4 / 21
1-4:妻がゾンビになりまして……
しおりを挟む
「無事なんですか? 美鈴は大丈夫なんですか?」
「はい、なんとか一命は取り留めました」
良かった、美鈴は助かったんだ。
俺は安堵して大きく息を吐いた。
ん?
じゃあ、なんで先生は表情が険しいんだ?
助かったのなら、こんな顔にはならない、よな?
もしかして、美鈴はこのまま目を覚まさないとか?
障害をもってしまったとか?
俺はいてもたってもいられなくなり、先生に聞いてみた。
「先生、美鈴はなんともないんですよね?」
「いや、それが、その」
先生は口をごもらせている。
「ちょっと、ママはどうなってるのよ!?」
花音は声を荒げる。
「……ビになったようです」
「「えっ?」」
なんていったんだ? よく聞こえなかったぞ。
ビ?
何かの病気になったってことか?
「すいません、先生よく聞こえなかったんですけど」
「……ゾンビです」
「「ゾ、ゾンビ?」」
俺と花音は顔を見合わせた。
ゾンビになった!?
どういうことだ、この世界でそんなことが起こるの?
「と、とにかく、奥さんを集中治療室へお連れしますのでそこで詳しくお話を」
俺と花音は先生に言われるがままに集中治療室へ案内され説明を受ける。
「前頭葉に損傷を受けて、体温が低い? ですか」
「はい、前頭葉というのは、人間の感情などを司る部分でして」
前頭葉? もしかして美鈴はもう
「じゃあ、美鈴は人間の感情を失ったってことですか?」
「それが、なんでゾンビってなるのよ!?」
「花音、落ち着くんだ」
「これが落ち着いていられるの!? ママは感情を失ったんだよ!」
座っていた花音は大声を出しながら立ち上がった。
すると、美鈴は目を覚まし、突然暴れだした。
「美鈴!」「ママ!」
看護師たちが集中治療室に入って、美鈴を押さえつけるが、数人がかりでも止めることができない。
「がぁあぁぁぁー!!」
美鈴は体についている医療機器を無造作に外し、目の前にいた看護師に噛みついた。
「きゃあぁぁぁー!」
看護師は悲鳴を上げる。
「美鈴! なんで!?」
「鎮静剤を投与するんだ!」
数人の医師が集中治療室に入っていき、美鈴を押さえつけ鎮静剤を投与した。
少しして、美鈴は電池が切れたように眠るように倒れこんだ。
「先生、一体これは!?」
「手術が成功した瞬間もあのように暴れだしたんです」
暴れた、美鈴が?
「ど、どうなってるんですか?」
「見てのとおりです、本能のままに動いているようで」
「まるでゾンビだね」
花音が美鈴を見つめながら、ボソッとつぶやいた
「生きているんですか?」
俺は美鈴を集中治療室の外で見ながら、先生に聞いた。
「えぇ、限りなく体温は低く、心臓もしっかりと活動しています。ですが、見ての通り脳へのダメージが非常に深刻ですね」
「そうですか、よかった、生きてるんですね、美鈴……」
良かった、美鈴は生きてる。
俺にとってはそれだけでいい。
美鈴、君が今ここにいる
それだけで俺は、心が救われるんだ。
ごめんよ、君を傷つけてしまった。
俺は美鈴を見つめながら、静かに涙をこぼしていた。
「ですが」
突然、先生が口を開いた。
「?」
「治療法がわからない、いや、無いといったほうがいいでしょうか」
「治療法がない?」
もう治らない?
このままってことか?
「そんな、どうにかならないんですか?」
「こんなことは初めてで、医学的にも説明が全くできません」
「いいよ、そんなことは」
花音が美鈴を見ながら話しに入ってきた。
「花音……」
「だって、ママはそこにいて、生きてるんじゃん。私にとってはそれだけでいいよ。よかったママ、無事で」
そういうと花音はそのまま崩れ落ちて泣き始める。
「そう、だな」
俺は花音の肩に手を置いて、美鈴を笑顔で見つめた。
「やめて、キモイんだけど」
急に切れる花音に驚き、肩から手を離した。
「ご、ごめん。先生救っていただきありがとうございました」
俺は深く頭を下げた。
「いえ、しばらくは入院すると思いますが、そばにいてあげてください」
先生は俺たちに頭を下げて、仕事に戻った。
「はい、なんとか一命は取り留めました」
良かった、美鈴は助かったんだ。
俺は安堵して大きく息を吐いた。
ん?
じゃあ、なんで先生は表情が険しいんだ?
助かったのなら、こんな顔にはならない、よな?
もしかして、美鈴はこのまま目を覚まさないとか?
障害をもってしまったとか?
俺はいてもたってもいられなくなり、先生に聞いてみた。
「先生、美鈴はなんともないんですよね?」
「いや、それが、その」
先生は口をごもらせている。
「ちょっと、ママはどうなってるのよ!?」
花音は声を荒げる。
「……ビになったようです」
「「えっ?」」
なんていったんだ? よく聞こえなかったぞ。
ビ?
何かの病気になったってことか?
「すいません、先生よく聞こえなかったんですけど」
「……ゾンビです」
「「ゾ、ゾンビ?」」
俺と花音は顔を見合わせた。
ゾンビになった!?
どういうことだ、この世界でそんなことが起こるの?
「と、とにかく、奥さんを集中治療室へお連れしますのでそこで詳しくお話を」
俺と花音は先生に言われるがままに集中治療室へ案内され説明を受ける。
「前頭葉に損傷を受けて、体温が低い? ですか」
「はい、前頭葉というのは、人間の感情などを司る部分でして」
前頭葉? もしかして美鈴はもう
「じゃあ、美鈴は人間の感情を失ったってことですか?」
「それが、なんでゾンビってなるのよ!?」
「花音、落ち着くんだ」
「これが落ち着いていられるの!? ママは感情を失ったんだよ!」
座っていた花音は大声を出しながら立ち上がった。
すると、美鈴は目を覚まし、突然暴れだした。
「美鈴!」「ママ!」
看護師たちが集中治療室に入って、美鈴を押さえつけるが、数人がかりでも止めることができない。
「がぁあぁぁぁー!!」
美鈴は体についている医療機器を無造作に外し、目の前にいた看護師に噛みついた。
「きゃあぁぁぁー!」
看護師は悲鳴を上げる。
「美鈴! なんで!?」
「鎮静剤を投与するんだ!」
数人の医師が集中治療室に入っていき、美鈴を押さえつけ鎮静剤を投与した。
少しして、美鈴は電池が切れたように眠るように倒れこんだ。
「先生、一体これは!?」
「手術が成功した瞬間もあのように暴れだしたんです」
暴れた、美鈴が?
「ど、どうなってるんですか?」
「見てのとおりです、本能のままに動いているようで」
「まるでゾンビだね」
花音が美鈴を見つめながら、ボソッとつぶやいた
「生きているんですか?」
俺は美鈴を集中治療室の外で見ながら、先生に聞いた。
「えぇ、限りなく体温は低く、心臓もしっかりと活動しています。ですが、見ての通り脳へのダメージが非常に深刻ですね」
「そうですか、よかった、生きてるんですね、美鈴……」
良かった、美鈴は生きてる。
俺にとってはそれだけでいい。
美鈴、君が今ここにいる
それだけで俺は、心が救われるんだ。
ごめんよ、君を傷つけてしまった。
俺は美鈴を見つめながら、静かに涙をこぼしていた。
「ですが」
突然、先生が口を開いた。
「?」
「治療法がわからない、いや、無いといったほうがいいでしょうか」
「治療法がない?」
もう治らない?
このままってことか?
「そんな、どうにかならないんですか?」
「こんなことは初めてで、医学的にも説明が全くできません」
「いいよ、そんなことは」
花音が美鈴を見ながら話しに入ってきた。
「花音……」
「だって、ママはそこにいて、生きてるんじゃん。私にとってはそれだけでいいよ。よかったママ、無事で」
そういうと花音はそのまま崩れ落ちて泣き始める。
「そう、だな」
俺は花音の肩に手を置いて、美鈴を笑顔で見つめた。
「やめて、キモイんだけど」
急に切れる花音に驚き、肩から手を離した。
「ご、ごめん。先生救っていただきありがとうございました」
俺は深く頭を下げた。
「いえ、しばらくは入院すると思いますが、そばにいてあげてください」
先生は俺たちに頭を下げて、仕事に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった
ぐうのすけ
ファンタジー
無才・貧乏・底辺高校生の稲生アキラ(イナセアキラ)にゲームの悪役貴族が憑依した。
悪役貴族がアキラに話しかける。
「そうか、お前、魂の片割れだな? はははははは!喜べ!魂が1つになれば強さも、女も、名声も思うがままだ!」
アキラは悪役貴族を警戒するがあらゆる事件を通してお互いの境遇を知り、魂が融合し力を手に入れていく。
ある時はモンスターを無双し、ある時は配信で人気を得て、ヒロインとパーティーを組み、アキラの人生は好転し、自分の人生を切り開いていく。
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる