5 / 21
2-1:妻が暴れまして……
しおりを挟む
少し落ち着いた俺は、花音から離れて務めている会社に連絡をした。
「なに? 奥さんが事故だと!?」
電話越しで、上司が驚いている。
「はい、それで2、3日ほど休ませていただけますか?」
「あぁ、構わんから、しっかりそばにいてあげなさい」
「すみません、はい、失礼します」
電話を切って、集中治療室まで戻る。
花音はまだ、集中治療室から離れない。
「花音、学校にも2、3日休むって連絡しておいたぞ」
「うん、ありがとう」
集中治療室の外から美鈴を眺める。
鎮静剤が聞いているのか、数時間たっても美鈴は目を覚まさない。
花音は、余程心配なのか、窓から美鈴をずっと見つめている。
「花音、大丈夫か?」
「私は大丈夫だよ、あんたこそ大丈夫なの?」
「俺は、ママが生きてるだけで幸せだから」
「あ、そう」
「うぅ、あぁ」
花音と会話をしていると、美鈴が声を出していた。
美鈴が目を覚ましたのだ。
「美鈴? 美鈴!」
「ママ!」
「花音、悪いが先生を呼んできてくれ!」
俺は花音に頼み、俺は集中治療室の扉を開ける。
「う、うん!」
花音は走って医師を呼びに行き、俺はすぐに美鈴に駆け寄った。
「美鈴!? わかるか? 俺だ、亮だよ」
俺は、起き上がろうとする美鈴の背中を手で支えながら起き上がる手伝いをした。
「うぅぅぅぅぅぅ」
美鈴は頭を押さえながら、うめき声をあげている。
だが、俺はこの時、涙を浮かべてしまった。
背中を支えた時に理解したんだ。
冷たい
美鈴のぬくもりはそこにはなく、まるで生きていないのかとさえ思ってしまい、
思わず美鈴を支えていた手を見てしまった。
「美鈴……」
「があぁ!」
美鈴は奇声を上げながら、俺の腕を振り払い勢いよく突き飛ばした。
「ぐあぁ!」 ガシャァン!
「先生! こっちだよ、早く」
花音は医師と看護師を数人連れて集中治療室に入ってきた。
「うぅ、があぁぁぁ!!」
美鈴は医師と看護師を見ると、狂ったように襲い掛かった。
「美鈴……だめだ、美鈴!」
倒れて動けない俺は、精一杯の声を出すしかできない。
美鈴は看護師につかみかかり、噛みつこうとする。
その時、美鈴の後ろから手を回した者がいた。
花音だ。
「ママ、大丈夫だよ、私が、私たちがいるから」
暴れる美鈴を後ろから優しく抱きしめる。
「がぁぁ!」
「ママ、お願い……」
花音の言葉に美鈴は落ち着きを取り戻し始める。
「うぅ、あぁ」
美鈴が、人を襲うのを止めた?
花音の言葉に反応したのか?
「まさか、信じられない。奥さんが人を襲うのを止めるなんて」
その場にいた医師も驚いていた。
「美鈴、ぐぅ」
俺が立ち上がり、美鈴に話しかけると、こちらを見てきた。
「うぅ」
美鈴は俺を睨むと、俺に向かって襲い掛かってくる。
突然のことで、俺は反応ができなかった。
そして、その勢いのまま、俺の肩に噛みついてきた。
「ぐあぁ!」
肩からはじんわり血が服に滲み始める。
俺のことは覚えてないのか?
そんな……
どうやったら、思い出す?
