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4、肉のステーキ
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夕食の支度が整ったと男に呼ばれ、部屋を出て男の背に着いていく。
相変わらずみすぼらしい身なりだが、やはり動きは洗練せれているように思う。
もしかしたら、どこかの貴族にでも仕えていたのかもしれない。
それなら納得が行く。
がやがやがや
1階の食堂に降りれば、そこは賑わいを見せていた。
宿に来た当初は居なかった人だが、夕食時には繁盛するのか満席とは行かずもかなりの席が埋まっていた。
狭い食堂のホールに丸テーブルが5つ。
それぞれ五人がけだ。
その内の4つが埋まっている。
男に空いていたテーブルの一つに案内される。
座ろうとすると男が椅子を引いてくれる、全く本当にどこの使用人だったんだ?
使用人にしては動作があまりにも洗練されてて、ちょっと見覚えがあるような気がしないでもないが・・・
「あ、ありがとう」
「いいえ」
椅子を引かれるなんてされ慣れてないので戸惑う。
宿屋の食堂にこんなサービスがあるものなのか?
いや、ないよな?
仲間内で酒場に行ったときだって無かったんだ。
「お客さん、ひとつお願いがありまして」
「ん?なんだ」
俺が店のサービスについて考えていたら、男から声をかけられた。
「実は私もこの時間に食事を取るように言われてまして、ですが今日は席の空きが旦那の隣しかないんです。失礼ですが隣で食事を取らせて頂いてもよろしいですかね?」
「ああ、そんなこと。構わないよ好きに座るといい」
「ありがとうございます」
男は眼を細め嬉しそうに言うと奥の厨房へと向かっていった。
「あんた、あのお人が平気なんですかい?」
声をかけられ後ろを振り返ると、隣のテーブルに見覚えのある男がいた。
昼間、市場で声を掛け男が会話をした商人だった。
顔はどこか期待をしているような明るい眼差しで、彼から少し視線を外すと後ろに同じような光を宿した男たちがジョッキを片手にこちらを見ていた。
恐る恐るといった風に聞いてくる彼に、俺は思っていることを答える。
「ああ、特段なにかあるという理由はないな。出会ったときは流石に身なりがみすぼらしくて驚いたが・・・いい宿を紹介して貰ったし感謝しているよ」
「そりゃよかった!!」
それを聞いて、男たちもさらに聞き耳を立てていた他のテーブルの客も、嬉しそうにジョッキを飲み始める。
あの男は結構まわりの客に好かれているようだ。
詳しく見れば、どのテーブルの男たちも屈強でしっかりと鍛えられてるようだ。
まるで体は兵士のようである。
おそらく重労働のあとにここで食事をし、仕事のあとの酒を楽しんでいるのだろう。
ああ、俺も使命を果たして仲間と酒場に繰り出して飲み明かしたいものだ。
「お待ちどう様です、温かい内にどうぞ」
両手に盆を載せて男が料理を運んできた。
温かい具沢山の野菜と豆のスープ。
ポテトサラダの付け合せと赤い小さな野菜。
それと一緒に載せられているのは焼いた肉のステーキだ。
まるパンが2つついている。
食べる前に添えられてる水をひとくち含む。
水は相変わらずキンキンに冷えていて美味しい。
男は自分の盆を隣に置くと席に座る。
「・・・ぼそぼそぼそ・・・」
男はローブの中に手を入れ、なにか小さく呟くと目を瞑った。
それはほんの僅かな間でしかなかった。
食事を取り始めていた俺は気づいていなかったが、その一瞬は周囲が静かになっていた、ような気がした。
ふと違和感を感じて食事から顔を上げて周りを見る。
いろんなテーブルの男たちから見られている。
男ではなく俺を、しかもなんだか温かな眼差しだ。
俺は何かしでかしでもしたのだろうか?
「ようやく・・・いや、これから・・・」
どこからか小さく聞こえた言葉に疑問を覚えるも、仕事の話をしているだけだろうと思い俺は食事を続けた。
きっとあの眼差しも、主人の料理の虜になったやつがまた一人増えやがったぜ!くらいのものだろう。
美味しいものは美味しい内に食べなければ!
俺は肉のステーキをナイフとフォークで食べ進めたのだった。
相変わらずみすぼらしい身なりだが、やはり動きは洗練せれているように思う。
もしかしたら、どこかの貴族にでも仕えていたのかもしれない。
それなら納得が行く。
がやがやがや
1階の食堂に降りれば、そこは賑わいを見せていた。
宿に来た当初は居なかった人だが、夕食時には繁盛するのか満席とは行かずもかなりの席が埋まっていた。
狭い食堂のホールに丸テーブルが5つ。
それぞれ五人がけだ。
その内の4つが埋まっている。
男に空いていたテーブルの一つに案内される。
座ろうとすると男が椅子を引いてくれる、全く本当にどこの使用人だったんだ?
使用人にしては動作があまりにも洗練されてて、ちょっと見覚えがあるような気がしないでもないが・・・
「あ、ありがとう」
「いいえ」
椅子を引かれるなんてされ慣れてないので戸惑う。
宿屋の食堂にこんなサービスがあるものなのか?
いや、ないよな?
仲間内で酒場に行ったときだって無かったんだ。
「お客さん、ひとつお願いがありまして」
「ん?なんだ」
俺が店のサービスについて考えていたら、男から声をかけられた。
「実は私もこの時間に食事を取るように言われてまして、ですが今日は席の空きが旦那の隣しかないんです。失礼ですが隣で食事を取らせて頂いてもよろしいですかね?」
「ああ、そんなこと。構わないよ好きに座るといい」
「ありがとうございます」
男は眼を細め嬉しそうに言うと奥の厨房へと向かっていった。
「あんた、あのお人が平気なんですかい?」
声をかけられ後ろを振り返ると、隣のテーブルに見覚えのある男がいた。
昼間、市場で声を掛け男が会話をした商人だった。
顔はどこか期待をしているような明るい眼差しで、彼から少し視線を外すと後ろに同じような光を宿した男たちがジョッキを片手にこちらを見ていた。
恐る恐るといった風に聞いてくる彼に、俺は思っていることを答える。
「ああ、特段なにかあるという理由はないな。出会ったときは流石に身なりがみすぼらしくて驚いたが・・・いい宿を紹介して貰ったし感謝しているよ」
「そりゃよかった!!」
それを聞いて、男たちもさらに聞き耳を立てていた他のテーブルの客も、嬉しそうにジョッキを飲み始める。
あの男は結構まわりの客に好かれているようだ。
詳しく見れば、どのテーブルの男たちも屈強でしっかりと鍛えられてるようだ。
まるで体は兵士のようである。
おそらく重労働のあとにここで食事をし、仕事のあとの酒を楽しんでいるのだろう。
ああ、俺も使命を果たして仲間と酒場に繰り出して飲み明かしたいものだ。
「お待ちどう様です、温かい内にどうぞ」
両手に盆を載せて男が料理を運んできた。
温かい具沢山の野菜と豆のスープ。
ポテトサラダの付け合せと赤い小さな野菜。
それと一緒に載せられているのは焼いた肉のステーキだ。
まるパンが2つついている。
食べる前に添えられてる水をひとくち含む。
水は相変わらずキンキンに冷えていて美味しい。
男は自分の盆を隣に置くと席に座る。
「・・・ぼそぼそぼそ・・・」
男はローブの中に手を入れ、なにか小さく呟くと目を瞑った。
それはほんの僅かな間でしかなかった。
食事を取り始めていた俺は気づいていなかったが、その一瞬は周囲が静かになっていた、ような気がした。
ふと違和感を感じて食事から顔を上げて周りを見る。
いろんなテーブルの男たちから見られている。
男ではなく俺を、しかもなんだか温かな眼差しだ。
俺は何かしでかしでもしたのだろうか?
「ようやく・・・いや、これから・・・」
どこからか小さく聞こえた言葉に疑問を覚えるも、仕事の話をしているだけだろうと思い俺は食事を続けた。
きっとあの眼差しも、主人の料理の虜になったやつがまた一人増えやがったぜ!くらいのものだろう。
美味しいものは美味しい内に食べなければ!
俺は肉のステーキをナイフとフォークで食べ進めたのだった。
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