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アフターケア
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就活の帰り道、電車内で発情してしまった。
ああ、リクルートスーツ。ジーパンよりも防御力が低い……。変態と間違えられて通報されちゃう。
いやいや、そんなのんきなことは言ってられないぞ。俺の場合は別の危険が待っている。
乙姫の神通力の副作用は、他の人間にも及ぶのだ。
うう、さっそくだ。
それでなくても暑苦しいのに、知らないおっさんにぴたりと体をくっつけられ、尻のあたりをナデナデされてしまった。
ぐええ、気色悪い……。
だけど、心とは裏腹に相手が誰だろうと、触られると感じちゃう。
マスクをしていても、俺の頬が赤く染まるのが見えるのだろう。
ますます手つきが怪しくなる。
「海松人さん、助けて」
応えたのは海松人ではなく、隣に立っていた別のおっさん。
こちらの異変に気付いて、ゴクッと唾をのみ、なぜか痴漢に参加した。
太ももの付け根をサワサワしてくる。
いや、増えるな増えるな!
突っ込んでやりたいが、今、口を開けたら「あふ~ん」みたいな声が出かねない。
っていうか俺の周りだけ、妙に人の輪が狭くない?
なんでここだけ満員電車なんだよ。
おっさんたちの隙間から、必死に逃げ道を探していたら、輪の外にいた爽やかそうな青年と目が合った。彼は明らかにうろたえて、キッと眉を寄せた。
正義感を感じさせるまなざしに一瞬期待したのだが……。
「これは……夢か。なんて羨ましい」
「すぐにでも代わるけど!?」
思わず叫んでしまった。そのはずなのだが、声が泡になって消えてしまった。
動揺しているうちに、事態はどんどん悪くなる。布越しにモノをこすりつけてくるやつ、乳首を爪でカリカリしてくるやつ、ファスナー開けようとしてくる奴まで――。
おい、何人いるんだよ!
なんか、おかしいぞ。
大きなシャボン玉みたいな、なぞの催淫空間が出来上がっちゃってる。ここに取り込まれた奴らと、普通に電車に乗っている人たちを薄い膜で隔てている。
その時俺は、刺すような視線に気がついた。
「海松人さん! 見てないで助けてよ」
「すみません、面白いことになってるな、と思ってつい」
「ちっとも面白くないよ! 気持ち悪いよ~っ!」
半泣きで訴えるとようやく海松人さんが膜の内側へ入ってきた。
そのとたん、おっさんたちが魚に変わってピチピチ跳ねる。
俺はビクッとして海松人に抱き着いた。
「え!? 人間じゃなかった?」
「いえ、人間ですけど、悪夢だとでも思ってもらった方が、お互いのためなのでは?」
それはそうかもしれない……。
けど、こっちの不快感は消えないんだよな。
「……海松人さんは、俺が他の人にベタベタ触られても嫌じゃないの」
八つ当たりのように言うと、彼は「ふむ」と顎に手を当て、斜め上に視線を向けた。
「海では『個』は尊重されませんからね」
ドキッとした。
じゃあ、海松人さんは他の誰かに触らせちゃうってこと?
俺以外に?
じっと見ていると、彼はこちらへチラリと視線を寄こす。
その顔つきに、ほんの少しの不愉快さが滲んでいた。
「……ですが、私のものに手を出されるのは、あまりいい気はしませんね」
今度は別の意味でドキーッと胸が高鳴る。
ついでに股間の痛みを思い出した。
赤くなったり青くなったりする俺を見て、海松人がくすっと笑う。
(どうします? ここで? それとも――)
(そんな選択肢ないよ! ――え、あんの?)
とっさに答えて、ちょっと心配になる俺。
ここでって、どうやって。時でも止めるのか?
海松人だったら、できてもおかしくはない。
――いや、でも、なんかこっちの様子が見えてそうな人がいるし! いくらなんでも電車内でなんて無理無理無理!
俺の動揺は、もちろんだだ漏れなわけで、海松人は必死に笑いを堪えていた。
(ちょっと抑えるとかできないの?)
(できなくはないですが、それなりに反動が来ますよ?)
反動か……。どうせエロ案件なんだろうな。
けど他に選択肢なんてあるもんか。
彼は俺の意思を正しく読み取り、ニコっと笑い、俺のファスナーを上げてくれた。
同時に暴発しそうだった俺のものがしぼんでいく。
「……助かった……」
「まだですって」
と言いつつ、彼は指でつつくような仕草で、催淫空間と普通の空間を隔てる膜を割る。
「このままホテルに行きます?」
艶のあるいい声で彼は囁いた。
いかがわしい誘い文句に、何人かがピクッと反応したぞ。
海松人め、可愛い顔で笑いやがって。周り含めてからかっているな。
(わざと聞かせただろ。この変態め)
じろっと睨みつけると、彼はふっと目つきを変えた。
(……海松人さん今、喜んだ?)
