たかがという言葉が〇は何よりも嫌いだ

warawa

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エピローグ

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「取りきったぁぁぁぁぁ!!!!!!ここで今決まりました!!!今大会の優勝チームは若き天才、ニュート率いる〈Voltex〉に決まりましたぁぁぁぁ!!!!!」

響き渡る長く、大きな歓声。鳴りやむことのない喝采を彼らが襲う。その賛辞の中、リーダーの彼はここまでの努力が報われたと感じた。
寝る間なんてなかった。遊ぶ時間も捨てた。ここにいるすべてのプレイヤーよりこのゲームにすべてを捧げた。楽しくもつらい日々が彼に与えたものはとても大きかったであろう。

この日は彼が手に入れたかったもの全てが手に入った日。





――そして同時に彼が夢を失った日だった。




時は五年ほど流れたころ、ニュートこと冴島新羅さえじましんらは家の中でゴロゴロとしていた。
天才と呼ばれた彼は見事に引きこもり・・・・・となっていた。

彼が引きこもりとなってしまったのにはいくつか理由があるが、その一つは喪失感だ。
五年前の大会が終わった後、彼が勝ちに酔いしれることができたのはほんの数日だった。優勝したことによりこのゲームのプレイヤーとして何を目指せばいいのかがわからなくなってしまったのだ。
そしてそれをチームメイトに告げたところ、彼らもまた同じ事を口にした。それゆえ日本で最もいや世界で一番といってもよかったチーム〈voltex〉は優勝後わずか一週間で解散してしまった。
そしてその喪失感という怪物に取りつかれた彼は、なんと五年ほどの月日を何もしないで過ごすほどになってしまった。


「あー、暇だ。適当にゲームでもするか」
そう言って彼はPCを立ち上げるが、つけたゲームはただの作業ゲーム。対戦ゲームにすべてを捧げた姿はどこに行ったのか。彼は黙々とアイテムを集め続ける。何かを作るわけでもなくただただアイテムを集め続ける。
これが彼の一日で、この日々がずっと続いていく…

ハズだった。ふと彼の家のチャイムが鳴る。両親は二人とも出張中。さすがに出ないわけにはいかないので彼は玄関に向かう。

「すいません。冴島新羅様でよろしいでしょうか?」
配達員は新羅の顔をうかがいながら聞いてくる。

「はぁ、そうですけど。」
彼はけだるそうに返す。

「こちらあなた様宛のお荷物でございます。」
そういって配達員は後ろにあるカートを指さす。そこには大きめの段ボールが一つがあった。

「いや、自分なんか頼んだりしてないんですけど?」

「そうでしたか。一応送り先の方の名前だけ確認を取ってもよろしいでしょうか?」

「あ、一応お願いします。」

「えーとですね。送り先の方は...なんて読むんだ?ブイ、オー...あぁ!〈voltex〉という方からです!」

「は?」
その言葉に彼の脳内がパンクしかける。
――なぜ昔のチームから?そもそも解散してるはずだろう?それに自分の住所を知っていて、かつ俺がニュートだと知っている人物...まさか!?

「まさか!?そう思ったのかね?冴島新羅君、いやニュート君と呼んだほうがいいかな?」
彼の前に立つ配達員?は帽子を脱ぎ捨て彼の顔をじっと見つめ不敵に笑う。

「なんでオーナーのあんたがここに...!」
彼は冷や汗を垂らしながら眼前の人物に食って掛かる。

「それはね。君をもう一度プロに誘いに来たのだよ。」
オーナーは笑うのをやめ真剣な顔もちで彼に話しかける。

「はぁ?だったらもっと将来有望なやつを誘えよ。こんな俺みたいなやつもうプロとしてやっていけねぇよ…」
彼は地面を見つめ、こぶしを強く握りながら絶望したような声でオーナーに告げる。

「そういうと思ったよ。僕はそんな君だからこそもう一度声をかけたのさ。」

「だから、なんだよ!バカにしたいなら...さっさと帰れよ!」
新羅はそういって扉を閉めようとする。しかし、オーナーはそんな彼の手をつかみもう一度もう一度目を合わせた。

「君は多くの苦難を乗り越えた。君は栄誉を手にした。そんな君はもう得るものがないといいこの世界を去った。しかし、しかしだ。君はまだ夢をかなえていないだろう?君と同じゲーマーだけが君をたたえた。しかし、世間は君を見なかった。『たかがゲーム』という言葉で君に届くべき声が、届かなかった。それでいいのか?いいわけないだろう!」

「だから、何を言って...」
止めようとする彼の声を無視してオーナーは話を続ける。

「君の夢は『どんなものであれ、何かに熱中している人を馬鹿にさせない』ではなかったのか!あれだけの歓声で君は満足するのか!?1万人にも満たない人が君を認めただけで夢がかなったって言えるのか?」

「うるさい、うるさいうるさい!あんたに一体何がわかるんだよ!」
彼は子供の用に地団駄を踏みながら怒り散らす。オーナーは暴れる彼にされるがままにされながらも言葉を紡ぐ。

「わかるさ。だって、君の夢は十数年前に僕が夢見たものと全く一緒なのだからね」
オーナーは優しい目で、優しさにあふれた笑みで彼の顔に触れる。

「君は僕と同じ夢を見る同志なんだよ。僕は同じ夢を持った、可能性のある若者がその芽を自分で摘むなんてことしてほしくないんだよ。」

「だからって、今更俺になにができるんだよ?もう俺にあるものなんて…」
新羅はうなだれながら、オーナーに言葉をぶつける。

「君にはまだ、夢があるだろう?」
その言葉は新羅の心を軽くした。今まで重りのようなもので無理やり沈められたていた彼の気持ちはゆっくりと上に向かって浮かび上がる。

「オーナー。俺まだ夢を追っても...いいのかなぁ?」
あふれる涙を抑えながら彼はゆっくりとゆっくりと気持ちを言葉にしていく。

「あぁ、人はいつだって夢を追う生き物さ。」
二人はもう一度向き合い互いの瞳を見つめる。

「さて、新羅君。僕から一つお願いしてもいいかな?」
オーナーはもう一度不敵な笑みを浮かべ彼に問いかける。

「なんでしょう」
新羅もまた不敵に笑う。

「僕と君の夢は共通のようだからね。僕と一緒に夢をかなえに行かないか?」
オーナーはそういって彼に向かって手を指し伸ばす。

「あぁ!よろこんで!」
新羅は差し出された手を強く握る。



これは冴島新羅にもう一度光が宿った日。そして大いなる〈夢〉を叶える物語である。
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