肩に噛みついたまま美鈴は離れず、鈍く太い奇声を上げながら、グチュグチュと音を立てる。
「ぐっ、美鈴」
「グゥゥルルルル!」
花音のことは覚えているんだ、きっと俺のことだって思い出してくれるはず。
(あ、そうだ、美鈴が怒っているときは、確か……)
俺は昔のことを思い出した。
美鈴が怒っているときは、いつも俺はそうしてきたんだ。
今の美鈴が覚えているかどうかわからない。
でも、俺は美鈴がきっと覚えてくれてるって信じてる。
ずっと一緒にいたんだ、俺たちは17年も一緒に。
俺はどんな姿になろうと、君がどうなろうと
愛しているよ
肩に強烈な痛みを感じながら、俺は腕を伸ばす。
そして、俺は美鈴の頭を撫でた。
「美鈴、もう大丈夫だよ、俺だ」
頭を撫でると、さっきまで狂ったように噛みついた美鈴は噛むのを止めた。
「があぁぁ……あぁ」
そういうと、美鈴の表情はゆるくなり、その場に倒れこんだ。
「なに? 奥さんが事故だと!?」
電話越しで、上司が驚いている。
「はい、それで2、3日ほど休ませていただけますか?」
「あぁ、構わんから、しっかりそばにいてあげなさい」
「すみません、はい、失礼します」
電話を切って、集中治療室まで戻る。
花音はまだ、集中治療室から離れない。
「花音、学校にも2、3日休むって連絡しておいたぞ」
「うん、ありがとう」
集中治療室の外から美鈴を眺める。
鎮静剤が聞いているのか、数時間たっても美鈴は目を覚まさない。
花音は、余程心配なのか、窓から美鈴をずっと見つめている。
「花音、大丈夫か?」
「私は大丈夫だよ、あんたこそ大丈夫なの?」
「俺は、ママが生きてるだけで幸せだから」
「あ、そう」
「うぅ、あぁ」
花音と会話をしていると、美鈴が声を出していた。
美鈴が目を覚ましたのだ。
「美鈴? 美鈴!」
「ママ!」
「花音、悪いが先生を呼んできてくれ!」
俺は花音に頼み、俺は集中治療室の扉を開ける。
「う、うん!」
花音は走って医師を呼びに行き、俺はすぐに美鈴に駆け寄った。
「美鈴!? わかるか? 俺だ、亮だよ」
俺は、起き上がろうとする美鈴の背中を手で支えながら起き上がる手伝いをした。
「うぅぅぅぅぅぅ」
美鈴は頭を押さえながら、うめき声をあげている。
だが、俺はこの時、涙を浮かべてしまった。
背中を支えた時に理解したんだ。
冷たい
美鈴のぬくもりはそこにはなく、まるで生きていないのかとさえ思ってしまい、
思わず美鈴を支えていた手を見てしまった。
「美鈴……」
「があぁ!」
美鈴は奇声を上げながら、俺の腕を振り払い勢いよく突き飛ばした。
「ぐあぁ!」 ガシャァン!
「先生! こっちだよ、早く」
花音は医師と看護師を数人連れて集中治療室に入ってきた。
「うぅ、があぁぁぁ!!」
美鈴は医師と看護師を見ると、狂ったように襲い掛かった。
「美鈴……だめだ、美鈴!」
倒れて動けない俺は、精一杯の声を出すしかできない。
美鈴は看護師につかみかかり、噛みつこうとする。
その時、美鈴の後ろから手を回した者がいた。
花音だ。
「ママ、大丈夫だよ、私が、私たちがいるから」
暴れる美鈴を後ろから優しく抱きしめる。
「がぁぁ!」
「ママ、お願い……」
花音の言葉に美鈴は落ち着きを取り戻し始める。
「うぅ、あぁ」
美鈴が、人を襲うのを止めた?
花音の言葉に反応したのか?
「まさか、信じられない。奥さんが人を襲うのを止めるなんて」
その場にいた医師も驚いていた。
「美鈴、ぐぅ」
俺が立ち上がり、美鈴に話しかけると、こちらを見てきた。
「うぅ」
美鈴は俺を睨むと、俺に向かって襲い掛かってくる。
突然のことで、俺は反応ができなかった。
そして、その勢いのまま、俺の肩に噛みついてきた。
「ぐあぁ!」
肩からはじんわり血が服に滲み始める。
俺のことは覚えてないのか?
そんな……
どうやったら、思い出す?
肩に噛みついたまま美鈴は離れず、鈍く太い奇声を上げながら、グチュグチュと音を立てる。
「ぐっ、美鈴」
「グゥゥルルルル!」
花音のことは覚えているんだ、きっと俺のことだって思い出してくれるはず。
(あ、そうだ、美鈴が怒っているときは、確か……)
俺は昔のことを思い出した。
美鈴が怒っているときは、いつも俺はそうしてきたんだ。
今の美鈴が覚えているかどうかわからない。
でも、俺は美鈴がきっと覚えてくれてるって信じてる。
ずっと一緒にいたんだ、俺たちは17年も一緒に。
俺はどんな姿になろうと、君がどうなろうと
愛しているよ
肩に強烈な痛みを感じながら、俺は腕を伸ばす。
そして、俺は美鈴の頭を撫でた。
「美鈴、もう大丈夫だよ、俺だ」
頭を撫でると、さっきまで狂ったように噛みついた美鈴は噛むのを止めた。
「があぁぁ……あぁ」
そういうと、美鈴の表情はゆるくなり、その場に倒れこんだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる