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第32話「マークスリ街へ」
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今日はレミの家に遊びに来ている。場所は冒険者ギルドより第3森林方面。農業区域の手前になる。
大きな川があり、大陸を横切る山脈方面に第3森林があり、北の大森林方面が我が家のある第2森林である。
レミの誕生日プレゼントを渡して一緒に遊んでいるが、今一つ姉ちゃんの元気が無い。
「エル、元気なさそうだけど大丈夫?」
レミが心配してくれる
「う、うん。考え事してただけ」
「やっぱり襲われた時の事?撃退したんでしょ?」
一応セティ達から簡単な説明はされていた
「でもエルってすごいよねー、悪い人やっつけちゃうなんて」
「う、うん・・」
(まあ、レミに相談しても仕方ないか・・)
そう思ったが
「エル、言いたい事は言った方が良いよ?」
「ロラン?」
「言っちゃった方が楽になる事もあるから」
「うん」
「何かあったの?」
「王都の模擬戦で・・魔法使いの代表になるかも知れないの」
「そ、それって、魔術師団が相手でしょ?」
「みたい」
「すごーい!私も見に行こうかな?応援するよ」
「で、でも、自信無いし・・」
「勝てなくても良いんじゃないの?」
「・・ロバルデューの代表だよ?」
「良いんじゃない?冒険者だから強いって訳でもないし?」
冒険者には、まさしく探検家みたいな人も居る。
お宝探し専門の冒険者には、強さよりも知識や経験が求められる。
「でも、魔法使いの代表だから・・」
「うーん、全部負けても良いって思うけど?」
「そうなのかな?」
「普通7歳の女の子は勝てないよ?」
「・・・」
「負けたからって誰にも文句は言われないと思う」
「・・うん」
「負けても後輩が模擬戦に出たって、私なら自慢しちゃうな」
「うん」
ーーーーー
レミはその後も模擬戦の話で盛り上がる。姉ちゃんも少しは楽になった様だ。
5刻(約16時)まで遊びレミの家を出た。花束を買い、その足で治療院に向かう。
「ねえちゃん緊張してる?」
「わ、わたしが切っちゃったから・・」
「仕方ないとおもうよ?」
「そうね。彼も冒険者だから文句は無いと思うわ」
「う、うん」
受付で病室を聞いてお見舞いに向かう。3階の315号室だった。
治療院は1階2階が治療施設、3階~5階が病室になっていた。5階は短期入所用らしい。
「おや?エディ達じゃないか」
エレベーターの手前でジェフリーさんに会う
「うん。ピトフさんのおみまい」
「そうか。ああ、ちょうど良い。ロラン少し付き合ってくれないか?」
「なに?」
「新しい部署の開設をする予定なんだが、設備にロランの意見も欲しくてな」
「私?医者じゃないよ?」
「いや、魔法使いとしての意見が欲しい」
「・・・」
「だいじょうぶだよロラン。ここには悪い人もいないし」
(たぶん)
「・・じゃあ先行ってて」
「うん」
そして姉ちゃんとピトフさんの病室に向かった
ーーーーー
ドアをノックする
「どうぞ」
この国の言葉でピトフさんの声がした。姉ちゃんと病室に入る。
ピトフさんの腕は、がっちり固定されていた。
「おや、君は・・・エディ君、だったか?」
片言だがこの国の言葉を話せるみたいだ
「うん。そうだよ」
「えーと」
「姉のエルです。その・・ごめんなさい」
そう言い花束を出す。
「なぜ・・謝る?」
「え?」
「君は・・弟を守った。その、結果だ」
「でも・・」
「それに、君は、僕を・・殺しておく、べきだった」
(はい?)
姉ちゃんは唖然としている
「どうしてそう思うの?」
「腕が、治って・・帰国しても、伯爵に、調べられる」
(まあ、そうかも知れない)
「薬を・・投与され、調べられる」
(薬物?)
「僕は・・エディ君が、アオキの知識を、持っている・・ギルドで、聞いた」
「「!?」」
「国が、知る・・黙って、ない」
そうだった。デリスの言葉を話してごまかす時、アオキの知識の様にと俺は言ってしまった。
そしてピトフさんは片言だが、この国の言葉を話せている。
姉ちゃんが心配そうに俺を見る。
「・・・」
(仕方ないか・)
「だいじょうぶだよ?バレるのが早いか遅いかだけだよ」
「だが・・」
「それに、ねえちゃんが守ってくれるから」
「エディ?」
姉ちゃんが驚き、目を見開く
「うむ、確かに・・強い」
「え?でも本気じゃなかったから・・」
ピトフさんは首を振る
「本気、でも・・1対1、勝てない」
姉ちゃんはまたも驚く
「ねえちゃんはもっと強くなるよ。ロランみたいに」
「ロラン、知っている。ゼフィラム・・招待する」
「かえりうちにしたよ」
「・・そうか」
「しんぱいしなくて良いから、はやく腕なおしてね」
「・・・」
ピトフさんが姉ちゃんを見据える
「エディ君・・守って、やれ」
姉ちゃんは頷く。その目はパパに冒険者になりたいと言った時の様な、真剣な目だった。
ロランがまだ来ないので病室を出て3階の待合所でロランを待つ。姉ちゃんはいつもの姉ちゃんに戻っていた。
ピトフさんが治ると、俺の事がデリス王国にバレるかも知れない。その心配事が模擬戦を上回った様だ。
ーーーーー
エレベーターが開き、ロランが来た
「ロラン?」
何だろう?今度はロランが浮かない顔をしてるな
「ごめん。待たせちゃったね」
「なにかあったの?」
「うーん・・ここで働いてくれないかって」
「「ええ?」」
「まだジャンに要望してる段階だから、どうなるか分からないけど・・」
(ロランがしてる仕事って・・今は翻訳だけ?)
エディのチームは封印された書物の必要な部分だけを翻訳してる為、残りはロラン達の仕事である。
(姉ちゃんの勉強は仕事じゃないし・・ん?何でロランは近代魔法を教えてくれてるんだろう?)
姉ちゃんを見ると心配そうにしている
「もう一緒に居られないの?」
「私は働くつもり無いし、もし雇われてもエルの家から通うよ」
「うん・・」
「それに勉強も続けるから」
「うん」
せっかくなので聞いてみる
「ロランはどうしてきんだい魔法を教えてくれるの?」
「うん?どうしてだろう?」
(自分でも分からないのか)
自分で気づいていないが、単純に人恋しいのと、エルを見て自分が出来なかった事をさせてあげたかった。
ロランは望む事を何もできずに、近代魔法の使い手となってしまったのだ。
そして帰宅し夕食をみんなで食べる。俺は明日の夕方に領主の屋敷へ戻るので、今日は豪勢だ。
ピトフさんの話もしたが、領主様に任せる事になる。デリス王国へ使者を送るらしい。
とても楽しい夕食だった。ずっと昔からロランやじいちゃん達が居た様な、そんな感じがした。
ーーーーー
翌日。休み最終日。俺は家でのんびりと過ごす。
ロランが姉ちゃんに魔法を教えているのを眺めている。いつもの授業の様な感じだ。
近代魔法によるファイアーボール。隕石の魔法のミニ版である。
質量、速度、摩擦等の計算が必要だが、今まで近代魔法の勉強をしてきたので何とか受け入れられる様だ。
姉ちゃんの魔法陣の魔力では、ゴルフボールぐらいの大きさしかできなかった。
それでも、対魔法ローブでは防ぐ事が出来ないのだ。
そして発動に成功する。
〈バキャッ!〉
木を貫通した
「これは使えないわね・・」
「・・・・・・・」←姉ちゃん
「もっと小さくしましょう」
試行錯誤してビー玉ぐらいの大きさ、速度はかろうじて視界に入るので、時速300km無いぐらいだろうか?
簡単に木にめり込んだ。
(ファイアーボールと言うより、遅い弾丸だな)
「これでも大けがしそうね・・」
ロランも悩んでるので俺が提案してみる
「柔らかくできないの?」
ロランは衝突時に変形する範囲と力、時間を加える。そして
〈ドゴッ!〉
木に当たり跳ね返って落ち、消える。それでも木は揺れている。
「ま、まあ、これぐらいなら大丈夫・・かも?」
「かるくできないの?」
「あまり質量を下げると、急激に速度が落ちるから・・」
「ていこうに負けるの?」
「そう・・あっ」
再び計算をし直す。
物質その物は存在しないのだが、近代魔法により『ある』と勘違いされている。
その為、計算次第でどの様にもなるが、法則には従うのでとても面倒なのである。
ロランの計算を見る。元の大きさにして、質量を下げ回転を加える。
前世のプロ野球を思い出した。
(なるほど。まるで野球のストレートだな)
ここで前世の知識を生かす
「回転変えたら曲がったりしない?」
「あ、それ良いかも?」
そして、模擬戦で使えるぐらいのファイアーボール(野球)を複数完成させた。
姉ちゃんが色々試すが、どう見てもピッチングマシンにしか見えなかった。
ーーーーー
じいちゃんに見せたら最初に木を貫通したファイアーボールも覚えろと言われた。
「これしんじゃうよ?」
「違う。魔獣相手に使えそうだ。もしかしたらワイバーンも落とせるかも知れん」
(なるほど)
「エル、模擬戦までにこれらを無詠唱化しておけ」
「う・・うん」
そして昼食を食べた。じいちゃん、ばあちゃんが居るのでママは戻っていない。
午後は風の魔法をやってみる様だ
〈パアン!〉
的にした薪が破裂した。
(風の魔法?空砲だよね?)
どう見ても圧縮空気である。しかも威力が半端ない。
「エル、これも覚えておけ」
じいちゃんは楽しそうである。
「しんじゃうよ?」
「模擬戦用に改良するんだろ?これは対魔獣用だ」
(ふむ)
そして風の魔法も試行錯誤する。こうして見てると近代魔法ってとんでもないなと思った。
法則にさえ従っていれば、人間ではとても無理な速度や回転、圧力を与えられる。
(もしかしたら計算さえ出来れば、生物も再現できてしまうかも知れない)
夕方まで魔法の練習をしてると馬車がやってくる。
御者台にロバートさんが、そしてセレスが窓から顔を出し手を振っていた。
(もう行く時間か)
「一日ってあっという間だね」
姉ちゃんが残念そうにする
「いろいろあったけど楽しかった」
本心だ。襲われたりしたけど、姉ちゃんにも良い経験だったのかも知れない。
「エディ、むかえに来たよ」
「ありがとう、セレスねえちゃん」
「!?」
セレスは驚き、恥じらいながらクネクネする
(ん?俺、何か言った?)
周りを見ると姉ちゃんとロランが笑っていた。
少し談笑し、馬車に乗る。パパとママには朝に別れを言ってある。
と言ってもこの街に居る間は、会おうと思えば何時でも会えるのだ。
姉ちゃん、ロラン、じいちゃん、ばあちゃんに見送られ、我が家を出発した。
ーーーーー
屋敷に戻りセレスと風呂に入った。いつもより気合を入れて洗ってくれる。
「・・・」
(なんか今更だが恥ずかしくなってきた)
「もう大丈夫だよセレスねえちゃん」
「もう少し」
しっかり洗われて湯で流し、湯船に浸かる。
セレスも洗った後、姉ちゃんの様に俺を後ろからギュッとして満足そうにしていた。
(何か良い事あったのだろうか?)
風呂を上がり食事に行く。領主もロレインも席についている。
「・・ほんとの姉弟みたいだな」
領主がそう言う様に、セレスにしっかり手を握られていた。
夕食が運ばれ食事する。ここでは静かにマナー良く。マナーはセレスが教えてくれた。
食後、ピトフさんとの話を領主に話した。
「薬物か・・護衛の冒険者を犯罪者扱いするとは・」
(うん?)
「はんざい者にはつかうの?」
「使っている国は多い。レヴィネールでも重大な犯罪を犯した者には使われてるな」
「へー・・・ふれあは?」
「まだ可愛いもんだ。エディを襲ったが、そんな事件は世界中にある」
(まあ確かに)
「国の転覆を狙う様な犯罪の場合は、この国でも使っている」
「へー」
「・・・エディはどう思う?ピトフが言った事」
「うーん。仕方ないかな?」
「安全を考えたら、ピトフを始末するのが早いがな?」
「でもそのうちバレるから、ピトフさんが無駄死にするだけだよ?」
「ふむ」
「それにすぐ退院できないでしょ?」
「そうだな。カードもこちらが握っている。どうにでもなるか」
「うん」
領主が珍しく、呆れたような諦めたような笑みを見せた
ーーーーー
翌日、翻訳のチームと一緒に早朝から出発する。カメラと電子部品を開発しているマークスリ街に向かう。
帰宅は10日後。その間、ロラン達の翻訳の仕事はお休みになる。封印された書物は俺しか開けないからだ。
馬車が3台。3-3-4で乗る。4人の馬車は女性達と俺だ。リーダーは来ていない。
マークスリのチームの下に入るからだ。
護衛の冒険者は二人。一人は水道屋さんでもあるドレイクさん。もう一人はリミエだった。
領主様が顔見知りから選んでくれたみたいだ。
「よろしくな、エディ」
そう言うドレイクさんと握手する。そして他のメンバー全員とも握手をする。
(律儀な人だなあ・・ん?)
他のメンバーの手に、チラシが握られている。見せてもらった
(ドレイク住宅設備をよろしく?)
「・・・」
どうやら仕事は水道だけでは無さそうだ
マークスリ街はシルヴェール街から5~6時間かかるらしいので、早々に出発した。
大きな川があり、大陸を横切る山脈方面に第3森林があり、北の大森林方面が我が家のある第2森林である。
レミの誕生日プレゼントを渡して一緒に遊んでいるが、今一つ姉ちゃんの元気が無い。
「エル、元気なさそうだけど大丈夫?」
レミが心配してくれる
「う、うん。考え事してただけ」
「やっぱり襲われた時の事?撃退したんでしょ?」
一応セティ達から簡単な説明はされていた
「でもエルってすごいよねー、悪い人やっつけちゃうなんて」
「う、うん・・」
(まあ、レミに相談しても仕方ないか・・)
そう思ったが
「エル、言いたい事は言った方が良いよ?」
「ロラン?」
「言っちゃった方が楽になる事もあるから」
「うん」
「何かあったの?」
「王都の模擬戦で・・魔法使いの代表になるかも知れないの」
「そ、それって、魔術師団が相手でしょ?」
「みたい」
「すごーい!私も見に行こうかな?応援するよ」
「で、でも、自信無いし・・」
「勝てなくても良いんじゃないの?」
「・・ロバルデューの代表だよ?」
「良いんじゃない?冒険者だから強いって訳でもないし?」
冒険者には、まさしく探検家みたいな人も居る。
お宝探し専門の冒険者には、強さよりも知識や経験が求められる。
「でも、魔法使いの代表だから・・」
「うーん、全部負けても良いって思うけど?」
「そうなのかな?」
「普通7歳の女の子は勝てないよ?」
「・・・」
「負けたからって誰にも文句は言われないと思う」
「・・うん」
「負けても後輩が模擬戦に出たって、私なら自慢しちゃうな」
「うん」
ーーーーー
レミはその後も模擬戦の話で盛り上がる。姉ちゃんも少しは楽になった様だ。
5刻(約16時)まで遊びレミの家を出た。花束を買い、その足で治療院に向かう。
「ねえちゃん緊張してる?」
「わ、わたしが切っちゃったから・・」
「仕方ないとおもうよ?」
「そうね。彼も冒険者だから文句は無いと思うわ」
「う、うん」
受付で病室を聞いてお見舞いに向かう。3階の315号室だった。
治療院は1階2階が治療施設、3階~5階が病室になっていた。5階は短期入所用らしい。
「おや?エディ達じゃないか」
エレベーターの手前でジェフリーさんに会う
「うん。ピトフさんのおみまい」
「そうか。ああ、ちょうど良い。ロラン少し付き合ってくれないか?」
「なに?」
「新しい部署の開設をする予定なんだが、設備にロランの意見も欲しくてな」
「私?医者じゃないよ?」
「いや、魔法使いとしての意見が欲しい」
「・・・」
「だいじょうぶだよロラン。ここには悪い人もいないし」
(たぶん)
「・・じゃあ先行ってて」
「うん」
そして姉ちゃんとピトフさんの病室に向かった
ーーーーー
ドアをノックする
「どうぞ」
この国の言葉でピトフさんの声がした。姉ちゃんと病室に入る。
ピトフさんの腕は、がっちり固定されていた。
「おや、君は・・・エディ君、だったか?」
片言だがこの国の言葉を話せるみたいだ
「うん。そうだよ」
「えーと」
「姉のエルです。その・・ごめんなさい」
そう言い花束を出す。
「なぜ・・謝る?」
「え?」
「君は・・弟を守った。その、結果だ」
「でも・・」
「それに、君は、僕を・・殺しておく、べきだった」
(はい?)
姉ちゃんは唖然としている
「どうしてそう思うの?」
「腕が、治って・・帰国しても、伯爵に、調べられる」
(まあ、そうかも知れない)
「薬を・・投与され、調べられる」
(薬物?)
「僕は・・エディ君が、アオキの知識を、持っている・・ギルドで、聞いた」
「「!?」」
「国が、知る・・黙って、ない」
そうだった。デリスの言葉を話してごまかす時、アオキの知識の様にと俺は言ってしまった。
そしてピトフさんは片言だが、この国の言葉を話せている。
姉ちゃんが心配そうに俺を見る。
「・・・」
(仕方ないか・)
「だいじょうぶだよ?バレるのが早いか遅いかだけだよ」
「だが・・」
「それに、ねえちゃんが守ってくれるから」
「エディ?」
姉ちゃんが驚き、目を見開く
「うむ、確かに・・強い」
「え?でも本気じゃなかったから・・」
ピトフさんは首を振る
「本気、でも・・1対1、勝てない」
姉ちゃんはまたも驚く
「ねえちゃんはもっと強くなるよ。ロランみたいに」
「ロラン、知っている。ゼフィラム・・招待する」
「かえりうちにしたよ」
「・・そうか」
「しんぱいしなくて良いから、はやく腕なおしてね」
「・・・」
ピトフさんが姉ちゃんを見据える
「エディ君・・守って、やれ」
姉ちゃんは頷く。その目はパパに冒険者になりたいと言った時の様な、真剣な目だった。
ロランがまだ来ないので病室を出て3階の待合所でロランを待つ。姉ちゃんはいつもの姉ちゃんに戻っていた。
ピトフさんが治ると、俺の事がデリス王国にバレるかも知れない。その心配事が模擬戦を上回った様だ。
ーーーーー
エレベーターが開き、ロランが来た
「ロラン?」
何だろう?今度はロランが浮かない顔をしてるな
「ごめん。待たせちゃったね」
「なにかあったの?」
「うーん・・ここで働いてくれないかって」
「「ええ?」」
「まだジャンに要望してる段階だから、どうなるか分からないけど・・」
(ロランがしてる仕事って・・今は翻訳だけ?)
エディのチームは封印された書物の必要な部分だけを翻訳してる為、残りはロラン達の仕事である。
(姉ちゃんの勉強は仕事じゃないし・・ん?何でロランは近代魔法を教えてくれてるんだろう?)
姉ちゃんを見ると心配そうにしている
「もう一緒に居られないの?」
「私は働くつもり無いし、もし雇われてもエルの家から通うよ」
「うん・・」
「それに勉強も続けるから」
「うん」
せっかくなので聞いてみる
「ロランはどうしてきんだい魔法を教えてくれるの?」
「うん?どうしてだろう?」
(自分でも分からないのか)
自分で気づいていないが、単純に人恋しいのと、エルを見て自分が出来なかった事をさせてあげたかった。
ロランは望む事を何もできずに、近代魔法の使い手となってしまったのだ。
そして帰宅し夕食をみんなで食べる。俺は明日の夕方に領主の屋敷へ戻るので、今日は豪勢だ。
ピトフさんの話もしたが、領主様に任せる事になる。デリス王国へ使者を送るらしい。
とても楽しい夕食だった。ずっと昔からロランやじいちゃん達が居た様な、そんな感じがした。
ーーーーー
翌日。休み最終日。俺は家でのんびりと過ごす。
ロランが姉ちゃんに魔法を教えているのを眺めている。いつもの授業の様な感じだ。
近代魔法によるファイアーボール。隕石の魔法のミニ版である。
質量、速度、摩擦等の計算が必要だが、今まで近代魔法の勉強をしてきたので何とか受け入れられる様だ。
姉ちゃんの魔法陣の魔力では、ゴルフボールぐらいの大きさしかできなかった。
それでも、対魔法ローブでは防ぐ事が出来ないのだ。
そして発動に成功する。
〈バキャッ!〉
木を貫通した
「これは使えないわね・・」
「・・・・・・・」←姉ちゃん
「もっと小さくしましょう」
試行錯誤してビー玉ぐらいの大きさ、速度はかろうじて視界に入るので、時速300km無いぐらいだろうか?
簡単に木にめり込んだ。
(ファイアーボールと言うより、遅い弾丸だな)
「これでも大けがしそうね・・」
ロランも悩んでるので俺が提案してみる
「柔らかくできないの?」
ロランは衝突時に変形する範囲と力、時間を加える。そして
〈ドゴッ!〉
木に当たり跳ね返って落ち、消える。それでも木は揺れている。
「ま、まあ、これぐらいなら大丈夫・・かも?」
「かるくできないの?」
「あまり質量を下げると、急激に速度が落ちるから・・」
「ていこうに負けるの?」
「そう・・あっ」
再び計算をし直す。
物質その物は存在しないのだが、近代魔法により『ある』と勘違いされている。
その為、計算次第でどの様にもなるが、法則には従うのでとても面倒なのである。
ロランの計算を見る。元の大きさにして、質量を下げ回転を加える。
前世のプロ野球を思い出した。
(なるほど。まるで野球のストレートだな)
ここで前世の知識を生かす
「回転変えたら曲がったりしない?」
「あ、それ良いかも?」
そして、模擬戦で使えるぐらいのファイアーボール(野球)を複数完成させた。
姉ちゃんが色々試すが、どう見てもピッチングマシンにしか見えなかった。
ーーーーー
じいちゃんに見せたら最初に木を貫通したファイアーボールも覚えろと言われた。
「これしんじゃうよ?」
「違う。魔獣相手に使えそうだ。もしかしたらワイバーンも落とせるかも知れん」
(なるほど)
「エル、模擬戦までにこれらを無詠唱化しておけ」
「う・・うん」
そして昼食を食べた。じいちゃん、ばあちゃんが居るのでママは戻っていない。
午後は風の魔法をやってみる様だ
〈パアン!〉
的にした薪が破裂した。
(風の魔法?空砲だよね?)
どう見ても圧縮空気である。しかも威力が半端ない。
「エル、これも覚えておけ」
じいちゃんは楽しそうである。
「しんじゃうよ?」
「模擬戦用に改良するんだろ?これは対魔獣用だ」
(ふむ)
そして風の魔法も試行錯誤する。こうして見てると近代魔法ってとんでもないなと思った。
法則にさえ従っていれば、人間ではとても無理な速度や回転、圧力を与えられる。
(もしかしたら計算さえ出来れば、生物も再現できてしまうかも知れない)
夕方まで魔法の練習をしてると馬車がやってくる。
御者台にロバートさんが、そしてセレスが窓から顔を出し手を振っていた。
(もう行く時間か)
「一日ってあっという間だね」
姉ちゃんが残念そうにする
「いろいろあったけど楽しかった」
本心だ。襲われたりしたけど、姉ちゃんにも良い経験だったのかも知れない。
「エディ、むかえに来たよ」
「ありがとう、セレスねえちゃん」
「!?」
セレスは驚き、恥じらいながらクネクネする
(ん?俺、何か言った?)
周りを見ると姉ちゃんとロランが笑っていた。
少し談笑し、馬車に乗る。パパとママには朝に別れを言ってある。
と言ってもこの街に居る間は、会おうと思えば何時でも会えるのだ。
姉ちゃん、ロラン、じいちゃん、ばあちゃんに見送られ、我が家を出発した。
ーーーーー
屋敷に戻りセレスと風呂に入った。いつもより気合を入れて洗ってくれる。
「・・・」
(なんか今更だが恥ずかしくなってきた)
「もう大丈夫だよセレスねえちゃん」
「もう少し」
しっかり洗われて湯で流し、湯船に浸かる。
セレスも洗った後、姉ちゃんの様に俺を後ろからギュッとして満足そうにしていた。
(何か良い事あったのだろうか?)
風呂を上がり食事に行く。領主もロレインも席についている。
「・・ほんとの姉弟みたいだな」
領主がそう言う様に、セレスにしっかり手を握られていた。
夕食が運ばれ食事する。ここでは静かにマナー良く。マナーはセレスが教えてくれた。
食後、ピトフさんとの話を領主に話した。
「薬物か・・護衛の冒険者を犯罪者扱いするとは・」
(うん?)
「はんざい者にはつかうの?」
「使っている国は多い。レヴィネールでも重大な犯罪を犯した者には使われてるな」
「へー・・・ふれあは?」
「まだ可愛いもんだ。エディを襲ったが、そんな事件は世界中にある」
(まあ確かに)
「国の転覆を狙う様な犯罪の場合は、この国でも使っている」
「へー」
「・・・エディはどう思う?ピトフが言った事」
「うーん。仕方ないかな?」
「安全を考えたら、ピトフを始末するのが早いがな?」
「でもそのうちバレるから、ピトフさんが無駄死にするだけだよ?」
「ふむ」
「それにすぐ退院できないでしょ?」
「そうだな。カードもこちらが握っている。どうにでもなるか」
「うん」
領主が珍しく、呆れたような諦めたような笑みを見せた
ーーーーー
翌日、翻訳のチームと一緒に早朝から出発する。カメラと電子部品を開発しているマークスリ街に向かう。
帰宅は10日後。その間、ロラン達の翻訳の仕事はお休みになる。封印された書物は俺しか開けないからだ。
馬車が3台。3-3-4で乗る。4人の馬車は女性達と俺だ。リーダーは来ていない。
マークスリのチームの下に入るからだ。
護衛の冒険者は二人。一人は水道屋さんでもあるドレイクさん。もう一人はリミエだった。
領主様が顔見知りから選んでくれたみたいだ。
「よろしくな、エディ」
そう言うドレイクさんと握手する。そして他のメンバー全員とも握手をする。
(律儀な人だなあ・・ん?)
他のメンバーの手に、チラシが握られている。見せてもらった
(ドレイク住宅設備をよろしく?)
「・・・」
どうやら仕事は水道だけでは無さそうだ
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〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
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初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
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農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
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絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
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