(少々?)
隠す気もないようだ。
困ったことに、こんなやり取りにもすっかり慣れてしまった。
竜宮城から帰還後の一週間、毎日こんな感じなのだ。
発情の瞬間はところ構わずやってくる。
授業中、駅のホーム、スーパーの中。
ちょっと暑いな、息苦しいなと思ったら、もぞもぞむくむく。ハイ、準備完了!
やばい、俺、このままじゃ社会的に死ぬ。
ピンチのたび、俺は海松人を呼んだ。
彼はホイホイやってきて、空き教室とか駅のトイレとかに俺を連れ込む。そして例のいかがわしいオモチャを駆使して何とかしてくれるわけだけど……。
そんなエロ漫画みたいな生活は、断じて俺、求めてない!
「毎晩発散しておけば、だんだんマシになっていくと思いますよ」
「それでもマシになる程度なのってどうなの?」
ホテルに着いたときには、俺のものは再びやる気を見せていた。
何とかシャワーを浴びて、体を拭くのもそこそこに、海松人と抱き合う。
苦しすぎるので前戯も省略だ。
海松人は俺の足を持ち上げて、指をぐりっと突っ込んだ。
なんせ発情中だし、痛くはない。
むしろもっと激しくても大丈夫。
ぐりぐり掻きまわされると、それだけでイキそうだ。
「さすがに毎日しているだけあった、すっかり体が覚えちゃいましたね」
教え込んだ本人が何か言ってる。
「入れますよ」
「う、うん……」
ずぷっと海松人のものが中を満たしたかと思うと、俺の体はあっさりと降伏し、白濁をまき散らした。
「……ふっ……ぅうっ!」
やばいくらい気持ちいい。
だけど、イったばかりだというのに、腹が疼いてたまらない。
これが反動かな、やりたくてたまらなくなってる。
「海松人さん、もっと……」
「焦らなくても大丈夫。一晩中付き合いますよ。隼」
名前なんて呼ばれたら、さらに疼くんだけど。
竜宮城から出た後から、海松人は『様』付けをやめて、俺を名前で呼ぶようになった。
それが俺には、これ以上もないくらい、嬉しい。
欲望は本当にキリがなくて、アフターケアは朝まで続いた。
翌日尻に軟膏を塗りたくられて、悲鳴を上げるまでがワンセット。
海松人が始終楽しそうなことだけが救いだ。
ああ、リクルートスーツ。ジーパンよりも防御力が低い……。変態と間違えられて通報されちゃう。
いやいや、そんなのんきなことは言ってられないぞ。俺の場合は別の危険が待っている。
乙姫の神通力の副作用は、他の人間にも及ぶのだ。
うう、さっそくだ。
それでなくても暑苦しいのに、知らないおっさんにぴたりと体をくっつけられ、尻のあたりをナデナデされてしまった。
ぐええ、気色悪い……。
だけど、心とは裏腹に相手が誰だろうと、触られると感じちゃう。
マスクをしていても、俺の頬が赤く染まるのが見えるのだろう。
ますます手つきが怪しくなる。
「海松人さん、助けて」
応えたのは海松人ではなく、隣に立っていた別のおっさん。
こちらの異変に気付いて、ゴクッと唾をのみ、なぜか痴漢に参加した。
太ももの付け根をサワサワしてくる。
いや、増えるな増えるな!
突っ込んでやりたいが、今、口を開けたら「あふ~ん」みたいな声が出かねない。
っていうか俺の周りだけ、妙に人の輪が狭くない?
なんでここだけ満員電車なんだよ。
おっさんたちの隙間から、必死に逃げ道を探していたら、輪の外にいた爽やかそうな青年と目が合った。彼は明らかにうろたえて、キッと眉を寄せた。
正義感を感じさせるまなざしに一瞬期待したのだが……。
「これは……夢か。なんて羨ましい」
「すぐにでも代わるけど!?」
思わず叫んでしまった。そのはずなのだが、声が泡になって消えてしまった。
動揺しているうちに、事態はどんどん悪くなる。布越しにモノをこすりつけてくるやつ、乳首を爪でカリカリしてくるやつ、ファスナー開けようとしてくる奴まで――。
おい、何人いるんだよ!
なんか、おかしいぞ。
大きなシャボン玉みたいな、なぞの催淫空間が出来上がっちゃってる。ここに取り込まれた奴らと、普通に電車に乗っている人たちを薄い膜で隔てている。
その時俺は、刺すような視線に気がついた。
「海松人さん! 見てないで助けてよ」
「すみません、面白いことになってるな、と思ってつい」
「ちっとも面白くないよ! 気持ち悪いよ~っ!」
半泣きで訴えるとようやく海松人さんが膜の内側へ入ってきた。
そのとたん、おっさんたちが魚に変わってピチピチ跳ねる。
俺はビクッとして海松人に抱き着いた。
「え!? 人間じゃなかった?」
「いえ、人間ですけど、悪夢だとでも思ってもらった方が、お互いのためなのでは?」
それはそうかもしれない……。
けど、こっちの不快感は消えないんだよな。
「……海松人さんは、俺が他の人にベタベタ触られても嫌じゃないの」
八つ当たりのように言うと、彼は「ふむ」と顎に手を当て、斜め上に視線を向けた。
「海では『個』は尊重されませんからね」
ドキッとした。
じゃあ、海松人さんは他の誰かに触らせちゃうってこと?
俺以外に?
じっと見ていると、彼はこちらへチラリと視線を寄こす。
その顔つきに、ほんの少しの不愉快さが滲んでいた。
「……ですが、私のものに手を出されるのは、あまりいい気はしませんね」
今度は別の意味でドキーッと胸が高鳴る。
ついでに股間の痛みを思い出した。
赤くなったり青くなったりする俺を見て、海松人がくすっと笑う。
(どうします? ここで? それとも――)
(そんな選択肢ないよ! ――え、あんの?)
とっさに答えて、ちょっと心配になる俺。
ここでって、どうやって。時でも止めるのか?
海松人だったら、できてもおかしくはない。
――いや、でも、なんかこっちの様子が見えてそうな人がいるし! いくらなんでも電車内でなんて無理無理無理!
俺の動揺は、もちろんだだ漏れなわけで、海松人は必死に笑いを堪えていた。
(ちょっと抑えるとかできないの?)
(できなくはないですが、それなりに反動が来ますよ?)
反動か……。どうせエロ案件なんだろうな。
けど他に選択肢なんてあるもんか。
彼は俺の意思を正しく読み取り、ニコっと笑い、俺のファスナーを上げてくれた。
同時に暴発しそうだった俺のものがしぼんでいく。
「……助かった……」
「まだですって」
と言いつつ、彼は指でつつくような仕草で、催淫空間と普通の空間を隔てる膜を割る。
「このままホテルに行きます?」
艶のあるいい声で彼は囁いた。
いかがわしい誘い文句に、何人かがピクッと反応したぞ。
海松人め、可愛い顔で笑いやがって。周り含めてからかっているな。
(わざと聞かせただろ。この変態め)
じろっと睨みつけると、彼はふっと目つきを変えた。
(……海松人さん今、喜んだ?)
(少々?)
隠す気もないようだ。
困ったことに、こんなやり取りにもすっかり慣れてしまった。
竜宮城から帰還後の一週間、毎日こんな感じなのだ。
発情の瞬間はところ構わずやってくる。
授業中、駅のホーム、スーパーの中。
ちょっと暑いな、息苦しいなと思ったら、もぞもぞむくむく。ハイ、準備完了!
やばい、俺、このままじゃ社会的に死ぬ。
ピンチのたび、俺は海松人を呼んだ。
彼はホイホイやってきて、空き教室とか駅のトイレとかに俺を連れ込む。そして例のいかがわしいオモチャを駆使して何とかしてくれるわけだけど……。
そんなエロ漫画みたいな生活は、断じて俺、求めてない!
「毎晩発散しておけば、だんだんマシになっていくと思いますよ」
「それでもマシになる程度なのってどうなの?」
ホテルに着いたときには、俺のものは再びやる気を見せていた。
何とかシャワーを浴びて、体を拭くのもそこそこに、海松人と抱き合う。
苦しすぎるので前戯も省略だ。
海松人は俺の足を持ち上げて、指をぐりっと突っ込んだ。
なんせ発情中だし、痛くはない。
むしろもっと激しくても大丈夫。
ぐりぐり掻きまわされると、それだけでイキそうだ。
「さすがに毎日しているだけあった、すっかり体が覚えちゃいましたね」
教え込んだ本人が何か言ってる。
「入れますよ」
「う、うん……」
ずぷっと海松人のものが中を満たしたかと思うと、俺の体はあっさりと降伏し、白濁をまき散らした。
「……ふっ……ぅうっ!」
やばいくらい気持ちいい。
だけど、イったばかりだというのに、腹が疼いてたまらない。
これが反動かな、やりたくてたまらなくなってる。
「海松人さん、もっと……」
「焦らなくても大丈夫。一晩中付き合いますよ。隼」
名前なんて呼ばれたら、さらに疼くんだけど。
竜宮城から出た後から、海松人は『様』付けをやめて、俺を名前で呼ぶようになった。
それが俺には、これ以上もないくらい、嬉しい。
欲望は本当にキリがなくて、アフターケアは朝まで続いた。
翌日尻に軟膏を塗りたくられて、悲鳴を上げるまでがワンセット。
海松人が始終楽しそうなことだけが救いだ。
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もくれんさん、お読みくださりありがとうございます!
竜宮城ということで、大いに遊んじゃいました~
隼はこれからも、まだまだひどい目にあいそうですね😂
ほんと、頑張って欲しいです。