連れか」

「その通り」

エンが持っていた盃を天にかざす。
ご機嫌だ。

いつの間にか1年が経とうとしていた。
こんなに長く共に生活すれば情が沸くものだし、嫌いではないので断る理由もないし。

「じゃ、明日出発ね」

そこからまた話が長かった。
魔素の体のお陰でのぼせることもなかったし、肌がブヨブヨになることもなく、喉が乾くこともなかったから、ついうっかり。

これから行く国は手始めにヒト族が統治している国、アズリール王国。
比較的平和で平穏な国だ。
私みたいな冒険者見習いみたいな、初心者が訪れるにはちょうどいい治安のところだって。

ただ、この森はとても深かったらしくて、徒歩7日かかると。
私のコンパスでは10日かかるかもしれないって!

「別に歩かなくてもいいよねー?
 私の体は魔素なんだから、筋肉や脂肪がつかないんでしょ?
 運動する必要がないってことよね。
 だったら箒に乗って飛んで行こうよ」

「ならば我に乗っていくか?」

「え、乗れるの?乗っていいの?」

「勿論だ。
 乗り易いサイズのドラゴンになろう」

うわー深い森もひとっ飛びでさよなら出来ちゃうっていうか、そのまま世界一周空の旅で良くない?

「あー、そういえばさ、お金は自分で稼げって言われてるんだ。
 だから何か売れそうなものを採集しながらじゃないとダメかも」

「ふむ、森の中を飛ぶのか。
 まぁ、出来ないわけではないが」

「例えばさ、ドラゴン、人型以外にも体を変えられる?
 猫とか?ネコとか?にゃんことか?」

「何にでもなれるとも!
 我の魔力量ならば変幻自在だ」

エンがドヤ顔を向けてきた。

因みに、私も創造魔法でできちゃうよね!

エンは湯船に浸かったままで私が座れそうな大きさの黒猫に変幻した。
雄ライオンくらいの大きさかな。

「可愛いー!!!」

首根っこに思わず抱きついてしまった。
気持ちもいいです。

私も猫耳と尻尾!

エンが黒なら私は白にしようかな。

「みてみて!どう?」

「おお、似合うではないか」

「これでいこう!」

嬉しくて顔すりすり。
エンも見事に猫を演じて顔すりすりし返してくれた。

本物の猫ではなかったけど、本物っぽい猫なドラゴンでもいいよね。

これからの旅が楽しいものになるでしょう!
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