赤い夕焼けの空

ミニマリスト憂希

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カンッ カンッ

「熱い、熱い」

トニーは額から汗を流し
頰に黒い汚れを付けながらも
一生懸命に働いた
この地下は電球が少なく暗いし
換気が悪くとても息苦しい
カチカチッ
カチカチッ
機械のネジを締める
子供ながら必死に作業をしていた
これ以上 父の重荷にならない様に
看守に目をつけられない様にと
そんなトニーに

「トニー 無理はするなよ」

「うん」

そんなトニーに優しくする父

ピリリリリッ

「休憩~!」

チャイムと看守の声に
皆 息を吐く

「はぁ ようやく 昼休憩か…」

昼休憩は30分
パン1つと水だけ…
トニーと父は壁に腰掛け
パンをかじった
ガシュ
モグモグッ

「このパン硬いな」

「うん」

モグモグ
パンを食べる2人に1人の男性が声をかけてきた

「トニー?トニーじゃないのか?」

「ん?あっ!?パン屋のおじさん!」

「無事だったか よかった よかった
もう何人もの人がこの環境に耐えれなくなって倒れてる トニーも気をつけろよ」

「うん おじさん このパン 硬くて不味いよ」

「このパンは保存用のパンだからな
硬いしそんな美味くないさ」

「おじさんとこのパンの方が美味しいよ」

「俺んとこのパンとこんなパンをいっしょにするんじゃないよ」

トニーとアントニー話をしていると
知らない男性が慌てた様子で話しかけてきた

「おい そこの この昼休みで広場で女達会えるって聞いたかい?」

それを聞いたトニーと父は立ち上がる

「おい それ 本当か?」

「ああ 皆んな自分の女房と会ってるよ」

トニーと父 それにパン屋のアントニーは急いで広場へ向かった

広場にて

「母さん!」

「トニー!あなた!」

「母さん 会いたかったよ!母さんは大丈夫?重い物持ったりしてないの?」

「母さんは平気よ 女の人達は縫い物や簡単な作業だから」

「そうか それならよかった!」

広場で母と会えたトニーと父
お互いの無事を確かめ合い 安心する3人
パン屋のアントニーも妻のアンと無事会えた様だ
父はとにかく家族みんなが無事に過ごせる様
無難に過ごそうと言った
母とトニーはそれを承知し、頷く

ピリリリリリッ!
昼休憩が終わる合図だ

トニーと父は母に別れを告げ
急いで作業場で戻った
これからは昼休憩の時
この広場で会うことを約束し
この時間のために励もうと言った

昼からの作業も無難にやりきったトニーと父
夕食のパンと冷たいスープを食べ
また昨日と同じ独房の中へ
トニーは眠る前に
明日 母と何を話そうか考えた
母とまた会える事を楽しみに考え
ウトッ ウトッ
知らぬ間に寝てしまった
無理もなかった
こんな重労働じゃあ

次の日
トニーは仕事をしながら
昼休憩に母に会える事を楽しみにしていた
すると
1人の男性が慌てた様子で叫んでいた

「大変だ!工場裏で女達が…」

「なんだ なんだ?」

皆が作業を止め
その男性に注目した

「大変なんだ 女達が看守達に工場裏に連れて行かれて つけていたら 看守達が女達に暴力を振るってたんだ!」

「なんだって!」

ざわめいた

「コラッ なんだ 貴様は」

見張りの看守がその男性に近寄る

「そうだ あんた来てくれよ 他の看守達が女達に暴力を振るって…」

「そんな事は知らんな 俺はここの監視をするのが仕事だ…他の区域など関係ないな」

「そんな、それでも人間か!」

「うるさいぞ!お前達もさっさと作業を続けろ!手を止めるな」

そういう看守の背後を取った
その男性は看守の両手を押さえた

「何をする!?」

「でかしたぞ!」

他の男性達も加わり看守を完全に押さえた

「俺達が押さえておくから お前達は行け!」

「わかった!」

皆は工場裏へ向かった


工場裏では

複数人の看守達が女達を囲んでいた

「おい 服を脱げ」

「えっ…」

1人の女が首を横に振りそれを拒否すると
看守が警棒でその女を殴った

バンッ バンッ

「痛い!」

「ちょっと…やめて」

他の女達が止めに入る
看守達は女達を殴り蹴り
そして服を脱がした

「いや」

「汚い奴隷のくせに 口答えをするな!」

ダダダダッ
男達が駆けつける
それを見た男達は怒りに燃えた
看守達に向かって走り出す

「おい!やめろ!」

「なんだお前達は!?作業はどうした?」

1人の男が看守の顔を殴る

「このクソ野朗!」

バシッ!

他の男達も看守達と取っ組み合いになった

その時
バンッ
銃声が鳴った
1人の看守が女に向かって拳銃を発砲したのだ

即死だった

皆 しばらく沈黙した

「なんてことを…」

ダダダダッ
他の看守達が騒動を聞きつけて来た

「そこまでだ!」

「お前達 作業はどうした?」

「作業!?作業なんか知るか!」

「こいつらは彼女達の服を脱がそうとして暴力を振っていたんだ」

「さぁ なんの事か 作業をサボっていたから注意していたんだ」

「嘘つけ!」

「それに…それにだ!この看守が女に向かって拳銃を撃ったんだ!」

「女が襲ってきたから 身を守る為に 威嚇射撃したら当たっただけだ」

「どっちでも構わん お前達 作業を抜けた罰だ 今日はメシ抜きだ」

「ふざけんな!」

傍で女達が泣いていた

皆 疲れと怒りで限界だった

その日が終わり
独房の中で
1人の男が

「脱走したい…」

と独り言を言った
皆 同じ気持ちだった…
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