赤い夕焼けの空

ミニマリスト憂希

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夕暮れの空

もう少しで日が沈む

トニーは家に着いた

このドアを開けると
母がお帰りと言ってくれて
すぐに父がただいまと帰ってきて
また昔のように暮らせると願った

カラカラッ

「た、ただいま」

「…」

しかし返事がない

そして母の姿も

父の姿もなかった

トニーは
実は母は生きていて
トニーの大好きな
オニオンスープを作って
自分の名前を呼んでくれるのではないかと思っていたし

父も
無事に家に帰ってきて
いつものように自分の名前を
呼んでくれるのではないかと思っていた

しかし
トニーは一人だった


家はしばらく誰も住んでなかったので
埃だらけで汚かった

トニーは汚れた作業服を脱ぎ捨て
引き出しから自分の服を取り出し
着替えた

グゥ~

「お腹空いたな」

トニーはおばあさんから貰った紙袋から
食べ物を取り出し
机の上に並べた

「パンにチーズ・果物にベーコンか贅沢だな」

数日分の食料が入っていた

「食べ物はたくさんあるし、父さんが帰ってくるまで待とう」

パンと果物を両手に取り
壁に腰掛ける

モグモグッ

「美味しい。」

ガシュッ

「甘い。」

食事を終え
三角座りでジッと
父の帰りを待つが
その日 父が家に帰って来る事はなかった…

次の日

「はっ!」

座ったまま寝てしまっていたトニー

「父さんが帰ってくるから家の掃除しないとな」

そう言い箒を手に持ち
家を掃除するトニー

サッサッ

「ゴホッゴホッ!」

埃が多く咳き込むトニー

キュッ

「ん?水が出ないや」

家の水が出ないので
近くの川へバケツに水を汲みに行くトニー

カラカラッ

「ただいま!」

「…」

「父さん 帰ってないの?」

「…」

「まだ帰ってないか…」

バチャバチャッ
ギューッギューッ
ゴシッゴシッ

家の中を拭き掃除するトニー

「ふー少しはきれいになったかな」

ガサッガサッ

紙袋からパンとベーコンを取り出す
モグモグッ
バシュッ

「ベーコンなんて久しぶりに食べたな
美味しい」

「父さんまだ帰ってこないのかな」

ザーッ
雨が降り出す

「雨だ!父さん大丈夫かな?」

ポチャ…ポチャ
屋根から雨漏りがしていた

「今日 拭き掃除したのに…」

ポンッ…ポンッ
雨漏りする所にバケツを置く

ポンッ…ポン…

「おやすみなさい」

椅子に座り眠るトニー

しかし
次の日も
また次の日も

待てど

待てど

父は家には帰って来なかった

おばあさんから貰った食料が尽き
トニーはもう家で待つ事が出来ない

トニーは家を出た

行く宛もないトニーはただ歩くだけ

母親はもういない
父親は帰って来ない
希望も未来も夢も
何もないトニー

町を歩いていると
自分と同じ年齢ぐらいの子供が楽しそうに
父親と母親と手を繋いで歩いていた

トニーは走った

ひたすら走った

自分が今までに行ったことのない場所まで
走って

走って

歩いて

歩いて

そしてとうとう疲れ果て

バタッ

倒れてしまった

グゥ~

「お腹空いた…」

「うぅっ 母さん…父さん…」

泣き出すトニー

泣きながらも立ち上がり

また歩き出す

すると
小さな小屋を見つけた

トニーは力を振り絞って
その小屋まで歩き
ドアを開けて入った

部屋には誰も居なかった
部屋は1部屋で2段ベッドが1つ
とにかく狭かったが
トニーは今日はここで泊まろうと思った

その時
ギィッー
ドアが開いた

痩せた男が入ってきた
男はトニーがいたのでビックリした

「誰だ!?」

トニーは怯えて何も言えなかった

しばらく沈黙が続いたが

グゥ~

「は、腹空いてるのか?」

相づちで答えるトニー
すると男はパンと温かいオニオンスープを入れてくれた

「食え」

トニーは貪り食べた

「このスープ美味しい」

泣きながらスープを堪能するトニー
味は違えどオニオンが入ったこのスープは
まるで母の作ったオニオンスープのようだった

「そうか そうか…」

男は笑顔でトニーの事を見ていた
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